( ´_ゝ`)兄者はバルトアンデルスのようです

556: ◆wUOiOOQQF. :01/29(火) 17:14 hH+MCRf70

そして、意識を現実に戻す。

(*ノωノ)「弟者さん、私も加勢します」

見ると、すぐ傍であぷーが立ち上がっていた。
足の傷の治療を終えて、自分も戦おうとしているところだろうか。

(´<_` )「いや、いい。あぷーの出番はココじゃない」

だが、それを拒否する。
自分の用意したシナリオで、キュートを倒す為に。

(*ノωノ)「出番……ですか?」

(´<_` )「ああ、まだ出番じゃない。もうすぐだけどな」

弟者は答え、視線を足元に向ける。

自分の足元。
そして、そこから伸びる己の影をじっと見据える。

用意したシナリオは、実行できるチャンスは1回ではない。
チャンスはいくらでもあるのだが、できるだけ長引かせたくはなかった。

だから、次で終わらせる。

今度、キュートが攻撃に出たとき。
弟者の狙いはただその一点のみに絞られていた。

(´<_` )「じゃ………………始めるよ。流石弟者の一世一代のがんばり物語を」



566: ◆wUOiOOQQF. :02/13(水) 09:28 f+s73wyw0

相手は能力者。
常人には持ち得ない能力を持っている者。

対する自分は常人。
人並に生きているかは分からないけど、とりあえず一般人。

たったこれだけでも、相当の戦力差になる。
そう言い切れるだけの影響力を持っているのを、彼等の戦いを何度か見たからよく知っている。

能力とはそういうモノ。
そして、能力者というのはそういう存在。
常人が丸腰で相手をしようなど、普通は考えもしないような事だ。

「普通は」という言葉に、思わず苦笑してしまう。
今現在、丸腰の常人である自分が能力者を打ち負かそうとしているのだから。

(´<_` )(……なら、俺は普通じゃないって事になるよな)

何を今更――と、誰に言う訳でもなく呟く。

分かってる。

自分では「俺は普通だ」と心の中で思っていたが、全くもって普通じゃない。
ここ最近の異常な環境の中では普通な部類に入るかもしれないが、傍から見れば全然普通じゃない。
年齢=彼女いない歴だし、最後に女の子と手を繋いだのはいつだったかも思い出せない。むしろ普通以下かもしんない。

だからこそ。

普通じゃない俺なら、ひょっとしたら勝てるんじゃないかな――なんて事を、考えてみたりした。



567: ◆wUOiOOQQF. :02/13(水) 09:28 f+s73wyw0

狙いは単純明快。

キュートが攻撃に出た瞬間、逆に攻撃するというだけの事。
その際にナイフで傷を負わされるかも知れないが、それはあぷーに任せればいい。

重要なのは、その瞬間に反応できるかどうかだ。

反応できなければ、まず実行できない。
実行できないどころか、スパッとやられてはい終了。ゲームオーバー。
さっきはしっかりと目で追う事はできたが、反応は全くしていないのでアテにならない。

だから、ある程度のダメージは覚悟する。
それを治療するのがあぷーの役目、彼女の出番。

正直、成功するかは分からない。

むしろ失敗するような気がしてたまらない。
切られた瞬間に「いてぇwww」だのなんだの言って、それどころじゃないと思う。

(´<_`;)(……やっぱ無理かね。なんか自信なくなってきたぞ)

ヘタレでごめんなさい。
だから脇役なんです。俺なんて所詮そんなモンなんです、どうせ。



568: ◆wUOiOOQQF. :02/13(水) 09:29 f+s73wyw0

そんな感じで、自虐していたその時。

(´<_` )(ッ!? 来るか!?)

来る。
何の根拠も無いが、直感がそう告げた。

ちなみに、このセリフ2回目。
前回は口に出していったけど、今回は思っただけだから気にしない。

そんな事は気にせず、さっさと身構える。
この勝負を終わらせるために、そして、早く家に帰るために。

チャンスは何度もあるが、今回で終わらせる覚悟で。

つーか、今回で決めないと精神的にキツイ。何度も痛い思いをしたくないから。

ただ、じっと待つ。
出来る限り限界まで神経を研ぎ澄まし、ひたすら集中する。

「こんなにも真面目に何かに取り組んだのは、小学校の時が最後だったかなあ……」

なんて事をふと考えたけど、思い出さない。さようなら若き日の自分。



569: ◆wUOiOOQQF. :02/13(水) 09:29 f+s73wyw0

そして。

ふと、白い線が見えた気がした。
それは弧を描くような軌跡を残し、弟者に迫っていた。

それがキュートの握ったナイフだと弟者が認識するのに、時間はまったくかからなかった。

握っているのはキュートの右手。

その根元に視線を移し

影から生えているキュートの手を捉え

腰を落として姿勢を低くし、両手でその手首を握り

(´<_` )「フィ―――――――ッシュ!!」

マリオが野菜を引っこ抜くようなスタイルで、キュートを影から引っ張り出した。



570: ◆wUOiOOQQF. :02/13(水) 09:29 f+s73wyw0

――と、少なくとも弟者は思った。



571: ◆wUOiOOQQF. :02/13(水) 09:30 f+s73wyw0

キュートが攻撃に出たのと、ほぼ同時。
弟者が覚悟を決めたその瞬間に、一陣の突風が弟者達の周囲を吹き抜けた。

目の錯覚か、弟者の目にはその風が黒色だったように見えた。

そして、突風が去った後には、3人の男女の姿だけが残されていた。

(´<_`;)「アレ? なにこれ、どういう現象?」

o川*゚ー゚)o「ええ!? なにこれ、どーゆー状態!?」

それはまさに異様な光景だった。

弟者がキュートの右手首を両手で掴み、彼女の手を高々と空に向けて掲げているのだから。
もちろんキュートの右手にはナイフがしっかりと握られていて、弟者はマリオの野菜引っこ抜きスタイルで。

(´<_` )「…………」

o川*゚ー゚)o「…………」

(*ノωノ)「……………何が何だか わからない……………」

どうしよう。
驚きのあまりに頭が上手く回らねーわ。

ポルナレフも真っ青。何が起こったのかまったく分からない。



572: ◆wUOiOOQQF. :02/13(水) 09:31 f+s73wyw0

「なにやら騒がしいと思ってきてみれば……こんな場所で何をしているんだ?」

たぶん、空耳だろう。
自分の後方から、なんだか聞き覚えのある声がしたような気がした。

(*ノωノ)「……あっ、クーさん!」

川 ゚ -゚)「アプーか。なんとなく久し振りだな」

ごめん、空耳じゃなかった。
正真正銘本物の知り合い、我らがクー姉さんでした。

川 ゚ -゚)「それにしても弟者、間一髪だったな」

うわっ。

クーさんがこっち向いてます。
しかも喋ってます。マジスゲーって。

(´<_` )「まじすげー。本物のクーだ。初めて見たわ」

川 ゚ -゚)「……どうした、弟者? 何を訳のわからない事を」

(´<_` )「感動した」

川 ゚ -゚)「そうか、よかったな」



573: ◆wUOiOOQQF. :02/13(水) 09:31 f+s73wyw0

o川*゚ー゚)o「え? なにこれ? 展開が読めないんだけど」

川 ゚ -゚)「お前、AAが8割被ってるから退場。極光剣」

そう言うや否や。
クーは右手に持った剣でキュートを薙ぎ払いました。

o川*゚ー゚)o「ぎゃん!」

剣は、キュートの腹部を横に一閃しました。
さすがはクーさん。一点の曇りも無い、ナイスな一撃です。

キュートは倒れてピクリとも動かなくなりましたが、放っておけばいいでしょうね。

(´<_` )「なんという圧勝……これは間違いなくチート」

すごいです。
さすがは能力者。
私が散々苦労して必死こいて精一杯努力した相手を瞬殺です。

川 ゚ -゚)「2人とも、怪我はないか? あってもどうもできんがな。ははははは」

うっわ。
なんかすんげーむかつく。
こんなキャラだったかな、このヒトって。



574: ◆wUOiOOQQF. :02/13(水) 09:32 f+s73wyw0

(*ノωノ)「すみませんクーさん。状況が読めないので3行でお願いします」

川 ゚ -゚)「・弟者のピンチに遭遇
     ・なんか危なかったから極光で防御
     ・ついでだしAA被ってたから極光で敵撃破」

(*ノωノ)「把握」

なんだそりゃ。
全然ピンチじゃねーよ。
アレは俺なりの作戦だったのに、なんだよおい。

(*ノωノ)「ところで、クーさんはなんでここに?」

川 ゚ -゚)「……まあ、散歩だ」

なんだよ。
散歩のついでに敵撃破か。

アレか。キュートはその辺で出てくるザコ敵と同じ扱いか。
「スラ○ムがあらわれた!」→「クーのこうげき!」→「ス○イムをやっつけた!」みたいなノリか。

俺の努力を返せチクショー。
ナイフで切られた痛みを癒せチクショー。傷はもう無いけどさ。

川 ゚ -゚)「じゃあ、そろそろ私は失礼させてもらうな」

(*ノωノ)「なら私も途中まで一緒に行っていいですか?」

川 ゚ -゚)「途中までならな」

(*ノωノ)「わーい」



575: ◆wUOiOOQQF. :02/13(水) 09:32 f+s73wyw0

なにこの展開。
ヘタな全滅エンドよりタチ悪いんだけど。
つーか、むしろこれも一種の全滅エンド。俺以外全滅。俺の一人相撲。

(*ノωノ)「……あ、そうだ。弟者さん」

(´<_` )「はいはいなんですか。約束は守れよな」

マジで。
じゃないと骨折り損じゃん。
俺一世一代のがんばり物語に最後ぐらい幸せな夢を見させてくれよ。

(*ノωノ)「私は“1日守ってくれたら”と言いました」

(´<_` )「はい」

(*ノωノ)「1日というのは24時間、分に直すと1440分、秒だと86400秒を指します」

(´<_` )「はい」

(*ノωノ)「よって、弟者さんとの契約は無効です。本当にありがとうございました」

(´<_` )「はいはいもうどうでもいいよ」

マジで。

期待してなかったし。
これっぽっちも期待してなかったさチクショー。

(*ノωノ)「では、さようなら」

(´<_` )「はい、さようなら」



576: ◆wUOiOOQQF. :02/13(水) 09:32 f+s73wyw0

去った。

みんな去っていった。
俺の気持ちなんて微塵も考えないで、さっさと行ってしまった。

俺……時々こう思うんだ。

ギャルゲがあるじゃん?
アレで、鬱エンドしかないキャラがいるだろ?

俺って、あんなモンなんだってさ。

どう足掻いてもグッドエンドはなくて、結局はバッドエンドで終了。
いくら探してもエンディングはそれっきりで、バッドエンドが真エンドなのな。

なんなんだろうね、俺。

能力持ってるヤツがそんなに偉いのかね。

変身したり傷治したり影に潜ったりするのがそんなに偉いんでしょうかね。

なんなんでしょうね、ホント。

なんかアレすぎて目から鼻水が出てきちゃいましたよ。

なんつーかもう、いつか絶対復讐してやりますよ。ええ。



577: ◆wUOiOOQQF. :02/13(水) 09:36 f+s73wyw0

                               一度目なら、今度こそはと私も思う。
                                   変えられなかった待遇に。

                               二度目なら、またもかと私は呆れる。
                                   変えられなかった待遇に。

                               三度目なら、呆れを越えて苦痛となる。
                               七度目となるとなんかもうどうでもよくなる。



578: ◆wUOiOOQQF. :02/13(水) 09:37 f+s73wyw0

   

                               「(´<_` )弟者は存在しているようです」


                                          おしまい



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