( ^ω^)ブーンの力は役立たずのようです。

15: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:02:22.75 ID:8N3abdHZ0
  
( ^ω^)「ただいまだお」
J('ー`)し「あら、おかえりなさい」

居間に入るなり、香辛料の匂いと、香ばしい脂の臭いがブーンの鼻をかすめた。

( ^ω^)「……この匂いは間違いなくハンバーグだお」
J('ー`)し「よくわかったわね。もうすぐできるから待っててね」
(*^ω^)「待ちきれないから手伝うお」
J('ー`)し「……そーかい? じゃあ付け合せのキャベツを切って頂戴」

思わぬハンバーグの登場に気分が良くなっていたブーンは、そのまますぐに笑顔でキャベツの
千切りにかかった。
手伝いはよくしているので、包丁の扱いももう慣れたものである。
さっきまでしていたゲームの音楽を頭の中で再生しながらキャベツを切りにかかる。
と、そのとき少しばかり手がブレてしまい、キャベツを咄嗟に庇ったかのように左手に包丁が
あっさりとおろされた。

(;^ω^)「おっ!」
J('ー`)し「どうしたの?」
(;^ω^)「な、なんでもないお」

典型的な油断から来るミスで、ブーンは左手の指を少し切ってしまった。
幸い出血はあったものの傷は浅いようだったので、下手な心配をさせまいとトイレに行くフリを
してセロハンテープを貼って戻り、見せないように気をつけながらキャベツの千切りを再開した。
今度は手を切らないようにと注意し、キャベツの表面に包丁を当てる。



18: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:03:14.97 ID:8N3abdHZ0
  
( ^ω^)「……?」

これはどういうことなのだろうか。
引けども押せども圧迫されて少し変形するだけで、まるでキャベツの切れる気配が無いのだ。

(;^ω^)「カーチャン、この包丁切れないにも程があるお」
J('ー`)し「何言ってるのよ、貸してみなさい」

カーチャンはブーンから包丁を受け取ると、慣れた手つきであっという間にキャベツの
千切りの山を作り上げてしまった。考えてみれば指が切れたのだ、キャベツが切れない
わけが無い。

J('ー`)し「ほらね」
(;^ω^)「……なんか納得いかないお」

合点のいかない光景を見て、ブーンはなんだか複雑な気分だったが、その後ハンバーグを
食べてすっかり機嫌を直してしまった。
満腹になったブーンは狂おしいほどに愛し合う目蓋と戦いながら、何とか洗顔と歯磨きを
済ませて時計の針が9時を指す直前にベッドへと潜り込む。そう言えばと指のセロハンテープを
外すと、自由を手に入れた血液が飛び出してきた。何枚かティッシュを取り出し、ぐるぐる巻きに
して処置していると、段々と夢の中へと意識が入り込んでいくのを感じた。
いつもならテレビを見ながら馬鹿笑いしているような時間だが、今日は少し疲れているようだ。
そう考えつつ、ひんやりとした布団の感触に包まれながら、ブーンはすぐに夢の中へと落ちていった。



19: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:04:33.42 ID:8N3abdHZ0
  
 スズメの鳴き声がどこからか聞こえてくる清々しい朝の住宅街を、ブーンは一人走っていた。
昨日はあれだけ早く寝たと言うのに、寝坊をしてしまったのだ。あれこれと言い訳を考えながら
やっと電柱の下で待っているツンが見えた時には、既にいつもより5分も多く時間が経っていた。
朝の5分は夕方の30分に匹敵するだろうとドクオがいつも熱弁していたのを思い出しながら
ブーンは怒り顔のツンの元へ辿り着く。

ξ#゚听)ξ「遅い!」
(;^ω^)「ごめんお……痛っ!」

到着するなりツンが、ヒラヒラとした膝丈より少し短いくらいのスカートを纏わせた、白く
しなやかな足でブーンの尻を蹴った。
それを合図にして二人は一緒に走り出す。
だが走り出しても尚ツンの怒りは収まらないらしく、あれこれと色々ブーンに文句を言ってくる。

ξ#゚听)ξ「アンタがモタモタしてるから私まで遅刻しそうじゃないの!」
(;^ω^)「別に先に行ってても良かったんだお……」
ξ゚听)ξ「そしたらあんた毎日遅刻じゃない」
(;^ω^)「ツンがここで待ってても僕の目覚めが変わるとは思えないお」
ξ;゚听)ξ「あんた、こんな美少女を待たせて、罪悪感って、ものが……」
(;^ω^)「普通は自分で言わないお」
ξ;゚听)ξ「あんたには、私の、美しさが……はぁ……はぁ……」

走り出してまだそれほど経っていない筈だが、何故かツンの息はもう既に切れ切れになっていた。
そして数秒の後、ブーンはハッとして立ち止まった。
どうやら朝起きたばかりの頭でツンのペースにあわせるのを忘れてしまったらしい。



20: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:05:09.15 ID:8N3abdHZ0
  
( ^ω^)「ツン、ちょっと……靴紐結ぶから待っててお」
ξ;゚听)ξ「はぁ……はぁ……そんな、事、してる場合じゃ……」
(*^ω^)「う〜ん……いいねぇそのポーズ。アングルもバッチリ!」
ξ;゚听)ξ「?」

靴紐など解けてはいなかったが、下手なことを言ってもツンが休んではくれないので
ブーンは適当に解いたり結んだりを繰り返しながら時間を稼いだ。なんとなく思い遣りのある
行動が気恥ずかしくて、ブーンの方へ振り向きながら背中を向け前屈みに休んでいるツンの
小宇宙から垣間見える夏の大三角を眺めつつ戯けてみたが、疲労の所為で聞き取れなかった
らしい。チラリと腕時計を見るとギリギリではあるが、もう走らなくても間に合いそうな時間だった。

( ^ω^)「時間も大丈夫そうだし、また解けたら面倒くさいから歩くお」
ξ゚听)ξ「結構ギリギリじゃないの。遅刻しても知らないからね?」

そう言いながらもちゃんと自分の横を歩くツンの姿を見て、ブーンはその滑稽さに微笑んで
しまうのだった。

ξ゚听)ξ「あんた遅れといて何ニコニコしてんのよ。笑顔のまま死んじゃいなさい」
( ^ω^)「それ悪口のようで結構いいセリフだお」



21: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:06:29.41 ID:8N3abdHZ0
  
(,,゚Д゚)「おーし、今日もドクオ以外全員そろってるな」

 ドクオは教師にここまで開き直らせるほどの遅刻の常習犯で、珍しく朝に居ても皆に
気付かれないことすらある。

(,,゚Д゚)「ん? どうした内藤、その無造作ヘアは」
(;^ω^)「? ……何か変なら寝癖直す時間が無かったからだと思いますお」
(,,゚Д゚)「そうか、明日は早く起きろよ。じゃあHR終わり。今日も途中で帰ったりするなよ」

いつも通り適当にHRを終わらせたギコが教室から出て行くと、早速前の席に座っている
ショボンが振り向いて話しかけてきた。その目はまん丸に見開かれていて、頭上の惨状を
ありありと伝えてきていた。

(´・ω・`)「うわ、本当だ。でもここまでくると無造作と言うか逆に造作を掛けてる感じがするよ」
(;^ω^)「……そんなに酷いのかお?」

ブーンは予想外の反応だったので頭を色々と手で触ってみたのだが、どうもピンと来ない。
そうやっていろいろ頭をいじっていると、遠くの席に座っているしぃと目が合った。
すると、しぃはただでさえ赤いその頬を、更に真っ赤にして笑い始めた。

(*゚ー゚)「あはは、内藤君、何その頭! あははは! あー、お腹痛い」
(;^ω^)「ちょ、しぃ笑いすぎだお」
(*゚ー゚)「あはは、ごめんごめん。ツンも朝気付かなかったの?」
ξ゚听)ξ「だってコイツ時間ギリギリに待ち合……校門で会ったのよ? 見る暇無いじゃない」
(*゚ー゚)「ツン、さすがに今のは無理があると思わない?」



22: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:07:20.08 ID:8N3abdHZ0
  
ツンとしぃがあれやこれやと騒いでいる間、ブーンは黒板の方をただ見ていた。
まだ頭がボーっとしている。朝の匂いを鼻先に感じながらも、頭は未だ混沌としていたのだ。
そんなブーンの顔と頭をチラチラと交合に見ながら、ショボンは少し手を伸ばして
あちこちにはねた髪をチョイチョイと、まるで動物が戯れるようにその感触を確かめていた。

( ゚∀゚)「おいーっす。サイヤ人が居ると聞いて飛んできたぞ」
(;^ω^)「たかが寝癖で盛り上がりすぎだお」
( ゚∀゚)「すげー、触ってみるとまた一段とそのすごさがわかるな」
(´・ω・`)「だよね。なんかこれすっごい気持ちいい」
ξ゚听)ξ「はいはい、どいたどいた」
( ゚∀゚)「残念、おっぱいポイントが足りません。出直してきてください」
ξ゚听)ξ「ゴメン、今手がすべる。で、何?」
( ::)∀゚)「……どうぞ」

頷いてツンはショボンとジョルジュの手を払いのけ、どこからか出したブラシとスプレー缶を
両手に装備してブーンの前に立ちはだかった。



23: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:08:04.27 ID:8N3abdHZ0
  
ξ゚听)ξ「ほら、私が直してあげるわよ。隣でそんな頭されてたんじゃ集中できないわ」
(*゚ー゚)「あら〜? 髪形は関係無いんじゃな〜い?」
ξ゚听)ξ「うるさいわよ、ミス・インモラル」
(*゚ー゚)「誰がよ」
ξ゚听)ξ「どうしたの? 今返事したじゃない」
(*゚ー゚)「……今日こそ、その天パで首絞めてやるわ」
ξ゚听)ξ「あらぁ? その可愛らしい身長で届くのかしら? ふふ、しゃがんであげましょうかぁ?」
(;^ω^)「痛っ! 髪、髪の毛引っ張らないでくれお! ショボン、助けてくれお!」
(´・ω・`)「大丈夫、僕はブーンが禿げても変わらずに友達で居るよ」
(;^ω^)「ちょ、馬鹿なこと言ってないで……」
(*゚ー゚)「ごめんね、誰かと違って可愛らしくって。でも胸のサイズがボクよりも可愛らしい人が
     居るんだよね〜。あ〜、悔しいな〜」
ξ )ξ「……」
(;^ω^)「アッー! ダメー!」

――小さい頃にグラウンドの草むしりをした事があった。
雑草と言うのは根が地中の奥深くまで張っていることが多くて、抜く時にはブチブチと言う音が
耳だけでなく手を通して伝わってくるのだ。子供心にグラウンドはさぞかし痛いのだろうと思っていた。
そんな昔の記憶を、ふと思い出した。



24: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:08:52.37 ID:8N3abdHZ0
  
 ブーンのすすり泣く声が終始響いていた午前中の授業が終わり、食料を持ち合わせていない
生徒達が教室からどんどんと流れ出していった。いつも教室で弁当を食べているのは主に
女子の数グループで、男子の中で弁当を持ってきている者も、なんとなく居心地の悪さから
各々別な場所へと散り散りになってしまう。
勿論ブーンもその例外ではなく、のんびりと弁当を食べられる場所を探して廊下をウロウロしていた。
目的地が定まっていないのではなく、ただ一直線に目指すと何かに縛られているようで、
嫌なのだ。出来る限り自由にのんびりしたい、そんな考えがブーンにはいつもあった。
そんなブーンが弁当を食べにやってくるのが図書室だった。図書室で食事なんて非常識
かもしれないが、この学校の図書室利用頻度の低さに加え、管理者の懐の深さのお陰で、
ブーンは一時の落ち着きを得ることが出来ていた。

( ^ω^)「おじゃましますお」
川 ゚ -゚)「いらっしゃい、内藤。そうだ、昨日の放課後新しい本が……どうした? その頭」
(;^ω^)「ま〜だ直ってないのかお……」

ブーンは弁当をテーブルの上に置き、近くにあった水道の蛇口を捻ると、両手を水で
濡らしてぐしゃぐしゃと髪に水をしみこませた。別に髪の毛に気を使っているわけではないが、
かと言ってぺったりとボリュームの無い髪形になるのもあまり好きではなかったので、ある程度
湿らせたあたりで蛇口の水を止めた。



25: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:09:41.16 ID:8N3abdHZ0
  
( ^ω^)「クー、今日は食べるのかお?」
川 ゚ -゚)「いや、今日も食べない」
( ^ω^)「そうかお。でも、今日は体育も無かったからわかるお」

クーはいつもこうして昼ごはんは食べないのだ。初めはどこのマンガのキャラクターの
真似なのかとブーンも思ったものだが、特別なことではないらしい。いつも腹ペコの
ブーンにとってみれば考えられないことだったので、何度か過去に一緒に食事をしようと
勧めたことがあった。
それでも結局これまでに口に入れてくれたのはキャラメル一個だけだった。無理矢理口に
入れようとバタバタ取っ組み合ったあれは結構面白かった。普段アクティブじゃないクーだから
なのかもしれない。
そう考え始めるとブーンの妄想はあらぬ方向へと転がり始める。

( ^ω^)「……フヒ、フヒヒ」
川 ゚ -゚)「……いきなり気持ち悪い声を出すな。寒気がする」
( ^ω^)「お昼ご飯が楽しみだっただけだお。じゃ、早速いただきますお」

一人図書室の関係者でもない自分が弁当を食べることに少しの罪悪感はあったが、時々
本棚の整理を手伝ったりして自分の中でいくらか軽減をしようとはしていた。今日も新しい本が
来たようだし手伝っていこうか。
そんな風にブーンが考えていると、廊下の方から慌しい靴音が聞こえてきた。



26: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:10:46.89 ID:8N3abdHZ0
  
( ´_ゝ`)「ちょっと邪魔するぞ」
川 ゚ -゚)「ん? お前が図書室に来るなんて珍しいな」
( ´_ゝ`)「あぁ……弟者がうっかり長岡にDRフォルダを見せてしまったんでな。避難しにきた」
(;^ω^)「学校でそんなもん見るなお」

DRフォルダとは、『ダイオキシンに関するレポート』という名前のフォルダのことなのだが、
中にはレポートが入っているわけではなく、男の欲望を満たすものが夢の数だけ入っている。
ちなみに、フォルダ内も『ロータリーキルン』等と上手く関連付けた名前のフォルダで分類分け
されているので間違ってクリックされても安全な構造になっている。勿論『ロータリーキルン』
フォルダには可愛らしいファイルがいっぱい入っている。

川 ゚ -゚)「何だ? また卑猥なものでも見てたのか?」
( ´_ゝ`)「む、まさか興味があるのか?」
川 ゚ -゚)「さあな。で、それと図書室に来ることに何の関係があるんだ」
( ´_ゝ`)「あぁ、それで長岡の豪腕を俺も弟者も一発ずつ喰らってな」
( ^ω^)「ジョルジュのあの腕を振る傍迷惑な癖はいい加減止めて欲しいお」
( ´_ゝ`)「仕方ないから別なところで鑑賞しようと思ったわけだ」
(*^ω^)「キタコレ!」
川 ゚ -゚)「頼むから部屋を汚さないでくれよ」

しかし結局二人はクーの存在が気になって落ち着きが無いまま、ただ昼ご飯を食べるだけ
であった。そして食事を終えると二人で図書の整理を少しの時間手伝って教室へと戻った。



28: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:11:47.86 ID:8N3abdHZ0
  
 授業開始5分前、教室にも生徒達が戻り始め、休みの終わりを惜しむかのようにあれこれと
思い思いに過ごしている時間である。ブーンはそんな教室の隅にドクオの影を見つけた。

( ^ω^)「ドクオ、今日も相変わらずの重役出勤だお」
('A`)「あぁ、今日は休もうかと思ったんだけど鯖のメンテが入ってな。暇だから来た」
(;^ω^)「おま、本当に進級危ないお」
('A`)「進級しても転職システムとかねぇじゃん。意味なくね?」
ξ゚听)ξ「相変わらず頭の中が大変ね、ドクオ」
('A`)「うるせーうるせー。俺は俺の好きなように生きるんだよ」
( ゚∀゚)「そういう素直な心、大事だよな」
( ´_ゝ`)「お前は謝れ」
( ゚∀゚)「ごめんなさい」
(´<_` )「こんなに簡単に謝らせるとは流石だな、兄者」
(#゚Д゚)「お前らうるせー! 授業始めるぞ! 弟、毎回毎回来んな!」

気が付くと既に休み時間は終わっていて、担任兼数学担当のギコが教壇で逆毛を立てていた。
終了の合図を聞かずして唐突に休み時間が終わったことで、ブーン達は何やら気持ちの
消化不良を起こしながらも、各々の席に戻っていった。

(,,゚Д゚)「ドクオ、いつ来た?」
('A`)「さっきです」
(,,゚Д゚)「そうか。お前そこそこ出来はいいんだから出席で落とすなよ?」
('A`)「……はい」

ギコはドクオに一言言ってから、黒板につらつらと数式やらグラフやらを書き始めた。
数学が苦手なブーンも睡魔と闘いながら一生懸命ノートをとろうとしているが、中途半端な
意識で書いたノートはぐちゃぐちゃでまるで読めないものになっていた。



29: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:13:08.18 ID:8N3abdHZ0
  
諦めて寝てしまおうとシャーペンを置いたとき隣のツンからノートの切れ端で出来た手紙が来た。

『あんなギリギリまで寝てたのにまだ寝不足なの?』

ツンも暇なのだろう。そう思い、ブーンは返事を書きながら昨日の事を思い出していた。
そう言えば昨日切った傷はどうなっただろうかと思って見てみたが、どこに傷があるのか
わからないくらいにまで治っていた。
それよりも寧ろ昨日ツンに引っ張られた所為で口が軽く裂けていて痛かった。

――そういや口が裂ける痛みと破瓜の痛みが同じってのは本当なんだろうか。かと言って
聞くわけにもいかないよなぁ。それにツンってまだショジョっぽいし無理か。ショジョ……ショジョって
どんな漢字だっけ……こう? これだよなぁ? もうちょっとここをうまく払って……

等と思考を蛇行させながらもブーンは書き終えた文章をノートから切り離すためにペンケースから
カッターを取り出して端の方を四角くなぞった。しかし、力の入れ具合が甘かったらしく紙は
跡だけを残して全く離れる気配が無かった。首を捻りもう一度同じ場所を、今度は下の紙ごと
切るくらいの力を入れてなぞる。

(;^ω^)「キ、キレテナーイ……」
(´・ω・`)「ぶふっ!」
(,,゚Д゚)「?」

冗談みたいな状況に冗談で対抗してみたが、ショボンが背中を向けたまま笑った以外何も
変わらなかった。訳がわからなくなったので、とりあえずノートを丸ごとツンに渡してブーンは
考え込む。



30: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:14:12.46 ID:8N3abdHZ0
  
――いくらなんでもカッターでノートが切れないなんて馬鹿げている。何かが、おかしい。
昨日はキャベツが切れなくて、今日はノートが切れなかった。そんな偶然……いや、偶然じゃない
としたら……と言うかショボンの笑いのツボはおかしい……

そうブーンが考え事をしていると、さっき渡したはずのノートがそのままツンから帰ってきた。
何事かと見てみると、赤ペンで下線が引かれていて、さらに『殺したげる^^』とまで書いてある。
手紙の文中に引かれた下線、そこにはこう書いてあった。

  『昨日、おかずの準備してる途中でうっかり貧血になるほどいっぱい出ちゃって、ティッシュも
   いっぱい使ったしそのせいかな? これに気付かないようじゃ女失格だお 処女 処女 処女』

あぁ、見せる気の無かった試し書きまで入っちゃったのね、と一度冷静に考えた後にブーンは
パニクった。マズイ、これは今すぐ弁解しなければ命が危ない。そう考え、ブーンは小声で
ツンに話しかける。

(;^ω^)「違うんだお。血だお。血がいっぱい出て大変だねって話だお。別にツン自体が処女
      かどうかなんてどうでもいいことなんだお」

その途端強烈な怒気のようなものがツンから噴出したのを感じ、本能的に机にしがみ付いた。

――長年の勘で分かる。このオーラは殺る気マンマンの時のオーラだ。どうやらまた僕は
言葉の選択をミスったようですカーチャン……

ペンケースをガサゴソと漁る音を右耳に聞きながらブーンは最後に十字を切り、目を瞑った。



32: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:15:48.62 ID:8N3abdHZ0
  
ξ;゚听)ξ「あれ? あれ?」

しかしながら地獄の死刑執行人は思いの外焦っているようであった。自慢の大鎌を家の
下駄箱にでも忘れてきたのだろうかと、そんなくだらないことを考えながらチラリと様子を
見てみると、予想以上に奇妙なことが起こっていた。
掴もうとするツンの手から、カッター、彫刻刀、コンパス、等の凶器達がスルスルと意思を
持っているかのように逃げていっているのだ。
しかし、ブーンはその奇妙な現象よりも凶悪な面子に恐怖した。
いつまで経っても掴めないイライラからか、ツンはこっそり逃げようとしているブーンを
左手に掴みながらついには叫び始めた。

ξ#゚听)ξ「なんなのよ! 大人しくしなさい! こっちはもう我慢の限界なんだから!」
(;^ω^)「駄目ぇぇ! そんな、爪立てて掴まないで! そんなに激しくされたら僕壊れちゃう!」
(*´・ω・`)「!?」 ガタッ!!
( ´_ゝ`)「!」 ガタッ!!
( ゚∀゚)「!!」   ガタッ!!
(#゚Д゚)「あぁぁぁ! お前らうるせぇぇぇぇ!」

その後ギコが長々と自身の学生時代の話をし始め、結果的に授業はほとんど進展も
無しに終わってしまった。



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