( ^ω^)ブーンの力は役立たずのようです。

33: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:16:34.91 ID:8N3abdHZ0
  
(´・ω・`)「さっきは何があったの?」
(;^ω^)「話せば長くなるお……とりあえずツンに話を聞くお」
ξ゚听)ξ「私は別に話すことなんて無いわよ」
(;^ω^)「ちょ、さっきあんなに奇々怪々な現場に遭遇してたのをもう忘れたのかお?」
ξ゚听)ξ「あんなのただの偶然よ。ほら」

そう言ってツンが近くにあったカッターナイフを掴むと、確にそれは逃げることなくその手の
中に収まっていた。

ξ゚听)ξ「ね?」
( ^ω^)「あれ? ……おかしいお」
(´・ω・`)「ねぇ、ブーン。ところでなんでこのカッター、刃が出たままなの? 危ないよ?」
( ^ω^)「そうそう、それなんだお。ショボン、ちょっとこのカッターでそのノートを切ってみてくれお」

ブーンに促され、ショボンは不思議そうな顔をしながらも言われた通りにカッターの刃を出し、
ノートの紙をサッと切り取った。

(´・ω・`)「それで?」
( ^ω^)「……ちょっと貸してくれお」

ブーンはショボンから紙とカッターを受け取り、同じように切り取ろうと刃を滑らせたのだが、
やはり予想していた通り、紙が切れることはなかった。



34: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:17:30.34 ID:8N3abdHZ0
  
( ^ω^)「切れないんだお」
(´・ω・`)「……それで?」
(;^ω^)「え? だから何で僕だけ、それに昨日も――」
ξ゚听)ξ「あ、そうだ。武器を持てるようになったのよね」
(;^ω^)「……お?」

喉元過ぎれば何とやら、危機を乗り越えたと安心していたブーンは、すっかり目の前にある
ノートの重要性を忘れていたのだ。武器を持てるようになったツンを前にどうして生き残れようか。
吹き出る汗を肌に感じながらブーンがいろいろな言い訳を考えていると、不意にツンの方から
ガシャンと金属音が聞こえてきた。何事かとその方向を見てみると、どういう訳かさっきまで
ツンの手の中にあったカッターナイフが床に落ちているではないか。
間違いない、これは神が与えてくれた生き残る最後のチャンスだ。神よ、感謝します。
心の中で天に感謝し、千載一遇のチャンスを逃すまいとブーンは床を蹴り走りだした。

ξ゚听)ξ「はい、よいしょぉ!」
(;^ω^)「ふぶっ!」

前傾姿勢だったブーンは後頭部に猛烈な衝撃を食らい、汚い床と歯が折れるくらいに激しい
キスをした。雑巾のような匂いをすぐ近くに感じながらも、ブーンはズキズキする頭を押さえ
ながら救いを求めるように手を伸ばす。

(;^ω^)「しぇ、せめて死ぬ前にその水蜜桃をこの手に――」
ξ゚听)ξ「せいや!」

しかし甘い香りに誘われて伸ばしたブーンの手も、桃源郷にたどり着く前にゴム底にあっけなく
踏み潰されてしまった。



35: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:18:08.81 ID:8N3abdHZ0
  
(;^ω^)「……ツン、人間的扱いをして貰わないといつか僕本当に死んでしまう気がするお」
ξ゚听)ξ「因果応報よ、あんたもこの前言ってたじゃない」
(´・ω・`)「そんなことよりツン、さっきのどうやってやったの? あの、手からポーンって出るの」
ξ゚听)ξ「……別に私は何もしてないんだけど」
( ´_ゝ`)「なにを盛り上がっているんだ?」
(;^ω^)「いや、誰か僕の心配は……」
(´・ω・`)「さっき急にツンの手からカッターが飛び出したんだよ。やってみたいなぁ……」
(*゚ー゚)「どうせカッターが『嫌だぁ〜』ってツンの手から逃げたんだよ」
ξ゚听)ξ「……」
(;゚ー゚)「あ、あれ? ごめん、怒った?」
ξ゚听)ξ「え? あ、違うの。本当にそうかも知れないなって……」

ツンの意味深な言葉に皆が口を閉じた。

( ´_ゝ`)「……どういうことだ?」
ξ゚听)ξ「よく分からないんだけど、しっかり掴んでたはずなのにいきなり勢いよく滑った
みたいに手から抜けていったの。別に何かを意識してた訳じゃないし……」
( ´_ゝ`)「ふむ……」
(´・ω・`)「もしかしたら、何かの病気かもしれないね」
( ^ω^)「失いかけの人の心が、ツンの手ぶぉっ!」
ξ゚听)ξ「こんな感じに私の意識とは別に、勝手に動いたのよ」
(; * )「ツ、ツン、ツッコミが激しすぎて前が見えないお」
(´・ω・`)「ブーン、ふざけないでよ。どこぞの漫画じゃあるまいし」
( ´_ゝ`)「ふむ……筋肉が痙攣を起していたりする可能性もあるからな。一応調べてみよう」



36: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:19:46.77 ID:8N3abdHZ0
  
そんな皆の様子に気付いたジョルジュが、しぃの頭を突付いて説明を促した。

( ゚∀゚)「みんな何を盛り上がってるんだ?」
(*゚−゚)「……別に」
( ゚∀゚)「ん?」
( ´_ゝ`)「よし……ジョルジュ、コレを弟者に渡しておいてくれ。俺は帰って調べ物をしてくる」
( ゚∀゚)「ん。オッケーオッケー」

そう言って兄者はジョルジュにDVD-Rを渡すと、荷物を片付け始めた。
まだ授業は残っているが、別に誰も咎めることは無く、寧ろ自分も帰ってしまおうかとさえ
思っている者さえ居る。クラス全体が、楽しければいいという雰囲気なのでこういうことは
日常的に起こる。

('A`)「……ん? もう授業終わったのか。んじゃ俺帰るわ」
(;^ω^)「でも、ドクオ。次は……」
('、`*川「あら? ドクオ君、どこに行くの? もう授業始まるんだけど」

いつの間にか教壇に立っていた教師がドクオに艶っぽい口調で話しかけた。

('A`;)「げっ! 化学だったのかよ! つーかその呼び方止めろよ! 気持ちわりぃなー」
('、`*川「先生に向かってその口の利き方は良くないわねぇ……。うふふ……帰ったらお仕置ね」
( ´_ゝ`)「じゃあな、みんな」
( ^ω^)「お」
(´・ω・`)「うん、バイバイ」
('A`;)「おい、姉貴! ほら、アイツも帰ろうとして――」
('、`*川「ふふ……化学の面白さを忘れられない体にしてあげる」
('A`;)「あーもう! 聞けよ!」



37: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:20:48.48 ID:8N3abdHZ0
  
実はドクオの姉が教師をしているのはブーンたちが通うこの学校で、その若さと容姿から生徒達の
間ではかなりの人気の高さを誇る。けれどもドクオ本人にとって、その事実は誇るべきこと
と言うよりは、寧ろただ気恥ずかしい事実であった。
しかしながら彼女にはどうにも頭が上がらないらしく、いつも帰るところを見つかってはよく
教室に気絶したドクオが送り返されてくるのを見掛ける。
だが休みがちなドクオが問題なく進級できているのも、この姉あっての事なのかも知れない。

('三`)「ん゛ー! ん゛ん゛ー!」
('、`*川「授業中は静かになさい」

口にガムテープを張られ、体を麻縄でイスに縛り付けられ、ドクオは監禁状態で化学の授業を
受けさせられることになった。これはどうやら『お仕置き』ではないらしく、帰ってから行われる
『お仕置き』がどんなものなのか、ただドクオが心配で皆の口元から笑みがこぼれる。

( ノω^)「『くやしいっ! でも感じちゃう!』」
('三`#)「ん゛ん゛ん゛ー! ん゛ーん゛ん゛ん゛ー!」

先生の教育的指導により、化学の授業は恙無く終了し、その後縛られたままのドクオを
皆で放置プレーしたままHRを終えた。



39: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:21:42.93 ID:8N3abdHZ0
  
( ^ω^)「ドクオ、遊んでないで掃除手伝ってくれお」
('三`#)「……」
(´・ω・`)「ねぇ、これ……鼻になんか詰めたらどうなるんだろう?」
( ^ω^)「……」
(´・ω・`)「……」
('三`;)「……」
( ^ω^)「僕たちトモダチだお」
(´・ω・`)「うん、そうだよね」
('三`;)「……」

一瞬二人の周りに常闇の如き暗い影が揺らめいたような気がしたが、それはドクオの
気のせいだったのか、あるいは明日はわが身と自己保身の為にギリギリのところで仮面を
被ったのか、その心中を知る者は居ない。

(;゚∀゚)「おいおい、早く外してやれよ」

もやもやと目に見えないオーラを出しながら佇んでいる二人にそう言うと、ジョルジュはドクオの
縄を解き、口のガムテープを外した。口の周りは薄らと赤らみ、服はヨレヨレになっていた。
そんなドクオの服に残った縄の繊維を払うと、ジョルジュは眉間にシワを寄せ不適に笑い、
徐に右手の親指を立てるとドクオに向かって突き出す。



40: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:22:20.87 ID:8N3abdHZ0
  
('A`)「あん?」
( ゚∀゚)「いやいや、別に未来の弟君からお礼なんていらんとですよ?」
('A`)「……本当にあんな奴のどこがいいんだか」
( ゚∀゚)「全身からセクシーさが溢れてるのがわからんのかねぇ……」
( ^ω^)「でもジョルジュにしてみれば、おっぱいが足りないんじゃないかお?」
( ゚∀゚)「甘いな。おっぱいの優劣は大きさじゃない、みんなちがって、みんないい。
     それがおっぱいだ」
('A`)「お前ら、目の前で人の姉のそんな話をしないでくれ……」
( ゚∀゚)「でもさ」
('A`)「ん?」
( ゚∀゚)「あー……いや、綺麗だろって」
('A`)「さあな」

『血繋がって無いじゃん』
この一言は未だに軽く口に出来ない距離があった。



41: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:23:43.84 ID:8N3abdHZ0
  
そんないつもの放課後の談笑も一段落すると、皆がぽつりぽつりと帰り始め、開いた窓から
夕日を纏った風が差し込む頃には教室からは人影がすっかり消えてしまった。
けれども、教室にはまだブーンが一人で居た。皆と居るとついふざけてしまうので、
今日は適当に校内をうろついて人が居なくなるのを待ったのだ。きっとツンはヤキモキしながら
帰ったに違いない。それでもブーンは、なんとなく、夕暮れの教室で考え事がしたかった。

――ふと、窓から校庭を眺めるとどこかの部活動の生徒がランニングをしていた。その様子を
目で追いながら、僕は昔からの問を頭の隅から引っ張り出してきた。グルグルと同じところを
回る生徒達。スタートがあそこ、ゴールはどこだろうか。もしや顧問の気まぐれだろうか、
それともストップウォッチだろうか、はたまたにわか雨なのだろうか。
 人も同じだ。スタートして、走って、走って、よく分からないがゴールが来る。彼らはゴールする
為に走っているのだろうか。走る途中で何を思うのか。その思いは楽しいものなのか、意味が
あるものなのか、人間が在る意味は何か。そこまで考えて僕はある種の孤独感のようなものが
体に染み込んでいくのを感じ始めた。これではいけない、と僕は考える事を止めた。いつもの
ように戯けて過ごし始めれば、こんなものは思い出さない。人間の意味なんて僕が考えても
答えが出るはずもないし、僕のこの不思議な感覚も普通に過ごしていれば感じることはない、
そしてその意味も無い。心に去来する寂しさのようなものを奥歯で噛み潰して僕は窓を閉めた。

( ^ω^)「……はいはい、厨ニ病厨ニ病っと……さっさと帰るお」

ブーンは教室をぐるりと眺め薄く笑うと、机の上に置いていたトートバッグを肩に掛けて教室を出た。

するとどういうことか、廊下には持ち主のように横を見て澄ました兎のマークが描いてある
ボストンバッグを両手で前にぶら下げてこちらを見ているツンが居た。



42: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:24:46.51 ID:8N3abdHZ0
  
( ^ω^)「お? ツン、帰ったんじゃなかったのかお?」
ξ゚听)ξ「それはこっちのセリフよ」
(;^ω^)「あ、あれ? てっきり僕を待っていたのかと思って、白々しいセリフを吐いたのに台無しだお」
ξ*゚听)ξ「冗談よ!」

そう言ってツンはギュッとブーンの右腕にしがみ付いた。一瞬何が起こったのか分からなかった、
と言うのは大袈裟ではあるが、事実のショックよりも腕にしっとりと纏わりついたツンの柔らかな
腕や、ブーンの腕を控えめながら圧迫してくるまだ見ぬ母性の塊にブーンは思考がフリーズした。
そんな混乱するブーンにそれを解かせるような言葉も態度も咄嗟には出てこずに、状態の
クーリングオフ期間を過ぎたと言うか、精神的慣性の法則に基づいてと言うか、とにかくこの状態を
変化させるタイミングを完全に逃してしまった。

(;^ω^)「ツ、ツン。一体どういう風の吹き回しで……。まさか……は、発情期とか?」
ξ(゚、゚*ξ「……そう、かもね」
(;^ω^)(! コ、コイツはヤバ過ぎるお!)

死すら厭わぬ覚悟で放ったセクハラ攻撃だと言うのに、ツンは俯いたまま肯定してきた。
セクハラすらも効かないとなると、最早完全にお手上げ状態である。ブーンは今ものすごく
いつものツンの気持ちを理解していた。あまりの恥ずかしさに顔から火が出そうとはこの事である。

ξ(゚、゚*ξ「ねぇ、ブーン?」
(;^ω^)「は、はい、何でございましょうか」
ξ(゚、゚*ξ「……こっち向いて」



43: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:25:35.07 ID:8N3abdHZ0
  
ブーンの心臓は過去最高の拍動回数を記録し、痛いくらいにドクドクと鼓膜をたたきつける音は、
本当に破裂してしまうのではないかと思われるほどだった。童貞レーダーにモールス信号が
何度も届いていた。どう考えてもキスだ、と。どうしたらいいものかと頭の中で小さな自分たちが
慌てふためいている。意味も無く直前のツンの言葉が脳内をループし、そういえばムーミンの
フレーズみたいだ、そうなると自分はブーミンか、いや、ブーミンって。
と大して役に立たない分析なんかをしていた。

 そんなブーンの耳に廊下の向こうから、不意に声が届いた。

(,,゚Д゚)「おい、お前達こんな時間までどうした? 俺になんか用事か?」
(;^ω^)「え? あ、いや、そn――ぐっ!」
ξ゚听)ξ「いえ、ちょっとこのバカが忘れ物しちゃって取りに来てたんです」
(,,゚Д゚)「ん、そうか。もうすぐ暗くなるから早く帰れよ」
ξ゚听)ξ「はーい」
(;-ω^)「ひゅおっ! ツ、ツン……ま……ひゅおっ!」
ξ#゚听)ξ「もう、知らない!」
(;-ω^)「ツ、ツン……待っ……息、出来なひゅおっ!」

残念な気持ちと、ホッとしたような気持ちを感じながら、ブーンは一先ず心臓と横隔膜が
落ち着く迄とゆっくり壁にもたれ掛かる。
そして先ほどのシーンを何度も、真っ赤な夕日の色が褪せていくまで頭の中でリピートしていた。



44: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:26:18.25 ID:8N3abdHZ0
  
 空に一番星が輝き始めた頃、ブーンは見回りの人に追い出されるように学校を後にした。
随分と遅くなってしまったので、カーチャンが心配するといけないとブーンはいつもとは違う
近道を通って帰ることにした。舗装がされていないので人通りが少なく、足元も悪いので
いつもは使わないのだが、何度か通ったことはあるので迷うことは無いだろうと踏んでいたのだ。

 辿り着いた電灯も無い暗い獣道のような通路の先に、ぼんやりと人影が浮かんでいた。
自分以外にもこの道を使っている人が居たのかと、軽く「ほう」と呟いてまた歩き出す。
ところが、近づいてみるとどうやら知り合いに良く似ているようだった。月明かりに照らし出されて
いたその顔は、しぃだった。もう一人は、よく見えないが体格からして男のようだ。けれども
知り合いではなさそうだった。歩くわけでもなく、ただ二人で立ったまま何かを話しているよう
だったがその内容はそよ風に流され、聞こえてこない。
やがて、ブーンがその場にたどり着く前に、二人は逆方向に別れ、見知らぬ男がこちらに
向かってきた。なるべく目を合わせぬよう観察してみたけれども、やはり知らない男だった。
ただ、纏っていた風の臭いに厭なものを感じた。
これは何の臭いだっただろうか。若しくは嗅いだことなんて無かったかも知れない。



45: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:27:00.35 ID:8N3abdHZ0
  
 夜、食事を終えたブーンは自室に戻りもう一度ノートの上にカッターの刃を滑らせた。
けれども、やはり予想通りノートのページは一向に離れる気配が無い。そこでブーンは
衝動的にティッシュの箱を勢いよく突き刺した。いや、それは間違いで突き刺せなかった。
不思議な感覚だったが突き刺そうとしている間、何か弾力のあるものを棒で押している
ような抵抗しか受けず、箱は形をゆがめるだけに留まっていた。

( ^ω^)「……まさか」

ブーンはゆっくりとそのカッターの刃を自分の手に押し付けてみた。カッターの刃はブーンの
手の肉を歪め沈んでいく。そして一呼吸置いてゆっくりと刃で皮膚をなぞった。刃の軌跡が
微かに白く肌に残っていくが、全くの無傷だった。勿論痛くならない程度に力は抜いたが、
経験的にこの程度力をいれれば切れていてもおかしくは無かった。
そしてブーンは急いで台所へ行き昨日の包丁を取り出すと手の甲を勢いよく切りつけた。

(;^ω^)「ゥオアッチ!」

手の甲を激しい熱量が走り思わず声を上げてしまったが、赤くなっているだけでやはり切れて
いない。それじゃあ一体昨日はなんだったと言うのか。ブーンは右手の指を眺めながら考え込んだ。

(*^ω^)「あ、左手だったお」

誰も見ていないが軽く照れ笑いをして包丁を仕舞い、部屋に戻って寝ることにした。



46: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:28:43.16 ID:8N3abdHZ0
  
 翌朝、この間の汚名を返上するために早起きをしたブーンは、ツンよりも早く待ち合わせ
場所に来てしまった。そこでブーンは、ツンが来る方向からは陰になる電柱の後ろに隠れて
待ち伏せることにする。
程なくして待ち合わせの5分前頃にツンが現れた。まさか電柱の陰にブーンが居るなんて
ことは思っていないらしく、その電柱にもたれてチラリと腕時計を見ると、空を見上げてため息を
吐いた。電柱に圧迫されてやわらかく変形した朝摘みの桃がなんともジューシーに見える。

―― 一体どんな驚かし方がいいだろうか、やはりここはベタに大声だろうか、いや、どうせなら
そのよく寝かせたパン生地のようなお尻の感触を確かめつつ驚かせれば一石二鳥じゃないか。
おっと、そんなことを考えていたら、股間の象さんが『僕のようにでっかくなろー』と巨大化
しながら騒ぎ始めやがった。こいつはやるしかない。

ξ゚听)ξ「ふぅ……まだかなぁ」

が、その言葉に今まさに触ろうと近づく尻を包み込まんと変形させたブーンの掌が止まった。

(;^ω^)(ま、まだかなぁ?)

どう考えてもその言葉はブーンの到来を待ちわびるものであった。普段とは違うか細い
声にブーンは戸惑ってしまう。何故ツンがこんなことを言っているのだろうか。
普段のツンならば

ξ#゚听)ξ『……アイツ、遅すぎ。来たら絶対シバき倒す』

などと悪態をつくはずだ。少なくともブーンにはそんなイメージしかなかった。それがどうして
不覚にもちょっとときめいてしまう様なセリフを吐いているんだろうか。
ブーンは昨日の出来事と重なってか、顔が熱くなってきたのを感じた。



48: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:29:36.35 ID:8N3abdHZ0
  
( ^ω^)(もしかして……ツンって僕が思ってるよりずっと――)
('A`)「ぉぉおおお! おはよう!」

ブーンの思考を遮る様にドクオのけたたましい挨拶が飛び込んできた。

ξ;゚听)ξ「わっ! もう、ビックリしたー! 驚かさないでよ」
('A`)「おぉ……おはよう。いや、未だに興奮冷めやらぬと言うかなんと言うかだ」
ξ゚听)ξ「どうしたのよ、しかもこんな朝早k――」

そこで丁度ツンとブーンの目が合った。そしてツンの視線はそのままゆっくりと、自分の
尻寸前で大きく広げてあるブーンの手に下がった。

(;^ω^)「ぁ……」
ξ゚听)ξ「……」
(;^ω^)「グ……グッモーニン……」

今度隠れる時は電柱などではなく、もっと柔らかいものの陰に隠れようと思う。
後にブーンはそう語っている。

さて置き、朝から似合わないテンションの高さだったドクオに二人は理由を何度か
尋ねたのだが、『学校に着いたら教えてやるよ』と言うばかりで、まったくその理由は見当が
つかなかった。ドクオの事だからどうせゲームの事か何かなのだろうと、そう考えそれ以上
聞くことを止めた。



戻る次のページ