( ^ω^)ブーンの力は役立たずのようです。

77: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:54:58.47 ID:8N3abdHZ0
  
 玄関には、いつの間にか頭から離れていたツンの姿があった。それも、怒っているのかと
思えばどうもそうではないらしく、したり顔とでも言うのだろうか、澄ました顔のまま笑っている
その表情はどこか被虐心をそそられるものがあって、ブーンは思わず見とれてしまった。

ξ゚听)ξ「ほら、そんなことだろうと思ったわよ。ほら、アンタの外靴下駄箱に入ったまま」

ブーンが自分の顔を無言で見続けているのが、自分の智略によるものだと思ったのか
ツンは得意満面といった感じで悔しがるブーンの言葉を待っていた。

( ^ω^)「あ……あぁ、なるほど。失敗したお」

勝手に別な思考に処理の大部分を裂いてしまった大脳の、まだ使われていない片隅を
借りて虚ろな返事をすると、ブーンはツンに続くように学校を出た。自分に被虐嗜好が
あったのかと言う驚きにも似た疑問に、それは暗さの所為なのだろうという確信の無い
理由付け、そしてツンのパーツではなくツン自体に女性を感じてしまった自分に対する
戸惑い、それらを自分の矜持とうまく共存させられるようにするのにかなりの時間を
費やしてしまい、その日の帰り道はブーンらしくない無難な会話や態度ばかりのまま、
ツンの家に着いてしまった。



78: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:55:45.04 ID:8N3abdHZ0
  
ξ゚听)ξ「なんかやけに大人しいわね。さっきの約束のせい?」
( ^ω^)「いや、……あぁ、うん、そうだお」
ξ゚听)ξ「ふーん……アンタのそれにも中身が入ってたのね」
(;^ω^)「し、失礼な! 僕は常に上も下も満タンがデフォルトの……」
ξ゚听)ξ「うわ、キモいけど今のアンタっぽいわ」
( ^ω^)「前から思ってたけどツンって耳年増だお」
ξ゚听)ξ「そりゃ毎日こんなのと会話してたら嫌でもこうなるわよ……。それにこれ位普通よ?」
(;^ω^)「ま、またまたぁ〜」
ξ゚听)ξ「て、言うかアンタみたいに回りくどくないわね。結構平気でエグイこと言ってると思う」
(;^ω^)「や、やめて! 女の子は純粋無垢で温室の花のように穢れを知らなくて――」
ξ゚听)ξ「うわぁ、そういう幻想ぶち壊してやりたいわ」
(;^ω^)「も、もう帰るお! じゃあツンまた明日!」

そうして慌ててその場から逃げるように駆け出したブーンにツンが後ろから叫んだ。

ξ゚听)ξ「少しは手ー出せ意気地なしー!」
(;^ω^)(出したら絶対手が無くなるお……)

やっぱりこんな猥雑な奴に特別な感情を覚えるわけは無い、とブーンは胸を撫で下ろして
家路についた。



79: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:56:37.32 ID:8N3abdHZ0
  
( ^ω^)「ただいまーだおー」
J('ー`)し「おかえりなさい、ご飯もうすぐできるからね」
( ^ω^)「何か手伝うことはあるかお?」
J('ー`)し「もう魚を焼くだけだから。のんびりしてなさい」
(*^ω^)「待ちきれないお」

ブーンがそう言って鞄を置きに部屋へ行こうとした時、ポケットに入れていた携帯が震えた。
メールだろうと考えて部屋に着いたら取り出そうと思っていたのだが、どうにも震えが止まらず
どうやら電話のようだった。気付いてすぐに取り出すと相手はあの電話嫌いのドクオだった。
よほど急な用事なのか、ブーンは一瞬最近の事柄から発展しそうな不幸を頭の中で
シミュレーションして電話に出た。

( ^ω^)「もしもし?」
('A`)「おぉ、やっと出たか。今時間いいか?」
( ^ω^)「これからご飯を食べるお。それにしてもドクオがかけてくるなんて、何かあったのかお?」
('A`)「あぁ……やっぱりアレは俺の勘違いじゃなかったんだ」
( ^ω^)「アレ?」
('A`)「とにかく飯を食い終わったら公園に来い。じゃあな」

一方的に約束を取り付け、ドクオは電話を切ってしまった。ブーンはしばらく『アレ』について
考えていたが、行けば分かることだ、と考えるのを後回しにして部屋に鞄を放り投げると、
すぐに居間へドタドタと早足で戻った。

( ^ω^)「ごちそうさまだお」
J('ー`)し「はい」
( ^ω^)「じゃあちょっと出かけてくるお」
J('ー`)し「え? こんな時間にどこに行くの?」
( ^ω^)「ちょっと友達に呼ばれたんだお。すぐに戻るから大丈夫だお」
J('ー`)し「そう、気をつけてね」



80: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:57:20.12 ID:8N3abdHZ0
  
 外はひっそりと静まり返り、街灯もただ地面を照らすばかりで人など一人も居ないのでは
ないかと思うほどの夜だった。ブーンはたまに夜空を見上げるなどしながら夜の冷たい
空気を胸いっぱいに吸い込み住宅街を歩く。肺に入った空気が少し焦げ臭いのは、誰かが
花火をしていたのだろう。ドクオと会うことになっている公園は家からはかなり近く、ものの
数分で着いた。その公園の真ん中にウロウロと落ち着かない様子で歩き回るドクオがすぐに見えた。

('A`)「遅いぞ。待ちくたびれたって」
( ^ω^)「なら座ってればいい話だお」
('A`)「まぁな。どうしても落ち着かないんだ」
( ^ω^)「ドクオが自分から部屋を出るなんて……」

そういえばつい最近似たようなことがあった気がする。
そう思い記憶を遡ると答えはすぐに見つかった。

( ^ω^)「……まさか、今朝の?」
('A`)「あぁ、やっぱりアレは俺の勘違いじゃなかったんだ」

勘違いも何もそれは今朝証明したばかりじゃないかと口を挟もうとしたが、ドクオがここまで
するのならもしや何かあるのかも知れないとブーンは口を噤んだ。



81: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:58:10.29 ID:8N3abdHZ0
  
('A`)「いいか、俺が目を瞑ったらビンタするなり頭を叩くなり何でもしてくれ」
(;^ω^)「……また今朝みたいになるのがオチだお」
('A`)「まぁ、やってみろって」

そう言ってドクオは目を瞑ったのだが、ブーンはドクオに怪我をされても困るので軽く埃を
払う程度にドクオの頬を叩いた。これでも顔面に食らう分には多少の痛みはあるはずなのだが、
ドクオはと言うと我慢しているのか何なのか全くのノーリアクションだった。

('A`)「あん? もう終わりか? つーか今の絶対力入れなかっただろ」
(;^ω^)「いや、だって力入れたらドクオが……」
('A`)「いいからやってみろっつーの」
(;^ω^)「……もうどうなっても知らないお」

このままではいつまでも帰れないと、ブーンは覚悟を決めてドクオの頭を思いっきり殴った。
返って来た衝撃で拳が痛いところを考えると、間違いなくドクオは相当なものを食らった筈だ。
しかし当のドクオと言えば、未だ目を瞑ったまま微動だにしない。もしかして、これが今朝
言っていた『無敵』なのだろうか。それならばと、ブーンはドクオの顔に近づき鼻に指を入れ
勢い良く鼻毛を抜いた。これで身動き一つとらずに居られる奴は居まい、とブーンはニヤニヤ
したがどういうわけかドクオは顔色一つ変えずにただ目を瞑っているばかりだった。



82: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 00:59:02.04 ID:8N3abdHZ0
  
('A`)「ん〜? もしかして鼻になんか詰めたのか?」
(;^ω^)「詰めてはいないけど……ドクオ、しばらく見ない間に随分我慢強くなって……」
('A`;)「違うっつうの」

そう言ってドクオはゆっくりと目を開けた。その顔は自信に満ち溢れている。

('A`)「な? 無敵だろ?」
(;^ω^)「確かに鼻毛抜いてノーリアクションは常人のできる芸当じゃないお」
('A`)「鼻毛なんて抜いてたのかよ……っと、あぶねぇ」
( ^ω^)「危ない?」
('A`)「いやな、あんまり意識すると痛みがくるんだ」
( ^ω^)「どういうことだお? と、言うか本当に痛くなかったのかお?」
('A`)「あぁ、なんか触ってるな、って程度だったな。仕組みは俺も見当が付かないんだが」
( ^ω^)「じゃあなんで眼を瞑ったんだお?」
('A`)「その方が簡単なんだよ。これは全部嘘だ、って思うのに」
(;^ω^)「……ますますわからんお」
('A`)「簡単に言うとな、俺が信じなかった痛みは何故か全部感じないんだよ」
( ^ω^)「じゃあもうドクオは一生痛みを感じずに生きられるってことかお」
('A`)「いや、例えば今ここでお前に殴られたら滅茶苦茶痛いと思う」
(;^ω^)「信じなきゃ痛くないんじゃないのかお」
('A`)「いや、信じざるを得ないだろ。見てるとさ」
(;^ω^)「……ドクオ、僕がちゃんといい病院を探してあげるから――」
('A`;)「また振り出しかよ……」



84: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:00:18.13 ID:8N3abdHZ0
  
ブーンにはツンなんかよりも余程ドクオの方が脳味噌を輪切りにする必要があるように思えた。
実際に見たとはいえ確証のあるものではなかったし、偏った食事に不規則な生活を送っている
ドクオなら、どこか神経がやられてしまってもおかしくはないという思いがあり、ドクオの言うこと
すべてを鵜呑みにすることは出来なかった。そこでタイミングよく何かのサイレンが聞こえてきた
ものだから、ブーンは反射的にふざけたことを言った。

( ^ω^)「ほら、早速お迎えが来たお」
('A`)「はえーっつーの」

そんな掛け合いをして二人が笑いあったのをシメの合図にドクオは『もう帰るか』と言い
それに頷いたブーンを見て、後ろを向いて歩き始めた。
ブーンはそんなドクオの後ろにこっそりと近づき、ばれないように髪の毛を適当に親指と
人差し指で掴むと、一気にそれを引き抜いた。髪の毛を引き抜かれたときの痛みは
ブーンもよく理解している。指の間からはみ出ている髪の毛を見る限り十本以上
抜けたに違いない。ドクオが何か文句を言ってきた時に、本当に無敵と言うならば
これくらいの不意打ちは何ともないだろう、と言ってやろうと考えイタズラ半分でやってみたが、
果たしてリアクションはどんなものになるのかとブーンは瞬間唾を飲んだ。

('A`;)「おい、引っ張るなって。首痛めるっての」
(;^ω^)「ド、ドクオ……何ともないのかお?」
('A`)「何がだよ。用がないなら帰るぞ」

とりあえずドクオが我慢強くなったわけでは無いと言うことは理解できた。
ドクオは本当に何か痛覚だけが麻痺する病気にでもなってしまったのではないかと考えると、
ブーンはそれ以上ドクオに喋りかけることが出来なかった。
ただ遠ざかるその後頭部を眺めながら、一足早い満月が出ているなぁ、と呟いて小さく笑った。



85: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:00:58.67 ID:8N3abdHZ0
  
 家に帰ると、ブーンはすぐに部屋に入りPCの電源を点けた。特に意味のある行動ではなく、
習慣的なものだ。部屋に入り電気とPCの電源を点けて一息ついた後に、これから何をするか
考えるのだ。ガリガリと雑音を撒き散らしながらPCが立ち上がっていく中、ブーンはベッドに
体を預け土日の予定なんかを考えていた。元々インドア派なので誰かを誘って何処かに出かける
ということもなく、いつも家でダラダラとしている間に月曜が来てしまっているというのがお決まりの
パターンなのだが、最初から意味の無い土日なんて過ごしたくは無い。

( ^ω^)「ふう……とりあえず宿題は明日やるとして……」

そう考えている内にブーンはそのままゆっくりと眠りに落ちてしまった。



86: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:02:04.22 ID:8N3abdHZ0
  
 ブーンがやけに暑い部屋で目を覚ましたのは既に夜明けのことだった。一瞬タイムスリップ
したような感覚に囚われたブーンだが、ファンを回し続けるPCに気付くと、自分が寝てしまって
いたんだなと記憶を整理した。すぐに電源を落とし気持ちの悪い口腔を何とかするために
洗面所に行って歯を磨いた。体が重く感じられどうにも寝た気がしなく、ブーンはしばらく
居間のソファーで横になりながらボーっと時計の針が進むのを見ていた。

 時計の針が六時を指したころ、ポケットに入れっぱなしの携帯に気付いて取り出し、画面を
確認すると夜の11時半に誰かからメールが来ているようだった。
どうやら差出人はツンのようだったが、久しぶりに届いたツンからのそのメールにブーンは
どこか違和感を覚えた。中身を確認すると内容は酷く簡潔で、『今暇?』というたった三文字に、
申し訳程度に添えてある微妙な表情の絵文字のみ。夜の11時半に暇も何も無いのでは
と思いながらもブーンは返事を打ち始めた。

 『ごめん、寝てたお。ツンからメールなんて珍しいけど何かあったのかお?』

無難な返事だな、と思いながらブーンは送信ボタンを押した。そこで一つ大きく伸びをして、
目を覚ます為にとシャワーを浴びに行った。

 風呂場でマジマジと自分の顔を見つめると、ブーンは髭が伸びていることに気が付いた。
元々それほど伸びるスピードが速くなく、週に1、2度剃れば十分だったため、あまり気にして
見ることが無かった。この長さならば剃ってしまおうと、石鹸を泡立てて髭の上に乗せると
鼻の下を伸ばして剃刀を宛てがい、優しく滑らせた。



88: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:03:05.67 ID:8N3abdHZ0
  
(;^ω^)「うぃっ! いぁっ!」

予想だにしない痛みに奇天烈な声を出したブーンは慌てて剃刀を置いて鏡を凝視した。
一瞬肌が切れたかとも思ったのだが、手に伝わってきた感触は切れたというよりは剃刀が
うまく切れず髭に引っかかった感じだった。しばらく見ていたが血が出てくる様子も無く、
どうやら予想通り髭が引っ張られて痛かっただけのようだった。剃刀の切れ味が落ちたのかと
手に持っていたのを捨て新しいのを出そうと風呂場のドアを開けて急に昨日のドクオとの
やりとりや、これまでの自分自身の不可解な出来事が頭を過ぎった。

(;^ω^)「まさか……これも……」

今までことごとく手にした刃物の切れ味が悪かった記憶に、ブーンは小さく身震いをした。
これは最早偶然では無く、今自分の体には何らかの異変が起きている。今まで髭が
剃れなかった事なんて無い。それでもブーンは未だ何かの勘違いなのだろうと信じ、慌てて
新しい剃刀を出して髭を剃ってみる。しかしながら結果は同じだった。
その瞬間目に見て分かる程に鳥肌が立った。
それはまるで何か重病を医者に宣告されたような気分だった。
一体自分の身に何が起きているというのだろうか。自分の体がどうにかなるならまだしも
自分が触れている物がどうにかなる病気なんておかしい。頭がおかしくなったのだろうかと
ブーンは一度今までの記憶を検証し始める。しかしそれでも自分がおかしくなってしまった
ような兆候は見つからない。けれども自分がおかしくなってしまったら、そもそもその時は
自覚など出来るのだろうか。ブーンは段々と自分の不確かさに寒気と目眩を覚え始めた。



89: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:04:58.19 ID:8N3abdHZ0
  
 シャワーもそこそこに淋しい気持ちを何とかしようと急いで体を拭き着替えると、携帯を
手に取りドクオに電話を掛けた。コール音が鳴っている間、ブーンはなんと説明しようか
考えていた。昨日のドクオはこんな気分だったのだろうかと今更ながら少し後悔もしていた。
どうして自分は今まで気楽に考えて放って置いたのだろうか。自分の脳天気さにも段々と
腹が立ってくる。けれどもいくらイライラを募らせてもドクオが出ることも無ければ、不安が
消えることも無かった。

(;^ω^)「くそっ、やっぱドクオは起きてないお」

ブーンは諦めて電話を切り、すぐに今度はショボンに電話を掛けた。しかしショボンも
一向に出る気配が無い。早々とショボンを諦め、次はジョルジュに掛けようと電話帳の索引から
ジョルジュを探していると、唐突に携帯が震えだした。上の方に手紙のアイコンが表示されたので、
どうやらメールが届いたらしい。ブーンは一旦作業を中断し、メールを開いた。
差出人はツンだった。そう言えばさっきメールを返していたと気付いて中身を読み始める。

 『返事遅すぎ! もういい!』

前半には怒りマークを、後半にはさらに追加して3つも寄越してくれたツンにブーンは腹が立って
返事を送らずに携帯を投げ捨てた。何を今更そんなに焦っているのか、自分自身の感情の
不安定さに説明が付かずブーンは苛立っていた。今まで散々不可解な現象には立ち会って
きたのに、それが一つ増えたからといって何なのだろうかと。
一度ため息を吐いて、投げ捨てた携帯を拾うと自分の部屋へと戻った。



91: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:06:21.76 ID:8N3abdHZ0
  
 イライラは次のイライラを生み出す。乱雑な机の上に携帯を放ると、積み重なっていたプリント
と一緒に携帯が床に落ちてしまった。

(#^ω^)「…………」

怒りのままに携帯を拾い上げベッドに渾身の力で叩きつけると、続いて散らばったプリントを
乱暴に掴み縦に裂くとそれらを丸めて床にもう一度投げつけた。が、投げつけると同時に
それが何のプリントだったのか心配になって、ブーンは結局拾い集めて破片を広げ始めた。
惨めな気持ちで口の中がしょっぱくなった。

(;^ω^)「もし大事なプリントだったら……お?」

広げてみると、どうやらついこの間兄者から貰ったプリントのようだった。しわくちゃになったそれらを
ベッドの上に広げ初めてブーンは、はたと気付いた。自分の不安の出所がここにあったのだと。
急に心臓の鼓動が早くなり、ブーンは俄に気分が昂揚してくるのを感じていた。不安のドキドキ
ではなく期待にドキドキしている自分が居たのだ。歪んでいるなぁと思いながらプリントに目を
通していく。
一度読んでいる所為か、ざっと読んだだけで理解が出来た。そしてブーンは確信した。
兄者が正しかったのだと。あの時は怯えてしまったが今は違う。自分は皆にはない物を
持っているのだと言う優越感がブーンを不安から解放した。それに、これからさらに仲間が
増えたとしてもツンやドクオ達なら怖くは無いと、そうも思った。

(*^ω^)「なんだかそうなってくると、逆にこれからが楽しみになってきたお」

気分はまるで新しいおもちゃを買ってもらった子供のようだった。一体皆はどんなおもちゃを
買ってもらうのだろうか。僕のおもちゃはどう遊べば楽しいのだろうかと考えは尽きなかった。

( ^ω^)「確かツンは起きてたはずだお。……皆に知らせるんだお」

( ^ω^)「僕たちは、新しい力を手に入れ始めているんだお……」



93: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:07:23.90 ID:8N3abdHZ0
  
ξ゚听)ξ「で、わざわざ人をこんな朝っぱらから呼び出しといてそれだけ?」
(;^ω^)「そ、それだけって……」

あの後ブーンはすぐにツンへ電話をして、無理矢理公園に呼び出した。興奮のままにこれまでと
これからの事の運びを自らの推測を交えてツンに話したのだが、リアクションといえばこの通りである。

ξ#゚听)ξ「あー! もう、バカみたい! 少しは心配してくれてると思ってたのに……」
(;^ω^)「いや、ツン、だから、心配とかそういうのはもうどうでもよくなって……」
ξ#゚听)ξ「どうでもいいってなによ! 他人事だと思って適当なこと言わないでよ!」
(;^ω^)「あ……う……」

ブーンはツンの怒りがもっともであることも勿論分かっていたが、それでも今この状況に
少しも心を揺らされないツンにブーンは歯がゆさを感じていた。

(;^ω^)「げ、現にドクオも超能力みたいなものを身につけたんだお」
ξ#゚听)ξ「例えそうだとしても、それじゃあ私のこれが病気じゃないって確証はどこにあるのよ」
(;^ω^)「それは……」

痛いところを突かれてブーンは二の句が継げなくなった。今、刻一刻と自分の話の説得力が
無くなっていくのを感じるのに、焦れば焦るほど言葉が出ない。

ξ゚听)ξ「それだけなら帰るけど、もういい?」
(;^ω^)「あ……その、ツン。えーと、昨日のメールなんだったんだお」
ξ゚听)ξ「別に。じゃあ帰るわ」

苦し紛れに話題を変えてみたが全く効果が無かった。背中を向け歩き出すツンに手を伸ばしたが
その手は宙を掴むばかりでツンを引き止めることは出来なかった。



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