( ^ω^)ブーンの力は役立たずのようです。

94: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:08:24.38 ID:8N3abdHZ0
  
( ^ω^)「……男の夢を理解できん奴め」

捨て言葉を吐き出して自己を正当化しつつブーンはドクオにメールを打った。

『起きたら連絡欲しいお。大発見したお』

送信ボタンを押すとパタンと携帯を閉じて、ブーンは複雑な気持ちを抱いたまま携帯を見つめていた。
と、いきなり携帯が震えだした。何かと思い開くとドクオからメールが届いていた。

      『まだ寝てないぞ。どうした?』
(;^ω^)「そんなに電話が嫌なのかお……」

嫌いなのは知っていたが、まさか無視するまでとは思っていなかった。そう言えばこれまで
電話をかけた時は大体寝ていたと言っていた気がするが、それはすべて都合の良い言い訳の
為の嘘だったのでは、とブーンは今更になって考え直した。

(;^ω^)「たく……昨日の晩は自分から掛けてきたくせに見た目と言い中身と言い、我利我利とは
      まさにドクオの事だお」
      『昨日のことについて色々話があるお』

ドクオなら食いつきが良いだろうと敢えて回りくどく返事をした。予想通り送ってほんの数秒で
返事がきた。しかし、内容は予想外だった。

      『昨日といえば知ってるか? ショボンの家火事だってよ』
( ^ω^)「は?」



95: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:09:23.97 ID:8N3abdHZ0
  
ブーンの口から思わず頓狂な声が漏れた。何をふざけたことを言っているのかと思って、
ブーンは直ぐに返事を送る。

      『昨日って……ドクオ、冗談にしては不謹慎だお』
      『こんなクソつまんねぇジョーク言うかよ。母さんが言ってたし多分マジだな』

メールを見るなり直ぐにブーンはショボンの家へと走った。信じ難いことではあったが、心の
どこかでは既に焼けたショボンの家を想像している自分が居て少し嫌気が差した。

 ショボンの家は、真っ黒になっていた。キャンプファイヤーの後の木で組んだやぐらが
確かこんな感じだった、とブーンは思い出した。鼻を突くような木の焦げた臭いと、微かに
空気中に飛散する塵でブーンは少し涙ぐむ。
ドラマで見たような黄色いビニールテープが張り巡らされ、そこだけが日常から浮いていた。
ブーンは慌ててドクオにメールを送る。

      『真っ黒だお……』
      『そうか。とりあえず俺ん家来いよ。そろそろ8時回るし寝そうだ』

一瞬携帯のカメラでドクオに写真を取っていこうかと思ったが、その姿を想像してあまりの
愚かさに気付き自己嫌悪に陥った。浮き足立っている自分が浅はかに思えてブーンは
ショボンに申し訳なくなる。今朝はツンも怒らせてしまったし、今日の自分は少し他人に
対する気遣いが出来ていないのかも知れないとブーンは沈んでいく。ドクオの家に行く間
ブーンは態度を改善しようと今朝のツンとの会話についてずっと脳内反省会を開いて、
結局さらに沈んでいった。



96: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:10:23.99 ID:8N3abdHZ0
  
('A`)「で、話ってなんだ?」
( ^ω^)「え? あ、あぁ……」

 てっきりショボンの家についての話が出ると思っていたので、ブーンは軽く困惑した。それでも
この話題を打ち切る気もしなかったのでいそいそとポケットからプリントを取り出しドクオに渡した。

( ^ω^)「昨日の夜ドクオが見せてくれたアレ、きっとこれなんだと思うお」
('A`)「……なんだこれ?」
( ^ω^)「少し前にウチの学校で起こったことらしいお」
('A`)「へぇ……」

マジマジとプリントを眺めるドクオ。その顔をじっと見つめながらブーンは次の言葉を待つ。
ドクオにも否定されたならば自分は一体どうしたら良いのかと、これからのくだらない心配
なんかをしながら。

('A`)「……だとしたらすげぇけどよ、でも本当にありえるのか? こんなこと」

揺れているような返答にブーンは微かな期待を見て、すかさずフォローを入れる。

( ^ω^)「自分であんなに見せびらかして何を言ってるんだお。自信持てお」
('A`)「いや、だってよ、俺のも実際よくよく考えてみればそういう病気なのかもしれないぜ?」
( ^ω^)「ドクオまでツンと同じことを言うのかお……皆頭が固すぎるお」
('A`)「ツン? ツンになんか言われたのか?」
( ^ω^)「こないだのツンの騒動はこれが原因だって言ったら怒られたんだお」
('A`)「知らねぇな……何があったんだ?」
( ^ω^)「? ……あ、そういえばドクオは寝てたかも知れないお」



97: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:11:16.53 ID:8N3abdHZ0
  
ブーンは掻い摘んでツンの身に起こったことを話し始めた。手からカッターが飛び出たこと、
何故か飛び出なかったこと、言いながらブーンは自分でも少し混乱してきて最後は誤魔化して
話を終えた。

('A`)「何だかよくわかんねぇな」
(;^ω^)「確かに」
('A`)「飛び出る時と飛び出ない時があるってことか?」
( ^ω^)「そう言えば最初はカッターがひとりでに動いてたのを見たお」
('A`)「はぁ? わけわかんねぇな」

そのドクオの言葉でまた2人は黙ってしまう。

('A`)「……でもよ、だからって別に俺たちがなんか超能力に目覚めたってことは言えなくないか?」
( ^ω^)「……実は、僕にもおかしなことが起きてるんだお」
('A`)「へぇ、どんな?」
( ^ω^)「ドクオ、ちょっとなんか切れるもの貸して欲しいお」
('A`)「いや、めんどくせぇ」
(;^ω^)「いいから探してくれお」

ガチャガチャと汚い部屋を引っ掻き回して、ドクオはどこからか片手に納まるくらいの小振りの
ナイフを取り出してきた。

('A`)「これなんかのおまけで付いてきたんだけど、中途半端な大きさで全然使えねぇの」
( ^ω^)「十分だお」

そう言ってブーンはドクオが地面に置いたプリントを手に取ると、思いっきりそのプリントを
切りつけた。プリントはやはりブーンの予想通り全く切れずに依然その状態を保っていた。



98: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:12:23.81 ID:8N3abdHZ0
  
('A`)「……あ〜悪ぃな。もっと別な切れるの探してくるわ」
(;^ω^)「い、いやだから切れないのが変なんだってことだお」
('A`)「いや、おまけだから仕方ないだろ」
(;^ω^)「だから!」

ブーンはプリントとナイフを床に置くと、ドクオに目で合図をした。乗り気じゃないような顔を
しながらもドクオはナイフを手に取り、プリントを切った。

('A`)「あぁ、切れるな。お前ヘタクソ。シンプル2000シリーズ、THE・ヘタクソ」
(#^ω^)「……貸せお」

ブーンはこれ見よがしに何度もナイフを紙の上で滑らせる。そして、それでも全く切れる
気配の無い紙を持ち上げるとドクオの顔面まで突き出した。

('A`;)「わかったわかった。でもよ、なんつーか……地味だな」
(;^ω^)「それには反論できないお」
('A`)「物を消したりできるってんなら間違いなくその場で超能力だって騒ぐけどよ……こりゃあ……」

そしてまた沈黙。どうやらドクオはドクオなりに言葉を探しているようであった。



99: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:13:21.69 ID:8N3abdHZ0
  
('A`)「……そう、ワクワクしないな」
(;^ω^)「で、でも例えば――」

なんとか対抗するためにブーンは必死に考えてみるが、そう言われると全く使い道が無いことに
気付く。そしてそれと同時にさっきまでのワクワク感もどこかへ消えてしまう。

( ´ω`)「……なんかどうでもよくなってきたお」
('A`)「あぁ、きっと俺たちにはわからない何かがあるんだろうし。こんな紙切れ一枚で早とちり
    してたら科学者激怒するぜ」
( ^ω^)「言えてるお。……じゃあそろそろ僕は」

別れを言いかけたブーンの言葉を遮るように携帯の着信音が鳴った。ブーンは常にマナー
モードにしているので、鳴っているのはドクオの携帯だ。何のメロディは何か分からなかったが
どうやらメールが届いたようだ。

( ^ω^)「じゃあドクオ、僕はもう」
('A`)「待った」

今度はドクオの言葉が別れの言葉を妨害した。

('A`)「……ブーン」
(;^ω^)「ったく……何だお」
('A`)「面白くなりそうだぞ」

そう言ったドクオの視線は、ブーンを通り越してどこか遠くを見ていた。



100: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:14:50.36 ID:8N3abdHZ0
  
 あれからしばらくの間ドクオはPCと睨めっこしながら何かを起動したり設定をいじったりしている
らしかった。暇を持て余すブーンは適当に転がっている漫画なんかを読んで退屈を凌いでいた。

(;^ω^)「ううっ……キンキンに冷えてやがる……」
('A`)「スマンな、温いコーラしか無くて」
( ^ω^)「ドクオ、そう思うならさっさとするお」
('A`)「ちょっと待ってろって……よし、見てみろ」

ドクオが横にずれ、ブーンの目にモニターが飛び込んできた。どうやらムービーが再生
されているようで、そこには誰かの部屋が映っていた。どこかで見たことがあるとブーンが
考えていると画面の右端に突然兄者が現れた。

( ^ω^)「あ、これ兄者の部屋だお」
( ´_ゝ`)『では行くぞ』

画面の中で横向きの兄者が右手を開いてゆっくりと前に差し出す。丁度掌がこちらに見えるように
している様はまるで誰かに握手を求めているようだった。そして唐突に、それこそ映画のコマが
ごっそり抜け落ちたかのように、兄者は大きな剣のような物を握っていた。



101: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:15:43.38 ID:8N3abdHZ0
  
( ^ω^)「……お?」
( ´_ゝ`)『うむ、こういうわけだ』
      『さすがだな、兄者』

どこかから聞こえてきた声はおそらく口振りからして弟者だろう。

('A`)「オーケー、なるほど。確かにそいつは面白いな」
( ´_ゝ`)『うむ。未だに夢ではないかと思っているのだが、三度寝した結果がこれだ』

会話をしているということは、ムービーじゃなく今実際に回線が繋がっていると言うことになる。
ブーンはそんな設備が整っていたのかと驚くと共に、ドクオと兄者なら当然かと納得もした。

(;^ω^)「えと……どういうことだお?」
('A`)「ん? お前の勝ちって事だ」
( ´_ゝ`)『我々の身に何か科学では説明できないことが起こっているということだな』
(;^ω^)「ア、アウアウア……」

さっきまではコレを望んでいた気がするのだが、何故かブーンはすんなりとそれを受け入れ
られない。自分を遥かに上回るその力に、心の奥で暗い物が渦巻いていることを、まだ
気付いていなかったのだ。

( ´_ゝ`)『他に心当たりは無いのか?』
('A`)「ん〜……どうよ?」
( ^ω^)「お? ……ないお」
( ´_ゝ`)『そうか……と、言うことは今のところ俺とドクオとツンに何かしらの力が――』
('A`)「ん? ブーンを忘れてるぞ」
( ´_ゝ`)『内藤? 内藤も何かあったのか?』
( ^ω^)「あ〜……僕のは、あまり大したことは無いんだけど――」



103: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:16:34.76 ID:8N3abdHZ0
  
ブーンは少し照れくさそうに何度やったかわからない紙をナイフで切ると言う行為を兄者に見せた。

( ´_ゝ`)『ふむ……なるほど。一度ならず何度もとなると、どうやらそれも関係があるようだな』
('A`)「あのさ」
( ´_ゝ`)『どうした?』
('A`)「俺そろそろ眠いから寝て良いか?」
( ´_ゝ`)『OK、把握した。切断するぞ』
('A`)「わるいな」

('A`)「つーわけだ、じゃあなブーン」
(;^ω^)「じゃ、じゃあなって僕はこれからどうしたら……」
('A`)「どうもこうも家帰ってゲームでもしてりゃいいじゃん。俺は寝るぜ」

そう言ってもぞもぞと布団に潜ると、ドクオはあっという間に寝息を立て始める。そんなドクオを
しばらく見た後に、ブーンはこれからのことを考えつつ静かに部屋を後にした。

( ^ω^)「なーんかつまんないお」

舞い上がっているのは自分だけのような気がしてブーンは少しの戸惑いを感じていた。
ひとりだけフワフワと浮いているような感覚が纏わりついて離れない。

( ^ω^)「僕にも剣が出せれば……」

そう言って前に突き出した右手にあったのは、使い物にならない小さなナイフだけだった。



105: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:17:45.18 ID:8N3abdHZ0
  
 結局あれから何かが進むことも無く、ブーンはいつも通りの休日を過ごした。何度か兄者に
連絡を取ってみたものの、原因究明中と返ってくるばかりで話が進まない。ツンは病院に行って
何も異常が無いことが分かったし、ショボンもどうやら家族丸ごと含めて大した怪我はなかったと
連絡があった。それを考えればこの土日は悪くは無かったのだろうか。ブーンはそう思った。

ξ゚听)ξ「で、ショボンは学校には来れるの?」
( ^ω^)「問題ないらしいお。色々あったらしいけど、親に行った方がいいって言われたらしいお」
ξ゚听)ξ「でもきっとショックよね……」
( ´ω`)「お……」

いつもの登校が少し暗くなってしまったと、ブーンは慌てて空気を変えようとする。

( ^ω^)「で、でも無事でよかったお。ツンもなんでもなかったみたいだし」
ξ゚听)ξ「そうね。……よかった」

対話の相手を話の中心にすればとりあえずは間違いない。そんな考えでブーンはあれこれと
ツンの話を引き出しながら学校までの道のりを歩いた。

 ツンと一旦別れ教室に着くと、前の席でしぃとジョルジュがなにやら話しているのが目に入った。

( ^ω^)「おいすー」
(*゚ー゚)「あ、おはよー内藤君」
( ゚∀゚)「おいすー」
(*゚ー゚)「あれ? ツンは?」
( ^ω^)「はて、何のことだか。あ、そうだしぃちょっと……」
(*゚ー゚)「ん? なに?」
( ゚∀゚)「あ、お〜い兄者」

ブーンがしいと話し始めると、ジョルジュはその場を離れ兄者のところへと向かった。
それを横目で見つつブーンはポケットから小さいケースを取り出す。



106: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:18:42.73 ID:8N3abdHZ0
  
( ^ω^)「これ、この前屋上で拾ったんだけどしぃの物かお?」

取り出したのは先週拾ったピルケース。確証は無かったがしぃの物だろうとブーンは思っていた。
差し出されたケースを一度見て視線をブーンの斜め後ろ辺りにキョロキョロと泳がせると、しぃは
にっこりと笑った。

(*゚ー゚)「あ、うん、そうだと思う。わざわざありがとう、内藤君」
( ^ω^)「いえいえ、紳士ゆえ」
(*゚ー゚)「はいはい、ワロスワロス」

わざと相手にしない風をオーバーに装ってピルケースを受け取ると、しぃは自分の席へと座った。
ブーンも何か気の利いた返事をしようかと思っているとき、教室の空気が変わった。
背中に感じる何かを見るために振り向くと、教室の入り口にショボンが居た。
しかし誰も挨拶をする様子が無い。
皆が皆の出方を窺っている感じで、視線があちらこちらに転がっていた。
そして、ブーン自身も咄嗟に視線を外してしまっていた。

(´・ω・`)「……」

無言のまま自分の席へと歩を進めるショボン。白々しく会話を続ける他の生徒や、何気なく
教室から出て行く生徒、机に突っ伏して寝たフリをする生徒。ブーンはこの雰囲気がたまらなく
嫌だった。



107: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:19:50.94 ID:8N3abdHZ0
  
( ^ω^)「ショボン」
(´・ω・`)「?」

返事も無くゆっくりとブーンの方を振り返るショボン。

(´゚ω゚`)「べる〜ん!」

(´・ω・`)「……」
(´゚ω゚`)「……」

(´・ω・`)「…………」
(´゚ω゚`)「…………」

(´・ω・`)「………………」
(´゚ω゚`;)「………………」

(´・ω・`)「……プッ、フフ。ブーン、すごい顔だよ」
(´゚ω゚`)「ハッハー! ウチのワイフはもっと酷い顔してるぜ!」
(´・ω・`)「はいはい、欧米か」

空白の時間があまりに長すぎて倒れる寸前だったが、ブーンはとにかくショボンを笑わせることに
成功した。どうやらそれが功を奏したらしく、次々に皆がショボンに挨拶をし始めた。
それを見ながらブーンは少し誇らしい気分になるのだった。



108: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:20:49.93 ID:8N3abdHZ0
  
(´・ω・`)「ねぇブーン、宿題のここだけど」
( ^ω^)「記憶にございません」
ξ゚听)ξ「あ〜それはね……」
( ^ω^)「ツ〜ン、僕のもやってくれお」
ξ゚听)ξ「ここがこうなって……で、こうして……」
(´・ω・`)「あ、なるほど」
( ^ω^)「……最近スルーの腕上げてますね」

(,,゚Д゚)「おーし、お前らHR始めるぞー」

いつも通り代わり映えの無いHRがダラダラと続いていく中、ブーンはこれからまた一週間が
始まるという何とも言えない気だるさに包まれながら、ぼんやりと教室の壁を眺めていた。

( ´_ゝ`)「先生、ちょっといいですか」
(,,゚Д゚)「ん? どうした?」
( ´_ゝ`)「今日は確か六時間目が空いてましたよね?」
(,,゚Д゚)「あぁ、そうだな」
( ´_ゝ`)「そこでこれまでの行事の写真を返却したいので、時間をくれませんか?」
(,,゚Д゚)「? まぁ、いいが……」

承諾が取れ、兄者が満足そうに背もたれに体を預けるとHRはそのまま静かに終わった。



109: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:21:46.13 ID:8N3abdHZ0
  
 今日も今日とてつまらない授業が流れていく中、ブーンはいつものようにどこでもなく宙を
ただぼんやりと眺めながら時間を過ごしていた。それでも頭の中は自分のこれからなんかを
色々と繰り返し思考している。けれどもその大半は大した意味も持たず、数秒でどこかへ
消え去ってしまう。
と、ポケットの携帯が急に震えだしたのを感じてブーンは慌てて取り出し、ボタンを押した。
授業中にメールなんて滅多に来ないので油断していたが、どうやら何事も無く授業は
進んでいるようだった。
開いてみると、差出人はしぃだった。

『内藤君は欲しい物ってある?』

何を態々授業中に送ってきているのだろうかとブーンは首を傾げる。それでも暇潰しには
いいだろうとブーンは返事を打ち始めた。

     『あなた以外に欲しい物などありませんよ、セニョリータ』
     『またそんなこと言って笑 じゃあさ、要らない物ってある?』
( ^ω^)(要らない物……?)
     『君を独り占めしたいと思ってしまうこの心苦しい感情かな』
     『はいはい笑 内藤君はいいねぇ、私も内藤君になりたいよ↓』
( ^ω^)(しぃにしては珍しく自己主張が出てるお……ここはマジレス……)
     『何かあったのかお? しぃがメールなんて珍しいお』

ここで少しメールが返ってくるのが遅れた。本当に何かあったのではとブーンは心配になる。



110: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:22:45.30 ID:8N3abdHZ0
  
     『ううん、なんでもないよ。きっと内藤君になれたら楽しいと思って』
     『僕になっても毎日退屈なだけだお。代われるものなら代わりたいお』

ブーンは心からそう思い、送った。こんな似非楽天家の人生なんて楽しいはずが無いと。

     『そっか、内藤君も退屈なんだね。ボクと一緒だね。ちょっと安心しちゃった』
     『一緒だお。毎日が楽しくなればいいってどれだけ思ったことか分からないお』
     『うんうん笑 わかるわかる。じゃあ内藤君は明日世界が変わっちゃうとしたらどうする?』
( ^ω^)(はは、すごい質問だお)
     『変わるってどんな感じに?』
     『今までとは逆の楽しい世界』
     『それは諸手を挙げて大歓迎だお』
     『そっか。そうだよね』

そうしてメールは終わった。ブーンにはしぃが何をしたかったのかがよく理解できなかったが、
きっと授業があまりに暇だから気まぐれを起したのだろうと考え、携帯を仕舞って寝ることにした。



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