( ^ω^)ブーンの力は役立たずのようです。

111: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:23:55.11 ID:8N3abdHZ0
  
 ブーンが起きると既に昼休みになっていた。自分の鈍さに軽いショックを受けつつも、
弁当を持っていつもの放浪の旅に出かける。そしてやはり行き着く先は図書室だった。
と、ドアに手を掛ける寸前で、図書室のドアがひとりでに開いた。

( ´_ゝ`)「ん、内藤か」
( ^ω^)「お? 兄者も図書室でお昼かお?」
( ´_ゝ`)「いや、俺はもう帰るところだ」
( ^ω^)「そうかお」

そう言って図書室を後にする兄者を見送って、ブーンは図書室に入った。

( ^ω^)「ぱじゃまで、お・じゃ・まー」
川 ゚ -゚)「……」
( ^ω^)「クー?」
川 ゚ -゚)「ん? あぁ、内藤か」

本も読まずにボーっとしているなんてクーらしくないと思いながら、ブーンは向かいに座り
早々と弁当を広げ始める。

( ^ω^)「考え事かお?」
川 ゚ -゚)「まぁな」
( ^ω^)「そんな時は甘い物食べるといいお」
川 ゚ -゚)「あぁ、そうだな」
( ^ω^)「……?」

ブーンにはまるですべてが空返事に聞こえて、まるで会話をしている気にならなかった。



112: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:24:37.86 ID:8N3abdHZ0
  
( ^ω^)「そう言えば行事の写真が返ってくるって言ってたお」
川 ゚ -゚)「ああ」
( ^ω^)「どんな写真か楽しみになるお」
川 ゚ -゚)「そうか……私はそうでもないな」
( ^ω^)「そうかお?」
川 ゚ -゚)「どうせ私は写ってないだろうしな」
(;^ω^)「お……そう言えばクーは写真嫌いだったかお?」
川 ゚ -゚)「そんなところだ」

ブーンは群れないクーが写真に写ることはそうそう無いと言うことをすっかり忘れていた。
うっかり傷を抉ってしまったような後悔の念で自然と口が動かなくなった。
そんな戸惑うブーンを気にする風も無くクーが口を開いた。

川 ゚ -゚)「なあ、内藤」
( ^ω^)「お?」
川 ゚ -゚)「……例えば、そう、宝石好きな女の子が居たとする」
( ^ω^)「お」
川 ゚ -゚)「その娘は毎日宝石屋のショーウインドウを眺めながらそれを身につける夢を見るんだ。
     決して自分のお金じゃ買えないと知りつつそれでも毎日眺め続けるんだ」
( ^ω^)「……」



114: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:25:54.81 ID:8N3abdHZ0
  
川 ゚ -゚)「でも、いい加減手に入らないものを眺め続けることに苛立ちを感じ始める。宝石を
     着けている人たちに嫉妬し始めるんだ。そしてある日通りすがりの魔法使いに、こう
     言われるんだ。『私はあなたに宝石を与えることは出来ませんが、それを身につけて
     いる人たちを消すことが出来ます。ただし、その後あなたが宝石を手に入れることは
     なくなります』と。女の子はどうすると思う?」
( ^ω^)「でも、女の子は宝石が好きだから……」
川 ゚ -゚)「頼まない? 頼まなくても自分で宝石なんて手に入れる日は来ないと知りつつも?」
( ^ω^)「なんで手に入らないんだお?」
川 ゚ -゚)「恐らく手に入れるための努力をしないんだ」
( ^ω^)「好きなのに?」
川 ゚ -゚)「……既に歪んでしまっているのかも知れない。手に入らないから嫌いだと合理化して
     それを諦めているんだ」
( ^ω^)「それじゃあもう……答えは決まっているようなもんだお」
川 ゚ -゚)「そう……だよな」

クーにしてはメルヘンチックな事を聞く、とブーンは変に感心してしまった。そして所々生々しい
のもまたクーらしいと思った。ブルーマンデーの所為だな、と食べ終えた弁当のフタをして
小さくあくびをした。

川 ゚ -゚)「でも……」
( ^ω^)「お?」
川 ゚ -゚)「……いや、なんでもない。内藤、握手をしようか」
(;^ω^)「握手って、握手かお?」
川 ゚ -゚)「あぁ、そうだ」
(;^ω^)「なんか今日のクー変だお」
川 ゚ -゚)「私もそう思う」

そう言ってクーが差し出した手を、ブーンはゆっくりと握った。少し冷たいクーの手を握って、
ブーンは少しだけ緊張した。そう言えばクーに触れたのは初めてだったな、と。



116: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:27:23.02 ID:8N3abdHZ0
  
 五時間目の授業は、気絶しているドクオと共にやってきた。

('、`*川「はい、授業始めるわよ〜」
('∀`)「……」
(;^ω^)「先生! せめて恍惚の表情を浮かべて床に寝転んでるドクオを何とかしてあげてください」
('、`*川「いいのよ、ただの寝坊だから」
(;^ω^)(南無……)

恐らく昼休みの間に拉致されてきたのだろう。それにしても実の弟を気絶させたまま引き摺って
くるなんて、姉弟とは言えやりすぎではないかと言う声も上がらないことはない。

(´・ω・`)「面白いからいいんだけどね」
( ^ω^)「ですよねー」
ξ;゚听)ξ「あんたらって結構黒いわよね」

結局授業の間ドクオが目を覚ますことは一度もなかったし、何度も踏まれてヨレヨレになっていく様
ばかりが気になって授業どころではなかった。

('、`*川「あ、しぃ。ちょっと準備室に来てくれる?」
(*゚ー゚)「え〜! また〜?」
('、`*川「いいじゃない。お茶菓子くらい出すわよ」
(*゚ー゚)「行く行く!」

そしてやはり2人はドクオを踏んで教室を出て行った。
それとほぼ同時にチャイムが鳴り教室はどっと騒がしくなる。



117: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:28:21.04 ID:8N3abdHZ0
  
ξ;゚听)ξ「あれだけ踏まれて起きないって……死んでるんじゃないの?」
( ^ω^)「南無ちんちん」
ξ゚听)ξ「とりあえず可愛そうだから席に運んでおきましょ」
( ::)ω^)「……あい」
( ゚∀゚)「しかし尻に敷かれっぱなしだな、ブーンは」
( ::)ω^)「あんな無駄に豊満なヒップに敷かれたら埋もれて圧迫死す――」
ξ゚听)ξ「…………」
( ::)ω^)「――るなんてことはなく、寧ろ小振りすぎて乗っているのかさえ分からないくらいで、えぇ」
(;゚∀゚)「お前も色々大変なんだな……」
( ::)ω^)「怖いことにもう慣れたお」

そう言って二人笑いあっていると、その笑い声でだろうかドクオが目を覚ました。

('A`;)「……なんか体中いてぇんだけど」
(;^ω^)「そりゃあアレだけ踏まれれば当たり前かと……」
('A`)「マジ姉貴今度会ったらタダじゃおかねぇ……」



118: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:29:25.16 ID:8N3abdHZ0
  
ドクオが陰口をたたく中、教室にチャイムが鳴り響いた。それを聞くと皆がそれぞれの席へと
当たり前のように戻っていく。
そして落ち着いたころを見計らって兄者が教壇の上に立った。

( ´_ゝ`)「ふう……いざとなるとどこか緊張するところがあるな」
(´<_` )「兄者、応援しているぞ」
(;^ω^)「弟者いつの間に紛れ込んだんだお」

そう言えばこの時間は兄者が写真を返すだとか言っていたなとブーンは授業に向け張っていた
気持ちを再び緩めた。しばらく待ってみても一向に始まらないところを見ると先生待ちなのだろうか、
とも思いつつのんびりと曖昧な時間を生徒達は楽しんでいた。

(´・ω・`)「もしもし? あぁ、シャキン? え? うんうん」
( ^ω^)「ツン、この前のテレビの話だけど」
( ゚∀゚)「大富豪やる奴集合ー」


それから20分くらい経っただろう頃、そんなやりたい放題の教室にしぃが戻ってきた。
しかしながらさして気にするでもなく各々がまた色々な遊びを始め出す。

(*゚ー゚)「ただいまー」
( ´_ゝ`)「しぃ、もう済んだのか?」
(*゚ー゚)「うん、やっぱりやるの?」
( ´_ゝ`)「あぁ、勿論だ」
(*゚ー゚)「ふふ、いいよ。ボクも結構楽しみだし」
( ゚∀゚)「写真まだー?」
(*゚ー゚)「じゃあ、行くよ」



120: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:30:22.91 ID:8N3abdHZ0
  
そのしぃの一言と共に教室の色が変わった。雰囲気だけの問題ではなく、壁の色から空気から
1つ残らず空間丸ごとが淡いピンク色に侵されていた。脳髄まで蕩けそうな甘い桃色、桃源郷が
もし在るならばきっとそこから漂う桃の香りにはこの色が付いているだろう、そんな甘美な色。

(;^ω^)「な、ちょ、何だお!?」
( ´_ゝ`)「なるほど。どれ、試しに」

騒然となる教室の中で、冷静な顔をした兄者がその手から剣を取り出した。いつかブーンが
ドクオの家で見たその剣、吸い込まれる様な深い蝋色をしていて金属光沢はまるで無い。
僅かに反った太い刀身は巨大な四角いウロコを五枚程重ねたような独特のフォルムをしており、
無造作に赤く光る角張ったラインが幾重にも走っている。

(*゚∀゚)「うぉー! かっけぇ!」
(´<_` )「流石だな、兄者」

一層賑わいを増す教室の中で、ブーンは一人何か嫌な予感を感じていた。人の顔色を窺って、
自分を偽り、人を欺くことを毎日のように続けていれば、自然と人の心中を慮り見当をつける
力が養われてくるのだ。言うなれば小動物的な感性がブーンの中で今警鐘を鳴らしていた。

(;^ω^)「あ、あうあうあ……」
ξ;゚听)ξ「ねぇ、どうなってるの?」
(*゚∀゚)「なぁなぁ、それ一体――」

無言のまま白刃一閃、兄者の振り下ろした剣がジョルジュの脇に居た生徒を縦に裂いた。
そして一瞬の間を置いて吹き出た鮮血があたりに一面に飛び散る。

( ゚∀゚)「……は?」
(;´・ω・`)「……」
('A`;)「……」
ξ;゚听)ξ「……ゃ」



121: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:31:17.68 ID:8N3abdHZ0
  
そしてどこからともなく耳を劈くような女子の悲鳴。信じられない光景を前に、教室中が突沸した。
狂乱した者達が必死に逃げ出そうとドアに手を掛けるが、慌てている所為なのかそれとも
何かが引っかかっているのか、とにかくビクともしない。

『何やってんだよ! はやく開けろよ! てめぇブッ殺すぞ!』
『押すなよ! 開かねぇんだよ!』

そして一人また一人とドアの方へ雪崩れ込んで行く。人、人、人、普段ではありえない強襲する
人の波に体のいたるところを押され、ぶつけられ、息さえもする暇が無いほどにもみくちゃにされる。
上を、横を、下を、暴力が通り過ぎるのをただブーンは堪えた。
人の波は見る見る間に圧縮され、前後のドアに手がいっぱい生えた二つの黒い団子が出来た。
何とかそこから逃れられたブーンは辺りを見回す。今では毒々しく感じるそのピンク色の向こうに
微動だにしない兄者、弟者、そしてしぃがいた。

(;^ω^)「…………」

しかし、声など出るはずが無かった。圧倒的な暴力を見せ付けられた後で、例えそれが友達
だろうと気軽にコミュニケーションをとろうとなど思えるわけが無い。けれども目が離せない。



122: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:32:15.76 ID:8N3abdHZ0
  
( ´_ゝ`)「ふむ、抵抗を全く感じなかった。これは素晴らしいな」
(´<_` )「兄者、次は俺に……」
( ´_ゝ`)「あぁ、では弟者は後ろを頼む」
(´<_` )「把握した」

いつ取り出したのか、弟者の左手にはいつの間にか弓が握られていた。兄者の暴力的な
剣とは対照的に、細く撓るその和弓独特のフォルムをそのままに、握りから上弭(うわはず)、
下弭(しもはず)まで兄者と同様に角張った血管のような青白い光が縦横無尽に走っていた。
そして右手にしている弓懸(ゆがけ)は弓の色と揃いの濁った蝋色。
兄弟だから色も同じだとでも言うのだろうかとブーンが考えた刹那、弟者の右手に真黒な
矢がまるで空間をワープしてきたように、突如現れた。潔白な矢羽が更にその黒の深さを
際立たせている。
弟者はゆっくりとした動作で型を一つ一つ確認するように弓を絞っていき、限界までそれを
引き絞ると、無表情のまま矢を放った。
その瞬間までどれだけの時間があったかは分からないが、ブーンがその間微動だにする
ことが出来なかったのは事実である。そして、矢は後ろのドアに群がる誰かに刺さった。
飛び出ている長さからすると何人かは串刺しだろう。それでも彼らはその場から離れない。
逃げようと必死に開かないドアに僅かな希望を託しているのだ。
そんな彼らを一人一人、弟者は淡々とただ射続けた。

(;^ω^)「…………」

ブーンは何度も心の中では止めろと叫んでいた。それでもその言葉は口からは出てこない。
口から出して攻撃の対象が自分に向かうのが恐いのだ。自分の命の為にクラスメートの命を
今見捨て続けている。卑怯だとは感じつつも、それに安心してしまっている自分も居た。



124: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:33:23.12 ID:8N3abdHZ0
  
(´<_` )「これは体の一部のように扱えるな。飛んで行った矢にも自分の意思が宿っているようだ」
( ´_ゝ`)「うむ、程よい重量と言うか、自分の腕のようだ。……さて」

一息ついて兄者がブーンの方へと体を向けた。

( ´_ゝ`)「内藤」
(;^ω^)「! ……なんだぉ」

緊張して言葉尻まで声量を保てなかった。ブーンは声を出して初めて気付いたが舌がペタペタと
口腔に張り付くほどに喉がカラカラで、軽く耳鳴りがしていた。

( ´_ゝ`)「今そこに群がっているクラスメートか内藤のどちらかを殺そうと思うんだがどうする?」
(;^ω^)「ど、どうするって……」

それを聞いたクラスメートの内半分程度が一気に後ろのドアへ流れる。そこに積み重なる死体の
絨毯を踏みつけ、バランスを崩しそうになりながらもドアに体を打ちつけなんとか脱出しようとする。
ドアを開けることを諦め、窓の方へと向かう者もいたが、意に反して軽々と開いた窓を天国への
入り口かと勘違いしてそのまま何人も地獄の底へと落ちていった。
ブーンも第三者ならばどちらも殺さなければいいだろうと言えたかも知れない。
しかし今は、只単純に体裁と命の危険を天秤にかけるしか出来なかった。



125: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:34:12.13 ID:8N3abdHZ0
  
ξ#゚听)ξ「殺すってあんた達さっきから何してんのよ!」

いきなりツンが叫んだ。
その度胸と気迫にブーンは驚くと共に、自分の決断が先延ばしされたことに安堵した。

( ´_ゝ`)「ふむ、本当は既に段取りは決まっていたんだが……気が変わった」
(´<_` )「兄者、でも――」
( ´_ゝ`)「弟者、俺の判断は内容も聞かずに間違いだと言いたいのか?」
(´<_` )「……いや、そんなことはない」
( ´_ゝ`)「そうだな。じゃあ弟者は他の奴らを頼む」
(´<_` )「OK」

話の決着が付いたのか、弟者は入り口に向かって弓を引き絞り始め兄者はブーンの方へ
向きなおした。そして柄を両手で握り直すと体勢を低くした。

( ´_ゝ`)「じゃあな、内藤」
(;^ω^)「ッ……!」

言って走り出した兄者の気迫にブーンは身を縮め両手で顔面を庇った。
腕の痛み頭の痛み、とにかく色々な痛みをこのコンマ数秒でシミュレートする。
この瞬間は長くなるほどに辛い。
本来一瞬であるはずの驚きが連続して何十何百と永遠に続くような感覚。
そして俄に静寂に包まれた教室で、ついに甲高い音がなった。



126: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:35:33.28 ID:8N3abdHZ0
  
が、ブーンの体に痛みは全く無い。程なくして誰かの声が続く。

川 ゚ -゚)「……話が違うぞ」
( ´_ゝ`)「ふむ、やはりなかなかお前は侮れないな」

何事かとブーンが目を開けると、そこには背を向けて立つクーが居た。彼女の前には奇妙な
模様の壁が立ちふさがっていた。どうやらその壁のお陰で兄者の剣はブーンまで届かなかった
ようだ。

( ´_ゝ`)「そういう使い方もあるのか。お前を誘ってよかった」
川 ゚ -゚)「利害の一致であって心を通わせたわけではないことを憶えておけ」

その一言で壁は崩れ、派手にガシャガシャと金属音を鳴らし続けた。床に堆く積もったそれは
一つ一つがナイフだった。あっという間にナイフの山は消えてしまい、ブーンが確認できたのは
それだけだった。



127: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:36:35.95 ID:8N3abdHZ0
  
(´<_` )「兄者、終わったぞ」
( ´_ゝ`)「……うむ、わかった。しぃ、後は頼んだ」
(*゚ー゚)「はいはい〜まかせといて」

その一言でブーンは既にクラスメートの大半が死んだことを知った。
そして流石兄弟はあれだけ皆が苦労したドアを易々と開けてどこかへ行ってしまう。

(;^ω^)「う、あ……クー」
川 ゚ -゚)「……」
(;^ω^)「……」

言葉を交わすことも目を合わせることも無く、クーも静かに教室から出て行ってしまった。

(*゚ー゚)「えーと、とりあえず邪魔臭いから色々と消すね」

突然教室にかかっていたピンクのフィルターが消え去ったかと思うと、そこはいつもの教室に
なっていた。血も臭いも無いいつも通りに教室に、しぃが笑って立っていた。

(*゚ー゚)「皆大丈夫かな? 特にドクオは入り口のところまで流されてたみたいだけど……
    見えるってことは生きてるね」

その言葉で入り口の方へ見ると、確かに蹲って耳を塞いでいるドクオがいた。しぃはそんな
ドクオに近づきポン、と肩を叩いて片手を引っ張ると耳打ちをした。

('A`)「……本当に終わったんだな?」
(*゚ー゚)「少なくともボクは手出ししないし、ここに居る人たちはそんな気も起きないでしょ」

スッと立ち上がるとドクオはゆっくりと方目を薄らと開く。
そして身構えながらも教室の後方、ブーンの元へと向かった。



128: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:37:22.28 ID:8N3abdHZ0
  
( ^ω^)「ドクオ! 無事だったかお」
('A`)「あぁ、なんとか……な。切り傷はあるけど……痛くねぇ」
(*゚ー゚)「ドクオはそうらしいね、兄者から聞いたよ」
('A`)「は?」
(*゚ー゚)「色々と説明することがあるんだけど……とりあえず起してあげなよ」

しぃの目線が二箇所に流れる。片方は机の下で机の足を握ったまま気を失っているショボンで
もう片方は床に蹲ったまま動かないでいるジョルジュだった。

(´・ω・`)「……」
( ゚∀゚)「……」

二人とも酷く顔色が優れなかった。ジョルジュに至ってはどうやら戻したらしく、しきりに
口の辺りを拭いていた。

ξ゚听)ξ「ねぇ、しぃ、一体何なのこれ」

皆がどんよりと沈む中ツンがはっきりとした口調でしぃに尋ねる。ブーンにはその姿が非常に
頼もしく見えた。

(*゚ー゚)「ふふ、ビックリしたでしょ? 私達はね、世界を変えるの」

ふとブーンは漫画を思い出した。そんなことを言うようなキャラが漫画には沢山いたなと。
それと共にしぃの言葉から重みが消えてブーンの心を縛り付けていた鎖も少し緩んだ。



129: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 01:38:19.36 ID:8N3abdHZ0
  
( ^ω^)「世界を変えるって剣と弓矢でかお?」
(*゚ー゚)「う〜ん、確かに無理っぽいよね、それはボクも分かってる。だからボク達は協力したんだ」
( ^ω^)「……クーかお」
(*゚ー゚)「うん、そうだね。クーもとりあえずはボク達に協力してくれるはず。もう皆ウンザリ
     してるんだよ。嫌いなんだ、この世界がさ」
ξ゚听)ξ「嫌いって、何言ってるのよ。それ位我慢しなさいよ。私だって――」
(*゚ー゚)「いやぁ、ツンは全然分かってないよ」
ξ゚听)ξ「……何がよ」
(*゚ー゚)「ツンが傍から見て我慢できるどうこうじゃないの。本人が我慢できるかどうかの問題
     なんだよ。ツンはきっと自殺しようとしてる人に『生きてたら良い事がある』って言うタイプだね」
ξ゚听)ξ「生きてても良い事なんて無いって言いたいの? バカじゃないの」
(*゚ー゚)「まさか、良い事なんていくらでもあるし知ってるよ。ただ死ぬ側にとっての問題はそこ
     じゃないんだよ。これから先、一つでも悪いことがあるかどうか、なんだよ。もう苦しい
     思いをしたくないから死ぬのにさ、ズレてるんだよ、幸せな人は」
ξ゚听)ξ「何よ! そんなのいくらでも他にもっと不幸な人が居るじゃない!」
(*゚ー゚)「だからズレてるって。その人の不幸による影響を決めるのは一般の定義じゃなくて、
     その人自身なんだって。……ボクの話までズレちゃったね。話を戻すよ」

しぃはチョーク入れから一本チョークを取り出すと教卓に肘を突きながらチョークを眺め始めた。

(*゚ー゚)「ボク達は力を手に入れたんだよ」

その言葉にブーンが反応した。



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