( ^ω^)ブーンの力は役立たずのようです。

234: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:39:08.16 ID:8N3abdHZ0
  
( ゚∀゚)「でもよお、真面目な話、武器は持っておいたほうが良いかもな」
('A`)「あぁ……」
( ^ω^)「お?」
(´・ω・`)「なんでさ」
('A`)「だってよ、この話し合いがうまくいくかなんてわかんねぇし……」
(´・ω・`)「……ぼく達には特別なすごい力があるわけでもない」
('A`)「もう、あんな目に遭いたくないんだよ。せめて抵抗する力が欲しいんだ」
( ^ω^)「じゃあツンが帰ってきたら……」
('A`)「ブーン、気持ちは分かるけどな……」
(´・ω・`)「……うん、ツンが居ない今に揃えるべきだね」
(;^ω^)「分かってるお、分かってるけど……」

ツンが帰ってきたら武器なんて必要ないこと、そしてそれ以前にツンにとって武器はまるで
意味を持たないこと、それらを考えれば今その準備をすることは当然だった。
しかし、それでもブーンはどうしても首を縦には振れなかった。
こんなツンを裏切るようなことなんて出来るわけが無い、と。



235: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:40:44.64 ID:8N3abdHZ0
  
('A`)「いいぜ、俺は俺個人の考えで武装する。嫌ってくれてもいい」
( ゚∀゚)「俺もだな」
(´・ω・`)「……ぼくも生きて帰りたい」

バラバラになってしまう。そう感じ、慌ててブーンは返事をする。

(;^ω^)「……わかったお」

 何故こんなことになっているのか、ブーンはここでもう一度疑問に思わずには居られなかった。
武器を持つということは、鍵を開ける云々に頼っていた頃とはまるで違う心構えになっている。
普通の殺し合いでしかなくなっている、そんな気がしてならなかったのだ。

( ^ω^)「何で僕達はこんなことをしてるんだお……」
('A`)「なっちまったんだから仕方ねぇよ」

ドクオの言葉を無理矢理飲み込んでブーンはドクオ達と一緒に保健室の中を物色し始めた。
その最中、ずっとツンの笑顔がブーンの頭から離れなかった。



237: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:42:11.62 ID:8N3abdHZ0
  
ξ゚听)ξ「……女らしい、か」
ξ*゚听)ξ「…………」
ξ;゚听)ξ「い、いけない。廊下の真ん中でぼーっとしてるとかまぬけ過ぎるわ」

歩いては立ち止まり、その度に首を振りまた歩き出す。その繰り返しを何度もしながら、
ツンはやっと屋上まで辿り着いた。
一度胸に手をあて深呼吸してから、ゆっくりとその扉を開けた。

 封印を解かれて逃げ出してきたかのように、重い扉の向こうから大量の風が吹いてきた。
バサバサと暴れる髪の毛を押さえながら扉から差し込むオレンジ色の光の向こうを見つめる。
そこに居たのは夕日を背にこちらを見つめるクーだった。

ξ゚听)ξ「クー?」

ツンが後ろ手に扉を閉めたのを見て、クーは左手で邪魔そうに髪を押さえながら近づいてくる。



238: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:45:01.28 ID:8N3abdHZ0
  
川 ゚ -゚)「……」
ξ゚听)ξ「えーと……言われたとおりに来たんだけど……」
川 ゚ -゚)「ツンは内藤が好きか?」

予想だにしない言葉にツンは戸惑い、混乱した。
そして何故自分がここにいるのかをまでも一瞬忘却してしまう。

ξ;゚听)ξ「……は? 急に何を言って……」
川 ゚ -゚)「答えてくれ」
ξ;゚听)ξ「べ、別にあんなやつ好きとか嫌いとか……」
川 ゚ -゚)「じゃあ私が内藤と子を生しても祝福してくれるな?」

その言葉に心臓が熱くなった。

ξ;゚听)ξ「こ、子って……何を言ってるの?」
川 ゚ -゚)「私はしぃと共に往く。其処で内藤と家庭を持つ。誰にも邪魔されずに……」
ξ゚听)ξ「……正気? 本当に世界を変えられるとでも思ってるの? こんなに広いのに?」
川 ゚ -゚)「例え変えられなくても良い。ただ、現状が続かなければ私はそれで良い」
ξ゚听)ξ「何がそんなに不満なのよ……。あんたもしぃと同じなの? つまらないからって――」
川 ゚ -゚)「あいつと一緒にするなっ……!」
ξ;゚听)ξ「……」

突然語気を荒げたクーにツンは思わず怯んだ。大人しい彼女しか見て居なかったツンにとって
予想外の出来事であり、どう反応していいものかと当惑してしまう。



239: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:46:35.83 ID:8N3abdHZ0
  
川 ゚ -゚)「……自分の所為だと言うことはわかっている。他人に迷惑をかける正当な理由など
     これっぽっちも無いことだって分かっている。ただ私が弱かったんだ」
ξ゚听)ξ「回りくどいわね、何なのよ」
川 ゚ -゚)「……私は人と話すのが苦手でな。その場限りの関係だったり用事があったりして
     話す分には、まぁ問題は無いんだが」
ξ゚听)ξ「確かに、そんな感じだったわね」
川 ゚ -゚)「関係が深くなったとき、どういう話をして良いのか分からないんだ。どういう表情をして、
     どういう話題を出して、どういう口調で……全く分からないんだ。そう考えている内に
     自然と人とは目を合わさなくなったよ。目が合うと会話が始まるからな」
ξ゚听)ξ「……」
川 ゚ -゚)「そんな中で内藤が図書室に来るようになってな。内藤が毎日私に話しかけてくるんだ。
     それでいて教室では特に話しかけたりすることも無く図書室だけというのも良かった。
     間違いなく内藤のお陰で私は救われた」
ξ゚听)ξ「わかるけど……でも何で」
川 ゚ -゚)「いつも図書室に居るわけじゃないんだ」
ξ゚听)ξ「?」



240: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:48:11.28 ID:8N3abdHZ0
  
川 ゚ -゚)「ツンには分からないだろう。あの教室の空気がいかに苦しいか。下手な妄想ばかりが
     先行して頭が狂いそうになるんだ」
ξ゚听)ξ「そんなに苦しいなら苦しいって……」
川 ゚ -゚)「話しかけも出来ないのに弱音なんて吐けるわけが無いだろ」
ξ;゚听)ξ「何で今になって……もっと早く行ってくれれば……てっきりあんまり人と関わりたく
       ないものだと……」
川 ゚ -゚)「いや、悪いのは私だ。けれどそれを改められるほど私は強くない。そしてそんな私の
     世界の大部分を占める内藤がもし居なくなったら、私はもうこの世界で生きてはいけない。
     想像しただけで胸が苦しいんだ」
ξ゚听)ξ「……」
川 ゚ -゚)「最初は漠然と世界が変われば良いと思っていた。けれども今ここに明確となった。
     内藤が私だけのものになれば良い。そしてそれを邪魔する物がすべて無くなれば良い」
ξ゚听)ξ「……そういうこと」
川 ゚ -゚)「ツン、もう一度聞くぞ。お前は私の邪魔をするのか?」

ツンはその問を受けじっくりと考え始めた。イエスと答えれば恐らく串刺しになって終わり
なのだろう。ノーといえば――そこでツンの思考がジャンプした。

ξ゚听)ξ「そっか……そうよね」
川 ゚ -゚)「?」



242: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:49:56.41 ID:8N3abdHZ0
  
ξ゚听)ξ「そうね、私もブーンが好きだわ。誰にも渡したくない」
川 ゚ -゚)「……やっぱりか」

ノーと言って自分に何の得があるのだろうか。
そのままブーンが連れて行かれて後は結局皆殺されてしまう。
それならば目の前の女、目に物見せてくれよう、と。

ξ゚听)ξ「私はあんたみたいにウジウジなんかしないわ。見てなさい」

そう言ってツンはどういうことか携帯を取り出すと電話を掛け始める。
掛けた先は渦中のブーンだった。

( ^ω^)「お? ツンから電話?」
('A`)「きっと話し合いのアレだな。出てみろよ」
( ^ω^)「お。もしもし? ツン?」

ξ゚听)ξ『ブーン? よく聞きなさいよ?』
( ^ω^)「なんだお?」
ξ*゚听)ξ『だ、……大好き! そっちに戻ったらずっと抱きついて、キ、キスして、それから、
       いっぱい頭撫でて欲しい!』
( ^ω^)「へ?」

そこまで一息に言うとツンはそのまま電源ボタンを押し終話した。

('A`)「なんだって?」
(;^ω^)「……えーと、ドッキリカメラ的な……?」



243: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:51:18.50 ID:8N3abdHZ0
  
ξ゚听)ξ「ふん、何か言いたいことは?」
川 ゚ -゚)「いいや、予想通りだった。ただそれだけだな」
ξ゚听)ξ「余裕ね」
川 ゚ -゚)「お前こそ」

クーの背後から1本のナイフが現れた。小振りだが間違いなく心臓を狙われれば即死する
長さの刃渡りがあった。ハンドルまで付いているところを見ると、実際に持って使うのも十分
有り得ることだった。
ただ、そんなことをしなくてもクーが攻撃できることは百も承知である。

川 ゚ -゚)「内藤は渡さない」
ξ゚听)ξ「もう手遅れよ」

その言葉を引き金に、ナイフがツンの頬を掠めていった。冷ややかな細い風が頬を撫でたような
感触の後に、焼けるような熱さと突き刺さるような痛みが襲ってくる。



246: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:53:02.72 ID:8N3abdHZ0
  
ξ゚听)ξ「……いきなり顔なんてあんたも酷いわね」
川 ゚ -゚)「じゃあ次はどこが良い?」
ξ゚听)ξ「うわっ悪役くさっ」

それを皮切りにナイフが一本ずつツンの体を掠めていった。本数を増やすことも無く、突き
立てるようなことも無く、ただその体を傷付けることを楽しんでいるかのような、一方的な暴力。
ツンは至る所を切り刻まれ、最早どこを押さえて良いかもよく分からなくなっていた。

ξ;゚听)ξ「痛っ……痛いっての……足も手も肩も顔もー!」
川 ゚ -゚)「ほら、私のナイフを分けてやる。戦ってみろ」

足元に放り投げられた1本のナイフを、ツンは全身の痛みを我慢しつつ言われるままに手に
取ろうとする。しかし、ナイフは無情にもツンの手から遠くへと滑っていってしまう。

川 ゚ -゚)「驚いたな、ツンはサイコキネシスを使えるのかな」
ξ゚听)ξ「ふん、あんたも小さい女ね」
川 ゚ -゚)「何がだ」
ξ゚听)ξ「これくらいでそんなピリピリしちゃってさ。あーやだやだ、自分が何も出来ないからって」
川 ゚ -゚)「私が弱い人間だと言うことくらい自覚している。今更言われたところで何も思わない」
ξ゚听)ξ「なら何も言わなきゃ良いじゃない。自覚してますって態々言って、冷静装って、賢いフリ?
      ただの逃げ口上じゃない」
川 ゚ -゚)「……」



247: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:55:56.78 ID:8N3abdHZ0
  
心まで折れないようにと言葉で反撃をするツンを、クーは冷たく見下ろすとその手にしっかりと
ナイフを持ち俄にツンの傍へ近づくと、刃を人差し指に見立てまるでおしゃべりな子供を「しぃー」
と静かにさせるように、ツンの唇に直角に当てた。当然唇を動かすことが出来なくなりツンは
黙ってしまう。

川 ゚ -゚)「……おめかししようか」

そう言いクーは床に落ちていたナイフを操り、ゆっくりと、あたかもどこを切りつけるか迷って
いるかのように揺ら揺らと浮かせながら徐々にツンの太ももへとナイフを導く。
慈しむようにナイフの背でその太ももを撫でると、唇に刃を当てたまま太ももにナイフを突き立てた。

ξ;゚−゚)ξ「ッ……!」

ゆっくりと、しかし確実にツンの柔肉の中を進み、その血を啜っていく。
やがてその傷口から溢れ出す赤色にクーの顔が朱を帯び始める。
一方のツンは、今刃物が体に刺さっていると言う事実に気がおかしくなりそうで、叫び出して
少しでも痛みを紛らわせたい気持ちだった。しかし既にヒリヒリと唇を焼く痛みにそれすらも
出来ないと体を震わせ只耐えるしかできなかった。



248: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 22:58:30.99 ID:8N3abdHZ0
  
川 ゚ -゚)「顔色が悪くなってきたな。それじゃあ次は頬紅にしようか」

そう言って2本のナイフをツンから離し、やおらその頬を撫でると、クーはそのままツンを
押し倒し両の手を床もろとも串刺しにした。

ξ;゚听)ξ「ぁああああ!」
川 ゚ -゚)「……」

信じられない痛みに悲鳴を上げるツンを無言で見つめながら、クーは再びナイフを手に取り
ツンの頬に刃を添え、真っ白なキャンバスに一筋の赤い線を描いた。

川 ゚ -゚)「綺麗な肌だ。憎らしいくらい」
ξ;;)ξ「ふうぅ……ぅうううう!」

涙ぐみ必死に痛みに耐えるツン。或いはそれは美貌を汚されたことへの悲しみからか。
ツンは顰めていた眉をより吊り上げて、口の中に流れてきていた血液を思い切りクーの
顔面に吐き出した。



249: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:00:23.59 ID:8N3abdHZ0
  
川 ゚ -゚)「……足りない、か」

そう言ってクーは立ち上がり、背後に次々とナイフを待機させ始めた。
数十、若しくは百にも届くかも知れないという数。これが降り注いだらと考えるだけで
心臓が凍り付いてしまうような、圧倒的なその量。
しかしそれさえも気にしないといった感じでツンは泣きながら顔面に憎悪の念を浮き上がらせる。

ξ;;)ξ「……許さない」
川 ゚ -゚)「……それが最期で良いか?」

その返事を待たずにすべてのナイフが空に舞い上がり、ツンの上を雨雲のように蔽った。
そして、それを見上げるツンの元に、ナイフの雨が降り注いだ。




251: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:02:04.97 ID:8N3abdHZO
  

(´・ω・`)「遅いね」
( ゚∀゚)「遅いな」
('A`)「同文」
( ^ω^)「どーぶん」

来た時はまだ真っ白な日が差していた保健室も、いつの間にか紅の頼りない光のみが室内を
照らしていた。

('A`)「なぁ、あの電話やっぱり何かあったんじゃないか?」
( ^ω^)「いや、でもそんな内容じゃ……」
( ゚∀゚)「じゃあどんな内容だったんだよ」
(;^ω^)「いや、その……」
(´・ω・`)「ぼく様子見に行くよ」
( ^ω^)「あ、でも……」
(´・ω・`)「何?」
( ^ω^)「……いや、なんでもないお」
( ゚∀゚)「ショボン、俺も行くわ」
(´・ω・`)「あ、ありがとう」

保健室を出て行く2人を見つめながらブーンは短く溜息を吐いた。

('A`)「持ってかれたな」
( ^ω^)「うるさいお」



252: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:04:03.37 ID:8N3abdHZO
  

( ゚∀゚)「しっかし結局なんなのかね」
(´・ω・`)「何が?」
( ゚∀゚)「だってよ、殺し合いとか言いつつもう俺達普通に廊下歩いてるぜ」
(´・ω・`)「ぼくは、まだおっかなびっくりだよ」
( ゚∀゚)「んー……やっぱ誰かに会ったら攻撃されるんかな」
(´・ω・`)「話し合いってのがうまくいってなかったら、かなり危ないよね」
( ゚∀゚)「だよなぁ……」

と、ジョルジュがいきなり立ち止まり複雑な表情を浮かべ始めた。
そわそわとした様子で落ち着きが無くなり、意味の無い言葉を色々と唸っている。

(´・ω・`)「どうしたのさ、ジョルジュ。早く行こうよ」
(;゚∀゚)「あー、えーとよー……あーどーしよ……」
(´・ω・`)「はっきりしないなぁ、何さ?」
(;゚∀゚)「くそー、ツンは戦えないんだよなぁ……ちくしょー……ショボン、先行ってくれ」
(´・ω・`)「え? なんで?」



254: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:05:32.00 ID:8N3abdHZ0
  
(;゚∀゚)「あー、その何だ。ぶっちゃけるとトイレ」
(´・ω・`;)「えー、緊張感無いなぁ。待ってるから早く行ってきなよ」
(;゚∀゚)「いいっての、すぐ追いつくからよ! 早く行ってやれ!」
(´・ω・`;)「ったく……早く来てよ?」

何度か後ろをチラチラと見ていたが、やがてショボンはジョルジュを置いてそのまま階段を
上っていった。それを確認してジョルジュは溜息を吐く。そしてその溜息に誘われるように
2つの影がジョルジュの前に現れた。

(´<_` )「へぇ……どうしてまたショボンさんを行かせたんですか」
( ゚∀゚)「話し相手は1人で十分だろ?」
( ´_ゝ`)「話し相手……ねぇ」

2人に睨まれながらも、ジョルジュは右のポケットからカッターを取り出し、決して目を逸らさなかった。



256: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:07:33.14 ID:8N3abdHZO
  

(´・ω・`)「えーと……屋上はこのままでいいんだっけ?」

中央階段を1段1段ショボンはぶつぶつと独り言ちながら上っていく。
すると、二階に差し掛かったところで突然ドアの閉まる音がショボンの耳に飛び込んだ。

(´・ω・`;)「…………」

今この学校に他の生徒は居ない。そして残りの仲間は保健室か屋上に居る。
となるとこのドアを閉める音は明らかに自分にとっての敵が出した音だった。

(´・ω・`;)「ど、どうしよう……」

ポケットの中のハサミをギュッと握り締めながらショボンは踊り場に立ち尽くしてしまった。

(´・ω・`;)「ジョルジュ早く来てよぉ……」

しかし背を向けて下の階に戻る勇気も、また同様に屋上を目指す勇気も無く、ショボンは
ゆっくりと2階をビクビクしながら進んでいくしかなかった。



258: ◆HGGslycgr6 :2006/12/14(木) 23:10:20.48 ID:8N3abdHZ0
  
 西日で彩られた廊下はその静けさも相俟って言い知れない空しさをおぼえる。加えて、
ショボンは朱色に染まる建物を見ると、怖気がつくようになっていた。

(´・ω・`)「……嫌でも思い出しちゃうよ」

火事に遭ったのがつい3日前の晩。早めに寝ていたショボンが飛び起きた時には
既に辺りは火の海で、もしあのまま寝ていたら死んでいたのかもしれない。
今でも耳に残っているシャキンの「あついよぉ……あついよぉ」と助けを呼ぶ声がショボンを
震え上がらせる。もしあの時助からなかったらシャキンは――そこまで考えてショボンは
嫌な考えを振り切った。

(´・ω・`)「折角生き残ったのに……」

皮肉が口を衝いて出たその時どこかから物音が聞こえてきた。気の抜けた電子音はどうやら
ゲームの音楽のようだった。
誰かがこんな大きな音を出して呑気にゲームをしているというのだろうか。ショボンには全く
信じられない事だったが、そこに誰かが居るのは間違いない、と音のする方へ近づいていった。



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