('A`)ドクオが壁を乗り越えるようです
- 35 :1:2006/12/15(金) 22:46:47.40 ID:QuQ+ew9d0
- ※
夕方4時。
グラウンドで活動している運動部のかけ声が校舎まで響く。
窓からは赤くなった夕日が顔を覗かせていた。
('A`)「・・・失礼しました」
俺は職員室で3時間半にも及ぶ説教を受け、ようやく開放された。
('A`)「・・・くそ、初日からこんな目にあうなんて!」
あそこでクラス委員長のしぃがばらしていなければ・・・
まさか裏切りとは予想していなかった。
むしろ、最初からわかっていてそのつもりでわざと?
('A`)「くっそー、はめられた!」
まるで釈迦の上の孫悟空だ。
- 36 :1:2006/12/15(金) 22:49:57.82 ID:QuQ+ew9d0
俺はイライラしながら廊下を歩いていると、美術室の扉が開き、人影が出てくる。
('A`)「あー!! お、お、お前!!」
(*゚ー゚)「ん? なーんだドクオかぁ」
('A`)「な、な、な・・・」
平然と美術室から出てきたのはしぃだった。
しかも俺に会って動揺するわけでもなく、オマケに呼び捨て・・・!?
(*゚ー゚)「意外と終わるの早かったね。あは、これからズルは駄目だよ」
('A`)「ちょ、ちょっと待てイ」
あまりの変貌振りに声が裏返った。
こ、これがしぃ?
あまり話したことが無いとはいえ、イメージと180度違うぞ!?
- 37 :1:2006/12/15(金) 22:52:16.62 ID:QuQ+ew9d0
(*゚ー゚)「ん? 何?」
('A`)「おま・・・あれ、わかっててチクっただろ!」
(*゚ー゚)「うん。え、ていうかあれ本気で騙したつもりだったの?」
('A`)「な・・・」
バカにしたようにしぃは笑う。
腸が煮えくり返るように俺の頭に血が上る。
('A`)「お前、ふざけんなよ・・・!」
(*゚ー゚)「何怒ってるの? 元々悪いのはそっちじゃん。こっちが正論。あんたはチンケな悪者」
('A`)「う、ぐ・・・」
たしかに、そうだ。
すごい腹が立ってるのに反論が思い浮かばない。
- 40 :1:2006/12/15(金) 22:56:12.62 ID:QuQ+ew9d0
(*゚ー゚)「ま、これに懲りたら少しは勉強すれば? じゃね〜」
そう言うと、しぃは鼻歌を歌いながら階段を降りていき、
やがてその姿は見えなくなった。
一人、廊下に残され、やり場の無い苛立ちを内に溜め込む。
('A`)「こんな、こんなに腹が立っちゃうなんて・・・くやしい・・・負けた」
ガクッとうなだれる。夕方の学校にむなしくチャイムが鳴り響いた。
俺はとぼとぼと歩き、駐輪場へ向かうのであった。
- 41 :1:2006/12/15(金) 22:58:41.20 ID:QuQ+ew9d0
- ※
学校の駐輪場へ行き、自転車の鍵を外す。
('A`)「はぁ〜ぁぁぁ・・・」
ため息しか出ない。
新学期から色々ショックがでか過ぎた。
('A`)「・・・そうだ京都に行こう」
独り言を言っても、この時間、突っ込んでくれる人は誰もいなかった。
ふと、誰もいないのをいいことにギャグが言いたくなってきた。
('A`)「あーらびっくり洗浄機♪」
手を上に突き出しながらジャンプしてみる。
・・・聞こえるのはカラスの声、だけ。
('A`)「シッシッ!! シッハ!」
むなしさと寂しさを吹き飛ばすためにシャドーボクシング開始。
グラウンドにいる運動部の連中はまさかこんなことが起こっているなど想像も出来ないだろう。
- 43 :1:2006/12/15(金) 23:01:27.74 ID:QuQ+ew9d0
('A`)「おーっと、チャンピオンよけて〜でました! 黄金の右フック!!」
徐々に体が暖まって、気分が乗ってくる。
さっきまでの苛立ちも少し和らいできた。
('A`)「シッシッ!! ふっ!」
(*゚ー゚)「・・・ねぇ、黄金の右フックって何?
('A`)「そりゃーあの有名な世界チャンピオンの必殺・・・」
ピトッと体を止める。
何か、何か違和感を感じた。
さっきと空気が変わった。うん、恐らく
- 45 :1:2006/12/15(金) 23:04:56.78 ID:QuQ+ew9d0
(*゚ー゚)「・・・ぷ、ぷぷ」
('A`)「い、いつからそこに?」
恐る恐る聞く。
しぃは顔を下に向け、必死で口を押さえている。
(*゚ー゚)「あはははwwあーらびっくり洗浄機ってwww」
(;'A`)「そっから!?」
耐え切れなくなったのか、しぃは笑い転げた。
お腹に手を当てて、爆笑、という言葉の通り笑いまくる。
(*゚ー゚)「し、しかもいきなりボクシングし始めるし・・・ww」
しぃは顔を上げて、ファイティングポーズをとる。
(*゚ー゚)「シッシ! シッハ!」
・・・俺の真似だろうか。
そして再びネジが外れたかのように笑い転げる。
- 46 :1:2006/12/15(金) 23:07:11.47 ID:QuQ+ew9d0
(*゚ー゚)「なーに一人でやってんのwwもう最高!」
(;'A`)「う、うううるさい! っていうかいるならせめて声かけろよ!」
(*゚ー゚)「いや、だって面白くて笑いこらえるのに必死で・・・く、くくw」
そしてまた俺の顔を見て噴き出す。
うん、非常に恥ずかしい。穴があったら入りたい。
('A`)「み、見られてたなんて一生の不覚・・・っ!」
(*゚ー゚)「いやー、ごめん面白いよドクオ! 君って人はw」
('A`)「・・・」
しぃは笑いながら肩を叩いてくる。
なんだ、なんか悔しい。すごく負けた気分だ。
- 48 :1:2006/12/15(金) 23:09:55.13 ID:QuQ+ew9d0
('A`)「・・・もう、帰っていいですか」
(*゚ー゚)「ん、うーん。・・・この事みんなに話していい?」
(;'A`)「ちょ、それだけは!! それだけは勘弁してくれぇ!」
そんなこと、あのクラスで言ったら変なあだ名をつけられてしまう。
「真面目怪物モナー」「変態乳房王ジョルジュ」
あの仲間に・・・は、はいりたくねぇ。
(;'A`)「お願いします! このとーり! 男ドクオ、頭を下げて頼みます!」
(*゚ー゚)「ん〜、どーしよっかな〜?」
しぃは小悪魔のようにふふ、っと鼻で笑う。
彼女が上、俺が下・・・上下関係は明らかな状況である。
- 50 :1:2006/12/15(金) 23:13:47.96 ID:QuQ+ew9d0
(*゚ー゚)「よし、決めた!」
しぃはぽんっと手を叩く。
('A`)「な、なんですか?」
(*゚ー゚)「スワーティーワンアイス奢ってw」
('A`)「・・・へ?」
俺は頭を上げてしぃを見た。
アイス・・・? あれ、俺生きてる・・・?
('A`)「そ、そんなんでいいの?」
(*゚ー゚)「え? もっとすごいほうがいい?」
('A`)「いやいやいやいやっ! ・・・ぜ、ぜひおごらせてください」
俺は手をすりすりと、ゴマをするように擦る。
- 51 :1:2006/12/15(金) 23:16:26.18 ID:QuQ+ew9d0
(*゚ー゚)「じゃあ、交渉成立! それじゃ行こっか?」
('A`)「え、今から!?」
(*゚ー゚)「当たり前ジャン。駅前のお店が一番近いよね!」
(;'A`)「う、うん」
(*゚ー゚)「ほら、そうと決まれば早く乗った乗った!」
俺はせかされるように自転車に乗る。
すると後ろに重みが増え、肩に手の感触が走る。
('A`)「な、なんでさりげなく後ろに乗ってんの!?」
(*゚ー゚)「ん? だって自転車で行ったほうが楽じゃん」
(;'A`)「いや、まあそうなんですけど・・・」
予想外の展開に頭がついていかない。
俺の肩に乗っていたしぃの手に力が入り、肩を思いっきり握られる。
(*゚ー゚)「ほら、早く出発! もたもたしない!」
- 52 :1:2006/12/15(金) 23:17:28.15 ID:QuQ+ew9d0
(;'A`)「いてぇいてぇ! わかったから力入れんなって!」
ペダルに足を乗せ、ゆっくりと自転車を漕ぐ。
二人分の体重が乗っているせいか、ペダルが重い。
ゆっくり、ゆっくりと自転車が前に進む。
('A`)「お、重・・・」
(*゚ー゚)「ん、なんか言ったぁ?」
('A`)「いで、いででで!! なんでもない、なんでもないから力入れんな!」
俺は妙な客を乗せてフラフラと校門を出て行く。
どうしてこうなったのか、いまだに理解できないままペダルを漕いでいった。
- 54 :1:2006/12/15(金) 23:20:32.04 ID:QuQ+ew9d0
- ※
(*゚ー゚)「おいしーwやっぱりスワーティーワンのバニラは最高w」
('A`)「・・・」
俺はレモンアイスを食べながら、ふと思う。
なんで俺はしぃと公園でアイスを食ってるんだろう?
・・・これって、他の奴から見たらデートってやつだよな。
('A`)(いかん、 何を俺は考えているんだ!)
頭を振り、妙な妄想を吹っ切る。
こいつは俺を騙し手に取った悪女だぞ!?
(*゚ー゚)「ねぇ」
('A`)「ふぇ? な、何?」
・・・いきなり話しかけられたから、口がうまく回らなかったじゃないか。
(*゚ー゚)「ドクオって彼女いる?」
('A`)「ぶふぅ!!」
- 56 :1:2006/12/15(金) 23:23:00.80 ID:QuQ+ew9d0
あまりの唐突な質問に噴いてしまった。
いくらなんでも、その質問がこのタイミングで出るとは・・・
(*゚ー゚)「ねぇ、いるの?」
('A`)「い、いや、今はいねえけど・・・」
今は、というより彼女いない歴=年齢だが。
・・・そんなことはどうでもいい。
それよりも、しぃは何故彼女の有無なんて聞くんだろう?
しぃの顔をチラリと見る。
(*゚ー゚)「あ・・・あのさ」
もじもじと、顔を赤らめて何か言いたそうにしている。
彼女の視線が、俺の目から離れうつむいている。
('A`)(これは、まさか・・・!?)
- 60 :1:2006/12/15(金) 23:25:37.79 ID:QuQ+ew9d0
アイスを持った手に力が入る。
生涯で初めての、こ、こ、こ・・・
('A`)「ちょ、ちょいきなりそんな――」
(*゚ー゚)「今日一日だけ、私の彼氏になって!」
彼氏になって・・・彼氏になって・・・
頭の中にその言葉が響き渡る。
やっべ・・・告白じゃん。どうしよう、え、なんて答えれば・・・ん?
('A`)「一日、だけぇ!?」
- 66 :1:2006/12/15(金) 23:29:09.73 ID:QuQ+ew9d0
(*゚ー゚)「うん、お願い! なってくれたら今度は私が何かおごるからさ!」
(;'A`)「な、なんじゃそりゃあ!!」
意図がつかめない。
一日だけ彼氏ってなんだそりゃ?
生まれて初めての告白が「一日だけ彼氏になって」ってなんですか?
('A`)「おま、ふざけてんのか!? 俺は帰るぞ!」
(*゚ー゚)「ちょ、ちょっと待ってよ!」
しぃが俺の袖を引っ張る。
俺は無視して足を進めようとするが、引っ張られてるせいで前に進めない。
- 68 :1:2006/12/15(金) 23:32:54.65 ID:QuQ+ew9d0
(;'A`)「だー、離せよ! 俺はそんな遊びに付き合ってる暇はないんだよ!」
(*゚ー゚)「お願い〜! ちょっと色々事情があって、今日は彼氏がいなきゃ駄目なの」
(;'A`)「知るかよ! お前おちょくってんなら・・・」
俺はしぃの方を振り返ると、言葉が喉につまった。
しぃは俺の袖を掴みながら、静かに涙を流していた。
(*゚ー゚)「う・・・私、ひっく・・・このままじゃ・・・」
('A`)「お、おい。なんだよ、どうしたんだよ」
(*゚ー゚)「こんなこと・・・ドクオにしか・・・ドクオにしか頼めないんだもん」
しぃは涙目で俺に訴えてくる。
その表情に、ドクン、と心臓が鳴る。
・・・くそ、涙は反則だろ。
- 70 :1:2006/12/15(金) 23:35:39.24 ID:QuQ+ew9d0
('A`)「わかったよ。わかったから泣くのやめてくれ」
(*゚ー゚)「・・・え?」
('A`)「どんな事情か知らんけど、一日だけ彼氏になるよ」
そう言うと、しぃの顔がぱぁっと明るくなる。
あー、もう、その顔を見るだけで何故かこっちの心も軽くなる。
(*゚ー゚)「ほんと!? ありがとードクオ!」
('A`)「あー・・・もうどうにでもしてください」
(*゚ー゚)「うんうん、かっこいいよドクオ! このお礼は絶対返すからw」
(;'A`)「てか、お前泣き止むのはやっ!」
しぃはすでに涙など流していない。
むしろさっきまで泣いていたとは思えないほど清々しい笑顔。
- 73 :1:2006/12/15(金) 23:38:57.19 ID:QuQ+ew9d0
(*゚ー゚)「ドクオ、涙は女の子の武器なんだよ。ふふw」
しぃは俺の肩を叩き、ニヤリと口だけで笑う。
・・・それって、もしかして――
('A`)「だ、 騙されたぁぁぁ!!」
(*゚ー゚)「あははw気にしない気にしないw」
信じられん。まさか自分が「嘘泣き」なんて古典的な手に引っかかるとは!
いや、それをやってのけるしぃの演技力も恐ろしい・・・。
どうやら、俺はとんでもない小悪魔と契約を交わしてしまった様だ。
待ち構える己の未来を考えれば考えるほど、俺の頭は痛くなっていくのであった。
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