('A`)ドクオが壁を乗り越えるようです

160 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 19:33:26.19 ID:xjxwKROr0
  


('A`)「うーん・・・」

俺は、一人部屋で悩んでいた。

目の前には携帯としぃの番号。

('A`)「女の子に電話なんて初めてだし・・・何話せばいいんだ」

やっぱり、今日は楽しかったぜ! とか、電話してみたよ〜みたいなノリか?

電話で無愛想っていうのはマズイし、話題切れも気まずいよな・・・。



162 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 19:39:54.09 ID:xjxwKROr0
  

('A`)「もしもし? あ、俺ドクオ。悪いな、いきなり電話しちゃって・・・」

一人で口に出してみる。

・・・ちょっと女々しいかな?

('A`)「おう、俺だ。電話してやったぜ」

うん、たぶん切られる。

やっぱ悩む前にさっさとかけたほうが・・・うーん、でも・・・

ミ,,゚Д゚彡「なーに一人でブツブツ言ってやがるんだ?」

('A`)「うおっ!!」



163 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 19:43:22.14 ID:xjxwKROr0
  

ミ,,゚Д゚彡「ふっふっふ・・・女か?」

('A`)「な、なんだよ、なんでもいーじゃねーか! あっちいってろよ」

ミ,,゚Д゚彡「ドクオ、女を落とすときは押して押して押しまくるのがコツだ」

('A`)「もー、いいからでてってくれよトーチャン!」

俺は強引にドアを閉め、トーチャンを部屋から追い出す。

トーチャンは最後までニヤニヤしていた。

・・・聞かれてたのか。は、恥ずかしい。

('A`)「これ以上邪魔が入る前にかけよう・・・」

俺は携帯を開き、番号を押す。



164 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 19:50:44.64 ID:xjxwKROr0
  

コール音が一回、二回・・・そして、声が聞こえた。

「もしもし?」

('A`)「も、もしもし? 俺ドクオ! い、いきなりわるかったなぁ!」

「・・・え、ドクオ? あ、かけてくれたんだ〜」

('A`)「う、うん」

声を聞いたとたん、頭の中の予定なんて吹っ飛ぶ。

電話越しでも、しぃの声だとすぐわかった。

「今日は、ありがとね」

('A`)「え?」

「なんか、ドクオに色々迷惑かけちゃって・・・」



165 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 19:56:30.19 ID:xjxwKROr0
  

('A`)「だ、だから心配すんなよ。乗りかかった船だ。俺がなんとかするって」

「・・・ありがと。やっぱドクオに頼んでよかった・・・」

('A`)「そ、そんなたいしたことじゃないってw」

女の子にそういう声で頼られると顔がにやけてしまう。

俺は顔をニヤニヤさせながらガッツポーズを決める。

「ドクオ・・・」

('A`)「ん、何?」

また、しぃの声が小さくなる。

「私のこと、嫌いにならないでくれる?」

('A`)「え?」



167 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 19:57:41.24 ID:xjxwKROr0
  

思いつめたような声。

なんだろう、いつものしぃとは、別人のように感じた。

('A`)「何言ってんだよ、嫌いになんてならないよ」

「そう、ありがとう。・・・それじゃ、また日曜日に電話するね」

('A`)「お、おう」

通話が切れ、俺は携帯を閉じて安堵のため息をつく。

思ったより、電話しちゃえばなんてことなかったな。

('A`)(しぃ・・・)

ベットに寝転び、目を閉じる。

しぃの姿が自然に脳裏に走る。

('A`)「俺、どうしちゃったんだろ・・・」

そのまま、静かに夜は更けていった。



168 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 19:59:35.90 ID:xjxwKROr0
  


(*゚ー゚)「ふぅ」

携帯を閉じ、そのままベットに倒れこむ。

広い部屋、大型の液晶テレビ、高級なソファーに大きな本棚・・・。

私の知らない物ばかり溢れてる。

この部屋で長いこと一緒にすごしていたのに、私はそれらを知らない。

(*゚ー゚)「ドクオ・・・」

今は、この小さな携帯が一番身近に感じる。

・・・いや、携帯の向こうのドクオだろうか。

たった一つの、外の世界への道。



169 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 20:01:08.51 ID:xjxwKROr0
  

「しぃ、入るぞ」

ノックが鳴り、パパが部屋へと入ってきた。

(`・ω・´) 「明日のパーティーは3時からだから、ちゃんと準備をしておきなさい」

(*゚ー゚)「・・・はい」

(`・ω・´) 「うむ、それじゃおやすみ」

(*゚ー゚)「おやすみなさい」

・・・またパーティーか。

正直、行きたいとは思わなかった。



170 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 20:01:56.67 ID:xjxwKROr0
  

また、社長令嬢を演じなければならないと思うと気持ちが沈んだ。

(*゚ー゚)「・・・うう」

泣くな、こんなことで泣いてどうする?

強くなれ。私はもう大人なんだ。

眠れ、そして明日にはいつものように演じるんだ。

・・・だから、今だけは。何も考えずに眠るんだ。

明日は、待ってはくれないのだから。



171 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 20:03:58.76 ID:xjxwKROr0
  


(;^ω^)「ええーっ!? しぃさんの彼氏役!?」

('A`)「バカ、声がでけぇ。・・・一応、極秘機密だぞ」

土曜日、俺はブーンと近所の喫茶店で落ち合っていた。

明日のこともあるし、色々話す相手が欲しかったのだ。

( ^ω^)「しっかし、しぃさんがそんな大金持ちだったとは知らなかったお」

('A`)「俺も驚いた。・・・で、どうやったらあっちのお父様に認めてもらうかっていう話だ」

( ^ω^)「ふぅ〜ん、なるほどだお」

ブーンはオレンジジュースをストローで飲みながら言う。



173 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 20:07:00.20 ID:xjxwKROr0
  

( ^ω^)「ドクオ・・・しぃさんのこと好きなのかお?」

('A`)「ぶふぅ!」

俺は飲んでいた水を少し噴き出してしまった。

ブーンにそんな質問されるとは・・・

('A`)「何言ってんだ! お、俺は成り行きで・・・」

( ^ω^)「ドクオ、目が泳いでるお」

('A`)「な、な!?」

ブーンはニヤニヤ笑いながら俺を見る。

それはいつものブーンの笑いじゃなく、まるで子猫を見るような目だ。



176 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 20:10:25.39 ID:xjxwKROr0
  

( ^ω^)「大丈夫、ドクオの正直な気持ちをぶつければしぃのお父さんもわかってくれるおw」

('A`)「おま、だから違うって!」

( ^ω^)「ふひひwwまぁ応援してるおwwむふふww」

気味の悪い笑いをしながら、ブーンは喫茶店を出て行った。

('A`)「なんだそりゃ・・・」

俺は一人喫茶店に残され、ブーンの言ったことを考える。

あいつ、何が言いたかったんだ?

結局、また悩む。だが、考えても何も思いつくものは無かった。



178 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 20:14:10.70 ID:xjxwKROr0
  


高級な服は嫌い。

動きにくいし、何より全体的にキツイ。

( ´ー`)「お飲み物をどうぞ」

(*゚ー゚)「ありがとう」

私はグラスを受け取り、パパの方を見る。

他の会社の社長さんと楽しそうに話している。

・・・まだ終わりそうにないや。



181 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 20:18:58.77 ID:xjxwKROr0
  

( ゚∀゚)「お嬢さん」

(*゚ー゚)「え?」

私のこと?

ふと声の主を見ると、身なりのいい青年が立っていた。

( ゚∀゚)「初めまして・・・フジサン商社の跡取りのジョルジュと申します」

(*゚ー゚)「あ、どうも。シャキン商社のしぃです」

( ゚∀゚)「おお、あのシャキン商社の・・・どうりでお美しいはずです」

ジョルジュと名乗った男は私の手を取り、握手をする。

ずいぶん積極的。あのフジサン商社の跡取りというだけあって自信に満ち溢れている。



182 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 20:21:06.32 ID:xjxwKROr0
  

( ゚∀゚)「よろしければ、こちらで一緒にお話でもどうでしょうか?」

(*゚ー゚)「父の用事が終わるまでなら・・・」

( ゚∀゚)「ええ、もちろん。じゃああちらのテーブルへ行きましょう」

ジョルジュは私の手を引いて向こうのテーブルへと連れて行った。

あぁ、面倒くさい・・・。けど、愛想は良くしないと。

私は興味の無いビジネスの話を聞きながら、適当に相槌を打っていた。



183 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 20:22:49.57 ID:xjxwKROr0
  


翌日

('A`)「おー、ここがVIP動物園かぁ」

電車で30分ほど揺られ、俺達は動物園の前にいた。

(*゚ー゚)「はぁ。私、動物ってあんま好きじゃないんだよね・・・」

(;'A`)「なんだよ、やぶからぼうに・・・」

(*゚ー゚)「だって、猿や像を見ても別におもしろくないじゃない?」

('A`)「ったく、いいから早く入ろうぜ」

文句を垂れながらモタモタしているしぃの手を引っ張る。

(*゚ー゚)「あ・・・」

しぃが何か言おうとしたが、俺はしぃの方を見ずに歩いた。

(;'A`)(手繋ぐのって、こんな感じでいいんだよな・・・)

(*゚ー゚)(結構やるじゃん・・・ふふ)

柔らかい手の感触に緊張しながら、俺達はVIP動物園に入園した。



184 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 20:24:25.79 ID:xjxwKROr0
  

(*゚ー゚)「キャー! ちょっとすごい! ゴリラだよゴリラ!」

(;'A`)「・・・」

さっきまでうだうだ言っていたのはどこの誰だったのだろうか?

しぃは手すりに掴まり、ゴリラを見ながら大声を出している。

(*゚ー゚)「ほら、ドクオ! 次はキリン見に行こう!」

('A`)「お、おう」

手を繋いだまま、引っ張られるように走る。

まるで子供とその親だ。



185 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 20:26:03.11 ID:xjxwKROr0
  

('A`)「ふぅ、やれやれ・・・」

でも、喜んでいるしぃの笑顔を見ると安心する。

なんか、こういうのを恋愛っていうのだろうか?

まぁ、今彼氏役だからなんちゃって恋愛だけど。

(*゚ー゚)「キャー! すごい首長ーい! なんでなんで!」

('A`)「キリンは高い木に生えた草を食べるために首が長くなったんだよ」

(*゚ー゚)「へ〜。ドクオも草食べればあれくらいの身長になるんじゃない?」

(;'A`)「いや、あそこまで大きくなりたくないし! ってかそれは俺をチビと言ってるのか!?」



186 :1 ◆NscXkUt6VE :2006/12/16(土) 20:28:17.48 ID:xjxwKROr0
  

(*゚ー゚)「やーい、チビw」

('A`)「なにぃ〜! 俺とあんま身長変わらないくせに! うりゃ!」

(*゚ー゚)「きゃっ! もう何すんのよ!」

('A`)「はい、よけた〜。当たらないよーだ」

(*゚ー゚)「にゃろめ〜・・・待て!」

動物園で走りあう二人。

自然に笑い合い、他人から見れば普通のカップルのように見えるだろう。

壁ω・´) 「う、おのれぇ・・・ミルナ君! ミルナ君!」

( ゚д゚ )「はい、シャキンさん」

(`・ω・´) 「わかってるね。あいつをボコボコにしてかっこ悪い所をしぃに見せるんだ」

( ゚д゚ )「はい、シャキンさん!」



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