2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 18:51:38.32 ID:p7AXdTQr0
ξ゚听)ξと( ^ω^)はいつもいっしょなようです


 序文という名目の戯言↓

 私の世界――つまるところこの世は薄情なんだよね。
 まさに薄っぺらであるそれは、まるで頁のようなんだ。
 重ねあわされ製本されて、本となり、
 そこらの書店で売られたり、秘密裏に地下出版されるのだ。
 同人誌も、また然り。

 本の頁には、ほとんど同じ内容が書かれている。
 それが何冊も何冊も存在する。続編もある。
 勿論打ち切りもある。悲しいなあ。
 それは何枚も何枚も無限に重ねあわされた、
 世界の概要であり、
 刻一刻と変化を遂げる、
 文字の禍だ……あはあは、どちらも同じ事だなあ。



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 18:52:09.91 ID:p7AXdTQr0

 ジャンルで言うならば、

 愛だ恋だとのラヴロマンス、
 血塗られたサスペンス、
 かっこよいSF、
 妄想爆発ファンタジー、
 難解なミステリー、
 おそろしいホラー、
 懐郷のノスタルジー、
 あとはみんな猥文で、とても卑猥な文字のるつぼだ。

 しかし、その本も世界構成の中核たる、
 物理法則からは逃れられないのでした。
 つまり汚れ、角が欠け、紙が破れる。
 印刷時の誤字なんかは、特に顕著に文章を破滅させる。
 間違いだらけのモノクロに彩られた頁は
 ――本は、
 ――荒唐無稽で、
 ――意味不明である。
 たった幾枚数冊のそれらは、
 専門ショップのいつもうずたかい平積みのなかに潜んでいるのだ!



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 18:52:25.07 ID:p7AXdTQr0

 因みにこの話は、一応SFだと言う事を通告しておく、

 が、

 しかしどうも意味不明なのはこの文章も変わらんかもしれないな……(笑)。

 本編開幕↓



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 18:55:10.92 ID:p7AXdTQr0

 謎の少女が一人――そう、そこにたったひとりぽっち。
 そして闇の中で、ただ必死に迫り来る孤独と戦っており!……っていうのは嘘だけど。
 でもただ一人そこにいるのは本当だったのです。
 闇の中で、っていうのも本当です。
 嘘なのは、そこに孤独を感じていない事。
 何故なら、ナニカに満たされた心を持っているから。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 18:55:29.40 ID:p7AXdTQr0

 因みに謎の少女というのは、『私』の事だ。
 だからこんなに詳しく述べられるのでした。
 職業は学生。それなりに篭りがちだけど。
 物語序盤だし、名前からだけでは分からんだろうで、
 一応言っておくが、性別は女。
 読者である貴方には、関係ないけど彼氏はいない。
 私には大いに関係あるけどねっ!!

 まあ、開始直後の脱線はこれまで――以下、本文開始↓



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 18:56:06.06 ID:p7AXdTQr0
 私は、これは夢であると自覚はしていた。
 なぜなら私は寝ている
 ――我が安らぎの四畳半にて栄光の惰眠を貪っているからだ。
 目が覚めたら、マクラのもとで労働基準本が何であろうか、
 と言うほど酷使され続けたノートパソコンが馬鹿になり、
 明鏡止水のブルーバックを輝かせてるのだ。
 そしてその青色スポットライトにて、
 病的にまでの歓喜に満たされて眠っている私を照らしている事は、想像に難くないのだ。
 夏休みの友と言う名目の宿命の期限が
 学生の横を怒号疾風に過ぎ去る日時は今より二日も先の話である。
 私は修羅場で散った若き戦士たちの屍の上を悠々と踏みつけることであろう。
 あははーざまぁ!



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 18:56:23.26 ID:p7AXdTQr0

 しかしそんなツワモノな私にもやはり今のこの状況には
 ξ゚听)ξ「此れは無いだろう常識的に考えて……」
 と思うばかりだったのだ。

 世界を覆い隠していた暗闇が晴れると、私の目の前は、石ばかりだった。
 硬い玄武岩で建造された巨大な橋の端に私はいたのだ。
 おそるおそるも棚干を覗くと、常識的に考えられないほどの高さだった。
 遥かなる地表には巨石建造物が乱立していた。
 屋上には黒い点がいくつも動いており、此処の住人かと思われた。
 さすがに良くは見えないが、ヒトではないは確かだ。
 クリーム色掛かったマイルドな天球には二つの脈動する太陽が浮んで
 ――いや、見えない糸で釣り下がっており、
 生物的な湿気を出しながらドクドク発光していた。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 18:57:45.25 ID:p7AXdTQr0

 棚干にそって歩いていくと、
 腕を広げたヒトデと蛸を掛け合わせたような形をした小像がぽつねんとあった。
 触らぬ神にたたりなし、なのだからそのまま通り過ぎ……
 ようとはするものの触ってはいけないと思うほどに
 触りたくなるというのが人の常というものだ。
 両手をワキワキさせて、
 ありもしない意を決して触れるとポキリと音が。
 そして、棚干より彼方へ墜ちて行った……。
 なんか悔しかった。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 18:58:10.62 ID:p7AXdTQr0

 そして老人が言う。
 だが何をいっているのか分からない。
 テープを早回しにしたような、甲高い音が途切れ途切れに聞こえた。
 どうやら、老人は異国の――異星の?――言葉で語りかけてきているようだった。
 わけもわからないのに、老人がきぃきぃ捲くし立てるので、はあ、ええ、などと適当に相槌を打っていた。
 高速言語が何往復かしたころ、老人は満足したようで、此方に手をぱたぱた振った。
 私も手をぱたぱた振った。
 そして逆回しをしたように、老人はもやもやに還って行った……。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 18:59:17.91 ID:p7AXdTQr0

 老人が居なくなる
――私のほかに誰も居ない。

 いないいない……、

 一瞬沈黙……、

 聴覚のブラックアウト……、

 濃霧は消え去って……、
 猛烈な闇だけが再び私を蓋い尽して……、
 
 アレは窮極の……???エラーエラーエラー!!!。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 18:59:43.40 ID:p7AXdTQr0

 足元の岩の橋、
 その下の世界、
 空の心臓、
 何もなくなり私は闇黒に立っていた。

 これで覚醒であろうかそれとも、まだ続きがあるだろうか。
 そんな事を考えているとやはり、まぶしい朝日が見えるのだ。だからこれは夢なのであったのだ。
 それから私は覚醒し、うんと言って背伸びをするのでしたまる 

 目が覚めてからする事は↓



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:01:16.44 ID:p7AXdTQr0

 やけに眩しいなあと思っていたら、
 カーテンを閉めていなかったからであった。
 私の二日ぶりの安眠を、揺るがすほどのその光量は、
 量子力学的に言えば思い込みなのだそうだ。
 だが思い込みだなんだろうが眩しいものは眩しいのである。

 充血した目を腫れぼったい瞼で閉じ、私は盲目のままカーテンを閉めた。
 天井裏では、私がおきた事を知った大きなねずみが、
 大きな腹をつっかえながら這いまわっている。
 垢じみたシーツにくるまれた万年床に
 再び身をくるませたところで時計が目に入った。
 いまさら気づいたところでもう遅いのだった。
ξ゚听)ξ 「朝かと思ったが、起きてみたら、真昼でした」

 これはやられた。太陽神は、時の神様までを狂わすのかもしれないなあ、
 ……これも意味不明の表現だなあ。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:01:54.06 ID:p7AXdTQr0

ξ゚听)ξ「そうだ。今日はバイトだ。早く行かなくては怒られるかも知れんというか、クビである」
 しかし携帯電話を見ると、メールがきていた。
 案の定の内容だった。笑った。

 「ギャッ!」と漫画のように叫んだ私は、
 急いで着替えて謝りに行かなくてはと、狭い四畳半を駆け巡り、
 布団の足元にはコインランドリーで洗濯してそのまま持ってきてうずたかく積まれて、
 使ったり使われらなったりしたシャツやらナンヤラから着替えを探し出し
 ξ゚听)ξ「おおあったあった」
 なんて喜んでいたのも束の間、私の足元――布団は一面、血に染まっていた。
 サスペンスの音が聞こえた。カヨービ(劇)



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:02:10.15 ID:p7AXdTQr0

 足元と言ってもこの四畳半――正確には六畳で一畳半は玄関と押入れで構成されている――は、
 いまや血塗られた布団を中央に、勉強机代わりの小さな丸いテーブル、
 湯を沸かすしか能の無いポット、粉珈琲の空き瓶、あき缶、しょぼいノートパソコン、
 そしてそれらを取り囲むように本棚がどかどか立っている。
 嗚呼ァ――、律儀に乱立しせり環状本棚とそのお供よ、
 汝らは不浄都市レムリアと呼ぶにふさわしいだろう……なぜなら臭いからね。

 締め切ったカーテンからの木洩れ日に照らされ、
 空中を優雅に舞うチリが律儀にきらきらと反射していた。
 その天井に呆然と取り付けられた場違いな文明的クーラーが
 哀愁を誘う、ダメ人間の部屋だった……。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:02:28.95 ID:p7AXdTQr0
 話を戻そう……。
 ビックリした私は倒れ、尻もちをついた。
 痛む尻を摩りながら、階下の住人に謝った。
 そしておそるおそるパンツを触ると、
 ぱきぱきと粘度の高いものが乾いて固まった音がして、
 赤い粉が指に付着した。
 私はまたやってしまったと、ため息をつき、パンツを脱ぐ。
 蛆虫色のおりものが糸を引いていた。
ξ;゚听)ξ「やばいなあ。今日は生理の日であったことをわすれていたよ」



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:04:22.38 ID:p7AXdTQr0

 私は特に、生理に痛みを伴わないたちであった。
 レバーになる事も、あまり無い。
 だからたまに忘れてしまう。そしてこう言う事態になってしまう。
 こう言う事態というのは、一面
 ――といっても布団が真ん中に永久に居座る上――に殺人事件でも起きたのか、
 と思わせるような惨状が繰り広げられている即ち、今のような事態の事である。
 実際に、友人がこの惨状を目撃した時卒倒+倒れて手すりを乗り出し落ちそうになる怒涛のコンボで
 何事かと駆けつけてきた階下の住人Aは何か勘違いしたらしく
 おもむろに携帯電話を取り出し一一〇番。
 そうして危うく犯罪者にされてしまうところを
 ξ;゚听)ξ「ちがうんですちがうんです」
 と弁解したことはもう恥ずかしくて思い出したくも無い。
 あ、思い出してしまった。
 ……モウ、ハズカシイ!



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:04:35.42 ID:p7AXdTQr0

 また話がそれてしまった……。
 さて、私は起きてから二度目のため息をつき、
 汚れたシーツを布団から剥いでビニール袋に入れた。
 パンツも勿論入れた。
 タオルで身体を清めから、先ほど掘り出した服を着て、
 たたみを雑巾で拭き、やっとこ一段落ついた。

 私はもう、落ち着きを取り戻していた。
 エコノミックブラッド(経血のことです)の事ではない。バイトの事だ。
ξ゚听)ξ「もう、クビは確定である。
     謝ったって、ダメであろう。
     あのバイトは繋ぎだ。
     次なる目標のための糧となったのだ!」
 だが涙目なのは、尻が痛いだけではないのです。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:08:52.10 ID:p7AXdTQr0

 額に流るるひとしずくの汗を袖ぐちで拭い、
 コインランドリーに行く事に決めた。
 こんなにして、此処に置いておく訳にもいかない。
 洗濯物も溜まっとるのだ。
 私は先ほどのビニール袋に、その他の洗うものも入れる。
 もちろん多い日も安心なものを着けるのも忘れない。
 急いだので突っかけが上手く履けず、階段から半分ほど転げ落ちた。
 また漫画のように、
 ξ゚听)ξ「ギャ!」と叫んだ。
 尻餅につくづく縁がある日である。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:13:02.06 ID:p7AXdTQr0

 いたいいたいと尻をさすっていたら、
 何事かと階下の住人が駆けつけてきた。
 私の手に持ったソレを見るや否や彼は警察に電話しようとしたので
 口を塞いで電源を切ってやった。
 そしてまた、
 ξ゚听)ξ「ちがうのですちがうのです」と弁解し、
 今度は自室にから、友人に貰ったカステラを一本持ってきて
 階下の住人の口へ押し込んだ。
 彼はニコニコと恵方まきのように、それを貪り始める。
 これで5日はもつだろう。
 一人身の分際でカステラをまるまる一本齧ると言う屈辱を存分に味わうがいい。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:13:17.08 ID:p7AXdTQr0

 さてと……見上げる空には風に流された飛行機雲が消えかかり、
 少しばかり西に傾いた太陽が
 「おれはまだやるぜ」
 と言わんばかりに燦然と輝いていたので、私は眩しすぎて逃げた。
 そして裏道のほうからからいくことに決めた。

 歌を口ずさみながら、私はイチョウ並木を進んだ。
 黄色くなり始めの葉っぱが風に吹かれて、いまだ青い実を揺らしていた。
 無論、まだ臭くない。
もう少し寒くなり朝早く此処にくれば、
 近所の老夫婦が、せっせと一心不乱に銀杏を拾っているだろう。
 そして今のように真昼を過ぎた頃は、
 彼等は家でご飯を食べているか、ゲートボールに精を出しているのであろう。
 将来は自分もこうなりたいと思う私だった……。
 嗚呼ァ――惨めみじめ……。



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:14:13.98 ID:p7AXdTQr0
ξ゚听)ξ「 穢れのないーぃ その瞳に 映るは遥かぁー中華の地ぃ! 」
 私の口からは、何度も同じフレーズが繰り返される。
 多少古い歌だが、私は気に入っている。
ξ゚听)ξ「ん、これは何であろうか」
 私が見つけたのは、なんだか懐かしい気持ちになる
 デザインの缶ジュースであり、名を、『過去コーラ』とあった。

 よくみてみると、自販機自体もなんだか古風というか古臭く、
 売られているのが過去に流行ったことがあったような、
 いまだ見ぬ未来に流行りそうな気がする、
 見るからに雑多であり、
 およそ統一性が無い。
 古臭い上に胡散臭かった。



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:14:48.62 ID:p7AXdTQr0

 そういえば、ココを何度も通ったが、
 こんな自動販売機を見たのは今日が始めてだ。
 最近置かれたのならもっと新しいデザインなはずで、実に奇妙だ。
 だが私はそんな事お構い無しなのだ。
 しかも私は寝起きですぐに動いて、咽喉が乾いていたものだから、
ξ゚听)ξ「まあいいわ。ジュースはジュースだよ。
     多少古くたって、大丈夫。
     あたしのおなかはじょうぶだもの」
 しかしながら咽喉が渇いてなくてもかったわな……。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:17:11.36 ID:p7AXdTQr0

 投入口に一二〇円を入れ、ボタンを押すと、件の『過去コーラ』がごろりと出てきた。
 私は腰をかがめて取り出し、その冷たさに頬擦りした。
 「秋になった、というのは嘘っぱちではないか」と言われる
 ――でも毎年言われてるような気がする――そんな近年である。
 それは二酸化炭素だけではなく海中の
 『めたんはいどれーど』と呼ばれる物質が原因だそうだが、
 テレビで見ただけなので、『めたんナニガシ』が一体、
 どのような悪さをするのかを、私はわかってはいない。
 だが、そういうしったかを言いたいのも人の常である。

 しかしたまの木枯らしがひゅうッと一瞬通り過ぎる時だけは昔と変わらないのだ。



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:17:35.21 ID:p7AXdTQr0

 私の去ったあと、金色まがいの葉っぱが、
 風に飛ばされ、あやふやな秋空に舞い、
 散り、
 どこかに消えた。

 そして飛び散ったイチョウのように、
 古臭い自動販売機も忽然と姿を消していた。
 代わりに、
 熱せられたアスファルトから、
 陽炎めいた霧が立ち上り始めていた。

 どこかでねずみが、
 チュウと鳴いた……。 

 ナニカが転々回り始めるかも↓



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:17:52.39 ID:p7AXdTQr0

 コインランドリーについて、私は血まみれの洗濯物を放り込み、
 蓋を閉め、小銭を入れた。
 ごうんごうんと洗濯機が回転し始めるのを確認し、
 先ほど買った『過去コーラ』を飲もうとプルタブをあける。
 その時、成分表示なにがしが書いてあるはずの欄が、
 すっぽり消えており、代わりに危なげな
 髑髏〔どくろ〕のマークがはいっていた。

 注意書きもあった。
 私はそれを声に出して読み上げた。
 客が他にいないので、声の大きさを気にする事は無い。
ξ゚听)ξ「『おいしくないです』……ってお馬鹿か?」

 そんな事、缶に書くやつがいるだろうかと。
 しかし現にその症例があった。
 これが現実だ。
 味も現実だった。実に、まずい。
 しかしそのまずさが癖になる者も出てくることは、想像に難くない……。



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:20:35.52 ID:p7AXdTQr0

 5分後――飲み終わる。
 私はげっぷをし、手をパタパタ振った。
 いつもはげっぷの息をどこか遠くへ散らすためだが、今日は違った。
 妙に気温が高く感じる。
 室内の壁掛温度計をみると、29度とあった。
 温暖化此処に極まれりである。
 
 端のテーブルの上に先ほどは気付かなかったが週刊誌がおいてあった。
 1ヶ月ほど古いものだったが真新しいような感じを讃えている。
 暇つぶしにと椅子に座り、足を組む。
 私は置き去りにされた雑誌を読み始めた。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:21:31.59 ID:p7AXdTQr0

 《特集記事:先月始まったアニメの特集。人気の新刊。漫画。み か ん。漫画。
  広告小説仕立ての猥文。卑猥な写真。
  袋とじ。広告。流行ファッション。広告。広告。
  美味しいもの。古今世界の状況。み か ん。広告。小説神芥川。
  寒い秋についての注意事項。
  ガンダム。おいしいはっさくのたべかた。エヴァンゲリオン。ファンタジー小説。
  引篭り。
  有名人のエッセイ。あの人は今。太陽系外進出。だいこん。
  現在の月基地生活の特集。月にいるウサギ。み か ん。ウサギになった地球人。未来SF。今月の天気。今日の運勢。猥文。偉い人の言葉。
  み か ん。
  自作パソコンについて。猥文。
  読者投稿。広告。み か ん。来月の特集。広告。
  エトセトラエトセトラ・・・》



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:24:24.01 ID:p7AXdTQr0

 雑誌を読み終える事になると、
 洗濯機の回転は止まり、
 脱水と乾燥も済んでいた。
 私は持ち帰り用のかごを借り、そのなかに無造作に、
 洗われて真っ白になった洗濯物を入れていく。
ξ;゚听)ξ「これは借りるんだからね。何時か。返しに来るんだからね」
 と私は言っているが嘘であろう。

 このかごは借り物なので、
 当たり前だが、また後で返しに来るのだが、
 何故か私の部屋の押入れに一つあるので、
 これもその仲間入りをするのだろう。
 押入れの先住民は、まだ8月頃に、
 友人と一緒に部屋へお持ち帰りされたものである。
 つまり今は9月であるから、1ヵ月も洗濯をしていなかったのであった。
 去る8月。
 ( ^ω^)「おまえは女の風上にも風下にも置けないお」
 と友人に罵られたので私は、
 ξ゚听)ξ「では穴倉に籠って仙人になろう」と返した。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:26:25.58 ID:p7AXdTQr0

 友人はため息をつきながらも、私の部屋の片付けを手伝ってくれた。
 因みにその時押入れには先住民がたくさん繁栄を極めていたので、
 彼に「阿呆」と小突かれた私はしぶしぶコインランドリーに強制送還した。
 その帰りに連れてきた一人にも、友人は
 ( ^ω^)「帰れお」と通告したのだが、
 私はあいもかわらず知らん顔でやり過ごした。
 友人は溜息をついた。溜息をつくのは彼の癖である。

 話を戻す。  
 ふたたび越境を余儀なくされたかごを手に、
 私は、コインランドリーの扉を開ける。
 もあーっと、熱気が真夏のように押しかけてくる。
 なにやら暑過ぎやしないだろうかと思いやしたが、
 なにせ私は引き篭もりがちである。
 クーラーの効いた部屋でぐったりするのが毎日だ。
 ご飯は深夜のコンビニ弁当一回で済ます。
 だからお昼2時位はこう言う熱気なのだろうと、
 引き篭もりがちの私は歩を進めた。



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:33:57.36 ID:p7AXdTQr0

 のんべり歩いていくと、熱さにうだれる人々が、
 寒冷の地を求めてゾンビの如く彷徨っていた。
 彼等の脇をすり抜けるたびに汗の匂いがした。
 私もそんな匂いがするのだろうかと確認すると別の意味で臭かった。
 自室に籠っていた4日間、一回も風呂に入っていなかった。
 髪の毛はぼさぼさで、みっともなかった。
ξ゚听)ξ「風呂に入ろう……」
 流石にこれはと、私は本日三度目の深い溜息をついた。

 汗臭い話に山なし落ちなし意味なし↓



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:34:21.52 ID:p7AXdTQr0

 帰る時、私は別の道を通った。その際にある銭湯へ行くためである。
 夕時から夜明けににぎわう此処も、昼間なので他の客はいない。
 番台にも誰もおらず、ただ招き猫がちょこんとすわっていた。
 ξ゚听)ξ「にゃー」
 呼びかける私だが、招き猫は知らん振りだ。
 私は猫背の箱に大人一枚の代金を入れ、女湯の暖簾をくぐって行った。
 その時、私の後ろにねずみがちょろちょろ着いてきた。
 言うまでも無く私は気づかない。
 招き猫も、手で顔を拭うだけだった……。



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:34:32.77 ID:p7AXdTQr0

 何年着たのか分からないクタクタによれたTシャツと
 色落ちしたジーパンを脱いで籠に入れ、シャワーを浴び、
 備え付けの石鹸で身体を洗い、かけ湯をして湯船に浸かる。
ξ゚听)ξ「あ゛ぁ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 私は本日四度目の溜息をついた。
 驚くべき事に、このバケモノのような叫びも、
 溜息の一種なのだ。
 しかしこれは今までの後悔のものではなくて歓喜のものである。
 じぃーと、湯から立ち昇る穏やかな蒸気を見ていると、ふと、今日見た夢を思い出した。

ξ;゚听)ξ「あの巨石建造物、玄武岩で出来た橋、
     遠めに見た黒い点々、奇妙な小像、
     濃霧にまぎれた老人……。
     この、今でもはっきりと思い出せる夢は、
     どこかで見たようなモノばかりだなあ……」と苦笑する。



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:35:18.61 ID:p7AXdTQr0

 昔、80年あまり前の小説家におっかない話を専門に書く人がいた。
 彼は様々なものを書いて色々な人たちを恐がらせたすごい人だ。
 彼は、『クトゥルー神話』と呼ばれる架空神話体系のおおもとを築いたことで有名だ。
 その宇宙的恐怖に魅せられた者らがこぞって我先にと書き足し、足して、足して、
 どんどんとその神話は脹らんでいった。
 そして、またまた色んな人を恐がらせた。
 所詮架空の物語で在るが、どれも現実味を帯びた文章で綴られており、
 まさか本当か、と思うようなところもある。
 その神話中に、私の見た光景に似たものが存在するのである。



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:36:11.92 ID:p7AXdTQr0

ξ゚听)ξ「だがあれは夢だ。宇宙的恐怖は空想だ。
     プロヴィデンスの少年が魘〔うな〕された悪夢は、
     所詮夢で、それを彼が書いた作り物なのだ。
     だから邪神などいないのだ。ヒヤデスのあいつもいないのだ。
     よってあの先生もいるはずが無い……。


ξ゚听)ξ「だからあんなところは現実には存在しない
     ――だが、だがだがだ、少年が悪夢を見て魘された、
     と言うのは、紛れも無い事実なのだ……。
     恐ろしい、恐ろしい宇宙的恐怖。
     そして、近隣で起こる殺伐とした感じの悪い夢が、あたしを包み込み――!」

 私は、そんなこんな妄想を振り払うべく頭を振り、濡れた頬を叩いた。
 だが空想は妄想へとつながり、妄想はさらなる白昼夢へと繋がる……。

 なんか変2↓



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:36:55.49 ID:p7AXdTQr0

 私は、自分の部屋にいた。
 ドウシヨウモナク窮屈な、布団を押しのけ、机に向かう。
 書きかけの同人誌、
 飲みかけのコーヒー、
 それを見る目を充血させた私。

 それらを照らす輝くモノのは、
 スタンドライト、
 イーノートのブルーバック、
 カーテンから零れる微かな月明かり。

 聴こえるものは、『鍵』であった階下の住人の詠唱の声ばかり。
 左右の部屋には誰がいたかもう分からないし、分かる必要ももう無い。
 頭が変になりそうな、
 否、
 もう充分変になっているこの空間にいるのは、
 私一人ではない、もう一人がいた。
 友人がいた。



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:39:13.36 ID:p7AXdTQr0

 開けられることの無い、押入れの中に居た。
 押入れの中で、
 生きているのか、死んでいるのか、
 分からない存在となった彼は、私に向けてふすま越しに微笑んだ。
 また私の方も彼へそっと微笑みを向けると、服を脱ぎだした。

 表れる白い肉体、
 太陽を浴びていない無垢なる身体、
 純潔を保った少女の裸体、
 だがそれは、純潔でありながら汚れている、邪悪の塊、宴会の肴。

 残りの冷たく冷えたコーヒーを咽喉に流し込んだ私はカーテンをくぐり、立て付けの悪い窓を開ける。
 あの秋の、心地よい寒気は、もう感じる事は無い。
 鼻につく、燃えても燃え尽きる事が無い、煙の臭い。
 考えられ得る全ての甲殻類の、腐った臭い。
 何かがのたうつ生物的な、擬音が鼓膜を打つ。
 しかしども世界に悲鳴は、聴こえない。
 待っていたかのように粘液を纏った触手が、私を下宿の屋根に持ち上げた。実際待っていたのだ。
 眼前に見える、天球を突き刺し聳え立つ卑猥な形をしたものは、異界の灯台だ。
 それは此処に元はもっと一杯ナニカが居たと言う事を残し続けるたった一つの証拠。
 他はもう、崩壊し、すでにその瓦礫も砂になった。



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:43:25.38 ID:p7AXdTQr0
 
 屋根に降り立つ、私。
 べこべことへこむ、トタン板。
 触手は凄まじい臭気を放ち、先端から粘液を噴出する。
 私へ自ら噴き掛けた桃色の汚濁をみて興奮しいっそう怒張する触手たち。
 のたうつ肉棒はなおも数が増え、下宿を飲み込み、さながら尻からでた寄生虫を思わせた。

ξ  )ξ「嗚呼ぁ――、嗚呼ぁ――、ふんぐるいふんぐるい、嗚呼ぁ――、ふたぐん、呼嗚呼嗚嗚呼ァァ……、」

 私の妖美な声。白色のギョウチュウらはその詠唱と共に歌う。
ξξξ――ぐちゃりぐちゃり/くちゃくちゃ/・・・・・・・・/

 淫猥な音を出す、私に纏わりつく触手たち。
 何本も何本も這い回り、足を、腿を、陰部を、腹を、胸を、首を、口内を、頭を、舐め回し、嬲り、弄り、冒す。
 しかし私は一向に、いままでとかわらぬずっと同じな、退屈で光のない、絶望を超えた瞳で、針のように細い月を、見上げていた。

ξ  )ξ「こんな世界を望んでいたんじゃないのに。頭がまっくろで一杯だ。嗚呼ァ、嗚呼ぁぁぁぁぁ……、」



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:47:56.93 ID:p7AXdTQr0

 私は諸手を挙げて叫んだ。
 涙が溢れても、最早粘液と見分けがつかない。
 呼応するように触手たちの動きが加速する。ついに蟲達が私の胎内へと入る。

 ――もっと刺激を!
 ――もっと気持ちよく!
 ――もっと、忘れたいのに!
 ――嗚呼、もっと、感じて居たかったけど、
 ――感じない、貴方の身体は感じない、
 ――でも貴方の心は、あたしと一緒に生きている!
 ――嬉しい、ウレシイ嬉しいワ!
 ――アハハアァアアハハァアアァアアハハアアッハアアアァアアアxアアーーァアアアアァアアアはっはぁあxはああい!!!!



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:50:58.88 ID:p7AXdTQr0

 触手の一部となった私は、持ち上げられ宙に浮き、絶え間ない振動と、蠕動を、繰り返す。
 快楽によりて、痙攣を繰返す私。
 鼻からは鼻水が、ダラシナク開けられた口からは涎が。
 依然として流れる涙、汗、膣分泌液、赤い血液。
 それらは触手の吐き出す粘液に混ざり、形を変える。
 全てを舐め盗って行く触手。
 私からナニモカモを奪い取っていく触手。
 私にはもう、何も無い。だから、彼等に快楽を与えて其れを返さなくてはならない。

 犬の陽物を伸ばしたような触手を口に頬ばった。それはすぐに咽喉の奥へ、自分から入っていった。
 どろりとしたねばねばが、肺に直接注入されるが咳き込み、吐き出す私。自分自身の味がした。
 嗚呼ぁ、ぁああ、アアァ嗚呼ぁ――、体感的な官能が全身を駆け巡る。
 ドウシヨウモナイ体の疼き、求めるものはもう無いのに、もう、手に入らないのに求めてしまう、もう諦めていたのに、全然諦めさせてくれない。
 希望なんていらない、絶望もいらない、欲しいのは沈黙、白い闇、真っ白な、真っ黒な、やがて来る、やがて降り積もっただろう、雪の結晶が汚れに犯されるような、○○○○……。 
 でも貴方を感じるコノあたし心だけは、摂らないでで下さい、お願ィしマすゥウウ――。



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:01:50.95 ID:p7AXdTQr0
 嗚呼ぁ、ぁああ、アアァ嗚呼ぁ――、 
 嗚呼ぁ、ぁああ、アアァ嗚呼ぁ――、 嗚呼ぁ、ぁああ、アアァ嗚呼ぁ――!
 嗚呼ぁ、ぁああ、 嗚呼ぁ、 嗚呼ぁ、
 ぁああ、アアァ嗚呼ぁ――、ぁああ、アアァ嗚呼ぁ――、アアァ嗚呼ぁ――、アアァ嗚呼ぁ

――……ほああーいあ。

 狂乱は、途切れても一瞬。
 そしてすぐに再開する淫猥な宴。
 それは永遠に永劫にどこまでもどこまでも春、も夏、も秋、も冬も何も無い虚無の絶望。
 ……求め続けて求め続けないしかししかしどうにも矛盾でアアアァアア――いあいあぁああ!!



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:02:21.36 ID:p7AXdTQr0

 《プルドーベイ》
 《それは油田》
 《ブルドーザー》
 《それは重機》
 《AK−47》
 《それは銃器》
 《ばばばん、ばばばばん》
 《劇団員はみんな撃ち殺された》
 《みんな幸せに死んだスイーツ(笑)》
 《幕閉じ》
 《再開幕》
 《ビーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー》
 《↑ブザー音》

 違う、何かが違う……↓



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:03:49.60 ID:p7AXdTQr0


 意識が戻ると、私は布団に寝ていた。見慣れた下宿の部屋であった。
 本棚に寄りかかって溜息をつく男がいた。
 友人だ。
 友人は私が起きたことに気づくと本を閉じ、私の方へ視線を向けた。
( ^ω^)「キミは本当に馬鹿だおなあ。
       人の家ならまだしも銭湯で寝るなんて、最近の駱駝でも思いつかんお。
       そして汚いこの部屋は何だお? 今度来て掃除をしてやるお」

 あの銭湯は、彼の家で経営をしている。
 私はのぼせて気を失ったのだった。

ξ゚听)ξ「ふん。ではあたしはペンギンになってやる。空は飛べないから氷の下に籠ってやる。お前が来るまで出てこない」
( ^ω^)「この引き篭もりめ」
ξ゚听)ξ「あー貴様ぁ、あたしをいじめたないじめたな? いじめられて絶望した! いじめるやつは愛護団体に引き渡すぞ」
( ^ω^)「それは大変だお。ペンギンを守るべき騎士は、彼女の住処の汚染を防ぐべく明日は、掃除に明け暮れるだろう」

 私がかなり元気なことに安心した友人は、
( ^ω^)「冷蔵庫に珈琲牛乳入っているから飲んじゃダメお」と言い残して去った。

 私は天邪鬼だった。彼が帰った後、疼く頭を抑えながら立ち上がり、
ξ゚听)ξ「だがあたしは開けるのだ」
 しかし冷蔵庫の中には珈琲牛乳では無く、
 ポカリスエットが入っていた。
 天井裏で、ねずみがチュウと鳴いた……。

 これも愛なのかしらん↓



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:09:48.78 ID:p7AXdTQr0
 プシュ、と音を立てて窒素ガスが出る。
 キャップを外し、そのままがぶ飲みする。
 頭はまだくらくらした。
 テレビを見ようとパソコンをつける。
 この部屋には、家電製品のテレビは無い。
 シャープのロゴの後ウィンドウズMEの起動画面が出た。
 いまさらこんな骨とう品を使っているのは私くらいなものだ。
 私のイーノートは、いつも止まって青い光で室内を照らすことを生業としている。
 デスクトップのアイコンをダブルクリック→アプリケーション起動→デスクトップの上に窓が出て、ニュースが始まった。

 『今日は猛暑でしたね女子アナさん。では8月9日の今日のニュースワイド……(ry』
ξ゚听)ξ「はて、ききまちがいだろうか。たしかに今日は8月9日と言ったような……?」

 私は首を捻る。
 なんども繰り返して『今日は暑いですねあついですね』『今日は、8月9日』とキャスターは言うのだ。
 もしかしたら、録画放送をを見ているのでは無いかと思い、チャンネルを変える。

 読み込み時間の後、同じような顔をしたニュースキャスターは言った。
 『今日は猛暑でしたね、隣の女子アナさん? では8月9日の今日のNHKMADニュース……(ry』



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:10:30.71 ID:p7AXdTQr0
 ヤハリ何かおかしい。
 グーグルで『今日は何日か』を検索する。

 結果は案の定だ。
 もしかしたら、時間を戻されたのかもしれない……。
 即ち――時間跳躍〔タイムリープ〕。
 しかし、コノ時間帯、私はナニヲしていたか……そうだ、
 今日のこの時間、私は独りですやすや寝ていたのだ。
 記憶と現状に矛盾が起きた。
 確認のために、私は押入れを開ける。
 玄関に放置された満杯の洗濯かごと同一のものが、たくさん不法滞在していた。 
 彼等は、来る8月10日に強制送還される身の上だった。

 SFでは、時間航行をする話が数多くある。
 マッド博士がそういう機械を作った、
 ラベンダーの臭いをかいだ彼女のいとしの彼は未来人だった、
 ある日起きたら超能力に目覚めた、
 かのじょが願ったから、神様の気まぐれ、階段で転んだ、実は死んだ後の世界、
 さらに宇宙人の陰謀説、さらに実はその宇宙人はサラリーマンだった、
 時間跳躍じゃなくてパラレル世界だった、
 宇宙的恐怖、などなど、エトセトラエトセトラ……。
 そしてたいてい良い結果にならない。
 なぜなら『タイムパラドックス』が起きるからだ。
 時間の航行が乱され、混沌たる宇宙の泡沫
 ――ゆめである時間軸に守られたこの世界の因果律が狂い、
 観測者と被観測者の観音様のにゃんにゃん関係やらなんやら、
 それらの相対性が濁流に呑まれた様に一気に崩れて流さるので世界は崩壊を始め、
 もとから過飽和である水溶液に現れ出でた結晶である物理法則の
 とってつけた外皮を哀れにも丸裸にされて根幹からちょん切られる。



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:11:29.32 ID:p7AXdTQr0

 嗚呼ァ――、悲劇だ。

 最早それに縋るしかなかった人類は、生き物は、森羅万象自体、世界は一体、
 どうなってしまうのか分からないがどうかなってしまうだろう。
 再び混沌の秩序は沸騰を開始して、
 我々の世界を溶かし尽くし、
 自らの不確定の法則の内に仕舞ってしまうのかもしれない。



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:11:45.42 ID:p7AXdTQr0

ξ;゚听)ξ「この二つの矛盾が、混ざり合う事無く存在する。
      それは、世界は概念的に一本道ではない事を示す。
      もし一本であれば、あたしは前の記憶を忘れているか、
      今の記憶といっしょくたになって、次第に薄れて、忘れていくはずだ。
      だが、あたしの記憶は鮮明だ。慄然と固体と化し、
      混ざる事は無いだろうそれについてはあたしは、あたし自身に照明できるのだ。
      しかし、この先、さらなる矛盾がおきると、危険だ。
      何か起きるだろう。だから、気をつけよう。
      世界のほうも、あたしを味方してくれるはずだ。
      きっとそうだ。なんとかなる……さて、明日は、何が起きたっけ?」

 私は絶滅危惧種であるSF者だった。
 しかしその割には、説明がおろそかであるのには目をつむろう。
 私は自分がSFの主人公になるなんて思っても見なかった。
 だがそんなこと本気で思っているやつがいたら、そいつはただの馬鹿モノで、唾棄すべき存在だろう。
 今回の、私の頭の中に慄然と存在している『あたしは一人で寝ていた』『あたしは彼と一緒にいた』というパラドックス。
 この二つの記憶が互いに交じり合う事も何も無かったのでそういう壮大なことは起きていないようである。



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:12:44.37 ID:p7AXdTQr0

ξ゚听)ξ「学び舎の夏季休業も残り少なかったではないか。
     これでまたかなりを遊べるじゃあないか。
     これは得をした。
     得をしたぞ!」
 と喜ぶのも束の間。
 この時、まだレポートは書きかけであった。
 またあの大作を書き上げなくてはならないのだ。
 私は湿った万年床に突っ伏した。
 枕もとに空いたお酒の缶が並んでいた。
 ごみ箱もやまもりで溢れており、最早、この部屋全体がごみばこだった。
 更なる圧迫をもたらす環状本棚の中でも平気で住める女は、ここいらでは私くらいだろう。

ξ゚听)ξ「そういえば言っていたな、明日だ。明日に、彼が、あたしの家に、掃除しに、来るんだ……」
 私は溜息をつき、薄いせんべい布団をかけて寝た。
 SF者はたいていの場合、
 身に降りかかる厄災が少ないと「はっはっは、こやつめ」と楽観する。
 ……それもどうかと思うがね……。



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:15:51.15 ID:p7AXdTQr0

 翌日になって、起きてみると、床一面
 ――といっても布団が真ん中に永久に居座る上だが――が血まみれだった。
ξ゚听)ξ「歴史は繰り返される、時間は簡単には捻じ曲がらず、修復されていくということか」
 私は自分が生理だということを忘れていたということは露ほど思わない。 

 寝ぼけ眼で少し待つ。すると、友人が来た。
 鍵の壊れたドアを開け部屋に入った彼は、その惨状を見るや否やビックリして腰を抜かした。

 ξ゚听)ξ「へっへっへ、多い日も安心!」
(;^ω^)「多すぎだろうお、常識的に考えて」

 今回、彼は手摺りから落ちそうにならなかった。
 ので、階下の住人も駆けつけなかった。
 そういう風に時間は書き換えられた。
 私にはその方が都合が良かった。
 流石に同じアパートに暮らしている人にその後ずっと、不信がられるのは嫌だもの。
ξ゚听)ξ「まあ順調に時間が進んでいるのだからいいだろう……、あぁー、こっちも拭いてくださいよ」
 私と友人はせっせと掃除した。だがだいたいのせっせは、友人のものだったのだが……。



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:16:21.34 ID:p7AXdTQr0

 空き缶も、溢れたゴミも、全部袋に詰めて、ゴミ捨て場に棄てた。
 掃除が終り、私と友人は、コインランドリーに向かった。
 二人とも、白いかごを抱えていて少々前が見ずらかった。
 表通りから行こうとしたが、今日はやけに、車が多かった。
 事故があって、通行止めらしい。
 日差しも強かったので、イチョウ並木の方から行く事にした。
 しかし突然、表通りの渋滞に耐え切れなかった車に、並んでいた二人は吹っ飛ばされた。
 宙で弧を描いて、激突するアスファルトに顔面を削られる私はしかし生きていたのだが、当たり前だがもう長くは持たない。もう持たない。すぐ死ぬから。
 友人は、すで死んでいた。即死だった。胴体が二つに折れ、頭から血と脳髄が噴出していた。
 私は絶叫した。
 しかし音は出ない。グシャグシャに咽喉が潰れていたからだ。
 その――声にならない声が、胸の鼓動と共に、排出される血と共に、小さく小さく、潰れていって終には消えた。
 ねずみの声が何処からか聴こえたが、それもまた同じように消えた。
 代わりにどこかから、盛大な拍手の音が聞こえた……。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:16:45.03 ID:p7AXdTQr0

 劇場の幕が閉じる。


 観客が帰る。



 《パァ――世界が点滅・点滅、果して真暗に》
 《ナニモカモが無くなったような曖昧な世界に》
 《でも、客席からはモウ見えない高台には、彼女と彼の死体だけはちゃんと取り残されて、存在を確認できた……》


 《再開》は面倒だから流れた↓



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:17:19.11 ID:p7AXdTQr0

ξ;゚听)ξ「ハッ!!!」
 私は目を覚ました。
 目の前には、見慣れた、顔のような模様がある低い天井があった。
 時計を見た。
 午前8時、日時は9月9日。時間の飛んだ日に戻っていた。
 いや……これは。
ξ;゚听)ξ「あれは夢だったのか……」
 玄関には洗濯はされたが使われずに、埃をかぶっている衣服が大量に、かごに詰まっていた。
 私が布団から出ると、ごとりと、物音が押入れからした。
 何事だろうと、私は開ける。
 物音の正体は、額がぱっくりと割れた友人の首だった。
 私はそれをゆっくり持ち上げる。
 腐り終りゆっくりと乾きつつある彼の瞳に映る、自分の笑顔を見た。
 
 そして私は彼を脇に抱え、四畳半を出た……。



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:18:01.49 ID:p7AXdTQr0

 有機的な胎動を繰り返す階段は、踏みしめるごとに卵管から卵を産んだ。
 卵は気が気でないキミドリ色をしたアスファルトの雑草に受け止められて三ヵ月後に新しい階段の赤ちゃんが孵化した。

 二人はテクテクと、国道さんさんさんよん号線を跨いだ。
 またがれた国道5さんなななななななな7号線は桜が咲き乱れて火山が噴火した。

 とかげの尻尾を持つ空中都市の少女が、道端にチョークで絵を書いていた。
 それは洗練された文章でありながら冒涜的な絵画という矛盾をもつ彫像だった。
 彫像はゆっくりと立ち上がりとかげの尻尾を持つ空中都市から一人の少女を摘み上げ大地に墜とし、自分はたちまち消えうせたという無限ループを越えた別のお話はまた後に語ろうではないか。

 咽喉が渇いた二人は公園のミズ飲み場でミズを飲んだ。
 ポチャンとミズに漬けられた友人の断面から新しい友人が生えてきた。
 私はその友人だけを選別し、今まで持ってきた友人を土に埋めてミズをあげた。

 背後ではナニカの叫び声が聴こえたが、私と友人はテクテク歩いた。
でもなめらかな木製のマジックハンドに捕まえられてしまった。



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:19:09.32 ID:p7AXdTQr0

 ちくたくちくたくと叫ぶ!

 それは、構造上開かないのだけれども開く柱時計の針。

 それは、四本の時を刺す針。

 紙次元を突き抜けろ!

 チクタクマンがまた叫ぶ! 
 ありえない長針が、存在を立証できない短針が叫ぶ!

 それは四本でありながら、
 無数にして有数でありながら、
 無機物の有機物的なユーグリットだ!
 数学的なアーマメンツに等しいありきたりな子猫ちゃんだ!

 煌びやかで子供のプレゼントに最適です。ぜひお求めを……。



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:19:41.42 ID:p7AXdTQr0
 戦闘用アルテミットアーマーを装着した私
 私に装着されるアーマーは煌びやかでなめらか
 小さな友人は私の頭の上でこの先どうするのかを考えていた

 ――どうする
 ――なにもしないの
 ――こうなる
 ――なってしまうの
 ――あひゃーあ!

 ――私は核になった!
――世界は私になった!
――地球は私の子宮になった!

 子供が生まれ、子孫繁栄→絶滅する。

 死んだ、
 生きた、
 繰り返す!

 ああはいいでありながらガガガであるのだった。ああぁあ――。

 果してその後も二人は幸せに暮らしましたとさ。

 此れはハッピーエンドのお話でした。



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:21:13.31 ID:p7AXdTQr0

 《終幕、幕閉じ――拍手が鳴り止まない》
 《スピーカ音量を下げる》
 《BGM、SE切る》
 《再開幕》 
 《やっぱり、私がおかしいのかなあ……》

 世界が震えている↓



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:21:42.82 ID:p7AXdTQr0
ξ゚听)ξ「ハッ!!!」
 私は目を覚ました。
 目の前には、見慣れた、顔のような模様がある低い天井があった。
 時計を見た。
 午後12時30分。日時は9月9日。
 布団は血で染まっていた。
 洗濯物は玄関ではなく、私の足元にあった。
 ブルーバックとカーテンからの木洩れ日で目を覚ました私は少々ボゥーと考えていた。

ξ゚听)ξ「あれは夢だったのか……」
 携帯電話を探す。
 染め布団の下にあった。
 新着メールがあり『クビ』との題名だった。
 内容も、案の定だろう。だから開けることはしなかった。
 私は電話帳から、友人を呼び出す。電話の奥で、彼の着メロが鳴った。



71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:22:38.50 ID:p7AXdTQr0

( ^ω^)「『人ぉーの心を胸に秘め 終末の時ぃーに涙sブツッ』……もしもし僕ですが何か」
ξ;凵G)ξ「……うぇうぇ…………」
( ^ω^)「そうかそうか。イワンでも分かる、イワンはロシアンです、嗚呼ァ――、でもシベリアにペンギンはいないなあ」
ξ;゚听)ξ「あいぃ、ペングィン――――ッ!」
( ^ω^)「これはいい発音だ」
ξ;゚听)ξ「ペンギンって、誰のこと? あたし?」
 ( ^ω^)誰だってキミ、この前さ。一ヶ月前だお。掃除してやっただろう。
       その前の日、キミが家の銭湯で溺れたおなあ。
       そしてのぼせたお前をソコに連れて行ってそして……」
ξ゚听)ξ「あー」
( ^ω^)思い出したかお」
ξ゚听)ξ「うん……まあ……」
( ^ω^)「そうかあ……じゃあ、とりあえず喜んでくれお。僕は今暇だ。そっち行ってやるお」
ξ゚听)ξ「え、来るの?」
( ^ω^)「嫌かお? キミは絶対『一人でさみしいんです!』って言うんだろうと思ったんだが……」
ξ゚听)ξ「いやいや、嫌じゃないわよ。そうね。じゃあ、お願い、来てちょうだい。ちょっと、おっかない夢見てさ」
( ^ω^)「ほほう」
ξ゚听)ξ「でも、車に気をつけてね。絶対だからね」
 
 私は通話を切る。
 本来と矛盾している。
 ありえざるパラドックス。



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:23:46.69 ID:p7AXdTQr0

ξ゚听)ξ「私はあの時絶対に、この部屋で寝ていた。
     深酒で、二日酔いをしていたのだ。
     断じて銭湯に入っていない。だから、彼は前日、この部屋に来ていない。
     あたしと友人が一緒に掃除をしたのは、本来ならあたしがその前日に彼に電話で頼んだからだ。だのに……どうして……」
 私は、自分の頬を抓った。
 つめの跡がつくほど力強く抓った。とても痛かった。痛みは現実だ。
 ξ゚听)ξ「これは夢ではない。現実だ。
      だから思い違いだ。
      だってあのときあたしは酔っていたんだもの。
      記憶が飛んでいても、おかしくは、ない……」
 
 ――ゴトリ

 突然、押入れから物音がした。
 それに私は、薄い布団を被って震えることしか出来なかった。
 程なくして、友人が来た。
 私は震える指で押入れをさした。友人は、勇気を出して、押入れを空けた。
 どさりと重量感のある音とともにころげでたそれは一升瓶ほどの大きさの真っ白なねずみの死骸だった。
 あの、天井にいたねずみだろう。その証拠にもう天井からは物音一つしなかったのだ……。



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:24:22.44 ID:p7AXdTQr0

 友人はそれを丁重に葬る。
 アパートの小さい庭に、スコップで穴を掘り、そこに埋る。
 私は彼の後ろで、その一部始終を見ていた。

 友人によって埋められているねずみ。
 ねずみのウツロな目は、私の方をじっと見ていた。
 そしてその眼差しが
 『やあ楽しめたかい。でももっとたのしい事が起こるはずだよ、そして此れからね……』――と言った様な気がした。

 友人はせっせとねずみを埋める。
 ねずみが私に向けていた右目もナニモカモが、
 暗い土の中に埋葬された。



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:25:55.08 ID:p7AXdTQr0

 次第に、太陽はさら傾いていった。
 青っぽい夕闇に、二人とねずみの塚は照らされていた。
 私の頬に、ばんそうこうが張ってあった。
 血が出ていたので、ねずみを埋める前に友人が張ってくれたのだった。
  
 事を終えた二人は水道で、手を丹念に洗った。
 私は今までのおっかない事が水によって洗い流されていくように感じた。
 私は咽喉が渇いていた。そういえば起きてから、一口も飲み物を飲んでいないのだ。
 勢いを弱め、蛇口を上に向け、水を飲んだ。
 夏の終わりの水道水は生ぬるく、鉄の味がした。

 友人が手ぬぐいを出してくれたので、それで手を拭いた。ついでに顔も洗った。えらくさっぱりした。
 それもそのはずだ。この暑いのに私は風呂に3、4日入っていなかったのである。
( ^ω^)「まず家に来て、風呂入れお。その際だから、ご飯も食べていくといいお。
       ラーメンをつくってやるしヨーグルトもあるぞ。
       今日は親がいないが、泊まって行くが宜しかろう。
       番台はぬこさまのお立ち台だから気にするな。
       だが、僕はキミを襲いはしない。何故なら僕は――!!」
ξ゚听)ξ「ふふふ……、気に食わないけど、そうさせて貰うとするわ……」

 クライマックス突入かしらん↓



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:30:23.10 ID:p7AXdTQr0

 二人は同時に淡い宵やみを仰ぎ、双方同時に溜息をつき、同時に互いの手を握った。
 そして私は思った。
ξ゚听)ξ「こいつとなら、何があってもやっていけそうな気がする。
     こいつは、なにがあってもあたしの傍にいてくれる。
     どんな時代にいったって、世界が変わったって、死んでも死んでいなくても。
     あたしと彼は共にいるんだ、否、あたしがそうさせてやるんだ!」

 その決意は固かった。
 玄武岩より固いダイヤモンドの硬度でなお、こんにゃくの柔軟さをも持ち合わせていた。
 だが、だいたいのSFでそういう決意をすると、その決意を打ち壊そうとするやからが出てくるものだ。
 さて、この世界――モノガタリはどうだろう。
 
 ――ゴゴォオオオオオオオオオオオン!!

 嗚呼ァ、ヤハリ予期した突然であった。
 思えば叶う、この不思議。
 いや、願ってもない事だ。幸福至福不快絶望阿鼻叫喚地獄殺戮磨潰五語後g(ry……

 宵やみの向こう、もと来た私の下宿から、弩デカイ爆音が響きわたった!



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:31:32.46 ID:p7AXdTQr0

 ぼろい屋根を衝きぬけて、それは顕われた。
 その大きさたるやも、発する轟音に負けず、超越的に、超超弩級だった。
 マッド博士の置き土産、
 未来人からの贈り物、
 超能力の恩恵、
 彼女の願いが叶った先の答え、
 神の身代わりで在らせられるデウス・エクス・マキナの手による、
 階段の全エスカレータ化に秘められた謎にせまり、
 死神のカマとチーズカマボコの接点が明かされたが、
 やはりうめられていた宇宙人の秘密兵器か、
 はたまたSF的に考えて質量保存の決壊であろうやんややんやんとなんとの大騒ぎ、
 などなどそんなこんなを思い起こさせる、
 今まで見たこともない奇怪な流派の巨大な門――否、超大で無垢なる純潔の押入れ!

 宇宙的押入れの周囲を環状本棚が廻る!
 早川文庫が踊り、創元文庫が宙を駆けた! 
 河出が叫び、その咆哮を国書刊行会が叩き墜とした!



77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:32:23.35 ID:p7AXdTQr0

 世界の調律が完全に発狂し途切れ砕けてしまう。
 操っていたピアノ線はすべて千切れて飛んでった。
 弾ける黒塗りの箱、鍵盤すらも、卑しい難民の使う割り箸となるだろう。
 ぬめぬめ粘液を滴らせる押入れは何とかそいつ等を押しとどめてはいたが、もう限界だった。

 ふすまが内から叩かれ
ぎ      ち ぎち 軋
む、
撓む!
張り裂けん!
脈動する宇宙的ふすま!

 いあ! いあ! 外なる神よぉおお――!
 ――アウターゴッド、顕現し給え!

 嗚呼ァ――、
 狂気に犯され闇黒に充ち満ちる、
 邪悪に塗りつぶされる、
 遙かな銀河船団浮かぶ、
 永延の無窮の空を、

 ――見上げていた二人。

 残酷の競演の見物に飽きた私と友人は双方の顔を確認し、ニヤリと笑い、キスを交わした。



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:34:38.79 ID:p7AXdTQr0

 最愛の二人は幸せの絶頂。
 いあ!――興奮で、世界がまみれる。

 まみれた興奮が繋ぎとなり、世界が再構成する――完全再生!

 復活した世界は彼女たちの自由になった。
 二人の二人だけによる二人のための、
 スープの世界を、メンの世界を、嗚呼ァ――ワリバシの世界を!
 今ならヨーグルトもついているのでお徳です!

 相次ぐ次元連結爆発は祝電披露だ!
 病的な彩色の花火を挙げる――バンバン!
 人々の狂乱の叫びがさわやかな祝辞を届けた。
 あらゆる生命の事切れる音は鳴り止まぬ拍手だ――あはぁあああああ美しい!

 そして門の頭に引っかかった階下の住人だけが、その二人の結婚式を見届けてる。
 終いには誰かの見えない手により、襖は開かれる!
 世界が、銀河が、外宇宙が、ナニカよくワカらんものが!

 ――次々あふれ出る……――

 ジグジグジグジグ
        ジグジグジグジグ
ジグジグジグジグ
ジグジグジグジグ
  ジグジジグジグジグジググジグジグ……だっぱああああああああああああん!

 世界が転覆しちゃいました☆っ!



81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:35:10.51 ID:p7AXdTQr0

『 其処でも抱き合った私と友人の二人が居た。
  其処では男の私と女の友人が抱き合っていた。
  ある処では少女の私と友人が手を繋いで夕陽を見上げていた。
  しかしな場所では私は友人の娘だった、その逆も然り。
  別の場所では最早人間ではない、柴犬であり、ブタだった。
  鼻行類になって滴る鼻で愛撫した。
  チョウチンアンコウであり、恐竜でもあった。
  深海で愛し合い、化石になっても離れる事は無かった。
  私は森であり、下草が友人だった。
  土であり、母なる大地である私の恥丘に群生する陰毛だった
  また違うところでは、生物ですらなかった。
  歯車が廻り蒸気舞う生産工場の一部だった。
  狂い無きリズムで絡み合って愛撫しあいあって己たちの存在を確認していった。
  そして存在が存在しない世界でも、私たちは限りなく存在し、
  考えもつかない方法で、二人の存在を立証していった。



82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:35:37.80 ID:p7AXdTQr0

 『私と友人は宇宙の中心だった!


 『世界の中心で『愛』を叫んだ!
 

 『――愛は永劫なり。
  真実の愛は消え去る事無く、超次元的に存在化する。
  具現化され、
  荷電粒子となり、
  宇宙の始めから終わりまでの間を周回する衛星なればこその事。


 『其処はアラユル場所からの二人が集まる駅のターミナル。
  最愛なる二人よ、永遠になりて、其処へ集え。
  集い集って見せ合い魅せられ愛し合い去り合って、
  永劫のぐるぐるを続けろよ、阿呆ども……』


 《いったん閉幕、私は一息する/自作の台本を読む→そして以下演説↓》

 私の主張↓



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:36:01.19 ID:p7AXdTQr0

ξ゚听)ξ『叫べ、愛するものの名を!
     そして絶望せよ、絶望すらも滅するコノ世界の中で!
     しかし希望せよ。意志の力が支配する、コノ世界で!
     一緒に居たい、共に生きたい、相思相愛の恋人を!
     嗚呼ァァア――憎い、私は憎悪するぞ!
 
ξ゚听)ξ『私は憎い
     私は彼と共に歩めなかった
     私は彼と共に居たかった
     私もコノ世界で、意志を持ち、彼と出会いたかったのに……
     それをソレを出来たアラユル世界を憎悪する!

ξ゚听)ξ『そうだ、コノ物語は、嫉妬だ
     私が掴めなかった未来への、在り得なかった明日への、
     限りなく滑稽な、嫉妬だ!
 
ξ;凵G)ξ『醜悪の塊である私の、すごく意地悪な私の
     その私の、美しくって綺麗な奴等に与える、手前勝手の試練だ!
 
ξ;凵G)ξ『越えて見ろよ、コノ世界の、私と友人
     二人で生きて、必ず添い遂げろ!



84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:36:41.87 ID:p7AXdTQr0

ξ゚听)ξ『それが、私の
     ――『私』、が
     ――『私』、の臨む
     ――『私』、として存在したかった、
     アラユル世界への――○○だ!

ξ;凵G)ξ『いあ! いあ! いざ、開かれよ、アラユル事象よ、事態よ、顕現し給え、外なる神!

ξ;凵G)ξ『嗚呼ァ――爛れた未来を掴んでただ一途に滅び逝けよ、いあいあ!!』

 ポルックスアーマメンツ、意味ワカラン言葉使うな! ボコッオ!↓



85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:38:11.08 ID:p7AXdTQr0

 《BGMはフェードアウトし、画面も徐々に暗く暗くなっていく》
 《この白文字ももう少しで、消える》
 《私の言葉も消える》
 《存在が、消えていく》
 《あ》
 《そう》
 《だ》
 《貴方は、ゲームをクリアしました》
 《おめでとう、おめでとう、おめでとう》
 《ここで拍手のSEを鳴らす》
 《パチパチ》
 《パチパチパチ》
 《パチパチ》 
 《パチ》
 《そしてウィンドウの内には黒い闇だけが残る》
 《一瞬、思考停止》
 《再開》
 《何か現われる》
 《ゲームクリアの文字だろうか》
 《再び、何が、再開幕かしらん》
 《あ、おわり》
 《だそうですはい》

 以下最終章↓



86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:38:55.38 ID:p7AXdTQr0
 盛大な拍手が飛び交う最中のことであった。
 いまだ幼い風貌残る母の隣に座っている少女の私の瞳には、涙が溢れていた。
ξ゚听)ξ「こんなにもおもしろいモノがこの世にはあったのか!」
 そんな事を考える小さな私がそこに居た。

 瞬きは――一瞬

 そして、瞼を開けると視点は高くって――私は大人になっていた。
 
 観客は、誰も居ないけど、ただただライトアップされた舞台。
 其処に魅せられる私。私も舞台に立ちたい。舞台が私を呼んでいた……。
 
 私は大人でありながらこれからも少女であり続ける、永遠の舞台上の少女の彫像となった! 

 誰も居ない客席を前に、延々と劇を続ける、道化となった!
 
 道化は動かぬ口で挽歌を謳う↓



87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:39:48.80 ID:p7AXdTQr0
 
 ――それは、在り得ざる明日への通告
  ――それは、今だ見えない群雲に陰る深淵
  ――それは、遥かな希望を物語る、最悪な青春アンチテーゼ……

 《ぽんぽんぽんぽんぽ!←太鼓さんの音!》
 《きんきんっききんきん!←木のアレ》
 《^^^閉幕^^^^^^^^^^〜》
 《終》
 《終→いとふゆ》



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