- 3: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 00:14:26.01 ID:Oz8j9xMEO
- ある日の帰り道。
(´・ω・`)「ん?何だろ、この箱」
双六に使うようなサイコロのような箱を、僕は拾った。
ススで汚れたように黒くなっていたその箱は、
耳元で振るとからんからんと軽い音がする。
その時は特に理由は無かったが、
きっと僕はこの時点でそれに心惹かれる何かを感じ取っていたのかもしれない。
まさか、この箱のせいであんな目に遭うなんて・・・
(`・ω・´)「ショボン、早く帰るぞ」
(´・ω・`)「あ、待ってよ兄さん」
前を歩いていた兄さんに呼ばれ、僕は慌てて追いつく。
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 00:16:13.87 ID:Oz8j9xMEO
- (`・ω・´)「ショボン、何だその箱?」
家に帰ってくると、僕の手にある箱を見て兄さんが質問してきた。
(´・ω・`)「さっきそこで拾ったんだけど」
(`・ω・´)「・・・」
兄さんは怪訝そうな顔をする。
(`・ω・´)「何だか厭な感じがするな、
捨てちゃえよ、そんな箱」
(;´・ω・`)「・・・」
(`・ω・´)「何だよ・・・そんな顔するなよ」
兄さんには昔から、妙に鋭いところがある。
特にオカルトなもの・・・いわゆる霊感があると自分でもよく言っている。
そういうのをあまり信じていない僕には、兄さんの時折見せるこういう態度には正直うんざりしていたのかもしれない。
(´・ω・`)「別に、いいじゃん」
(#`・ω・´)「・・・!」
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 00:19:28.69 ID:Oz8j9xMEO
- 突如兄さんは立ち上がると、僕の手から箱を取り上げる。
(#`・ω・´)「何だこんなもの・・・こうしてやる!」
ガシャン、ゴロン!
ゴミ箱に吸い込まれる黒い箱。
(;´・ω・`)「あぁっ!何するんだよ!」
(#`・ω・´)「ハァッ、ハァッ・・・」
怖かった。
兄さんの豹変ぶりではない。
あの箱が自分の手から離れた瞬間、何かが切れたような感覚があったのだ。
僕はゴミ箱に手を入れて、あの箱を探す。
(;´・ω・`)「・・・」
(;´・ω・`)「・・・無い・・・なんで?」
(#`・ω・´)「もういいだろ、そんな箱!」
兄さんは怒ったまま、僕の部屋を出ていった。
結局、箱は見つからなかった。
確かにゴミ箱の中に入ったはずなのに。
- 8: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 00:21:14.97 ID:Oz8j9xMEO
- (#`-ω-´)「・・・」
(;´-ω-`)「・・・」
その日、兄さんとは一言も口をきかずにそれぞれの部屋に戻って寝た。
なんだってんだろう。
兄さんは時折ああいう態度を見せることは確かにあった。
その度に僕は兄さんの言う通りにしてはいた。
昼のクモを殺さずに外に逃がすようにしたり、
『夜に口笛を吹くと鬼がやってくる』と言われてからはしないようにしていた。
そういった迷信じみたものを押し付けてくる以外はごく普通の兄であった。
でも、僕だってもう5年生だ。
いい加減子供扱いしてお節介を焼かれるのは嫌だった。
(´-ω-`)「(明日、兄さんに謝ろう)」
それでも、兄さんのことは嫌いなわけではなかった。
僕が明日謝っておけば、きっと笑って許してくれる。
きっと。
- 12: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 00:24:26.56 ID:Oz8j9xMEO
- ・・・翌日。
(´・ω・`)「おはよう、兄さん」
(`・ω・´)「おはよう」
よかった。
いつもの兄さんだ。
(´・ω・`)「あの・・・昨日はごめん」
(`・ω・´)「昨日?何の話だよ?」
あぁ。
何にもなかったことにして、終わりにしたいんだな。
兄さんなりの気遣いを無碍にするのもあれだな。
(´・ω・`)「ううん、何でもないよ」
(`・ω・´)「何だよ、ヘンなやつだな・・・」
兄さんが笑う。
つられて僕も笑った。
- 13: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 00:26:39.66 ID:Oz8j9xMEO
- 学校に行く。
授業を受ける。
授業が終わる。
あっと言う間に放課後である。
(`・ω・´)「帰るぞ、ショボン」
(´・ω・`)「うん」
兄さんと他愛の無い話をする。
兄さんは僕の分のランドセルを持ってくれる。
兄さんは今日はやけに優しい。
(´・ω・`)「兄さん?」
(`・ω・´)「何だ?」
箱のことは・・・もういいや。
いつもより優しい兄さんがいてくれる。
それでいい。
- 16: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 00:28:55.62 ID:Oz8j9xMEO
- (´・ω・`)「今日のおやつはケーキだよ、兄さん」
僕と兄さんと2人分のケーキを持ってくる。
(`・ω・´)「・・・ショボン、俺の分も食べていいぞ、
俺は勉強するから部屋に戻る」
(´・ω・`)「いいの?」
返事をしないまま部屋へと向かう兄さん。
(´・ω・`)「・・・」
折角なのでケーキは2つとも頂いた。
うまかった。
(´・ω・`)「ごちそうさまでした」
―シャキンの部屋―
(`・ω・´)「綺麗な箱だな・・・ずっと見てても飽きない」
シャキンは乾いた布で黒い箱を磨く。
近づけたり、遠ざけたりしながらその箱に見とれていた。
■「ケ・・ケケ・・」
(`・ω・´)「?」
- 18: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 00:31:07.52 ID:Oz8j9xMEO
- ―ショボンの部屋―
思い返して見ても今日1日不自然に優しい兄。
まるで負い目でもあるみたいだった。
(´・ω・`)「(兄さんもきっと・・・僕に悪いって思ってるのかも)」
そんなことを考えながら僕は部屋の片づけをしていた。
(´・ω・`)「あれ?」
ゴミ箱の中には兄さんがいつも持っていたバッジが入ってた。
(´・ω・`)「どうして兄さんのバッジがこんなとこに・・・」
「・・・・ああああ!!!」
隣の部屋から悲鳴が聞こえる。
兄さんの部屋だ。
(;´・ω・`)「兄さん、どうしたの、兄さん!」
呼びかけても返事がない。
僕は兄さんの部屋へと急ぐ。
- 20: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 00:35:07.68 ID:Oz8j9xMEO
- (;´・ω・`)「兄さん!!」
( ■ω・´)「ショ・・・ボン・・・逃げ・・・!!」
シュウウウ・・・
兄さんの顔には黒い何かが貼り付き、煙を発していた。
あの箱だ。
あの箱から兄さんを助けなきゃ。
(´・ω・`)「うわああああああああああ!!!!」
近くにあった筆箱で、兄さんの顔に付いた箱を叩き割る。
(;´・ω・`)「ハァッ、ハァッ・・・兄さん!」
(;;ω・´)「ショボン・・・」
兄さんの顔は箱が貼り付いていた部分が、ヤケドのように赤く腫れていた。
(´・ω・`)「あの箱は・・・」
(;;ω・´)「・・・」
その日、兄さんは病院に行った。
どうやら顔の方は大事には至らないようだった。
- 22: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 00:37:08.71 ID:Oz8j9xMEO
- 後日、兄さんが知り合いの神主さんにあの箱の欠片を見せたところ、
『九十九神の祟り』では無いかと言われたと言う。
なんでも、物には長く使うと魂が宿るらしく、
あの箱にはそういう力が僅かに感じられたというのだ。
僕と兄さんは集めた箱の欠片をその神社へ持ち込み、お祓いをしてもらった。
数日後、兄さんの顔も元通りに治り、再びいつも通りの日常が戻ってきた。
もうあんな体験をすることはそうそうないだろうと思いたい。
(´・ω・`)「ん?何だろう、この白い箱」
(`・ω・´)「ショボン、早く帰るぞ」
それを拾うのは・・・やめておいた。
□「チッ・・・ケケケッ」
おしまい
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