- 53: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 01:42:10.01 ID:K/C/ggaIO
-
ブーンは、志半ばで倒れた友人の代わりに、そのトラ猫を傍らに連れて行くことにした。
もちろん、死体はそのまま放置して。406に。
( ^ω^)「ネコ、怪しい物があったら教えてくれお」
(,,゚Д゚)「はにゃ」
( ^ω^)「ないかお」
猫が仲間になったおかげで、調べごとはずいぶんはかどった。
とは言っても、目立った収穫はないが。
しかし、「ここにはない」と分かっただけでも進歩だ。
ブーンはそう割り切って、探索を打ち切った。
ただし、404号病室のことだけは忘れきれずにいた。
( ^ω^)(あそこに、何かある気がしてならないお……。そのものでなくとも、ヒントになる何かが……)
- 55: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 01:45:13.81 ID:K/C/ggaIO
-
(,,゚Д゚)「はにゃ!」
( ^ω^)「お?」
ふらふら考えごとをしながら歩いていると、今までにないタイプの扉を見つけた。
重そうな金属製の、堅牢な扉、鍵付き。
何かありますよ、とそれは言っていた。
( ^ω^)「うーん……」
ガチャガチャドアノブを回してみるが、しっかりがっちり、鍵がかかっているようだ。
これでは押し入りようがない。
( ^ω^)「……どこかに鍵があるはずだお。探さなきゃ……」
('A`)「その必要はない」
きびすを返したブーンを、復活したドクオが呼び止めた。
- 59: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 01:48:16.52 ID:K/C/ggaIO
-
(#゚Д゚)「フーッ!」
(#'A`)「はいはい大歓迎大歓迎……」
(;゚ω゚)「うわ、でたああああぁぁ!!」
(#'A`)「でたああああぁぁじゃねぇっ!! 話を聞けっ!」
ドクオはどこで拾ったか、ガラスの破片の先端をブーンに突きつけた。
ブーンが一瞬凍りつく。
(;^ω^)「じょ、冗談だお……」
('A`)「フン」
ドクオはまだ機嫌悪そうに、ガラス片を手中に返した。
('A`)「見たところ、この鍵が開かなくて困ってるみたいだな」
( ^ω^)「うん……そのガラスでピッキングでもするつもりかお?」
('A`)「まさか。俺は考えたんだ」
ドクオは、ガラスでドアノブを、トントンと叩いた。
- 61 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 [sage] 投稿日: 2008/05/03(土) 01:51:47.05 ID:K/C/ggaIO
-
('A`)「理科の実験のとき……ビーカーやフラスコをはじめ、実験器具は9割がガラス製だった」
( ^ω^)「あんたの思い出話なんて」
('A`)「405病室の強力な酸……もしやと思って試したが、やはりガラスは溶かせなかった」
('A`)「少し手間はかかるが、こいつであれをすくって、この鍵のところにかけてやれば……」
( ^ω^)「……前半部分要らないけど、納得したお」
('A`)「よし、なら早速始めるぜ!」
言うが早いか、二人は405の前まで行き、
手に触れないほどまで液体をすくい取ると、こぼさないようにゆっくり運んだ。
- 63: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 01:54:10.60 ID:K/C/ggaIO
-
水あめみたいにどろどろな液体を、鍵穴にこすりつけた。
じゅわり、と数多の気泡ができ、鍵穴が消え去る。
('A`)「……まだやらないとダメそうだ。むしろ、ドアノブの周りに塗った方がいいかもしれない」
懐中電灯の明かりで消えた鍵穴の中を覗きながら、ドクオは言った。
( ^ω^)「じゃあ、僕が取ってくるお」
('A`)「いや、俺が行く。お前じゃ指を溶かしそうだ」
ドクオは、ブーンが持ったガラス片を引ったくって、また廊下を走り出した。
( ^ω^)「……ドクオ?」
懐中電灯も持って行かれ、真っ暗闇の中、ブーンは首をひねった。
- 64: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 01:58:19.76 ID:K/C/ggaIO
-
閂のあるあたりを切り取るような四角の形に、ドクオは何度も往復して液体を塗る。
ライトで照らし、見てみると、既に閂は大半を溶かしてしまっているようだった。
( ^ω^)「もう、これなら」
ブーンは体をぎゅ、と捻ると、大きく下げた右足を放った。
バァン、とドアが唸り、閂が折れ、道が開かれた。
(;'A`)「この部屋は……?」
(;゚Д゚)「はにゃー……」
中に入ってみると、様々奇怪な電子音があちこちから聞こえる、不思議な部屋であった。
彼らにはよくわからない数字が映し出されたモニターやら、幾百ものボタンがついた操作盤。
そんな部屋にひとつ、緑色のランプが灯っていた。
- 65: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 02:00:46.49 ID:K/C/ggaIO
-
( ^ω^)「……『復旧』?」
ランプの下には、そんな文字とともに、ボタンがあった。
('A`)「……もしかしたら、この停電がなんとかなるんじゃないか?」
( ^ω^)「ひょっとしたら、死体がゾンビ化して蘇るのかも」
(;'A`)「え、やめろよ!」
( ^ω^)「押してみるお」
(゚A゚)「お゛い!!」
ドクオは必死なツッコミを入れたものの、ブーンはそれを無視し、ぽちんとボタンを押した。
(;‐ω‐)「わっ!!」
(;゚A`)「くうっ!!」
(;-Д-)「ハギャッ!!」
瞬間、周囲が眩しいくらいに明るくなる。真っ白な光が、辺りに広がった。
- 67: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 02:03:14.55 ID:K/C/ggaIO
-
(;‐ω^)「電気が……付いたのかお」
やがて、ゆっくり目を開いたブーンが言った。
紛れもなくそこには、真っ白な世界が、懐中電灯で垣間見えていた機材がそこかしこに置いてある世界があった。
('A`)「久しぶりだから、眩しくてしょうがないぜ」
(,,゚Д゚)「はにゃー」
ドクオに合いの手を入れるように、猫は鳴いた。
二人と一匹はその部屋も軽く見回してから、また廊下に出た。
( ^ω^)「……結局、404号室は開かなかったお」
ブーンはがっくりと肩を落とした。
よほどあの部屋が気がかりだったのだろう。
- 69: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 02:06:10.92 ID:K/C/ggaIO
-
('A`)「……いや、もう一回確かめようぜ」
ドクオは、いやに確信のこもった声で、腕を組んだ。
('A`)「今のことで、何かしら変化がでたかも知れん。まずは見に行こう」
( ^ω^)「……うん」
ブーンは、期待はしない、といった顔で頷き、歩き出した。
暗いときはずいぶん遠くに感じられた各部屋も、電気がついてみればすぐだった。
億劫な気持ちが、自然と歩みを遅らせていたのだろうか。
( ^ω^)「じゃあ、開けてみるお」
('A`)「あぁ」
(,,゚Д゚)「んにゃぉー……」
猫は、警戒するような声を上げてから、たったと逃げていってしまった。
そいつだけは、その部屋に何があるか知っていたようだ。
- 71: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 02:09:08.60 ID:K/C/ggaIO
-
404のドアを開く。
閉ざされた空間だったそこに、広がりがあった。
ブーンは迷わず、部屋に飛び込み、そして気付いた。
(;^ω^)「……まさか……」
(;'A`)「おい、これ……!」
そこにあったのは、すでに白骨化した死体だった。
( ^ω^)「やっと……やっと見つけたお……」
ふらふらとブーンは、死体に近づいていき、ベッドのそばでひざまずいた。
(;'A`)「おい、ブーン! 本当にお前のなのか!?」
骸の手を取ろうとするブーンに、ドクオはヒステリック気味に叫んだ。
( ^ω^)「間違えると思うかお?」
ブーンは、いたく幸せそうな表情で頷いた。
( ^ω^)「これこそ、いなくなった僕のカーチャンの骨だお」
- 72: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 02:12:30.85 ID:K/C/ggaIO
-
('A`)「そうかよ」
ドクオはぶっきらぼうに言った。
('A`)「それなら間違いないんだろうな」
( ^ω^)「もちろんだお、ご理解感謝するお」
ブーンは今までにもいくつか、骸骨を見つけてきた。
しかし、それらに対しては、ブーンはこれは違う、と根拠なしに言ってきた。
そのブーンが、これだと言うなら、大方間違いはない。
( ^ω^)「……カーチャン」
ブーンは頭蓋骨を撫でた。その周りには、今も動かず、幾千もの毛髪が横たわっていた。
素人でも分かることだが、白骨化した遺体は死亡からかなりの時間が経っている。
こんなになるまで見つけられなかったことが、そうとうブーンは情けなくて、申し訳なかったのだろう。
彼は、どんな恐怖にも緩まなかった涙腺をついに決壊させ、涙を流した。
( ;ω;)「……遅くなって、すまなかったお……」
- 74: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 02:16:04.30 ID:K/C/ggaIO
-
('A`)「それで……どうするんだ、ブーン?」
しばらく泣いて、泣き尽くして、するりと立ち上がったブーンに、ドクオは少し迷ってから声をかけた。
( ^ω^)「……カーチャンを連れて帰るお。……お墓に入れてあげないといけないんだお」
('A`)「それはそうだが、どうやって……」
( ^ω^)「体は、仕方ないお……。せめて、頭骨だけでも持って帰るお」
ブーンは何度も謝りながら、脆くなった首の骨を折り、頭の骨を大事に抱えた。
('A`)「……小さいな」
( ^ω^)「うん……一人で寂しかっただろうお……」
ブーンはそれを、大事にバッグにしまい込み、無理やり明るい顔を作り、言った。
( ^ω^)「じゃあ、帰るかお!」
- 75: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 02:18:21.38 ID:K/C/ggaIO
-
( ^ω^)「……」
坂道を下る毎に大きくなっていく、遊園地の喧騒が、ブーンの耳に障った。
(;'A`)(ジェットコースター乗りたい、なんて言える雰囲気じゃないよな……)
ドクオは近くの石を蹴ると、おとなしく歩き続けた。
あまりに暗い顔の二人を見て、ゲートキーパーの女性は驚いていた。
('A`)(まぁ、お化け屋敷は結構面白かったし、いいか)
ドクオはうんうん頷いて、今度、また来よう、と決心した。
どうせこれから、時間はいくらでもあるんだ、と。
バス停に着き座ると、少しして、遊園地のロゴが入ったバスがやって来た。
('A`)「ほら、いこうぜ、ブーン」
( ^ω^)「……ん、分かったお」
- 77: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 02:21:03.68 ID:K/C/ggaIO
-
乗客は、ドクオとブーン、それに若い男女が一組のみだったが、バスは時間どおり運行した。
( ^ω^)「……でも、良かったと思うお」
('A`)「そりゃあ、長年夢見てきたことだったしな」
ブーンは窓の外を見て、天国の母を憂愁するように呟いた。
('A`)「なぁ、ブーン」
ドクオは、彼のそういう顔が、いちばん嫌いだった。
('A`)「俺と合流するまで、どんなことがあったんだ?」
( ^ω^)「あぁー……何があったっけ」
ブーンはすこし、考え込んで、こう言った。
- 79: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 02:24:37.34 ID:K/C/ggaIO
-
ブーンは思い出した事柄から、ゆっくり語っていった。
( ^ω^)「まず、ふらふら歩いてたら、いきなり電気が消えたお」
('A`)「俺もだったな。指先に何か触らなかったか?」
( ^ω^)「あぁ、僕もそうだったお! 何かが触って、いきなり停電したんだお」
('A`)「何だったんだろうな、あれ……他は?」
( ^ω^)「変な医者に襲われたり、きをつけろ……とか変な文字があっただけだお」
('A`)「へぇ」
ドクオはずいぶん興味のなさそうな声で頷いた。
確かにこんな事は、並大抵のお化け屋敷ではよくあることだ。
('A`)「でもよ、」
- 81: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 02:27:24.26 ID:K/C/ggaIO
-
『何か、忘れてるんじゃねえか?』
- 84: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 02:30:26.76 ID:K/C/ggaIO
-
(;^ω^)「……え?」
『何か忘れてるんじゃないか、と訊いたんだ』
ブーンは思わず呆けた声をあげた。
ドクオの唇は全く動いていない。
(;^ω^)「ドクオ、腹話術できたのかお?」
('A`)「あ? いきなりどうした?」
(;^ω^)「え?」
カップルの男が何かを言っている感じもしない。
だったら、この三色目の声は、誰のものなのだろうか。
バスが、急激にスピードをあげた。
『次は、あの世でございま〜す』
至極楽しそうな、しかし、しっかり恨みを込めて、その声は言った。
- 87: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 02:33:07.31 ID:K/C/ggaIO
-
( ゚ω゚)「……」
そんな声の調子に覚えがあった。
402号室で見た、あの文字を黙読した時の自分の声だが。
ブーンは妙な確信を得て、何も言えなくなった。
そもそも、現実にバスはスピードを上げて、暴走を始めていたのだし。
('A`)「スマン、ブーン」
( ゚ω゚)「何だお」
ブーンは怖い顔のまんまドクオを見た。
('A`)「こんなになるまで確信がもてなかったんだ……やっぱり俺は死んだんだ。だって今、ちっとも怖くないぜ」
( ゚ω゚)「……ふっ……はは、ドクオまで、何バカなこと言ってんだお」
ドクオは至極真面目な顔をしていたが、ブーンは息を切らしながら、ゼエゼエ嘲った。
('A`)「すまない、ブーン。俺は死んじまった。それに、お前がこれから運転士に殺されるって
何となく分かってたのに止められなかった。だけど、最後に言わせてくれ」
ドクオは、辺りに細胞を散らすように、小さな暴風を起こしながら消え去った。
('A`)「ありがとよ」
- 89: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 02:36:04.97 ID:K/C/ggaIO
-
( ゚ω゚)「消えた……お?」
たった今までドクオが居た場所に手を伸ばしても、そこに存在はなかった。
ドクオの言葉は本当だったのだ。彼は死んだ。
恐らく、足元を猫がすり抜けた時か、酸で指を溶かしでもしたか。或いは……。
いや、それよりも。
( ゚ω゚)「あの運転士が、僕を殺す……?」
バスは、車通りの少ない、崖っぷちの道路を猛スピードで往っていた。
ブーンは立ち上がり通路に出て、慣性に逆らいながら、運転席へずんずん歩んでいく。
カップルはどういうつもりか、全裸で激しいセックスをしていた。
『お客様ー、車内での射精はご遠慮くださいませー』
( ゚ω゚)「おい、貴様」
ブーンは乱暴に、運転士の帽子を弾き飛ばした。
( ´_ゝ`)『それと、走行中、通路は立ち歩かないようお願い申し上げます……内藤さん』
- 91: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 02:39:28.79 ID:K/C/ggaIO
-
( ゚ω゚)「……何だお、お前は。どうして僕の名前を知ってるお」
( ´_ゝ`)「あなたこそ、私の名前をご存知ないのですか?」
男は、前から目を離さずに言った。
( ゚ω゚)「答えろ!!」
( ´_ゝ`)「この顔を見ても、覚えてないのか、クズ」
かと思えば、逸り立つブーンの顔面に、全力の裏拳を叩き込んできた。
ただでさえバスの速さのせいで、ふらついていたブーンは、ステップのほうに倒れ込んだ。
( #)゚ω゚)「お前は……何者なんだおっ!!」
( ´_ゝ`)「分からないなら、教えてやるよ……」
- 94: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 02:42:18.00 ID:K/C/ggaIO
-
( ´_ゝ`)「俺の名前は、流石兄者……貴様に弟を殺された、流石兄者だ」
( ゚ω゚)「……さすが……流石だって!? ……まさか、あの弟者の……」
ブーンの脳裏に、運転士が腫れ上がったような顔が浮かんだ。
焼け付くような、痛みとともに。
( ´_ゝ`)「ああ、貴様らに6年間、死ぬほどに苦しめられた、流石弟者の兄だ……」
兄者の静かな声が、余計に恐怖を駆り立てる。
(;゚ω゚)「や、やめるおおぉっ!! あの事は、お金を払って終わらせたはずだお!!」
( ´_ゝ`)「金だと? それは、お前の母親が内臓を売って寄越した紙束のことか?」
兄者は、わざとそれをゆっくりはっきりと話した。
ブーンの心臓が、ドクンと揺らいだ。
- 96: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 02:45:17.51 ID:K/C/ggaIO
-
( ゚ω゚)「内ぞ……カーチャンが!? ちょっと待つお、それはどういう……」
( ´_ゝ`)「知らなかったか。ひどいお笑い草だな……。貴様の母親はな、息子の罪を背負って、生身を金にしたんだ」
(#´_ゝ`)「だが、お前は何をしてくれた! 張本人である貴様が、何故のうのうと生きていやがる、人生を謳歌していやがる!!」
(#゚ω゚)「う……五月蝿ぇっ!! お前だって、実の兄の癖して、弟者を助けに来た事なんていっぺんきりも無かっただろうが!!」
( ´_ゝ`)「……あぁ、そうさ。だから、俺も貴様と死ぬ。この罪の償いのために、弟者のために、俺はお前を殺す!!」
アクセルが、一層強く踏まれた。
タイヤは一瞬空回りして、地面を噛むとさらに高速で回転する。
(;゚ω゚)「馬鹿野郎、バスを止めろ! そんなのお前の自己満足だお、こんな事したって弟者は――」
( ´_ゝ`)「あぁ、還らねえさ……。だが、それがいい!! もう弟者に合わせる顔なんて無いんだよ!!」
( ゚ω゚)「この――」
強い揺れを車内に与えながら、バスはガードレールを正面から突き破った。
- 98: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 02:48:04.92 ID:K/C/ggaIO
-
( ´_ゝ`)「……弟者……」
落ちていくバスの中、窓に張り付いたブーンを眺めながら、兄者は呟いた。
( ´_ゝ`)「……すまない。本当に……あぁ、言葉足らずが申し訳ない……」
( ´_ゝ`)「……もう少し上手い、謝罪の言葉が浮かんだら良いんだが……。まぁ、」
兄者は、制帽をかぶり直し、微笑んだ。
『俺は弟者のように死んだんだ。きっと、地獄で会えるよな』
『……その時は、俺を気が済むまで殴ってくれ。俺が殴られるべき時に、殴られなかった分を』
『さぁて……間もなく、あの世でございます』
一足先に、フロントガラスを割って墜ちていったカップルを見ながら、兄者はマイクを持ち、いった。
- 101: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/03(土) 02:51:03.73 ID:K/C/ggaIO
-
その後、眼下に広がる森の闇に消えていったバスに乗っていた人々の行方を知る者は、誰もいなかった。
3人分の断末魔を聞きながら、最期に、ブーンは罪の重さが見えた気がした。
( ω )「僕は、こんなつもりは……」
かつてのブーンは、何の理由もなく、嫌いな人間を虐げるほか、考えていなかった。
そんな過去が、この事故を引き起こした。
それを認めないほど、ブーンは強情ではなかった。
だから、多くの死を呼んだ死神は、伝わろうが伝わるまいが、言った。
( ω )「ごめんだお……弟者……」
終
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