- 31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:17:11.36 ID:p7AXdTQr0
投入口に一二〇円を入れ、ボタンを押すと、件の『過去コーラ』がごろりと出てきた。
私は腰をかがめて取り出し、その冷たさに頬擦りした。
「秋になった、というのは嘘っぱちではないか」と言われる
――でも毎年言われてるような気がする――そんな近年である。
それは二酸化炭素だけではなく海中の
『めたんはいどれーど』と呼ばれる物質が原因だそうだが、
テレビで見ただけなので、『めたんナニガシ』が一体、
どのような悪さをするのかを、私はわかってはいない。
だが、そういうしったかを言いたいのも人の常である。
しかしたまの木枯らしがひゅうッと一瞬通り過ぎる時だけは昔と変わらないのだ。
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:17:35.21 ID:p7AXdTQr0
私の去ったあと、金色まがいの葉っぱが、
風に飛ばされ、あやふやな秋空に舞い、
散り、
どこかに消えた。
そして飛び散ったイチョウのように、
古臭い自動販売機も忽然と姿を消していた。
代わりに、
熱せられたアスファルトから、
陽炎めいた霧が立ち上り始めていた。
どこかでねずみが、
チュウと鳴いた……。
ナニカが転々回り始めるかも↓
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:17:52.39 ID:p7AXdTQr0
コインランドリーについて、私は血まみれの洗濯物を放り込み、
蓋を閉め、小銭を入れた。
ごうんごうんと洗濯機が回転し始めるのを確認し、
先ほど買った『過去コーラ』を飲もうとプルタブをあける。
その時、成分表示なにがしが書いてあるはずの欄が、
すっぽり消えており、代わりに危なげな
髑髏〔どくろ〕のマークがはいっていた。
注意書きもあった。
私はそれを声に出して読み上げた。
客が他にいないので、声の大きさを気にする事は無い。
ξ゚听)ξ「『おいしくないです』……ってお馬鹿か?」
そんな事、缶に書くやつがいるだろうかと。
しかし現にその症例があった。
これが現実だ。
味も現実だった。実に、まずい。
しかしそのまずさが癖になる者も出てくることは、想像に難くない……。
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:20:35.52 ID:p7AXdTQr0
5分後――飲み終わる。
私はげっぷをし、手をパタパタ振った。
いつもはげっぷの息をどこか遠くへ散らすためだが、今日は違った。
妙に気温が高く感じる。
室内の壁掛温度計をみると、29度とあった。
温暖化此処に極まれりである。
端のテーブルの上に先ほどは気付かなかったが週刊誌がおいてあった。
1ヶ月ほど古いものだったが真新しいような感じを讃えている。
暇つぶしにと椅子に座り、足を組む。
私は置き去りにされた雑誌を読み始めた。
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:21:31.59 ID:p7AXdTQr0
《特集記事:先月始まったアニメの特集。人気の新刊。漫画。み か ん。漫画。
広告小説仕立ての猥文。卑猥な写真。
袋とじ。広告。流行ファッション。広告。広告。
美味しいもの。古今世界の状況。み か ん。広告。小説神芥川。
寒い秋についての注意事項。
ガンダム。おいしいはっさくのたべかた。エヴァンゲリオン。ファンタジー小説。
引篭り。
有名人のエッセイ。あの人は今。太陽系外進出。だいこん。
現在の月基地生活の特集。月にいるウサギ。み か ん。ウサギになった地球人。未来SF。今月の天気。今日の運勢。猥文。偉い人の言葉。
み か ん。
自作パソコンについて。猥文。
読者投稿。広告。み か ん。来月の特集。広告。
エトセトラエトセトラ・・・》
- 36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:24:24.01 ID:p7AXdTQr0
雑誌を読み終える事になると、
洗濯機の回転は止まり、
脱水と乾燥も済んでいた。
私は持ち帰り用のかごを借り、そのなかに無造作に、
洗われて真っ白になった洗濯物を入れていく。
ξ;゚听)ξ「これは借りるんだからね。何時か。返しに来るんだからね」
と私は言っているが嘘であろう。
このかごは借り物なので、
当たり前だが、また後で返しに来るのだが、
何故か私の部屋の押入れに一つあるので、
これもその仲間入りをするのだろう。
押入れの先住民は、まだ8月頃に、
友人と一緒に部屋へお持ち帰りされたものである。
つまり今は9月であるから、1ヵ月も洗濯をしていなかったのであった。
去る8月。
( ^ω^)「おまえは女の風上にも風下にも置けないお」
と友人に罵られたので私は、
ξ゚听)ξ「では穴倉に籠って仙人になろう」と返した。
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:26:25.58 ID:p7AXdTQr0
友人はため息をつきながらも、私の部屋の片付けを手伝ってくれた。
因みにその時押入れには先住民がたくさん繁栄を極めていたので、
彼に「阿呆」と小突かれた私はしぶしぶコインランドリーに強制送還した。
その帰りに連れてきた一人にも、友人は
( ^ω^)「帰れお」と通告したのだが、
私はあいもかわらず知らん顔でやり過ごした。
友人は溜息をついた。溜息をつくのは彼の癖である。
話を戻す。
ふたたび越境を余儀なくされたかごを手に、
私は、コインランドリーの扉を開ける。
もあーっと、熱気が真夏のように押しかけてくる。
なにやら暑過ぎやしないだろうかと思いやしたが、
なにせ私は引き篭もりがちである。
クーラーの効いた部屋でぐったりするのが毎日だ。
ご飯は深夜のコンビニ弁当一回で済ます。
だからお昼2時位はこう言う熱気なのだろうと、
引き篭もりがちの私は歩を進めた。
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:33:57.36 ID:p7AXdTQr0
のんべり歩いていくと、熱さにうだれる人々が、
寒冷の地を求めてゾンビの如く彷徨っていた。
彼等の脇をすり抜けるたびに汗の匂いがした。
私もそんな匂いがするのだろうかと確認すると別の意味で臭かった。
自室に籠っていた4日間、一回も風呂に入っていなかった。
髪の毛はぼさぼさで、みっともなかった。
ξ゚听)ξ「風呂に入ろう……」
流石にこれはと、私は本日三度目の深い溜息をついた。
汗臭い話に山なし落ちなし意味なし↓
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:34:21.52 ID:p7AXdTQr0
帰る時、私は別の道を通った。その際にある銭湯へ行くためである。
夕時から夜明けににぎわう此処も、昼間なので他の客はいない。
番台にも誰もおらず、ただ招き猫がちょこんとすわっていた。
ξ゚听)ξ「にゃー」
呼びかける私だが、招き猫は知らん振りだ。
私は猫背の箱に大人一枚の代金を入れ、女湯の暖簾をくぐって行った。
その時、私の後ろにねずみがちょろちょろ着いてきた。
言うまでも無く私は気づかない。
招き猫も、手で顔を拭うだけだった……。
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:34:32.77 ID:p7AXdTQr0
何年着たのか分からないクタクタによれたTシャツと
色落ちしたジーパンを脱いで籠に入れ、シャワーを浴び、
備え付けの石鹸で身体を洗い、かけ湯をして湯船に浸かる。
ξ゚听)ξ「あ゛ぁ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
私は本日四度目の溜息をついた。
驚くべき事に、このバケモノのような叫びも、
溜息の一種なのだ。
しかしこれは今までの後悔のものではなくて歓喜のものである。
じぃーと、湯から立ち昇る穏やかな蒸気を見ていると、ふと、今日見た夢を思い出した。
ξ;゚听)ξ「あの巨石建造物、玄武岩で出来た橋、
遠めに見た黒い点々、奇妙な小像、
濃霧にまぎれた老人……。
この、今でもはっきりと思い出せる夢は、
どこかで見たようなモノばかりだなあ……」と苦笑する。
- 43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:35:18.61 ID:p7AXdTQr0
昔、80年あまり前の小説家におっかない話を専門に書く人がいた。
彼は様々なものを書いて色々な人たちを恐がらせたすごい人だ。
彼は、『クトゥルー神話』と呼ばれる架空神話体系のおおもとを築いたことで有名だ。
その宇宙的恐怖に魅せられた者らがこぞって我先にと書き足し、足して、足して、
どんどんとその神話は脹らんでいった。
そして、またまた色んな人を恐がらせた。
所詮架空の物語で在るが、どれも現実味を帯びた文章で綴られており、
まさか本当か、と思うようなところもある。
その神話中に、私の見た光景に似たものが存在するのである。
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:36:11.92 ID:p7AXdTQr0
ξ゚听)ξ「だがあれは夢だ。宇宙的恐怖は空想だ。
プロヴィデンスの少年が魘〔うな〕された悪夢は、
所詮夢で、それを彼が書いた作り物なのだ。
だから邪神などいないのだ。ヒヤデスのあいつもいないのだ。
よってあの先生もいるはずが無い……。
ξ゚听)ξ「だからあんなところは現実には存在しない
――だが、だがだがだ、少年が悪夢を見て魘された、
と言うのは、紛れも無い事実なのだ……。
恐ろしい、恐ろしい宇宙的恐怖。
そして、近隣で起こる殺伐とした感じの悪い夢が、あたしを包み込み――!」
私は、そんなこんな妄想を振り払うべく頭を振り、濡れた頬を叩いた。
だが空想は妄想へとつながり、妄想はさらなる白昼夢へと繋がる……。
なんか変2↓
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:36:55.49 ID:p7AXdTQr0
私は、自分の部屋にいた。
ドウシヨウモナク窮屈な、布団を押しのけ、机に向かう。
書きかけの同人誌、
飲みかけのコーヒー、
それを見る目を充血させた私。
それらを照らす輝くモノのは、
スタンドライト、
イーノートのブルーバック、
カーテンから零れる微かな月明かり。
聴こえるものは、『鍵』であった階下の住人の詠唱の声ばかり。
左右の部屋には誰がいたかもう分からないし、分かる必要ももう無い。
頭が変になりそうな、
否、
もう充分変になっているこの空間にいるのは、
私一人ではない、もう一人がいた。
友人がいた。
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:39:13.36 ID:p7AXdTQr0
開けられることの無い、押入れの中に居た。
押入れの中で、
生きているのか、死んでいるのか、
分からない存在となった彼は、私に向けてふすま越しに微笑んだ。
また私の方も彼へそっと微笑みを向けると、服を脱ぎだした。
表れる白い肉体、
太陽を浴びていない無垢なる身体、
純潔を保った少女の裸体、
だがそれは、純潔でありながら汚れている、邪悪の塊、宴会の肴。
残りの冷たく冷えたコーヒーを咽喉に流し込んだ私はカーテンをくぐり、立て付けの悪い窓を開ける。
あの秋の、心地よい寒気は、もう感じる事は無い。
鼻につく、燃えても燃え尽きる事が無い、煙の臭い。
考えられ得る全ての甲殻類の、腐った臭い。
何かがのたうつ生物的な、擬音が鼓膜を打つ。
しかしども世界に悲鳴は、聴こえない。
待っていたかのように粘液を纏った触手が、私を下宿の屋根に持ち上げた。実際待っていたのだ。
眼前に見える、天球を突き刺し聳え立つ卑猥な形をしたものは、異界の灯台だ。
それは此処に元はもっと一杯ナニカが居たと言う事を残し続けるたった一つの証拠。
他はもう、崩壊し、すでにその瓦礫も砂になった。
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:43:25.38 ID:p7AXdTQr0
-
屋根に降り立つ、私。
べこべことへこむ、トタン板。
触手は凄まじい臭気を放ち、先端から粘液を噴出する。
私へ自ら噴き掛けた桃色の汚濁をみて興奮しいっそう怒張する触手たち。
のたうつ肉棒はなおも数が増え、下宿を飲み込み、さながら尻からでた寄生虫を思わせた。
ξ )ξ「嗚呼ぁ――、嗚呼ぁ――、ふんぐるいふんぐるい、嗚呼ぁ――、ふたぐん、呼嗚呼嗚嗚呼ァァ……、」
私の妖美な声。白色のギョウチュウらはその詠唱と共に歌う。
ξξξ――ぐちゃりぐちゃり/くちゃくちゃ/・・・・・・・・/
淫猥な音を出す、私に纏わりつく触手たち。
何本も何本も這い回り、足を、腿を、陰部を、腹を、胸を、首を、口内を、頭を、舐め回し、嬲り、弄り、冒す。
しかし私は一向に、いままでとかわらぬずっと同じな、退屈で光のない、絶望を超えた瞳で、針のように細い月を、見上げていた。
ξ )ξ「こんな世界を望んでいたんじゃないのに。頭がまっくろで一杯だ。嗚呼ァ、嗚呼ぁぁぁぁぁ……、」
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:47:56.93 ID:p7AXdTQr0
私は諸手を挙げて叫んだ。
涙が溢れても、最早粘液と見分けがつかない。
呼応するように触手たちの動きが加速する。ついに蟲達が私の胎内へと入る。
――もっと刺激を!
――もっと気持ちよく!
――もっと、忘れたいのに!
――嗚呼、もっと、感じて居たかったけど、
――感じない、貴方の身体は感じない、
――でも貴方の心は、あたしと一緒に生きている!
――嬉しい、ウレシイ嬉しいワ!
――アハハアァアアハハァアアァアアハハアアッハアアアァアアアxアアーーァアアアアァアアアはっはぁあxはああい!!!!
- 49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 19:50:58.88 ID:p7AXdTQr0
触手の一部となった私は、持ち上げられ宙に浮き、絶え間ない振動と、蠕動を、繰り返す。
快楽によりて、痙攣を繰返す私。
鼻からは鼻水が、ダラシナク開けられた口からは涎が。
依然として流れる涙、汗、膣分泌液、赤い血液。
それらは触手の吐き出す粘液に混ざり、形を変える。
全てを舐め盗って行く触手。
私からナニモカモを奪い取っていく触手。
私にはもう、何も無い。だから、彼等に快楽を与えて其れを返さなくてはならない。
犬の陽物を伸ばしたような触手を口に頬ばった。それはすぐに咽喉の奥へ、自分から入っていった。
どろりとしたねばねばが、肺に直接注入されるが咳き込み、吐き出す私。自分自身の味がした。
嗚呼ぁ、ぁああ、アアァ嗚呼ぁ――、体感的な官能が全身を駆け巡る。
ドウシヨウモナイ体の疼き、求めるものはもう無いのに、もう、手に入らないのに求めてしまう、もう諦めていたのに、全然諦めさせてくれない。
希望なんていらない、絶望もいらない、欲しいのは沈黙、白い闇、真っ白な、真っ黒な、やがて来る、やがて降り積もっただろう、雪の結晶が汚れに犯されるような、○○○○……。
でも貴方を感じるコノあたし心だけは、摂らないでで下さい、お願ィしマすゥウウ――。
- 50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:01:50.95 ID:p7AXdTQr0
- 嗚呼ぁ、ぁああ、アアァ嗚呼ぁ――、
嗚呼ぁ、ぁああ、アアァ嗚呼ぁ――、 嗚呼ぁ、ぁああ、アアァ嗚呼ぁ――!
嗚呼ぁ、ぁああ、 嗚呼ぁ、 嗚呼ぁ、
ぁああ、アアァ嗚呼ぁ――、ぁああ、アアァ嗚呼ぁ――、アアァ嗚呼ぁ――、アアァ嗚呼ぁ
――……ほああーいあ。
狂乱は、途切れても一瞬。
そしてすぐに再開する淫猥な宴。
それは永遠に永劫にどこまでもどこまでも春、も夏、も秋、も冬も何も無い虚無の絶望。
……求め続けて求め続けないしかししかしどうにも矛盾でアアアァアア――いあいあぁああ!!
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