71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:22:38.50 ID:p7AXdTQr0

( ^ω^)「『人ぉーの心を胸に秘め 終末の時ぃーに涙sブツッ』……もしもし僕ですが何か」
ξ;凵G)ξ「……うぇうぇ…………」
( ^ω^)「そうかそうか。イワンでも分かる、イワンはロシアンです、嗚呼ァ――、でもシベリアにペンギンはいないなあ」
ξ;゚听)ξ「あいぃ、ペングィン――――ッ!」
( ^ω^)「これはいい発音だ」
ξ;゚听)ξ「ペンギンって、誰のこと? あたし?」
 ( ^ω^)誰だってキミ、この前さ。一ヶ月前だお。掃除してやっただろう。
       その前の日、キミが家の銭湯で溺れたおなあ。
       そしてのぼせたお前をソコに連れて行ってそして……」
ξ゚听)ξ「あー」
( ^ω^)思い出したかお」
ξ゚听)ξ「うん……まあ……」
( ^ω^)「そうかあ……じゃあ、とりあえず喜んでくれお。僕は今暇だ。そっち行ってやるお」
ξ゚听)ξ「え、来るの?」
( ^ω^)「嫌かお? キミは絶対『一人でさみしいんです!』って言うんだろうと思ったんだが……」
ξ゚听)ξ「いやいや、嫌じゃないわよ。そうね。じゃあ、お願い、来てちょうだい。ちょっと、おっかない夢見てさ」
( ^ω^)「ほほう」
ξ゚听)ξ「でも、車に気をつけてね。絶対だからね」
 
 私は通話を切る。
 本来と矛盾している。
 ありえざるパラドックス。



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:23:46.69 ID:p7AXdTQr0

ξ゚听)ξ「私はあの時絶対に、この部屋で寝ていた。
     深酒で、二日酔いをしていたのだ。
     断じて銭湯に入っていない。だから、彼は前日、この部屋に来ていない。
     あたしと友人が一緒に掃除をしたのは、本来ならあたしがその前日に彼に電話で頼んだからだ。だのに……どうして……」
 私は、自分の頬を抓った。
 つめの跡がつくほど力強く抓った。とても痛かった。痛みは現実だ。
 ξ゚听)ξ「これは夢ではない。現実だ。
      だから思い違いだ。
      だってあのときあたしは酔っていたんだもの。
      記憶が飛んでいても、おかしくは、ない……」
 
 ――ゴトリ

 突然、押入れから物音がした。
 それに私は、薄い布団を被って震えることしか出来なかった。
 程なくして、友人が来た。
 私は震える指で押入れをさした。友人は、勇気を出して、押入れを空けた。
 どさりと重量感のある音とともにころげでたそれは一升瓶ほどの大きさの真っ白なねずみの死骸だった。
 あの、天井にいたねずみだろう。その証拠にもう天井からは物音一つしなかったのだ……。



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:24:22.44 ID:p7AXdTQr0

 友人はそれを丁重に葬る。
 アパートの小さい庭に、スコップで穴を掘り、そこに埋る。
 私は彼の後ろで、その一部始終を見ていた。

 友人によって埋められているねずみ。
 ねずみのウツロな目は、私の方をじっと見ていた。
 そしてその眼差しが
 『やあ楽しめたかい。でももっとたのしい事が起こるはずだよ、そして此れからね……』――と言った様な気がした。

 友人はせっせとねずみを埋める。
 ねずみが私に向けていた右目もナニモカモが、
 暗い土の中に埋葬された。



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:25:55.08 ID:p7AXdTQr0

 次第に、太陽はさら傾いていった。
 青っぽい夕闇に、二人とねずみの塚は照らされていた。
 私の頬に、ばんそうこうが張ってあった。
 血が出ていたので、ねずみを埋める前に友人が張ってくれたのだった。
  
 事を終えた二人は水道で、手を丹念に洗った。
 私は今までのおっかない事が水によって洗い流されていくように感じた。
 私は咽喉が渇いていた。そういえば起きてから、一口も飲み物を飲んでいないのだ。
 勢いを弱め、蛇口を上に向け、水を飲んだ。
 夏の終わりの水道水は生ぬるく、鉄の味がした。

 友人が手ぬぐいを出してくれたので、それで手を拭いた。ついでに顔も洗った。えらくさっぱりした。
 それもそのはずだ。この暑いのに私は風呂に3、4日入っていなかったのである。
( ^ω^)「まず家に来て、風呂入れお。その際だから、ご飯も食べていくといいお。
       ラーメンをつくってやるしヨーグルトもあるぞ。
       今日は親がいないが、泊まって行くが宜しかろう。
       番台はぬこさまのお立ち台だから気にするな。
       だが、僕はキミを襲いはしない。何故なら僕は――!!」
ξ゚听)ξ「ふふふ……、気に食わないけど、そうさせて貰うとするわ……」

 クライマックス突入かしらん↓



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:30:23.10 ID:p7AXdTQr0

 二人は同時に淡い宵やみを仰ぎ、双方同時に溜息をつき、同時に互いの手を握った。
 そして私は思った。
ξ゚听)ξ「こいつとなら、何があってもやっていけそうな気がする。
     こいつは、なにがあってもあたしの傍にいてくれる。
     どんな時代にいったって、世界が変わったって、死んでも死んでいなくても。
     あたしと彼は共にいるんだ、否、あたしがそうさせてやるんだ!」

 その決意は固かった。
 玄武岩より固いダイヤモンドの硬度でなお、こんにゃくの柔軟さをも持ち合わせていた。
 だが、だいたいのSFでそういう決意をすると、その決意を打ち壊そうとするやからが出てくるものだ。
 さて、この世界――モノガタリはどうだろう。
 
 ――ゴゴォオオオオオオオオオオオン!!

 嗚呼ァ、ヤハリ予期した突然であった。
 思えば叶う、この不思議。
 いや、願ってもない事だ。幸福至福不快絶望阿鼻叫喚地獄殺戮磨潰五語後g(ry……

 宵やみの向こう、もと来た私の下宿から、弩デカイ爆音が響きわたった!



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:31:32.46 ID:p7AXdTQr0

 ぼろい屋根を衝きぬけて、それは顕われた。
 その大きさたるやも、発する轟音に負けず、超越的に、超超弩級だった。
 マッド博士の置き土産、
 未来人からの贈り物、
 超能力の恩恵、
 彼女の願いが叶った先の答え、
 神の身代わりで在らせられるデウス・エクス・マキナの手による、
 階段の全エスカレータ化に秘められた謎にせまり、
 死神のカマとチーズカマボコの接点が明かされたが、
 やはりうめられていた宇宙人の秘密兵器か、
 はたまたSF的に考えて質量保存の決壊であろうやんややんやんとなんとの大騒ぎ、
 などなどそんなこんなを思い起こさせる、
 今まで見たこともない奇怪な流派の巨大な門――否、超大で無垢なる純潔の押入れ!

 宇宙的押入れの周囲を環状本棚が廻る!
 早川文庫が踊り、創元文庫が宙を駆けた! 
 河出が叫び、その咆哮を国書刊行会が叩き墜とした!



77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:32:23.35 ID:p7AXdTQr0

 世界の調律が完全に発狂し途切れ砕けてしまう。
 操っていたピアノ線はすべて千切れて飛んでった。
 弾ける黒塗りの箱、鍵盤すらも、卑しい難民の使う割り箸となるだろう。
 ぬめぬめ粘液を滴らせる押入れは何とかそいつ等を押しとどめてはいたが、もう限界だった。

 ふすまが内から叩かれ
ぎ      ち ぎち 軋
む、
撓む!
張り裂けん!
脈動する宇宙的ふすま!

 いあ! いあ! 外なる神よぉおお――!
 ――アウターゴッド、顕現し給え!

 嗚呼ァ――、
 狂気に犯され闇黒に充ち満ちる、
 邪悪に塗りつぶされる、
 遙かな銀河船団浮かぶ、
 永延の無窮の空を、

 ――見上げていた二人。

 残酷の競演の見物に飽きた私と友人は双方の顔を確認し、ニヤリと笑い、キスを交わした。



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:34:38.79 ID:p7AXdTQr0

 最愛の二人は幸せの絶頂。
 いあ!――興奮で、世界がまみれる。

 まみれた興奮が繋ぎとなり、世界が再構成する――完全再生!

 復活した世界は彼女たちの自由になった。
 二人の二人だけによる二人のための、
 スープの世界を、メンの世界を、嗚呼ァ――ワリバシの世界を!
 今ならヨーグルトもついているのでお徳です!

 相次ぐ次元連結爆発は祝電披露だ!
 病的な彩色の花火を挙げる――バンバン!
 人々の狂乱の叫びがさわやかな祝辞を届けた。
 あらゆる生命の事切れる音は鳴り止まぬ拍手だ――あはぁあああああ美しい!

 そして門の頭に引っかかった階下の住人だけが、その二人の結婚式を見届けてる。
 終いには誰かの見えない手により、襖は開かれる!
 世界が、銀河が、外宇宙が、ナニカよくワカらんものが!

 ――次々あふれ出る……――

 ジグジグジグジグ
        ジグジグジグジグ
ジグジグジグジグ
ジグジグジグジグ
  ジグジジグジグジグジググジグジグ……だっぱああああああああああああん!

 世界が転覆しちゃいました☆っ!



81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:35:10.51 ID:p7AXdTQr0

『 其処でも抱き合った私と友人の二人が居た。
  其処では男の私と女の友人が抱き合っていた。
  ある処では少女の私と友人が手を繋いで夕陽を見上げていた。
  しかしな場所では私は友人の娘だった、その逆も然り。
  別の場所では最早人間ではない、柴犬であり、ブタだった。
  鼻行類になって滴る鼻で愛撫した。
  チョウチンアンコウであり、恐竜でもあった。
  深海で愛し合い、化石になっても離れる事は無かった。
  私は森であり、下草が友人だった。
  土であり、母なる大地である私の恥丘に群生する陰毛だった
  また違うところでは、生物ですらなかった。
  歯車が廻り蒸気舞う生産工場の一部だった。
  狂い無きリズムで絡み合って愛撫しあいあって己たちの存在を確認していった。
  そして存在が存在しない世界でも、私たちは限りなく存在し、
  考えもつかない方法で、二人の存在を立証していった。



82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:35:37.80 ID:p7AXdTQr0

 『私と友人は宇宙の中心だった!


 『世界の中心で『愛』を叫んだ!
 

 『――愛は永劫なり。
  真実の愛は消え去る事無く、超次元的に存在化する。
  具現化され、
  荷電粒子となり、
  宇宙の始めから終わりまでの間を周回する衛星なればこその事。


 『其処はアラユル場所からの二人が集まる駅のターミナル。
  最愛なる二人よ、永遠になりて、其処へ集え。
  集い集って見せ合い魅せられ愛し合い去り合って、
  永劫のぐるぐるを続けろよ、阿呆ども……』


 《いったん閉幕、私は一息する/自作の台本を読む→そして以下演説↓》

 私の主張↓



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:36:01.19 ID:p7AXdTQr0

ξ゚听)ξ『叫べ、愛するものの名を!
     そして絶望せよ、絶望すらも滅するコノ世界の中で!
     しかし希望せよ。意志の力が支配する、コノ世界で!
     一緒に居たい、共に生きたい、相思相愛の恋人を!
     嗚呼ァァア――憎い、私は憎悪するぞ!
 
ξ゚听)ξ『私は憎い
     私は彼と共に歩めなかった
     私は彼と共に居たかった
     私もコノ世界で、意志を持ち、彼と出会いたかったのに……
     それをソレを出来たアラユル世界を憎悪する!

ξ゚听)ξ『そうだ、コノ物語は、嫉妬だ
     私が掴めなかった未来への、在り得なかった明日への、
     限りなく滑稽な、嫉妬だ!
 
ξ;凵G)ξ『醜悪の塊である私の、すごく意地悪な私の
     その私の、美しくって綺麗な奴等に与える、手前勝手の試練だ!
 
ξ;凵G)ξ『越えて見ろよ、コノ世界の、私と友人
     二人で生きて、必ず添い遂げろ!



84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:36:41.87 ID:p7AXdTQr0

ξ゚听)ξ『それが、私の
     ――『私』、が
     ――『私』、の臨む
     ――『私』、として存在したかった、
     アラユル世界への――○○だ!

ξ;凵G)ξ『いあ! いあ! いざ、開かれよ、アラユル事象よ、事態よ、顕現し給え、外なる神!

ξ;凵G)ξ『嗚呼ァ――爛れた未来を掴んでただ一途に滅び逝けよ、いあいあ!!』

 ポルックスアーマメンツ、意味ワカラン言葉使うな! ボコッオ!↓



85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:38:11.08 ID:p7AXdTQr0

 《BGMはフェードアウトし、画面も徐々に暗く暗くなっていく》
 《この白文字ももう少しで、消える》
 《私の言葉も消える》
 《存在が、消えていく》
 《あ》
 《そう》
 《だ》
 《貴方は、ゲームをクリアしました》
 《おめでとう、おめでとう、おめでとう》
 《ここで拍手のSEを鳴らす》
 《パチパチ》
 《パチパチパチ》
 《パチパチ》 
 《パチ》
 《そしてウィンドウの内には黒い闇だけが残る》
 《一瞬、思考停止》
 《再開》
 《何か現われる》
 《ゲームクリアの文字だろうか》
 《再び、何が、再開幕かしらん》
 《あ、おわり》
 《だそうですはい》

 以下最終章↓



86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:38:55.38 ID:p7AXdTQr0
 盛大な拍手が飛び交う最中のことであった。
 いまだ幼い風貌残る母の隣に座っている少女の私の瞳には、涙が溢れていた。
ξ゚听)ξ「こんなにもおもしろいモノがこの世にはあったのか!」
 そんな事を考える小さな私がそこに居た。

 瞬きは――一瞬

 そして、瞼を開けると視点は高くって――私は大人になっていた。
 
 観客は、誰も居ないけど、ただただライトアップされた舞台。
 其処に魅せられる私。私も舞台に立ちたい。舞台が私を呼んでいた……。
 
 私は大人でありながらこれからも少女であり続ける、永遠の舞台上の少女の彫像となった! 

 誰も居ない客席を前に、延々と劇を続ける、道化となった!
 
 道化は動かぬ口で挽歌を謳う↓



87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/03(土) 20:39:48.80 ID:p7AXdTQr0
 
 ――それは、在り得ざる明日への通告
  ――それは、今だ見えない群雲に陰る深淵
  ――それは、遥かな希望を物語る、最悪な青春アンチテーゼ……

 《ぽんぽんぽんぽんぽ!←太鼓さんの音!》
 《きんきんっききんきん!←木のアレ》
 《^^^閉幕^^^^^^^^^^〜》
 《終》
 《終→いとふゆ》



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