83: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 01:27:48.81 ID:HHh5n93b0
(´・ω・`) 「僕は……この時、もう、少しずつ彼女に惹かれていたんだと思う。
      心のどこかで、もう少しぐらい、いてあげてもいいじゃないか――そう思ってたんだと思う」

(´・ω・`) 「だから、彼女が嫌がらないのなら、もう少しだけ……そう思ったんだと思う。
      ドクオは、どう思う? 僕はおかしいと思うかい?」

('A`)「そりゃ、な。
   夜中に裸で道端に落ちてる女の子を見つけて、保護したってのは分かる。
   でも、それ以上は明らかにやりすぎだろ?」

(´・ω・`) 「ああ、そうだ。君の言うとおりだよ」

('A`)「おかしいぜ。ショボン。
   その娘にだって家族がいるはずだ。いるべきところにいるのが、一番幸せなはずだ。それなのに」

(´・ω・`) 「……そうだよ。君の言うとおりだ。
      でも、僕は、さんざん悩んだ挙げ句……やっぱり、できなかった」

(´・ω・`) 「僕は」

(´・ω・`) 「僕は、彼女を、独り占めしたくなる自分に、逆らえなかった」

('A`)「……なあ。ショボン。
   今お前が俺に話してるのは、れっきとした犯罪行為だぜ」

('A`)「……お前……どうしちまったんだ?」

(´・ω・`) 「……」



89: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 01:30:27.44 ID:HHh5n93b0
('A`)「前から、ブーンと三人でいろいろバカやったりしてたけどさ。
   犯罪だけは、したことがなかった。それなのに、お前」

(´・ω・`) 「ドクオ」

('A`)「何だよ」

(´・ω・`) 「お願いだ。僕を責めるのも、警察に通報するのも、好きにしてくれ。
      でも、その前に僕の話を聞いて欲しいんだ」

('A`)「……ムシがいいお願いだな」

(´・ω・`) 「自分でも、そう思ってる」

('A`)「……」

(´・ω・`) 「……ドクオ」

('A`)「わーった、わーった。
   全部聞いて、それからどうするか考える」

(´・ω・`) 「ありがとう。ドクオ」

(´・ω・`) 「最初は、なりゆきだったけど。
      ……彼女と一緒にいたい。
      時間が経つほどに、僕は強くそう思うようになっていった」



91: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 01:32:04.32 ID:HHh5n93b0
(´・ω・`) 「……あれから、結局警察には……どこにも行かないで。
      ずっと彼女と二人で、部屋で過ごしていたよ」

('A`)「……お前」

(´・ω・`) 「彼女は、相変わらず部屋から出ようとはしなかったけれど。
      僕ひとりが、少しの間外出するのは許してくれるようだった。
      近くにコンビニがあったから、生活に不便はなかったよ」

(´・ω・`) 「彼女は、僕の膝の上で、やっぱりよく分からない言葉を発してた。
      緑色が強い、淡い色の瞳で見つめられる度に、僕は何とも言えない気分になった」

('A`)「そりゃ、イカレてるな。完全に」

(´・ω・`) 「ああ……そうだ。
      だって僕は……僕は、彼女を――」

(´-ω-`)「……」

('A`)「……」

(´・ω・`) 「……うん。僕は、最低だ。
      彼女とは、離れがたかった。どうしても、手放せなくなっていた」

('A`)「最低、ね」



95: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 01:33:10.15 ID:HHh5n93b0
(´・ω・`) 「その日も、その次の日も。
      僕は、どこにも行かなかった。コンビニに食事を買いに出る他は、どこにも。
      彼女も、僕ひとりが少しの間外出するだけなら、文句はないようだった」

('A`)「はっ。ミイラ取りが、ミイラに……か」

(´・ω・`) 「ちょっと違うけど……ははっ。似たようなものか。
      彼女は、ずっと相変わらずだったよ。
      名乗ることもない。泣き出すこともない。逃げ出すこともない」

(´・ω・`) 「ただ、僕の身体にまとわりついて、動物みたいに鳴き声を上げてた。
      僕はそれを聞きながら、ぼぅっと過ごしていた。
      それだけなのに、彼女といる時間は楽しくてたまらなかった」



97: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 01:34:16.42 ID:HHh5n93b0
(´・ω・`) 「彼女は、ずっと……いや。
      一言だけ、意味のある言葉を発した」

('A`)「……?」

('A`)「喋った? その娘が?
   マジでか?」

(´・ω・`) 「急に興味を示すね。
      うん、そうだよ。彼女は、一言だけ喋った」

('A`)「なんて、喋ったんだ?」

(´-ω-`) 「あれは……あれは、何日目だったかな。
      その辺りの記憶も、あやふやなんだけどね」



100: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 01:35:40.20 ID:HHh5n93b0


                      *


(´・ω・`) 「何度見ても、不思議だな……君は。ふふっ」

ζ(゚ー゚*ζ「あははっ。あはははっ♪」

(´・ω・`) 「飽きもせずに、毎日毎日」

(´・ω・`) 「いっそ……このまま、二人でずっと一緒に暮らそうか?
      どこか遠くに行って、親子とでも偽って」

ζ(゚ー゚*ζ「ふふっ。…………ふふっ」

(´・ω・`) 「でも、そんなこと、できるはずないか。
      もしかしたら、捜索願が出てるかも知れないしね」

ζ( ー *ζ「――。
       ………………ゅ」

(´・ω・`) 「……『ゅ』?」

ζ(^ー^*ζ「……う、なな♪」


                      *



103: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 01:37:27.89 ID:HHh5n93b0
(´・ω・`) 「『なな』。はっきりそう聞き取れたよ。
      彼女は、その時たしかにそう言った」

('A`)「……『なな』」

(´・ω・`) 「うん。『なな』。
      正直言って、なんのことだかさっぱりだったよ」

('A`)「……『なな』……『なな』、か」

(´・ω・`) 「なんだよ。七人のナナとか言い出すんじゃないだろうね」

('A`)「言わねーよ。さっさと続き話せ」

(´・ω・`) 「さっさと……って、ひどいじゃないか。
      まあ、いいか。話すよ」

(´・ω・`) 「なにを意味してるのかも分からなかったけれど。
      僕が『なな』と口に出す度に、彼女は嬉しそうに、くすぐったそうに身をよじって笑った。
      それで、なんとなく……『なな』っていうのは、名前のことなんじゃないかと思った」

('A`)「……」



106: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 01:38:46.72 ID:HHh5n93b0
(´・ω・`) 「その時から、僕は、彼女は『ナナ』っていう名前なんだと思うことにした。
      名前がないと呼ぶときに不便だし、それに」

(´・ω・`) 「……僕だけの名前を付けると、彼女が僕だけのものになるような気がして。
      だから、僕は彼女を『ナナ』って呼ぶことにした」

('A`)「所有欲って奴か」

(´・ω・`) 「そうだろうね。
      名前を付けると、より彼女が身近に感じられて。
      僕は、嬉しかった」

(´・ω・`) 「これで、一緒なんだ。
      ずっと、一緒なんだ。嘘でも、そんな気がして」

(´・ω・`) 「だから、僕は――」

(´・ω・`) 「……」

(´・ω・`) 「僕は」

('A`)「……僕は、どうしたんだ?」

(´・ω・`) 「……」



108: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 01:41:20.91 ID:HHh5n93b0
(´-ω-)「…………」

(´-ω-) 「うん。そうだ。
      僕は」

('A`)「おい、ひとりで納得してんなよ」

(´・ω・`)「ドクオ。僕は君に、謝らないといけないことがある」

('A`;)「な、なんだよ。急に」

(´・ω・`) 「僕は、嘘をついてた。
      話を続ける前に、君にひとこと謝らないといけない。
      ごめんよ」

('A`;)「……」

('A`)「言えよ」

(´・ω・`) 「……僕、何もしてない、って言ったよね。
      彼女を見つけて、連れ帰って、身体を洗ってあげたって言った時」



111: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 01:43:03.37 ID:HHh5n93b0
('A`)「……」

('A`)「……ああ。聞いたよ」

(´・ω・`) 「あれは、嘘だ。
      僕は――」

(´-ω-`) 「僕は、彼女と……」

(´-ω-`) 「…………」

('A`;)「……おい、ショボン?」

(´・ω・`) 「……」



113: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 01:44:02.40 ID:HHh5n93b0
(´・ω・`) 「……」

(´・ω・`) 「……僕は、彼女と、身体の交わりを持った。
      見ていない、なんて嘘だ。
      僕は……彼女の身体は、隅から隅まで知ってる」

('A`;)「バカ……お前、冗談にも程があるぜ」

(´・ω・`) 「今度は、冗談なんかじゃない。
      してしまったことは、否定できない。取り消せないよ。
      僕は、したんだ」

(´・ω・`) 「彼女と、セックスを。
      何度も」



116: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 01:45:28.91 ID:HHh5n93b0
('A`)「お前……本当か?
   ……本気なのか?」

(´・ω・`) 「…………」

('A`)「おいおいおいおい、お前! それはマジでヤバいだろ!」

( ´・ω・) 「…………」

('A`)「もしなんかあって、その娘の身体、医者に調べられでもしたら、お前」

( ´ ω ) 「…………」

('A`)「身体も洗ったって言ってたよな? それに、何日も一緒に生活して。
  それじゃお前、お前がさらってきてレイプしたって決めつけられても反証できないんだぜ?

( ´ ω ) 「…、か……」

('A`)「第一、知らない女の子と……完全に犯罪じゃねえかそれ!」

( ´ ω ) 「……じゃないか……」

('A`#)「おい、何ブツブツ言ってんだよ! 俺の話、聞いてんのか――」

(#´;ω;) 「だって――しょうがないじゃないかっ!」

('A`)「っ!」



118: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 01:46:44.76 ID:HHh5n93b0
(#´;ω;) 「僕だって、僕だってそのくらい考えたさ!
       手を出してしまったら、もう引き返せないって。取り返しがつかないことになるって!」

( ´;ω;) 「……でも」

( ´;ω;) 「でも……逆らえなかった。我慢できなかったんだよ。
      取り返しがつかないことになるって知っていながら、彼女の誘惑に……僕は……」

( ´;ω;) 「僕は……っ!」

('A`)「……誘惑?」

( ´;ω;) 「……」

('A`)「向こうから、誘ってきたって……ことか?」

( うω-) 「……ああ」

(´・ω・`) 「僕は、女の子に欲情したりなんかしないよ。信じてもらえるかどうかは、分からないけど」

('A`)「今までの流れじゃ、怪しいがな」

(´・ω・`) 「……最初に見つけたときも、その後も。
      彼女の身体を見て綺麗だと思うことはあっても、それ以上の感情を抱いたことはなかった」



120: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 01:47:44.99 ID:HHh5n93b0
(´・ω・`) 「……でも」

(´・ω・`) 「あの日、僕が彼女に『ナナ』って名付けた、その日の夜」

(´・ω・`) 「……彼女は……」

(´・ω・`) 「……彼女は……ベッドに、裸で」



124: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 01:49:12.51 ID:HHh5n93b0



                      *


     「うふふ、ふっ」

(;´・ω・) 「うわっ!」

ζ(゚ー゚*ζ「うふふ、ふふっ♪」

(;´・ω・) 「なんだ……どうしたんだい? また、喉が渇いた――」

(;´・ω・) 「!!」

ζ(゚ー゚*ζ「ふふっ、くすくす。ふふ、あはっ♪」

(;´・ω・) 「ちょ、ちょっと! なんで裸なの? 服、服は!」

ζ(゚ー゚*ζ「んー? ……ふふっ。ふふ――っ」

(;´・ω・) 「う、わ――」


                      *



126: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 01:50:13.80 ID:HHh5n93b0
('A`)「……っ」

(´・ω・`) 「回らない舌で、甘える子猫みたいに鳴きながら。
      上気した顔で、潤んだ目で、僕に躰を見せつけるように。
      ……笑いながら」

('A`)「……」

(´・ω・`) 「それだけなら、僕だって我慢できたさ。現に、その晩はそのまま終わった。
      翌朝見た彼女の様子は普段通りで、僕は安堵した」

(´・ω・`) 「……でも、それだけじゃないんだよ。翌日――」

(´・ω・`) 「彼女は、僕の体中に、手を、舌を……まるで、濡れた柔らかいツタが体中にからみつくように。
      ……たった数分で、もう、限界だった」

('A`)「……お前」

(´・ω・`) 「細い肩に手を掛けると、彼女は笑ったよ。
      ほんの小さな女の子なのに、まるで魔女みたいな、妖しい眼で。
      それで、それで僕は……、僕は……」

('A`)「それで、か」

(´・ω・`) 「他には誰も見てないし、彼女はしゃべれない。
      とにかく、それを知ってて、他人に話すことができるのはもう僕だけなんだ」

('A`)「ああ……ああ、そうだな」



128: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 01:51:24.72 ID:HHh5n93b0
(´・ω・`) 「ねえ、ドクオ。君なら、信じてくれるよね?
      僕は無理強いしたわけじゃない。ただ少し、意志が弱かっただけなんだ。
      お願いだよ、信じてくれよ」

('A`)「……」

(´・ω・`) 「ドクオ。お願いだ。僕は何も……何も悪いことなんてしてない。
      ただ、泥まみれの女の子を見つけて、かわいそうで、放っておけなくて。
      それで、気がついたら……こんなことに……」

('A`)「……はっ」

(´・ω・`) 「君だって、そうするだろう?
      僕と同じ状況なら、そうするだろう?」

('A`)「俺なら? 俺ならどうするかって?」

(´・ω・`) 「そうだよ。君だって同じことをするはずだよ。
      あんなの……耐えられるはずがない」

('A`)「……」



131: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 01:52:47.61 ID:HHh5n93b0
('A`)「ま、俺は聞いただけだし。もし警察沙汰にでもなっても、こう言うだけだからな。
   『俺はただ話を聞いただけだ。あまりにも荒唐無稽すぎて、作り話としか思えなかった』……てな」

(´・ω・`) 「君らしいね。ふふっ」

('A`)「自分第一なモンでね」

(´・ω・`) 「……君は、この話が全部作り話だと?」

('A`)「だったらいいとは思ってるぜ。いろんな意味で」

(´・ω・`) 「……」

(´・ω・`) 「そうか。うん。……そうか」

('A`)「なんだよ」

(´・ω・`) 「いや、それならいいんだ。僕にとっても却って好都合だよ。
      やっぱり、相談相手に君を選んでよかった」

('A`)「へいへい。そいつぁ重畳の至りで」

('A`)「……」

('A`)「……けっ。よく言うぜ」



133: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 01:54:36.81 ID:HHh5n93b0
(´・ω・`) 「君なら、僕の話を全て聞いてくれるよね?
      だから僕は、僕の身に起こったことを、最後まで、ありのままに話すだけだ」

('A`)「ああ、そうだぜ。だから好きにしてくれや。
   ――――『最後まで』?」

(´・ω・`) 「ああ、そうだよ。僕の話は、まだ終わっていない。
      まだ、最後の結末が残ってる」

('A`)「……お前の話、まだ続きがあるってのか?」

(´・ω・`) 「うん。一番話したいこと、話さなければいけないことが、まだ――」

('A`#)「……っ」

('A`#)「ふざけんな!」

(´・ω・`) 「……ドクオ?」

('A`#)「こんな……本当かデマかも分からないような話をさんざ聞かせといて、まだ続くだって?
    何だってんだよお前!」

(´・ω・`) 「……」

('A`#)「お前、いったい俺を何だと思ってるんだ?
    俺をどうするつもりなんだよ! ショボン!」



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