182: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 02:23:07.85 ID:HHh5n93b0
(´・ω・`) 「僕が食いちぎった、彼女の右の鎖骨があった場所には、
      黄色っぽい脂肪の層の下に、赤茶色い繊維が見えていた。
      その筋繊維は、彼女の性器の奥と同じように息づいていて、同じように淫らで、美しかった」

(´・ω・`) 「そこに、見る見るうちに、ぷつぷつ玉のように血液が浮き出して、僕の歯形の後に溜まった」

(´・ω・`) 「それが彼女の身体からあふれてシーツのシミになっていくのを見たとき。
      僕が何を思ったか、ドクオ、君には分かるかい?」

(;'A`)「知るかよ。そんなの、知るかよッ!」

(´・ω・`) 「ああ、もったいない――そう思ったんだ。
      僕は、彼女とひとつになりたいのに。彼女と、永遠にひとつになりたいのに」

(´・ω・`) 「僕はシーツにしみこんだ血液を舐めたいんじゃない。
      彼女と、身体の奥底で、本当の意味でひとつになりたかったんだ」

(´・ω・`) 「それは、きっと……とても素晴らしいことだ。
      お互いの性器をこすり合わせるだけよりも、もっとひとつになれるから」

(´・ω・`) 「だから僕は、彼女の肩に口を埋めて、必死で吸った」

(´・ω・`) 「彼女の身体を構成していたモノを、残さず僕のモノにするために、必死で。
      吸いながらまた口を開いて、肩の肉を内側から、また咬んだ。
      咬んで、噛んで、飲み込んだ」

(´・ω・`) 「彼女は、笑っていた。
      それでもまだ、笑っていた」



185: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 02:24:22.12 ID:HHh5n93b0
(;'A`)「く……ぐッ、げほっ!」

(´・ω・`) 「洗面器に顔を付けて、また上げて、息を止める練習をするみたいに。
      それと同じように、僕は何度も、彼女の肩の肉を食んだ。
      血液は、どんどん流れてきて、もう吸うのも難しくなってきていた」

(´・ω・`) 「何度目か、何十度目かに彼女の肩を咬んだとき、またごりり、と感触がして、
      彼女の腕が大きく痙攣して、付け根から不自然に伸びた。
      僕が咬んだのは、彼女の肩関節だった」

(´・ω・`) 「頭はベッドの上にあるのに、腕はベッドの下に落ちていた。
      でも僕はそれがおかしいとか、怖いとか、気持ち悪いとはみじんも感じなかった。
      ただ、僕にそれを許してくれる彼女が愛おしくて、涙がこらえられなかった」

(´・ω・`) 「彼女は――残った左腕で僕の肩を抱いて、傷口に押し付けた。
      食いちぎった皮膚の下からはみ出した、温かい脂肪の切れ端が、僕の唇に触れた。
      もっとして欲しい、もっと食べて欲しい、彼女がそう言ってるんだと、僕は確信した」



188: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 02:26:10.08 ID:HHh5n93b0


                      *

ζ( O *ζ「んぁっ、ぅううううああああああああああああぁぁぁぁぁっっッ!!!!!!!」

( ´;ω;)「――!
      あああ、ああ。痛かっただろう、『ナナ』。ごめんよ、ごめんよ――」

ζ( ー *ζ「はッ、はッ――ん、ぁ、はッ」

( ´;ω;)「でも、ダメなんだ。
      このままじゃ、僕たち、いつか離ればなれになってしまうから。だから、だから……っ!」

ζ( ー *ζ「…………はぁッ、ふ」

( ´;ω;)「『ナナ』――?」

ζ( ー *ζ「ふふっ、ふふふっ。
       あう、うぅぅっ。――――ん、ッ」

( ´;ω;)「ああ、そんな……『ナナ』、いいんだね?
      僕を、許してくれるんだね? ……もっと、しても、いいんだね?
      ありがとう……。大丈夫、痛いのは少しだけだから。すぐに、一緒になれるから――ね?」

                      *



189: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 02:27:33.49 ID:HHh5n93b0
(´・ω・`) 「顔を上げて彼女を見ると、片腕だけが奇妙に伸びたその肉体はいびつだった」

(´・ω・`) 「それでも、断ち切られ開かれて外気に晒された体組織は、美しかった。
      そこから、僕が必死であふれる血液を吸ったせいで、血に汚されていない、
      真っ白い骨が少しだけ覗いていた」

(´・ω・`) 「そして、血化粧の彼女の顔は、笑っていた」

(´・ω・`) 「出血がひどくなるにつれて血が引いていく彼女の身体は……なんと言えばいいんだろう。
      そう、緑色。青みがかかって見えた」

(´・ω・`) 「色の三原色って、あるよね。赤、青、黄の三色の。
      そこから赤い色が引いたせいか、彼女の皮膚や、その下を走る細い血管や、爪の裏や。
      笑う両眼の白目の部分まで、青みがかって見えた」

(´・ω・`) 「四肢に縦横に走る血管は、葉脈を連想させた。
      体幹は幹で、手足は枝で、右肩にはぱっくりと赤い花が咲いていた。
      その身体の中心でいっそう鮮やかに色付いて、濡れた果実は、僕と繋がっていた」

(´・ω・`) 「だから、それらは何ひとつ、彼女の美しさを損なうことはなかった。
      僕は幸せだった。彼女とひとつになれる喜びに、文字通り身を震わせた。僕は――」

(´・ω・`) 「……」



192: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 02:29:05.14 ID:HHh5n93b0
(´・ω・`) 「……ドクオ? 聞いてるのかい?」

(;'A`)「――」

('A`)「……」

('A`)「……ああ」

(´・ω・`) 「僕は、君が聞いてくれるって言うから話してるんだよ。
      それなのに、無視とはひどいじゃないか。
      さっきまでみたいに軽いノリで突っ込んでくれないと、僕が滑稽だろ?」

('A`)「……知るかよ。
   話したいって言ったのはお前だろ? 俺は聞いてる。だから好きなだけ話せよ」

(´・ω・`) 「ああ。そうか、最後まで聞いてくれるのか。
      嬉しいよ。僕も、誰かに、ずっと聞いて欲しかったんだ」

('A`)「……キチガイが」



195: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 02:30:36.04 ID:HHh5n93b0
(´・ω・`) 「僕は、まだ彼女と繋がっていた。ずっと繋がったままだった、
      僕は、彼女の血肉で飢えを満たして、そのままの姿勢で、何度も射精していた。
      彼女と繋がったままひとつになるために、口の届かない場所は手で引き裂いて、口に運んだ」

(´・ω・`) 「へそから首の付け根までが完全に失われてしまった彼女の身体は不思議と温かくて、
      ベッドの下の腕も、僕の太股とこすれる脚も、ときおりぴくぴくと震えていた。
      だから、彼女は、まだ生きているんだ。喜んでいるんだ。僕はそう思った」

(´・ω・`) 「彼女は、まだ笑っていた。
      あの誘うような、妖しい笑顔ではなくて、母親のような穏やかな、安らかな笑顔だった。
      それを見て、僕は間違っていない、僕は正しいんだ、そう再認識した」

(´・ω・`) 「そして、最後に。
      僕は――彼女のがらんどうの身体に残された部位の中でもっとも尊い、
      彼女の魂が宿った、彼女を彼女たらしめている部位を――手に取った」



197: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 02:31:52.28 ID:HHh5n93b0
(´・ω・`) 「それは明るい肉色で、すべすべしていて、ゴムのチューブのような弾力を持っていた。
      そっと持ち上げると、二叉に分かれた先端の部分に、果物の種のような丸い、こりこりとした
      感触が感じられた。透明の粘液に覆われていて、中に温かい液体の感触があった」

(´・ω・`) 「これで、目に見える彼女とはお別れだ。
      これから先、彼女は僕の中で永遠に生き続けるんだ。
      僕は、僕は……僕は、そう思って、それを――」

(´・ω・`) 「……」

(´;ω;`)「なぜだろう。
      その瞬間、僕は、素晴らしいことをしているはずなのに、涙が止まらなくて。
      それが何故なのか、自分でも分からない。けれど、悲しかった」

( うω;) 「でも、彼女の想いを、僕の想いを……無にすることはできないから。
      だから、だから、しょうがなかった。止めるわけには、いかなかった」

(´・ω・`) 「――だから」



199: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 02:33:18.76 ID:HHh5n93b0
(´・ω・`) 「だから、僕はそれを、そっと手に力を篭めて、引いた。
      それは、元の状態から2倍ぐらいの長さに伸びて僕の力に耐えていたけれど、
      やがて、ぶつり――と音を立てて、半ばから千切れた」

(´・ω・`) 「その拍子に、白く泡だった液体がシーツの上に零れた。
      僕は、それすらも無駄にしてはいけないと、咄嗟に思った。
      赤褐色の斑になった空いた片手で、必死にそれをすくって、口に運んだ」

(´・ω・`) 「全てすくって、飲み込んで、手が届かない場所にまで飛び散ったものは舐め取って。
      ようやく、最後に……手に持っていたそれを、口に含んだ」

(´・ω・`) 「味は……覚えていない。
      でも、これでもう大丈夫だ、と思ったのを覚えてる。
      もう、誰も僕と彼女を引き裂けない。永遠に……永遠に、と」

(´・ω・`) 「つるつるとした喉ごしのそれを、何度も吐き戻しそうになりながら飲み込んだ瞬間。
      僕は、これでようやくひとつになれた、その歓びに、何度も射精した。
      ……これで、僕たちは、完全にひとつになったんだ」

(´・ω・`) 「もう大丈夫だ。もう、彼女と僕を阻むものはどこにも存在しない。
      僕は涙を流しながら、彼女の顔を抱き、髪を撫でた。
      その涙は、悲しみのせいじゃない。喜びの涙だった」

(´・ω・`) 「もう何もなくなった、抜け殻の彼女の残骸。
      その骨だけになった腹部の断面の中心から、どろり、と、
      僕の射精した精液が流れ出して、彼女の腰椎を濡らし、またシーツに染みを作っていた」



202: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 02:35:03.09 ID:HHh5n93b0
(´・ω・`) 「……僕は、微笑んだままの彼女の両眼を、そっと閉じた。
      そして、下半身は繋がったまま、そっと持ち上げて、抱き寄せて。
      目に見える彼女と、お別れの、長い、長い……キスをした」

(´・ω・`) 「彼女の口腔に舌を差し入れたとき、気管に溜まっていた凝固しかけの血液が、
      ぽたぽたと接合部に落ちた。
      それは、彼女が彼女である内は見ることがなかった、破瓜の血のようだった」

(´・ω・`) 「――」

(´・ω・`) 「身体の中から、どんどん……暖かいものが、とめどなく溢れてきて」

(´・ω・`) 「僕は……幸せだ。
      彼女を愛することができて……本当に幸せだ。
      彼女と愛し合い、気持ちを通じ合わせることができて、本当に幸せだ」

(´・ω・`) 「……」

('A`)「……」



204: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 02:36:55.64 ID:HHh5n93b0
(´・ω・`) 「……僕の話は、これで終わりだよ。
      僕は彼女とひとつになった。
      彼女自身と僕自身は、僕の身体の中でひとつになったんだ」

('A`)「……」

(´・ω・`) 「なんか……一気に話したら疲れちゃったな。
      それに、ひどく喉が渇いた。水、飲もうっと」

('A`)「……」

(´・ω・`) 「ドクオ?」

('A`)「……お前は、嘘つきだ」

(´・ω・`) 「何だい、急に」

('A`)「俺は、お前の話を認めない。絶対に。
   お前は犯罪者でもキチガイでもない、ただのつまらねぇ嘘つき野郎だ」

(´・ω・`) 「……そうか。
      信じてくれないのは残念だよ。でも、いいんだ」

('A`)「いい? 何がいいってんだ?
   お前の今の話のどこに、どのツラ下げて『いい』なんて納得できる要素がある?」



207: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 02:39:17.58 ID:HHh5n93b0
(´・ω・`) 「僕は、誰かに聞いてもらえればそれで良かった。
      だから、満足だよ」

('A`)「……誰かに」

('A`)「あーそう、誰かに、ね」

('A`)「…は、はははっ」

('A`)「は――」

(´・ω・`) 「……」

('A`#)「……ッ!」

('A`#)「てめぇっ、ふざけんのも大概にしろよ!」

(´・ω・`) 「何だよ。急に大きな声、出さないでくれよ」

('A`#)「お前は、何の魂胆があって俺にそんな話を聞かせるんだ?
    お前の目的は何だ?」

(´・ω・`) 「何度も言わせないでくれよ。
      僕は、誰かに――」

('A`#)「しらばっくれるなッ!!」



209: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 02:40:45.00 ID:HHh5n93b0
(´・ω・`) 「……」

(´・ω・`) 「何を、だい?」

('A`#)「お前は、なんで俺に目を付けた?
    なんで、俺にそんな話をする? 他の誰でもなくて、俺だけに!」

(;´・ω・) 「う?――ぐッ!」

('A`#)「理由があるんだろッ、俺に、俺だけにこんな話しをする理由が!
    それを言えよッ!
    言え! 答えろ! ショボンッ!」

(;´・ω・) 「く、苦しいよ、ドクオ。
      止めてくれ。――は、離せってばっ!」

('A`#)「くっ、はあッ、はあッ。
    はあ――ッ」

(;´・ω・) 「ひどいな、いきなり首を絞めるなんて。
      友達になんてことするんだよ、全く」

('A`#)「質問に、答えろッ!」

(´・ω・`) 「……」



212: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 02:42:31.15 ID:HHh5n93b0
(´・ω・`) 「だから、何度も言ったじゃないか。
      僕は、ただ話を聞いて欲しかっただけなんだ、って」

('A`#)「この野郎……っ」

(´・ω・`) 「本当に、それだけなんだよ。他に理由なんて、何もないんだ。
      たまたま学食に来たら、君が一人でぼーっとしていたから。それだけだよ」

('A`#)「そんな話、俺が信じるとでも?」

(´・ω・`) 「それとも。
      君には、理由があるのかい? ドクオ」

('A`)「――ッ!」

(´・ω・`) 「……」

(´・ω・`) 「僕が、他の誰でもなく君だけに、この話をしなければいけない理由があった。
      そう考えるのに足る理由を、君は持っているのかい?」

( A )「……」

(´・ω・`) 「……」



214: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 02:43:52.43 ID:HHh5n93b0
( A )「…………ッ!」

(゚A゚#)「止めろぉッッ!!」

(;´・ω・) 「っ!」

(゚A゚#)「っく、はあッ、はあッ、はあッ、はあッ!
    はあッ、はあッ、はあッ――」

(;´・ω・) 「……」

(´・ω・`) 「……悪かったよ、ドクオ。
      この話は、もう終わりにしよう。僕と彼女の話も、僕と君の話も」

(゚A゚#)「はあッ、はあッ、はあッ。――は、ッ」

(゚A゚#)「はッ、はッ、は――は、ぁっ」

(´・ω・`) 「……」

('A`)「……」

('A`)「ああ……そうだな、ああ。
   もう、終わりだ。お前の話も、その娘の話も、全部」

(´・ω・`) 「うん、そうだ。おしまいだよ」



216: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 02:45:38.27 ID:HHh5n93b0
('A`)「……」

('A`)「……お前との付き合いも、もう、全部、終わりだ」

(;´・ω・) 「……ドクオ?」

('A`)「お前みたいな嘘つき野郎は、もうゴメンだ。
   もう二度と、顔も見たくない」

(´・ω・`) 「……」

('A`)「もういい。もう十分だ。早いとこ精神病院でも、刑務所でも行っちまえ。
   それとも、死ぬか? 死ねば、あの世でその『ナナ』とやらと再会できるかも知れないぜ?」

(´・ω・`) 「……」

('A`)「この大ホラ吹きが――冗談じゃねえ。
   もう二度と、俺の前に顔を見せるな」

(´・ω・`) 「……」

('A`)「あばよ。どっかですれ違っても、話しかけるなよ」

(;´・ω・) 「あ、ド……ドクオ?」



220: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/04(日) 02:46:46.79 ID:HHh5n93b0
(´・ω・`) 「……」

(´・ω・`) 「ドクオ、行っちゃった」

(´・ω・`) 「……」

(´・ω・`) 「……二度と、か」

(´・ω・`) 「……」

(´・ω・`) 「仕方、ないか」

(´・ω・`) 「……」

(´・ω・`) 「……何だよ。
      エログロ大好きなドクオなら、僕の話、気に入ってくれると思ったのにな」

(´・ω・`) 「――ふふっ」

(´・ω・`) 「まあ、いいか。
      帰ろう。僕も、帰ろう」

(´・ω・`) 「……」

(´・ω・`) 「さよなら、ドクオ。
      ……さよなら」



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