- 32: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 01:00:15.23 ID:MU7Ra9H6O
- 年上として、ここは何か話題の一つでもと首を捻ってみせるが、この空気に合った良い話題などは浮かばない。
もう少し勉強をしておけば良かった、等と僅かな後悔をする。しかし後悔したからといって、何があると言う訳でもなく。
(*゚ー゚)「ギコお兄ちゃん…」
(,,゚Д゚)「おっ!? お、うん、な、何?」
(*゚ー゚)「すごい汗」
(,,゚Д゚)「え? ……あ、あぁ…汗っかきなんだ、うん」
(*゚ー゚)「パパの服ならあるから、着替える?」
(,,゚Д゚)「……いや、その、それは…」
(*゚ー゚)「?」
- 33: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 01:02:18.90 ID:MU7Ra9H6O
- 純粋そうなきらきらとした大きな黒い目に見つめられていると、先程までの恐怖など綺麗さっぱり忘れてしまった様になんでも受け入れたくなってしまう。
そんな首を傾げるしぃに見つめられ、顔を赤くしたままのギコはにへらっと弛んだ笑みを浮かべて立ち上がった。
膝の怪我に気を使いながら、ひょいと小さなしぃを抱き上げる。
ぬいぐるみを抱いたままのしぃはどこか嬉しそうに、くすぐったそうに笑ってギコにそっとしがみついた。
しぃの父親のものらしい服に着替えたギコは、少しばかり古びてはいるものの清潔そうな白いシャツに戸惑っていた。
見ず知らずの人の館に忍び込み、しかも娘に許可は得てるものの、服まで借りてしまった。
どうしようもない申し訳なさ、罪悪感に胸をちくちく刺されながらも、しぃが示す焦げ茶の三つ揃いを言われるがままに着てしまっている。
- 35: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 01:04:33.45 ID:MU7Ra9H6O
- ご丁寧にタイまで締めて、仕上げに差し出されたダービーハットを被ってから鏡の前でポーズを決める。
どこからどう見ても身なりの良いお兄さんだ、明治時代くらいの。
しかし如何せん服に着られている感があるが、それは歳の所為だと諦めよう。
(,,゚Д゚)「ところで流石にこれはお父さんに申し訳ない気がするなぁ、しぃちゃん」
(*゚ー゚)「パパは怒らないよ? 優しいの、今度おいしいショコラをお土産に持ってかえってきてくれるって」
(,,゚Д゚)「ショ、ショコ、……異次元か、ここは…」
(*゚ー゚)「?」
(*,゚Д゚)「なんでもないよー」
- 36: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 01:06:38.73 ID:MU7Ra9H6O
- でれでれと緩みきった笑顔のギコには、館に侵入してすぐの怯え様の欠片も見えない。
一人の少女に少し気を許しただけで豹変する彼の姿は非常に滑稽でもあり、ある意味、とても純粋でもある。
子供部屋──しぃの部屋に戻り、ベッドに座ったギコは今さら帰ろうにも帰れない状態で、しぃと訥々と話すばかり。
借り物の三つ揃いなんてものを着ているため、妙に緊張して動きはぎこちなく、言葉遣いもどこかおかしくなってしまう。
それても膝にしぃを乗せたギコは笑顔。膝に座るしぃもまた、笑顔。
しぃはしぃでギコに心を許して、すっかりなついていた。
闇夜がゆっくりと色褪せてきた頃に、ふと、ギコは気になる事を思い出した。
それは、当然の疑問。
- 37: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 01:08:10.88 ID:MU7Ra9H6O
- (,,゚Д゚)「しぃちゃん?」
(*゚ー゚)「?」
ギコの呼び掛けに、ぐいっと顔を上へ向けてから首を傾げるしぃ。
(,,゚Д゚)「…なんで、他に誰も居ないの?」
(*゚ー゚)「……ぇ…?」
(,,゚Д゚)「だってほら、こんな時間にこの広さに…しぃちゃん、一人だけでしょ?」
(*゚ー゚)「……」
(,,゚Д゚)「それに、この館…」
(*゚ー゚)「…分かんない……気が付いたら、わたししか居なかったの…」
(,,゚Д゚)「……それ、って…」
(*゚ー゚)「………」
- 38: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 01:10:05.57 ID:MU7Ra9H6O
- 押し黙ってしまったしぃは俯いて、ネグリジェの裾を強く握る。
口をきゅっと引き結び、これ以上は語りたくないと全身から放つ空気で伝えていた。
それでも、それでもギコは神妙な顔で膝に座る細い身体を強く抱き締めて、口を開く。
口にしない方が幸せかも知れないと理解していたが、言わずには居られなくて。
(,,゚Д゚)「───俺は、ここに肝試しに来たんだ」
(*゚ー゚)「……」
(,,゚Д゚)「友達との賭けに負けた罰ゲームで、怖そうな心霊スポットを探して、ここを選んだ」
腕の中のしぃが、ぴくんと揺れる。
(*゚ー゚)「………」
(,,゚Д゚)「空き家だと思ってた、誰かが住んでるなんて思わなかった」
- 39: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 01:12:37.52 ID:MU7Ra9H6O
- しぃの細くて柔らかな感触は確かな物で、ギコはそれを確かめる様に、腕に力をこめる。
(*゚ー゚)「…………」
(,,゚Д゚)「ここの、主人は、」
突然しぃはギコの腕を振りほどき、膝の上から飛び降りた。
どん、と着地すると膝が痛み、しぃは眉を寄せる。しかしそれでも、しぃは今にも泣き出しそうな顔でギコを振り返る。
拳を握って、狼狽えるギコを睨んで抱いていたぬいぐるみを投げつけ、足を引き摺りながら部屋を飛び出してしまった。
大事そうに抱いていたうさぎのぬいぐるみ。
淡いピンクをしたそれを持って、ギコはしぃの後を追って部屋を出る。
あんなに大事そうにしていたのに、それを投げるなんて。
- 40: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 01:14:29.04 ID:MU7Ra9H6O
- 今やさっぱり恐怖を感じなくなった暗い洋館だったが、この広い中で少女を探さなければならないと考えたら、それはなかなかに重労働だ。
折角借りた服をまた汗まみれにしてしまうのではないか、そうなったら申し訳ないと困った様に笑い、ギコが走り出した。
手当たり次第にドアを開けては名を叫び、キッチンや御不浄、屋根裏部屋らしき場所から風呂場まで。
しかし呼べども呼べどもしぃの返事はなく、姿も見掛けない。
自室に戻っているのでは、としぃの部屋を覗いてみてもその姿はなく、もう館の殆んどを探し終えてしまった。
服が汗びっしょりになるのを何とか阻止し、溜め息混じりに階段に腰掛ける。空はもう闇が薄れて白んできている。
もしかして、朝が近いから消えたのかな。
そんな考えが頭によぎるが、未だ覚えているしぃの感触は本物だった。
細くて柔らかくて、頼りない四肢は確かに存在していた。白いネグリジェも、長い髪も、大きな黒い目もだ。
ふぅ、と深い溜め息を吐きながら、ギコは館を歩き続ける。
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/06(火) 01:16:54.33 ID:MU7Ra9H6O
- 賭けに負けて、罰ゲームで、心霊スポットを探して、見つけた場所。
侵入したら声がして音がして、悲鳴が聞こえて、追いかけられて。
…怒られて、手当てして、追いかけて……
俺は、何をしてるんだろう。
(,,゚Д゚)「………この館の、主人は…」
ぽつりと呟きながら、ガラス張りのサンルームを覗く。
木製の椅子に座って俯く、少女の横顔を見つけた。
(,,゚Д゚)「…しぃ、ちゃん」
(* ― )「わたしは、ここにいるの」
(,,゚Д゚)「……しぃちゃん、」
(* ― )「ずっと、ずっと…パパとママが帰ってくるまで」
(,,゚Д゚)「しぃちゃん、聞いてくれ」
(* ― )「いや。ギコお兄ちゃんはわたしをこわすよ」
(,,゚Д゚)「……」
何も無理に聞かせる意味なんて無いのだ、分かっている。彼女の事を思うなら、何を言わずに時間を潰して、朝には帰ってしまうのが一番な筈だ。
- 44: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 01:18:31.69 ID:MU7Ra9H6O
- そうだ自分の為にも、一番良い。彼女を混乱させて、悲しませることもない。
結果は見えているのだ、無意味に彼女を引っ掻き回して壊してしまうという事を。
それでも俺は好奇心に負けるバカで最低な奴だから。
ぐ、と握り拳を作りながら重い重い唾を飲み込み、口を開く。
口の中が乾いて、もう汗も出なくってしまった。
しぃは変わらず、椅子の上で膝を抱いて俯いている。悲しそうな顔で。
(,,゚Д゚)「……しぃちゃん、この館の主人は」
(* ― )「言わないで」
膝に顔を伏せて、静かに言う。
(,,゚Д゚)「主人はもう、」
(* ― )「やめてよ」
- 46: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 01:20:15.68 ID:MU7Ra9H6O
- しぃのささやかな懇願は、もうギコには届かなくて。痛む筈の膝に爪を立てて身体を強張らせる。
(,,゚Д゚)「何十年も前に、死んだんだよ」
(* ― )「やだああああっ!!」
淡々と告げたギコの言葉を聞くまいと、耳を押さえて長い髪を振り乱す。
小さな子供みたいにいやいやと首を左右に振って、椅子の上で更に身を縮めるしぃ。
ギコがしぃの元に駆け寄り、両手を掴んで少女に現実を叩きつける。
なぜこんなに残酷な事をするのか、現実と言う凶器を振りかざしては傷を抉るその本人にも分からなくて。
ただ、この少女が現実を見ない様にしているのが、悲しくてしょうがなかった。
- 47: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 01:22:27.97 ID:MU7Ra9H6O
(,,゚Д゚)「しぃちゃんっ、ここには誰も居ないんだよ、君もっ! 本当は誰も居ないんだよっ!」
(* ― )「わたしはいるよ、ここにいるよっ! ここにいるっ! パパもママも帰ってくる!!」
(,,゚Д゚)「じゃあどうしてそんなに逃げるんだっ! 帰ってくるならどうしてそんなに現実逃避したがるんだよっ!?」
(* ― )「知らない知らないそんなの知らないっ! わたしはここにいるの、ここにっ! わたしはっ────ぇ、?」
ギコの手を振り払おうと目を瞑ったまま叫んでいたしぃが、突然目を見開いて動きを止めた。
その様子にギコもしぃの手を離し、目の前にしゃがんで顔を見上げる。
しぃは目を大きく見開いたまま、どこか遠くを見る様な眼差しで。すぐそこに存在するギコの姿は、目に入っていない様だった。
- 48: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 01:24:15.87 ID:MU7Ra9H6O
ほう、ほう。夜の鳥が鳴いている。
しぃは夜更かしを禁じられていたが、鳥の声が気になってどうしても眠れずにいた。
こっそりと天外付きのベッドから降りて、声の主である夜の鳥を一目見よう。
一目だけ、一目だけ。ちょっと見たらすぐに寝るから、ちょっとだけ──。
子供らしい好奇心がしぃを突き動かし、カーテンに手を伸ばす。
小さな手が手触りの良いシルクのカーテンを握り、少しだけ開いた。
そしてしぃの目に飛び込んできたものは。
笛を持った、窓に張り付く男の笑顔。
- 49: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 01:26:08.83 ID:MU7Ra9H6O
(*゚ー゚)「ぇ?」
抉じ開けられた窓から腕が伸び、軽々としぃの身体を抱き上げた。
しぃはベッドに置いたままのぬいぐるみに手を伸ばして、世界は暗転する。
長くはない時間を揺られて過ごし、世界に光が戻ったのは、狭くて暗くて生臭い部屋の中だった。
カーテンを閉めた窓から漏れる僅かな明かりと、男の笑顔が印象強い。
男は始終笑顔のまま、しぃをベッドに押し付けて囁く。
此処には何でもあるよ
色とりどりの積み木に
死体製のマリオネット
欲しい物は全部あげる
怖がることなんてない
何処まででも一緒だよ
地獄でも、そう地獄でも
さあ────捕まえた
- 50: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 01:28:21.68 ID:MU7Ra9H6O
- 幼い肉体を壊れるくらいに犯す男は、いつでも笑っていた。
ずっと見ていた、愛していた。そう愛を囁く男は、痛みと恐怖にひたすら泣き叫ぶしぃを殴っては犯し、犯しては殴る。
しぃはただぬいぐるみを抱き締めて耐えつづけた。
男の笑顔が崩れる事は無く、仕立てたばかりで大きかったネグリジェが、ぴったりの大きさになったしぃを壊した。
耳元でしつこいくらいに甘ったるく、唾液が絡まる音をさせながら囁く愛。
背が伸びたしぃの手足をもぎ取って、笑顔を強くするばかり。
男が最後に囁いた愛は、引き金を引く音だった。
- 51: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 01:30:27.91 ID:MU7Ra9H6O
- ある日、しぃの家にしぃが届いた。
母はしぃが届く前に、娘を思うあまり首を吊った。
父もまた、しぃが届いてから妻の後を追った。
そして数十年の時が流れて、ギコはしぃが居る館に侵入する。
(*゚ー゚)「……ギコお兄ちゃん、わたし、パパとママを殺したんだ」
(,,゚Д゚)「しぃちゃん…?」
(*゚ー゚)「わたしの所為で、パパとママは死んだの」
(,,゚Д゚)「しぃちゃん」
(*;―;)「わたしが…っわたしが殺したのっ! わたしがあっ!!」
(,,゚Д゚)「しぃちゃん、しぃちゃん落ち着いてっ!」
(*;Д;)「あああああっうわああああああああああんっっ!!!!」
叩き付けられた現実に、しぃがやっと気付いて大声を上げて泣いた。
ギコにしがみついて泣きじゃくるしぃの背中を優しく撫でてやりながら、ただ黙って抱き締める。
- 52: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 01:32:24.91 ID:MU7Ra9H6O
- しゃくりあげるしぃを落ち着かせようと、背中を何度も何度も撫でるギコ。
その胸にしがみついて嗚咽を漏らすしぃは、ぐずっと鼻をすすってから袖で涙を拭い、顔をあげた。
瞼や鼻を赤くしたしぃは、やはり愛らしさを持ったままで。
未だ潤む目で見つめられると、ギコは三度頬を赤くした。
くしゃくしゃになった前髪を撫で付けながら、ギコはしぃの顔を覗き込んで首を傾げる。
ふと、ギコの意識は徐々に微睡む様に、どろりと溶けていく様な錯覚に陥っている事に気付く。
なにかが自分の中に入ってくる様な、なにかが風船みたいに膨張する様な。
ギコは、どろ、と濁った目で、微笑む。
(,,゚Д゚)「しぃちゃん、落ち着いた?」
(*゚ー゚)「ぐす……うん…」
(,,゚Д゚)「御免、しぃちゃんを傷つける様な事を言って……」
(*゚ー゚)「ううん……思い出さなきゃいけない事だったから…」
やっと止まった涙にほっと安堵の息を吐いたギコの姿に、しぃは笑顔になる。笑顔で、「パパのにおいがする」と頬を擦り寄せる。
その笑顔を見たギコも、笑顔になる。
- 53: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 01:35:26.82 ID:MU7Ra9H6O
- しかし、しぃはすぐに笑顔を崩して心細そうな表情になり、俯いてしまった。
ぎゅ、とギコの服を握ったまま俯く様子に、どうしたのかとギコが顔を覗き込もうと首を動かす。
が、しぃはギコの動きに合わせて顔の向きを変えて、顔を見られない様にする。
胸元に額を押し付けて黙るしぃは、どうしたのかと話しかけても返事をしない。
困り果てたギコはしぃを抱いたまま床に座り込んで、小さな頭に顎をのせて目を瞑った。
話したくない事を無理矢理に聞き出すのは、もうさすがに可哀想だ、と。
(* ー )「ギコお兄ちゃん」
(,,゚Д゚)「んー?」
(* ー )「ギコお兄ちゃんは生きてるでしょ」
(,,゚Д゚)「…ああ、」
(* ー )「わたしは、死んでるの」
(,,゚Д゚)「……うん」
(* ー )「わたしはこれからどうすれば良いの?」
(,,゚Д゚)「……え、?」
(*゚ー゚)「死んでるのは分かったの、たしかに死んでるの。でもここからどうすれば良いのか、わからないの」
そんな事は、ギコにも分かりはしない。
よく“死んだらあの世に行く”や“成仏する”と言うけれど、死んだ事のないギコにはそれらがどんな物か、分からない。
- 54: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 01:37:49.19 ID:MU7Ra9H6O
- それでも酷く寂しそうなしぃに何かを言ってあげたくて。
どろんと、また、頭の中になにかが流れ込む様な感覚。
靄がかかる意識の中、果実の腐敗臭の様な甘ったるさも感じる。
その異様な感覚に眉を寄せるも、腕の中のしぃを見ると、その不快感に近いものはさっと失せてしまった。
すっかり明るくなった白い空を見上げて、ギコはしぃの額に唇を押し付けた。
目を丸くするしぃに、優しく微笑む。
(,,^Д^)「なら、一緒に居ようか」
(*゚ー゚)「……ぇ…」
(,,^Д^)「しぃちゃんがどうすれば良いのか分かるまで、一緒に居るよ」
(*゚ー゚)「でも、でも、ギコお兄ちゃんは生きてるよ? ごはんだって、食べなきゃいけないし…」
もうギコの意識はどろどろと腐敗した果実に混ざってしまったみたいで、光の無い目は、もはやギコの物ではなかった。
いとおしそうに髪を撫でて、笑顔で、笑顔で。
- 55: ◆wZk4NVoY.w :2008/05/06(火) 01:40:25.77 ID:MU7Ra9H6O
- (,,^Д^)「そんなもんどうとでもなるし、それに、ここには何でもあるよ」
(*゚ー゚)「で、でも…ギコお兄ちゃん……」
(,,^Д^)「そんな顔しないでしぃちゃん、俺があげられるものならさ、ほしいものは全部あげる。だからさ」
(*゚ー゚)「ギコお兄ちゃん…」
(,,^Д^)「もう一人じゃないぞ? これで、怖がることなんて何もない、な?」
(*゚ー゚)「あ……う、うんっ、ギコお兄ちゃんありがとう、わたしがどうすれば良いのか分かるまで、一緒にいてね…!」
(,,^Д^)「ああ、どこまででも一緒だよ」
(*゚ー゚)「あ、でも…どうすれば良いのか分かんないまま、ギコお兄ちゃんがお爺ちゃんになっちゃったらどうしよう…?」
(,,^Д^)「ギコハハハっ、大丈夫、地獄でも───そう、地獄でも…一緒だよ…」
「ギコ、お兄、ちゃん…?」
「 さあ────捕まえた。」
ほう、ほう。
笛の音は虚しく響いて消えた。
end
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