頂きます、のようです

56: 頂きます、のようです :2008/08/31(日) 03:32:45.78 ID:umGHyTbmO

デレ、可愛いよ、デレ。

デレ、愛してるよ、デレ。

デレ、美味しいよ、デレ。





頂きます、のようです



58: 頂きます、のようです :2008/08/31(日) 03:35:14.21 ID:umGHyTbmO

デレと僕が出会ったのは小学三年生の時だった。

親の仕事の関係で転校を強要され、友達という友達が出来なかった僕は、その根暗な性格も相成ってか学校を休みがちになっていた。
虐められていた訳じゃない。
だが、学校ではほとんど一人だったし、幼いながらに自殺を考えたことだって一度や二度ではない。


そんな僕を救ってくれたのが、たまたま隣の家に住んでいたデレだった。
教師たちからも腫れ物を扱うかのような態度を受けていた僕に、デレは優しく声をかけてくれた。

偽善だったのかもしれない。
同情しただけかもしれない。
それでも、デレは、僕に手を差し伸べてくれた。
僕の言葉を聞いてくれた。



59: 頂きます、のようです :2008/08/31(日) 03:37:58.68 ID:umGHyTbmO
……それだけで十分なはずだったのに、僕という人間はよほど傲慢なようで、いつしか僕の想いは感謝から恋心に変わっていた。


だが、何をする訳でもない。
関係を壊したくないという気持ちも強く、僕は結局その感情を心の深くに押し込めることにした。

幸いにも僕の親の仕事は安定し始めたようで、またすぐに転校なんてことにはならなかった。
デレのそばにいれる、それだけで言い知れないほど幸せな気持ちになったのを覚えている。

休みがちだった学校にも、デレのおかげで行く回数も増えるようになり、それなりに友達もでき、ようやく僕は「普通」の子どもになれたような気がした。
やっと、僕の人生が始まったのだ。
心からそう感じ、僕はまたデレに深く感謝した。



61: 頂きます、のようです :2008/08/31(日) 03:40:34.93 ID:umGHyTbmO
しかし、幸せな時間は長くは続かないもので、僕たちはついに卒業を迎えることになってしまった。

卒業式の日、僕はデレに告白することにした。
進学する中学校は別々で、離れ離れになってしまうことを知ってしまったからだ。

「僕と一緒に居て下さい」

どこかの本で読んだのか、或いはドラマかなにかのセリフだろうか。
ともかく、一晩中考えて選んだ告白の言葉だ。
みるみるうちに赤面するデレは抱き締めたくなるほどに可愛らしく、僕はその衝動を必死にこらえ、彼女の返答を待った。




ζ(゚ー゚*ζ「ごめん……なさい」

デレの口からでたのは、明らかな拒絶の言葉だった。



64: 頂きます、のようです :2008/08/31(日) 03:43:31.58 ID:umGHyTbmO
じゃあね、バイバイ、といつもと同じ挨拶と笑顔で離れていくデレ。
その小さな背中から僕は目が離せなかった。
後ろ姿が見えなくなった時、ようやく僕の想いは砕け散ったのだと理解し、その場で泣いた。


……これをきっかけにデレとは疎遠になり、僕たちはあっさりと離れ離れになった。予想していたうちの、最悪の結末だ。

デレのことを引きづったまま、僕は中学に進学し、同時に、料理の勉強を始めることにした。
何か打ち込むことが欲しかったのもあるし、昔から親が家を空けていたおかげで、多少なり料理に自信があったということもある。
しかし一番の理由は、家庭科の時間に作った玉子焼きをデレに褒められたことだろう。

美味しい、ヒッキー君は料理が上手だねと笑ってくれたデレの顔がどうしても忘れられなかったのだ。



66: 頂きます、のようです :2008/08/31(日) 03:46:18.52 ID:umGHyTbmO
……デレのことを忘れられないまま、一心不乱に腕を磨き、気付けば中学も卒業に近づいていた。

少しばかりだが料理の腕も上がり、自分に自信も持てるようになった。
今の僕ならば、デレは受け入れてくれるのだろうか。

金髪の巻き髪を揺らし、うん、と笑顔で頷いてくれるだろうか。






なぁ、デレ?

どうだい?



67: 頂きます、のようです :2008/08/31(日) 03:50:20.96 ID:umGHyTbmO
椅子に座っているデレに問いかける。

ζ( ー *ζ「…………」

返事はなかった。

腹部を血で染めたデレは、それでもなお美しく、愛らしかった。僕はそっとデレを抱えあげると、キッチンへと連れて行く。


デレのためだけに新調した包丁を取り出し、柔らかそうな体に突き刺す。
ズブリという音と共に、真っ赤な液体が飛び散った。

美味しく料理してあげるからね、と優しく囁き、デレのしなやかな身体を分断していく。
腹や太ももの肉は、生で食べてしまいたいくらい美味しそうだった。


だけど、我慢。折角最高の食材が目の前にあるんだ。焦らずにやればいい。



69: 頂きます、のようです :2008/08/31(日) 03:53:17.96 ID:umGHyTbmO
(-_-)「……でも、ちょっとだけ」


頂きます。


がぶり、とかぶりつきたかったが、流石にそれは不可能だった。無理矢理に前歯で千切り、くちゃくちゃと咀嚼する。
鉄の味が口の中に広がった。


……これがデレの味か。


滴り落ちる血液を手で受け止め、口に運ぶ。飲めば飲むほど、デレとの思い出が脳裏に浮かんでは消えていく。


あぁ、美味しいよ、デレ。

思わずため息が漏れてしまう。



71: 頂きます、のようです :2008/08/31(日) 03:58:19.50 ID:umGHyTbmO
……結局、デレを生のまま、欲望のままに腹一杯食べてしまった僕は、今日の後片付けと明日のための下準備に取りかかることにした。

明日の朝はどう料理して食べようか。肉は……ステーキ?ハンバーグ?ローストチキン?
燻製にでもしてみようか。シチューに入れるのもいいかもしれない。
脳味噌はどうしよう。骨もさすがに食べれないな。スープにでもしてしまおう。
目玉は……そうだな。軽く焼いてみようか。生のまま丸飲みするのもいいが、それでは僕が料理を勉強した意味が無い。


包丁についた血をゆっくり舐めとりながら、思考を巡らせた。涎が止めどなく溢れ、包丁と僕の口との間に赤い糸が形成される。
もうすっかり冷たくなったデレを見ると、顔は青白く変貌していた。それでも、どんな姿でも、僕のデレへの気持ちは変わらない。



デレ、いつまでも一緒だよ。
腹の中のデレが、笑顔で返事をした気がした。



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 04:00:48.09 ID:umGHyTbmO
短いですが以上です。
最初に書き忘れましたが絵はNo.10です。

支援ありがとうございました



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