( ФωФ) ロマネスクは優しい魔物のようです

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 22:56:16.28 ID:spx3wQqG0
(チチ○ω○)「ごろにゃ〜ん」

今、またたびを求めて全力疾走しているこやつは猫である。
強いて違うところを上げるとしたら、ちょっと化け猫ってとこかナ──
名はロマネスク1世。息子が一人いる。

( ○ω○)

こんな息子だ。
ロマネスク1世(以下ロマ父)は、息子の事を非常に大切にしていた。

だが、最近、ロマ父を倒そうとする不届き者が増えていた。
ロマ父は、そのことを非常に遺憾に感じていた。


お日様がぽかぽかと陽気に照らしてくれている森。
その森の奥、若干山の方に、ロマネスク一家は巣を作っていた。
食べるものは、主に木の実や兎などの小・中動物。

巣から半径3kmほどまでなら、安全だ。
だが、そこから先は、魔の領域。
恐ろしい人間どもが、ロマ父たちを捕らえようと、罠を張っている。
注意しなければいけない、レッドゾーンだ。


ある日、ロマ父は森へ狩りに出かけた。
最近は巣の近くに動物達がいなくなってきたので、ちょっと遠出をしてみるつもりだった。

巣から僅か、2kmほどのところに、罠が張ってあった。



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 22:59:49.27 ID:spx3wQqG0
(チチ○ω○)「人間どもめ、卑しく欲望を膨らませたな」

ロマ父は毒づいた。
最近、ロマ父の領域は少しずつその面積を減らしていた。

一度、巣に帰るか。
そうロマ父が思い、足を巣へ向けたとき、罠が作動した。
矢が、前方、後方、右翼から5本ほど飛んできたのだ。
咄嗟に左によけるロマネスク。そこで、再び罠が作動した。


どのくらい時間が経ったのだろう。
ロマ父は、体中に矢が刺さり、満身創痍であった。
既にロマ父の心は人間という毒牙により復讐に駆られていた。

ロマ父は、怒りに任せて村へと急いだ。
許さない、殺して、潰して、蹂躪してやる。

走った。
走って、走って、走った。

村までの距離は、大分ある。
罠なんか、あるはずが無いのだ。
遂に、人間は魔物の怒りに触れてしまった。



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:02:53.29 ID:spx3wQqG0
J( 'ー`)し「はぁ、疲れたわ……まぁ、これくらいでいいかしらね」

場は一転して、森の一部。
ある村人が、木の実を取っていた。

タイミングが、悪かった。
突然地響きが聞こえるかと思うと、木々の間から、黄色い二つの目を黒の衣から覗かせている者がいた。


(チチ○ω○キ)「人間どもめ……許さんぞ……」

ロマ父は、人間に対しての呪いの言葉を呟き、その村人に襲い掛かった。

J(;'ー`)し「あ、あ……」

どうやら村人は恐怖で声がでないようだ。
ふふふ、もっとだ。もっと怖がるがいい。
その恐怖に身を任せ、のた打ち回れ。

しかし、見てるだけではつまらない。
我輩をこのように傷つけた、人間どもに復讐しなければ。

あまりの恐怖に腰を抜かしている村人をロマ父は見る

(チチ○ω○キ)「まずは……足だ」

そう思うと、我輩はその村人の右足の根元に爪を刺した。
鮮血が飛び散る。
悲鳴が森を支配する。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:06:40.85 ID:spx3wQqG0
我輩は鮮血により紅く染まった元右足を、貪る。
ガリ、ガリ、ガリ。
うまい。これが、人間の雌の味なのか!
その味に感動した我輩は、骨まで味わうように、骨を、口の中で嘗め回す。
次第に味がしなくなってきた。

(チチ○ω○キ)「ふむ。足りないな……」

次は、左足を引きちぎる。
女の顔が苦悩で歪む。いい気味だ、ははっ。

元左足を、足の先から食べる。やはり、旨い。
あまり脂肪のついていない肉に、血が潤滑油の代わりをするようだ。
あぁ、まるで口の中で溶けてしまいそうだ。

女の顔から生気が無くなっている。青白い。
ここで死なれては、おもしろくないではないか。
もっと苦痛を。もっと苦悩を。もっと、もっと、もっと!

我輩はその女を生かすため、止血代わりにその傷口に手を当てた。
女がより一層強く叫ぶ。
もっと叫べ。もっと痛がれ。
我輩の心の、体の痛みは、こんなものではない。

さて、次は、どこから行こう。
目玉を繰りぬこうか。こりこりして美味しそうだ。

そう思ったとき、突然矢が飛んできた。
二本足で経っていた我輩は、咄嗟に、よけようと後ろへ重心をずらす。
矢が、我輩の片目を掠めていった。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:10:49.12 ID:spx3wQqG0
(チチ○ωФ)「だれだ……」

怒り。憤怒。激情。
それが我輩の心を支配していた。折角食事を堪能していたのに。

(`∠´)「! ……ロマネスクよ……よくも、やってくれたな。貴様らは危害を加えないと思っていたんだが」

(チチ○ωФ)「先に危害を加えたのは、貴様らの方だ。我が憎しみ、その体で払ってもらおう」

そういい終わるや否や、先手を打つ。
右手で、その周りの木々ごと男を切り裂き、ふっ飛ばす。

(`∠´;)「ひょう!」

しかし、男はその俊敏な体使いで、我輩の攻撃の範疇から逃れた。
くそう、すばしっこいやつだ。そう思い、そのまま右手を先程と逆の方向へ動かそうとした時。
我輩の目前に、矢が襲い掛かった。

幸運か、偶然か、我輩の足元が泥に取られ、仰向けにこけた。
我輩の目の新たな傷から血が出るができると共に、森に、衝撃が起こる。

急いで立ち上がるが、既に男と女はいなかった。
どうやら、先程の衝撃でどこかへ飛ばされてしまったようだ。

しかし、かなりの痛手だ。
体中の矢だけでは無く、追い討ちをかけるように、両眼の調子が悪い。
ここは、一旦帰るべきだろう。

我輩は、巣へ帰っていった。
その矢に毒が塗られていたとも知らずに。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:13:44.86 ID:spx3wQqG0
(;Ф∠´)「ん……ハッ」

私が目を覚ましたとき、自分の体は先程の場所には居なかった。
いや、それどころではない。
私の右腕が、真横にある巨石に潰され、体を離れていたのだ。

その近くには、見るも無残な私の妻が、あった。

(;Ф∠´)「……無念……」

ゆっくりと手を引かれるようにして、後ろへと、重心が傾いていく。
もう、どこにも力が入らない。
これが死の力なのか、と感じた。

誰の支えもなくやってきた、この人生。
悪いものではなかった。よくやった、と自分に言ってやりたかった。
しかし、もはや口にすら力が入らない。

青空が森の間から光っていた。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:17:21.61 ID:spx3wQqG0
私が次に気がついたとき、二人の息子の顔が目前にあった。
そうか、私は……

息子に、伝えなければならない。
悪いのは、私たちなのだ。

口に力を入れるが、旨く言葉にならない。

急に、目の前が光で満たされた。

今から、行ってやる。今度こそ、行ってやる。
待っていろ。

やはり、声にはならない。

後ろへと倒れこむ自分の体を、誰も支えてくれなかった。


涙が、溢れた。空も滲むほどに。

しかし、体に感じたのは、石畳の冷たさだった。


視界は一度暗くなり、そして、真っ白になった。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:21:15.95 ID:spx3wQqG0
(チチФωФ)「ここで読者の皆様と◆azwd/t2EpEさんに深くお詫びをいたします。でもベルだしちゃったしどうしてもやらなくちゃいけないと思ったんです」

( ○ω○)「とーちゃん誰に向かって言ってるの?」

(チチФωФ)「お前は知らなくていいことだ」

( ○ω○)「大人の事情ってやつだね!わいるどー」

ロマ父は、巣に戻っていた。
途中、体の動きが悪い気がしたが、一時的なものだろうと思っていた。

( ○ω○)「とーちゃん、目の傷はワイルドだけど、何で血だらけなの?」

(チチФωФ)「おっといかん、忘れるところだった、いいな、よく聞きなさい」

大事な事を忘れかけていたロマ父は、話し始めた。
人間の暴挙。
自分の行動。
その結果。

その全てを聞いて、ロマネスクは思った。

( ○ω○)「(確かに人間も悪いけど、ひっかかったのとーちゃんだろ)」

息子は非情だった。

( ○ω○)「とーちゃん、とりあえず傷を癒せよ」

(チチФωФ)「ん、そうだな。なんだか体がしびれて仕方無いんだ、休むとするか」



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:25:03.11 ID:spx3wQqG0
そう言って寝床へ行くロマ父。
その体は傷だらけで、足取りはとても弱弱しい。
寝るための藁置きに着く手前、ロマ父の体はゆっくりと傾いていき、重量感のある音をたて、動かなくなった。

ロマネスクは理解していた。
傷口から、毒が入っていたのだろう、と。
そして、このままこの付近にいるのは危険だ、と。

父親は死んだ。
母親もずいぶんと前に死んだ。
もはや、ここに未練は無かった。

ロマネスクは、父親であったそれを一瞥すると、静かにその巣を去っていった。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:29:16.66 ID:spx3wQqG0
時は流れ去り暫く。
ロマネスクは、新たに、別の場所に巣を作っていた。
付近には小さな村が二つあるだけ。

一つは、やや原始的な村。こちらの村には近付いた事が無かった。遠目で見た事があるだけだ。
もう一つは、誰とでも友好的な村。こんな化け物な自分にも、優しく接してくれた。
おかげで、周辺の言葉も大体は覚えた。

すごく、居心地がいい土地だった。


ある日、ロマネスクが散歩をしていると、偶々人間が自分を見かけた。
腰を抜かすや否や、すぐさま駆け、逃げていく人間。
ロマネスクは声をかけようと思ったが、それは叶わなかった。

異変は、その日の夜に起きた。
洞窟の前に現れた、両手両足を縛られた一人の女性と、その横に立つ一人の男。

( ∵)「偉大なる魔物様、生贄でございます。毎週、生贄を出しますので、どうか、これで我が村には手出しをしないで頂きたい」

男は、こう言った。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:36:41.77 ID:spx3wQqG0
ロマネスクは、迷った。
この生贄を拒むべきか、受け入れるべきか。
一先ず、今の状況を冷静に判断してみる事にした。

この男は、多分、原始的な村の奴だ。
服装や、なまりからして、そう思える。

そして、この男は、自分が村に災厄を齎すと思っている。
そんなことは、しないのに。


不意に、父親のことが思い出された。
近隣の住民を放置していた、父親。
次第に人間はその欲望を膨らませ、結果、惨事が起きた。

ここは、受け入れるべきだろう、と、ロマネスクは思った。

( ○ω○)「いいだろう。ただし、毎週とは言わない。毎月、この日に一人の生贄を持って来い」

( ∵)「分かりました。それでは、今月はこやつをささげます。また、来月のこの日に」

( ○ω○)「うむ。さっさといかんか」

敢えて高圧的に言うロマネスク。
速く、この男を帰らせたかった。



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:42:16.36 ID:spx3wQqG0
しかし、どうしよう。
この女を食べるつもりなんてない、ましてやましい事などするはずが無い。

从 ゚−从「………」

女は震えていた。
とりあえず、落ち着かせよう

( ○ω○)「女、落ち着くが良い。我輩はお前に危害を加えるつもりではない」

なるべく優しそうな声で囁くが、女は疑いの眼差しをこちらに向け続ける。
やれやれ、まいったな。

( ○ω○)「本当だ、信用しろ。まぁ、そういってもできないだろうな。よし」

急に女に近付くロマネスク。
怯え、悲鳴をあげる女。

( ○ω○)「うるさい、黙んか」

口調は高圧的なものの、その行動は、口調とは裏腹であった。
ロマネスクは、女の自由を縛っていた縄を、その爪で斬った。
驚きを隠せない女。

( ○ω○)「これで信用できたか?」

震えながらも、頷く女。
ふふ、と笑いをこぼすロマネスク。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 23:50:42.54 ID:spx3wQqG0
( ○ω○)「さて、お前には、二つの進むべき道がある」

一つは、このまま村に帰る。
その場合、お前は村の者に殺されるかもしれないがな。
まぁ、それはそれで面白いのだが。ふふふ……

二つ目は、我輩が、お前にある村を紹介してやる。
その村は、誰にでも優しく、平等に接してくれる者ばかりが集まっている。
勿論、我輩にも平等に接する。
お前は、きっとそこで幸せに暮らせるだろう。少なくとも、今よりは、だがな。

( ○ω○)「さあ、どうする?」

敢えて、前者については短所を上げるロマネスク。
本当は、ロマネスクも、人を殺したい、人の死などは願っていないのだ。

か細い声が、洞窟に響く。

从 -_从「………たい…」

( ○ω○)「ん、なんと言ったのだ?」

聞き返すロマネスク。
それは、完全なる意思表示を確かめるためでもあった。



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 00:00:08.49 ID:yAfX3TJU0
从 ゚−从「私は、もう一つの村に、いきたい……」

確固たる意志を込めた瞳。
それは、ロマネスクに、その意志を、二度と村には戻らないという意志を見せ付けるのには、十分であった。

( ○ω○)「いいだろう……、ついて来なさい」

ロマネスクは、そう言って、女を先導した。

凸凹の道を、ひたすら進んでいく。
急に斜面が高くなったり、低くなったり、丸太のかかっている川を渡りもした。
その道を、満月が明るく照らしていた。

半刻ほど歩いただろうか、村に着いた。
村の者たちが、一斉に出てくる。


( ○ω○)「皆のもの。この女は、向こう側にある村の者だ」

( ○ω○)「理由は、後ほど説明しよう。申し訳ないが、この村で養ってくれはしないだろうか」

从 ゚−从「お願い……します……」

女を養うよう、頼むロマネスク。
恥ずかしがりながら、頭を深く下げる女。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 00:05:32.37 ID:yAfX3TJU0
一人の男が、一歩踏み出してきた。

( ゚∀゚)「ロマネスクさん、あんた、ちょっと勘違いしてねえか?」

男は、まるで女の希望を打ち砕くような発言をした。

( ゚∀゚)「あんたぁ、この村を何だと思ってるんだ?」

辛辣な一言。
暴力では解決してはいけないと知りうるロマネスク。
無理矢理にでも、この女を村にいれてやりたい。
人間のためなのに、何故だろう、こんなに悔しいのは。

ちくしょう。

ロマネスクが、そう言おうとした時、男の声が再び夜の森に響いた。

( ゚∀゚)「この村はなぁ、来る者は誰でも歓迎なんだよ。何わざわざお願いなんかしてるんだい」

さぁ、こっちへどうぞ。
そう言って、男は小さな小屋へ、女を誘導した。

ロマネスクは、何故か心が温まるのを感じた。
これが、人間か、全く、父は何をしていたのだろう。
先祖に対して無礼になるであろうことまで、ロマネスクは思った。

さて、帰ろう。
ロマネスクが、後ろを振り向いたとき、小屋から女が出てきた。



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 00:09:06.12 ID:yAfX3TJU0
从 ゚−从「あの……ロマ……ネスクさん」

从 ゚ー从「ありがとうございます」

てっきり罵倒の言葉を浴びると思っていたロマネスクは、拍子抜けた。
意外にも、その女から出てきた言葉は、感謝だった。

(*○ω○)「ふ、ふん。我輩は平和主義化物だからな」

ちょっと照れながら、ロマネスクは暖かさを胸に、静かに月が照らす帰り道を辿って行った。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 00:14:45.91 ID:yAfX3TJU0
ぽかぽか陽気な太陽に照らされながら、ロマネスクは寝ていた。

( ○ω○)「良い天気だな……」

ああ、本当に良い気持ちだ。
こんなときは動きたくないよなぁ……

………


ピチャ、ピチャ、ピチャ。

ロマネスクは、ある音によって目が覚めた。

( ○ω○)「むう、どうやら、我輩は寝ていたらしい」

外は、暗黒に染まっていた。
雨が山を酷く打ち付けていた。

洞窟の入り口に、一つの影。
雨に濡れたその男は、異国風の格好をしていた。



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 00:20:08.88 ID:yAfX3TJU0
('A`)「遂に……見つけたぞ、ロマネスク」

何かしら、悪しき心が見え隠れする、男が居た。
ここ周辺の言葉を使っているが、それは訛っており、どうやら異国人のようだ。
男は、まるで父親と同じように、復讐という毒に犯されていた。

('∀`)「流石は化け物、直りが早いな。トーチャンから受けた傷は、痛くも痒くもないってか?」

アハハハハハハ。
狂ったように笑う男。

('∀`)「ヒャッハハハハハハハハ……ふざけんなよ」

今度は、急に冷静になる。

( ○ω○)「全く、感情の波が激しい奴だな」

('A`)「黙れ。トーチャンの恨み、今こそ果たす」

そういい終わるな否や、男はロマネスクに向かって駆け出してきた。
咄嗟に右手で払おうとするロマネスク。
しかし、その腕はうまく動いてくれなかった。

('∀`)「どーした! その腕は飾りかぁ!?」

勢いを止めない男。
先程まで右手を枕代わりに寝ていた事が仇になったか、右手は軽く痺れていた。
左手で払おうとするも、既に時は遅かった。

ロマネスクの両眼に、縦一文字が飾られた。



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 00:28:53.55 ID:yAfX3TJU0
(;ФωФ) 「ぐおおおお!」

痛い。
痛い。痛い。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

くそ、くそ、ちくしょう。
なんで我輩が、こんな目に会わねばならぬ。

不意に、ロマネスクの脳裏に、父親の影が浮かんだ。

( ФωФ) 「そうか……、そういうことか、父よ」

成る程、合点がいった。
父は、このような感情を持ったのだな。

何もしていない、いや、寧ろ懇切丁寧に接してやった人間に、裏切られた、この気持ち。

許さない。
絶対に許さない。

(#ФωФ)「 殺してやる」

苦痛に顔を歪めろ。
死して尚行き続けろ。



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 00:31:04.19 ID:yAfX3TJU0
赤が浮かぶ視界で、男の姿を捉える。
性懲りも無く、我輩を狙っているようだ。
右手にナイフを、逆手に持っている。

左手で軽く弾いてやる。
面白いように弧を描く男。
全く、か弱い。


どうやら、先程の衝撃で骨がいくつか折れたようだ。
体を震わせながら起き上がる男。
それを、もう一度弾く。

男が着地したところを、また、弾く。

それを、弾く。
弾く。
弾く。
弾いて、弾いて、弾く。

あははは、楽しいなぁ。
みてみて、肩から骨が出てるよ。おいしそう。

さて、そろそろ頂くか。

首だけをこちらに向ける男。
その目には、諦めの色は無かった。



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 00:36:33.00 ID:yAfX3TJU0
だが、そんなのは関係ない。
まずは、その邪魔な手から。

手首を切断する。
男の手首から、盛大に血が噴出す。男が叫ぶ。
お構いなく、その手を口に入れ、味を堪能する。

うん、うまい。

しかし、これでは肉の味しか分からないではないか。
どうしようか。

そうだ、男の手首を舐めてみよう。
思い立ったがなんとやら、我輩は早速その男のもう片方の手首を切断し、その切断面を舐めた。

あぁ、なんということだろうか。
これは、言葉にはできない味だ。
まさに、禁忌を犯した味。醜い人間を、この手で弄ぶことによって感じられる、そんな味。

ええい、齧り付いてしまえ。
我輩は、一気にその男の下半身、足の付け根までを口にする。

男が酷く耳障りな声で叫んだ。
鮮血が洞窟を色染めた。



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 00:41:38.56 ID:yAfX3TJU0
うまい、うますぎる。
だが、骨がじゃまだな。

ぷっ、と骨を吐き出す。
幾許かの肉と共に、骨が口から飛び出す。

血が、あふれ出る。


はははは、これぞまさしく酒池肉林ならず朱血肉鱗だな。だれがうまいことを言えと。

愉快。
非常に愉快。


そろそろ、そのうざったらしい目を頂くか。

男の目の前までやってくる。
顔が青い。いや、元からか?

男は生気の無い声で呟く。

('A`)「許さねえ……覚えておけ、俺が死んでも、別の誰かが貴様を討つからな」

ああ、うるさいなぁ。
最後くらい、静かにできないのか、このゴミクズは。

まぁ、いい。
早速爪を男の瞼まで持っていく。
男が震える。



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 00:46:28.35 ID:yAfX3TJU0
ああ、もっと震えろ。
最高に震えろ。もっと、もっと、もっと。

静かに、傷つけないように眼球を取り出す。
勿論、暴れださないように顔は抑えている。

眼球と網膜の糸が切れるたび、男が何か叫ぶ。
綺麗な白濁色と青色をしたその眼球は、月光に照らされ、光り輝いていた。

それを、その美しさに背かないように、ゆっくりと口の中へ運ぶ。

ゴクリ。

あぁ!まるで、蕩けるようだ!
なんて……なんて、おいしいんだ、人間というものは!

そしてそのままもう一つの眼球を取り出す。
それを口にする。

これはたまらん。



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 00:49:43.67 ID:yAfX3TJU0
残るは、腕、体、顔。
どれから、食べようか。

そう思った時、異変に気づいた。
男は、死んでいた。


つまらない。
つまらない、つまらない。
なんで死ぬんだ。莫迦じゃないのか。
もっと我輩を楽しませろよ。

まぁ、人間だし、仕方がないか。
あはははははははははは!


我輩がそう狂い叫んだとき、洞窟の影から一人の女が顔を真っ青に覗かせていた。

从;゚д从「………」

女は、震えていた。
丁度いい。この女も食べるか。

いや、まてよ。
この女は、あのときの生贄ではないか。

女……?
人間………。



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 00:53:35.29 ID:yAfX3TJU0
不意に、ロマネスクに、あの時の暖かさが蘇ってきた。

我輩は、なんと愚かな事をしたのだろうか。

涙した。
涙し、涙し、もう一生涙がでないくらい涙した。

(;ФωФ)「我輩は、何という事を……」

体が震える。
その震える手を、縋るように女に伸ばす。

从;゚д从「ひっ」

だが、女はその手を避け、脱兎の如く逃げ出した。

ロマネスクの心には、ぽっかりと、大きな穴が開いていた。
全てを失ったような気がした。



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 01:05:36.28 ID:yAfX3TJU0
それから、幾度も生贄が送られた。
一人も、反逆者は居なかった。
我輩を狙う者も、来なかった。

あの日以来、生贄が送られてきても、村までの道を教えるだけにしていた。
勿論、最初は選択させるのだが。

しかし、どうしても、ロマネスクの心に開いた穴も、塞がらなかった。
毎日が空虚に感じられた。


ある時、転機が訪れた。
満月の光る、美しい夜空の日だった。
生贄が、送られてくるはずだった

足音が聞こえる。

あ、止まった。

また、足音が聞こえる。

どうやら、帰ったみたいだ。
どれ、生贄を、解放するか。

そう思い、我輩が表へ出ると、そこには、今までの生贄とはいい難い者がいた。

まるで、異国のような服装。
いや、異国の者だ。



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 01:20:47.83 ID:yAfX3TJU0
( ^ω^)「遂に出会えたお……ロマネスク……ここであったが百年目だお……!」

懐かしい言葉が聞こえる。
既に、その言葉は忘れてしまったが、きっと故郷の言葉だろう。

ロマネスクの中に、再び憎しみが生まれた。
今夜も、血が騒ぐなぁ。

まぁ、とりあえず、生贄かどうか、聞いた方がいいだろう。
そう思い、ロマネスクは、その男に尋ねた。

( ФωФ)「お前は生贄だろう?……ならば、私はお前を殺そうとは思わない。
       もしお前が今すぐ此処から逃げ出すのであれば、お前は殺されずに済むぞ」

さぁ、どうでるか。
この異国人であろう者に、あの村を教えるわけにはいかない。
ここで逃げ出すのであれば、それまでだ。

ロマネスクは、言い終るや否や、男に近付いていった。男が言葉を理解できぬと知らずに。
後一歩で、男の縄を斬れる。
そこまで近付いたとき、風を切る音がした。

男は、縄を、隠し持っていたナイフで素早く斬り、そのまま逆手に持った。
左を踏み出し、腰を回し、その勢いを持ってロマネスクの左目を引き裂く。

(#^ω^)「これは、とーちゃんの分だお!」

男が何か叫び、そのままナイフを順手に持ち、真下に振り落とす。
突然のことで、ロマネスクは油断していた。
ロマネスクの右肩が、赤い花を咲かせた。



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 01:23:25.07 ID:yAfX3TJU0
続けて、男は右足を踏み出し、ロマネスクの額、目と目の間を、切り裂こうと右手を逆袈裟型に振り上げた。

(#^ω^)「これも、トーチャンの分だお!」

(#Ф/ωФ) 「うおおおおおおおおおお!」

男とロマネスクの覇気がぶつかる。洞窟が、それに呼応するかのように揺れる。
男の攻撃を受け続けたロマネスクであるが、ただやられるわけではない。
全速を持って右手を回す。
男が宙に浮き、そのまま壁へ押し付けられる。


(#-ω-)「グフッ……うぅ……」


腹を叩きつけられたことで、肺に酸素が足りないようだ。
男は、必至に酸素を補おうと、呻く。
その腹は、先程の攻撃でいくらか抉られていた。
苦痛に顔が歪んでいた。愉快だ。

( Ф/ωФ)「うぬぬ………」

しかし、それはロマネスクも同じである。
先程男にやられた顔面の傷と、無理な状態からの攻撃により、ロマネスクも調子は宜しくなかった。
だが、やはり化け物。その強靭な精神を持って、未だ動けずにいるその男に先制を仕掛けた。
両手を頭上に持ってくる、大振りな構え。
しまった、と思った時、それはもう遅かった。その隙を、男は見逃さなかった。
足に仕込んでおいたナイフを取り出すと、最後の力を振り絞るかのように、地面を蹴った。

(#^ω^)「これは、カーチャンの分だおおおおおおっ!」



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 01:32:33.67 ID:yAfX3TJU0
男が、まるで洞窟を落盤させるのではないかというくらい激しく叫ぶ。

ロマネスクは、その男が懐に入る事を許可してしまった。
まさに神速とでも言わん勢いを以って、ロマネスクの額にナイフが突き立てられた。
ロマネスクは、余りにも速すぎるその攻撃に、反応できなかった。
僅か1秒にも満たない間に、ロマネスクの額に、金属が生えた。
ロマネスクは、憎しみに顔を歪めながら、まるで糸が切れたマリオネットのように、静かに倒れた。



気が付けば、その男は、既にその姿を消していた。
お日様が、優しく照らしていた。
しかし、その陽気な天気と裏腹に、ロマネスクの心は黒で染まっていた。

どうやら、額に刺さったナイフは致命傷にはならなかったようだ。
全く、爪が甘い。

( ФωФ)「とは言うものの、暫くは、動けないか……」

自分の体の具合を再確認したロマネスクの意識は、再び溶けるように闇へ落ちていった。



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 01:41:51.53 ID:yAfX3TJU0
再び目を覚ますと、体が若干痺れていた。
寝すぎたか、なんて思いながら、ふふふ、と笑うロマネスク。
その笑いに、昔のような柔らかさは無かった。

( ФωФ)「さて、行くか」

満身創痍で、痛みは果てしなかったが、それでも無理に立ち上がり、ある村を目指すロマネスク。
その瞳は、復讐の炎で燃えていた。

あの男が、どこから来たのはなんてのは、容易く想像できる。
ロマネスクは、既にその男を殺す事しか、頭に無かった。

ただ、ロマネスクが、彼の父親と違う点。
それは、人間を怨むのではなく、その男だけを怨んでいたことだ。

最初の生贄の、あの女性が居なければ、きっと父と同じ道を歩んでいただろう。
ふらふらと歩きながら、ロマネスクは苦笑しながら、そう思っていた。

村には、容易く付いた。
あの男は、生贄として連れて来られたのだ。
きっと、村ぐるみに違いあるまい。

ロマネスクの予想は、全く理に沿って無かったが、彼にはそれを考える余裕は無かった。
痛みを、憎しみを、辺りのものにぶちまけたい衝動を抑えるのに必至であった。


まず、門の前に立つ者たちを見下ろす。
戸惑い、腰を抜かす門兵たち。

ロマネスクは、そんな輩を、右手で薙ぎ払う。



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 01:49:30.61 ID:yAfX3TJU0
( Ф/ωФ)「うりいいいいい!!!!」

ミ( ∵)( ∵)( ∵)( ∵)( ∴)( ∵)「あっー!」

ははっ。村人が五人ほど飛んで行ったぞ。
どれ、どれ。左手で払う。家が崩壊したぞ。きっと何人も死んだだろうなぁ。
あぁ、思うだけで、涎がでる。
ちょっと運動不足だな。走る。何人もの村人が、地面に赤い花を咲かせた。楽しいなぁ。

( ∵)ミ( ∴)ミ( ∵)ミ( ∴)ミ( ∵)ミ( ∴)ミ( ∵)ミ「あっー!」

逃げまとう村人達。
襲い掛かるロマネスクと言う恐怖。

さて、遊びはここいらにしておこう。
そう思い、辺りを見回すと、一際豪華さの目立つ家が目に入った。
その家の窓から、あの男が姿を見せていた。

男はは裕福な暮らしをし、ブクブクと太っていた。
すでに、あの時のように戦える状態ではないようだった。



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 01:50:55.78 ID:yAfX3TJU0
(;^ω^)「お、お前は……なんで生きているんだお!」

男が何かを叫ぶ。うるさいなぁ。

(#Ф/ωФ)「黙って死ぬがいい……うりいいいいいいいい!!!!」

(;^ω^)「や、止めるおおおおおおっ!」

ロマネスクの、怒りを込めた、会心の一撃。
そのの家は、容易く崩壊した。きっと、奴隷のような者もいたんだろうな、ああ、食べればよかった。
ロマネスクの手によれば、こんなものだったのだ。言うまでもなく、村はほぼ全滅。


その後、ロマネスクは元の洞窟へと帰っていった。
ロマネスクは、既に男との戦いで満身創痍、その傷はほとんど治っておらず、まともな治療もしていなかった。
が、後悔は無い。屑な人間を、殺せたのだから。

薄れ行く、ロマネスクの意識。

( Ф/ωФ)「………(父は、今、あっちで何をしているのだろうか……、もっと、生きたかった、暖かさを味わいたかったなぁ……)」

優しい心を持っていた魔物は、洞窟の中で、父親の事を思いながら、静かに事切れた。



                           ( ФωФ)ロマネスクは優しい魔物のようです おわり



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