僕と天使と悪魔のようです

3: 15 :2008/08/30(土) 19:15:10.27 ID:EI6UmYT9O

( <●><●>)「こんにちは」


 頭に輪、白い羽、いかにも天使、そう、天使。
 そして大きな瞳に黒い髪、年代はきっと僕と同じくらい。
 そんな男の子が、ちょっとスキを開けたら居たなんて、信じられます?

 僕だったら――


(;><)「不審者――――!!」


 まず無理。


  僕と天使と悪魔のようです



4: 15 :2008/08/30(土) 19:18:23.92 ID:EI6UmYT9O

( <●><●>)「落ち着いて下さい、ほら、これとか飲んで」

(;><)「落ち着いていられる訳無いんです、それにその飲み物は僕のなんです」


 そうここは僕の部屋、僕の部屋でした。
 彼というイレギュラーな存在のせいで、すっかり忘れてました。
 ていうか、人の部屋でくつろいでるってどうよ。


( <●><●>)「まあまずお察しの通り……私は天使、名前はワカッテマス、です」

(;><)「は、はあ、どうも……ええと僕は」

( <●><●>)「ビロード、でしょう?
       ちゃんとワカッテマス」



6: 15 :2008/08/30(土) 19:21:01.58 ID:EI6UmYT9O

 僕が座ると天使……ワカッテマスくんは話し始めます。
 何で僕の名前を知ってるのやら。
 にしてもこれを客観的に見たら実に愉快な光景でしょう。


( <●><●>)「で、私は用があって来た訳ですが……」

(;><)「手短にお願いします……」

( <●><●>)「貴方を連れて帰りたい」

(;><)「あ、そんな事ですかー分かりました、ってああ違うっ!!」

( <●><●>)「……」



9: 15 :2008/08/30(土) 19:24:25.74 ID:EI6UmYT9O

 連れて帰る、連れて帰る、連れて帰る?
 は? 訳分かんないんです!


(;><)「あばばばば……」

( <●><●>)「ああ話が飛躍してますね、もう少し詳しくお話しましょうか」

(;><)「ああはいお願いします……」


 僕がそう返事すると、ワカッテマスくんは遠い目をして話し出しました。
 僕は何とかして頭を落ち着かせます。


( <●><●>)「あれは五百年前の事でした……私は」

( ><)「待て待て待て待て」

( <●><●>)「なんですか」

( ><)「もうちょっと簡単に……」

( <●><●>)「ふむ、分かりました」



12: 15 :2008/08/30(土) 19:27:24.08 ID:EI6UmYT9O

‐( <●><●>)‐

 それは三日前の事でした。
 私は雲の上、まあいわゆる天国ですね、そこから下の世界を覗いていたのです。


( ><)「……五百年前から話す必要が無いんです」

( <●><●>)「とりあえず聞きなさい」

( ><)「……」


 そこで目に付いたのが、貴方でした。
 学校の帰り道、何も無い所ですっ転ぶ、そんな貴方を。


(;><)「見てたんですか!?」

( <●><●>)「これからが良い所です」



14: 15 :2008/08/30(土) 19:30:04.56 ID:EI6UmYT9O

 そこで私は思ったのです。
 貴方の様な危なっかしい方は、私が近くに置いて守ってやらないと、と。


‐‐‐


( <●><●>)「まあそんな訳ですが、どうでしょう?」

( ><)「……何も無いんです」

( <●><●>)「ああそれは良かった!」


 突っ込みどころがあり過ぎて、突っ込めない。
 初めてそれを経験したんです……。
 短いとか目茶苦茶とかもうね……。


( <●><●>)「そうと決まれば早速……」

(;><)「何するつもりですか!?」



16: 15 :2008/08/30(土) 19:33:30.71 ID:EI6UmYT9O

 ワカッテマスくんが懐から取り出したのはカッターでした。
 それも僕に向けた物らしく。
 え、それなんてヤンデレ?


( <●><●>)「何って……私の所、つまり天国、人間である貴方が行く為には?」

(;><)「し、死ぬ?」

( <●><●>)「正解」

(;><)「納得いかね――――!!」


 いや確かに、確かにですよ?
 人間、僕が天国に行くには死ぬしかないのは分かるんです。
 だけど僕それ以前に了承してないんですけど。



19: 15 :2008/08/30(土) 19:36:40.79 ID:EI6UmYT9O

( <●><●>)「大丈夫、痛いのは最初だけだから、すぐ気持ち良くなりますから」

(;><)「ならねーよ! なんだよそのレイプ魔みたいな!」

( <●><●>)「まあ、そういう訳で……」

(;><)「助けて――――!!」


 僕は叫んでいました。
 だってまだ死にたくないんです!
 やりたい事がいっぱいなんです!

 その願いが届いたのか否か、遠くから、声が聞こえました。


「そうはさせないっぽ!!」



20: 15 :2008/08/30(土) 19:39:38.29 ID:EI6UmYT9O

( <●><●>)「……チッ」

(;><)「あ、ああ……」


 僕と彼の間には、鎌が、まさしく本物の鎌がありました。
 その先を見れば、少し露出度の高い服を着て、黒い羽を持ち可愛らしい顔をした、女の子がいました。


(*‘ω‘ *)「ふう、間に合ったっぽ」

(;><)「た、助かったんです!」


 ありがとうなんです、そう、続けようとしたら。

 鎌は視界から消えて、僕の首の後ろに、ありました。
 あれー……。


(*‘ω‘ *)「じゃ、地獄で一緒に暮らすっぽ!」



24: 15 :2008/08/30(土) 19:42:23.41 ID:EI6UmYT9O

 今日はやたらツイてないんです。
 二度も殺されそうになるなんて。
 いや、いやいやいやいや!


(;><)「待って下さいなんですっ!」

(*‘ω‘ *)「遺言かっぽ? あ、私の名前はちんぽっぽだっぽ」

(;><)「よろしくなんです……じゃなくてせっかく助けてくれたのに、何でこんな事するんですか!?」

(*‘ω‘ *)「あー、それは……私が地獄に連れて帰りたいからだっぽ、それには私が殺さなきゃ意味が無いんだっぽ」

( ><)「世の中こんなのばっかり」


 なんですか、なんなんですか。
 僕は何か悪い事したんですか?
 何でこんな目に合ってるんですか?



25: 15 :2008/08/30(土) 19:45:51.99 ID:EI6UmYT9O

( <●><●>)「せっかくなので、良い事を教えてあげましょう」

( ><)「え?」

( <●><●>)「貴方が近頃、何も無い所で転んだり身に覚えのない不幸を味わったとすれば、全てこいつのせいです」

(;><)「え……僕が転んだり、やたら溝にはまったりするのって……」

(*‘ω‘ *)「ああもう面倒だっぽ……、そうだっぽ、そいつの言う通り、全部私のせいだっぽ! 足引っ掛けたりしたの私だよごめんね!」


 何その逆ギレ。
 どうりで違和感があったんです。
 変な物に引っ掛かって転んでいたのは、きっと鎌辺りが足に引っ掛けられたと考えるのが妥当なんです。



27: 15 :2008/08/30(土) 19:49:00.04 ID:EI6UmYT9O

( ><)「ていうか知ってるなら教えて欲しかったんです」

( <●><●>)「だからその為に来たんでしょうが」

( ><)「……」

(*‘ω‘ *)「とりあえず、ビロード……アンタも一緒に地獄で暮らすんだっぽ」


 こいつら勝手過ぎるんです。
 だって天国も地獄も、僕はいずれにせよ死ぬ事は必定なんです。
 そんな事お構いなしに自分達のワガママを通そうとなんて。


( ><)「ていうか二人共、僕のお菓子食べないで下さい」

( <●><●>)「あ、ついおいしそうだったもので……」

(*‘ω‘ *)「うめぇ……」



28: 15 :2008/08/30(土) 19:52:11.41 ID:EI6UmYT9O

 大体僕は既に感覚麻痺を起こしてます。
 だって天使と悪魔なんて、たった数時間前の僕だったら信じてないどころか頭にも無かったんですから。
 それが今は、こうしてテーブルを囲んでお茶を楽しんでいるんですよ?

 あれ、いつの間にお茶……。
 と、とにかく、僕はもうちょっと自分を見失ったらいけないと思うんです。
 流されちゃダメなんです、僕。


(*‘ω‘ *)「きのこの山……うめぇ」

( <●><●>)「そこはたけのこの里とやらでしょう、常識的に考えて……」

( ><)「僕はどっちも好きなんです!

      じゃなかったあああ!」



30: 15 :2008/08/30(土) 19:55:10.13 ID:EI6UmYT9O

 早速流されてどうするんですか!
 僕は今、早くこの二人に帰ってもらわなきゃ駄目なんです!


(;><)「ふ、二人共!」

( <●><●>)「たけのこの里はこのチョコとクッキーが……あ、なんですか?」

(*‘ω‘ *)「いやだから、きのこの山はこの形状と味が……あ、なんだっぽ?」

( ><)「なんでしょうこの疎外感」


 なんかもう話す気も無いというか。
 流されるどころか相手にされてないってどうなんですか?
 馬鹿なの? 死ぬの?



31: 15 :2008/08/30(土) 19:58:13.19 ID:EI6UmYT9O

( <●><●>)「きのこたけのこ談義はまた後日、席を用意するとして……話を戻しますかね、ビロードもお菓子食ってないで」

(;><)「それはどう考えてもアンタらなんです!」

(*‘ω‘ *)「で、ビロード……どっちを選ぶんだっぽ?」

(;><)「いやだから僕はまだ死にたくないんです……どっちも嫌なんです……」

( <●><●>)「ふむ、貴方の言いたい事はよーく分かりました」

(*><)「本当なんです!?」

( <●><●>)「決断までの時間が必要だ、という事でしょう?」


 理解を求めた僕の馬鹿、大馬鹿。



33: 15 :2008/08/30(土) 20:01:10.06 ID:EI6UmYT9O

(;><)「いえですから今すぐに……」

(*‘ω‘ *)「今すぐになんて決める必要無いっぽ、ビロード」

( <●><●>)「そうです、私もしばらくはここに居ますから」

(;><)「違うんです! あと何さり気なく居候しようとしてるんですか!?」

(*‘ω‘ *)「お、なら私もいるっぽ」


 もうやだこの二人。
 初対面で一時間以内にここまで悪印象を持てたのは初めてなんです……。
 大体用件もまともじゃないんです。


(;><)「嫌なんです――――!!」



35: 15 :2008/08/30(土) 20:04:51.57 ID:EI6UmYT9O

 そんなこんなで。
 僕と人外二人組の生活は始まりました。
 家族には見えないし、周りには誰一人として見える人はおらず、ある意味僕だけがやたらダメージを受けてるんです。

 二人も二人で、実際見るだけなら何度もあるのに、この世界の事は全く分かってないんです。
 二人からしたら僕の家だって未知の世界なんでしょう。
 そして特に二人が興味を示す物と言えばあれでした。


( ><)「へ、減ってる……!」

( <●><●>)「どうしました?」


 僕が開けて見ていたのはお菓子の戸棚。
 二人が来る前はもっとあったはずなのにと僕は思いました。
 そう、二人はこの世界の食べ物、更にはお菓子が大好きでした。



36: 15 :2008/08/30(土) 20:07:17.69 ID:EI6UmYT9O

(*‘ω‘ *)「止められない止まらない、だっぽ」

( ><)「かっぱえびせん自重……」


 こうして今もちんぽっぽちゃんはかっぱえびせん食べてますし。
 居候のくせして生意気な……。
 おかげで僕の戸棚も財布もスッカラカンなんです。


( <●><●>)「ええ、すみませんね」

( ><)「そう思うならじゃがりこ食べないで下さい……」

( <●><●>)「食べ出したらキリンが無いという事で」



39: 15 :2008/08/30(土) 20:10:24.90 ID:EI6UmYT9O

 コピーライターの馬鹿。
 何でこんな文章作ったんですか、もう。
 とにかく僕は色々と食い荒らされてると思うんです。


( ><)「はあ……」


 溜め息をついたところで、どうにもならないんですけど。
 一体、僕はどうすれば良いんでしょう。
 どうなってしまったんでしょう。

 今、もう僕は二人のペースに流されて、それを少しでも楽しいと思ってるんです。
 勿論今でも僕は死ぬのは嫌なんです。
 だからどちらにも行きません、だけど。



40: 15 :2008/08/30(土) 20:13:12.94 ID:EI6UmYT9O

 時々、どっちかに行ってしまえば、楽になれるんじゃないかと。
 そう、思うんです。
 二人と別れるのも辛いんです。

 ああ、僕の、馬鹿、なんです。


(;<●><●>)「……これは……」

(;*‘ω‘ *)「ちょっとそれ取ってみると良いっぽ」

(;<●><●>)「うわ、本当に取れましたよ……壊れて無いですよね? これ」

(;*‘ω‘ *)「多分大丈夫だっぽ……お? その数字のボタンは……」


 なんて僕がシリアスな事を考えていても二人はお構いなしに電話で遊んでいます。
 なんかもうおかしいんです。



43: 15 :2008/08/30(土) 20:16:11.14 ID:EI6UmYT9O

( ><)「それは電話なんです」

( <●><●>)「でんわとな……?」

(*‘ω‘ *)「不思議な名前っぽ……」


 二人はまるで初めての物を見るかの様に……いや、実際初めてなんですが、そんな風に恐る恐る電話に触れていました。
 ちょっと触ってはびっくりして、すぐに逃げるんです。
 猫みたい、なんです。


(;<●><●>)「うわ鳴った! 怖い!」

(;*‘ω‘ *)「これは怒ってるんだっぽ! そうに違いないっぽ!」

( ><)「はいはい、電話は怒らないんですよ」



44: 15 :2008/08/30(土) 20:19:19.62 ID:EI6UmYT9O

 僕が受話器を取ると、宅急便屋さんの声が聞こえました。


( ><)「あ、はいなんです、分かったんです」

(;<●><●>)「ビロード? 一体何と会話してるんですか?」

(;*‘ω‘ *)「……何かそれから変な音が聞こえるっぽ……」

( ><)「じゃあまた後でなんです」


 ピ、と電話を切って二人を見れば、顔を真っ青にしていました。
 毒電波やら何やらと、小声でぼそぼそと呟いています。
 物騒なんです。



45: 15 :2008/08/30(土) 20:22:29.23 ID:EI6UmYT9O

( ><)「ええと……電話は人と話す為の機械なんです」

(;<●><●>)「なん……だと……」

(*‘ω‘ *)「馬鹿な……そんなちっぽけな機械がだっぽよ……?」

(;<●><●>)「しかもこの数列は……」

( ><)「電話番号なんです」


 それから約十分に渡る初心者の為の電話講習会が始まりました。
 そして、それが終わる頃には、二人共ぽかんとしてました。
 心ここにあらず。


(;<●><●>)「こんなもので……」

(;><)「あ、ちょ! 受話器がちゃがちゃしないで下さいなんです!」



48: 15 :2008/08/30(土) 20:25:13.02 ID:EI6UmYT9O

 受話器を取っては戻し、取っては戻し、錯乱状態に陥ったワカッテマスくんはただひたすらそれを続けていました。
 ちょ、本当に止めて下さい。
 壊れちゃうんです!


( <●><●>)「と、とりあえず落ち着いたと思います」

(*‘ω‘ *)「私も……落ち着いてるはずっぽ……」

( ><)「良かったんです……」

( <●><●>)「そういえば今の電話は?」

( ><)「宅急便なんです」

( <●><●>)「たっきゅうびん……?」


 また説明しなきゃいけないんですね、分かります。



50: 15 :2008/08/30(土) 20:28:23.49 ID:EI6UmYT9O

( <●><●>)「ビロード、一つお願いがあるのですが」


 そんなある日。
 柄にも無くワカッテマスくんは真面目な顔をしていました。
 なんでしょうか。


( <●><●>)「がっこーに行ってみたいんです」

( ><)「学校……何でまた急に?」

( <●><●>)「ある本で読んだのですが、どうやらがっこーは青春云々だそうで」

( ><)「それはリア充の特権なんです……皆そうとは限らないんです」

( <●><●>)「り、りあみつる……?」

( ><)「人生をエンジョイサマーバケーションしてる人ですよ」



52: 15 :2008/08/30(土) 20:31:07.12 ID:EI6UmYT9O

 二人は本当にこの世界について知らない事が多く、最近は説明が面倒なんです。
 だから時々こうして冗談半分でふざけた事を教えたりしてます。
 案外楽しいんです。


( ><)「まあ良いんです、じゃあ今日学校に行きますか?」

( <●><●>)+「本当ですか?」


 僕がそう言うと、濁った瞳を輝かせて、ワカッテマスくんは言いました。


‐‐‐


( <●><●>)「ここが……がっこー……」


 行き着いた先は僕の通う学校でした。
 ワカッテマスくんは予想していたものと違うというような顔をしていました。
 すると、後ろから足音が聞こえました。



53: 15 :2008/08/30(土) 20:34:08.07 ID:EI6UmYT9O

( ^Д^)「あれ、ビロードじゃね?」

<ヽ`∀´>「お、ひきこもりがいるニダ、まだ学校は始まって無いのにw」

( ><)「……」


 何となく、予想はしてたんです。
 ジャージ姿の二人を見れば、部活中だと分かりますし。
 そしてきっと二人からも、ワカッテマスくんは見えないでしょう。


( <●><●>)「ビロード、ひきこもりって……それは……」

( ><)「そうなんです」

( <●><●>)「いえ、どんな意味かと」


 ワカッテマスくんのせいで空気ぶち壊しです、まあその方が良いんですけど。



54: 15 :2008/08/30(土) 20:37:07.78 ID:EI6UmYT9O

( ^Д^)「ちょwwwこいつ何か独り言言ってんぞwww」

<ヽ`∀´>「寂しい奴ニダwww」

( <●><●>)「なんですかこいつら……」


 ワカッテマスくんは少し顔を歪めて言いました。
 聞いて分かる通り、僕はいじめられっ子のひきこもりで。
 今は少しでも早く、この場を去りたいという気持ちになりました。


( ><)「行きましょう、もう学校は見れたんですし」

( <●><●>)「……でも」

( ><)「良いんです、僕は」



56: 15 :2008/08/30(土) 20:40:04.33 ID:EI6UmYT9O

 二人からは僕が独り言を言ってるようにしか見えないでしょう。
 当たり前なんです。
 僕はおかしな奴なんです。

 ワカッテマスくんもそれを察して、僕に黙って着いて来ました。
 後ろから二人が笑っていて、今にも走り出したくなるような衝動を抑えて。
 僕はその場を後にしました。


( <●><●>)「……あの」


 途中で足を止めずに彼は言いました。
 後悔があるような言い方なんです。
 僕は黙って聞きました。


( <●><●>)「さっきはすみませんでした……見ていられなくて、でも」



58: 15 :2008/08/30(土) 20:43:35.69 ID:EI6UmYT9O

( <●><●>)「やっぱり、ビロードは……それでも生きたいと思いますか?」

( ><)「……大袈裟なんです、君は」


 そこで僕らは初めて足を止めました。
 近くの屋根があるベンチに座って、夏の日差しに当たらないようにします。
 僕はまた話を続けます。


( ><)「ちょっと苛められただけで、死のうとか生きようとか思わないんです」

( <●><●>)「……辛くないのですか」

( ><)「分かんないんです」


 じいじいみんみんと蝉の鳴く中で。
 僕は呟きました。
 声は蝉の鳴き声に吸い込まれます。



60: 15 :2008/08/30(土) 20:46:33.70 ID:EI6UmYT9O

( ><)「どうしてこうなったのかも、自分がどうしたいのかも、何が最上なのかも、何もかも分かんないんです」

( <●><●>)「……」

( ><)「ただ僕は胸を張って生きたり……思い切って死んだり出来ないだけでもあるんです、だからひきこもりになって逃げてるんです」


 僕が話している間、ワカッテマスくんは何一つ喋ろうとせず、黙ってただ聞いているだけでした。
 それは僕にとっては楽であり、同時に、嫌われたのではという心配が混ざり合うようなもので。
 僕が話し終わっても、しばらくの無言が続いて。


( <●><●>)「さ、帰りましょうか」


 次にはその一言しか言いませんでした。



62: 15 :2008/08/30(土) 20:49:37.20 ID:EI6UmYT9O

 ああ、見捨てられたんだな、と。
 僕はどこかで思いました。
 また同時に、そうであってほしくない、そうも思いました。


( <●><●>)「ビロード、私は一つ、嘘を吐きました」

( ><)「え?」

( <●><●>)「私が貴方の所に来たのは、本当は全て知っていて、それで貴方を楽にしたかったからです」

( ><)「……そうなんですか」

( <●><●>)「まあ気に入ったというのもありますし、こうして貴方の気持ちを聞いたところで諦める気なんて全くありません」

( ><)「……それは……」



63: 15 :2008/08/30(土) 20:52:12.14 ID:EI6UmYT9O

( <●><●>)「そうです、貴方がどうあろうと、私はそれを踏まえて貴方の所に来たんです」

( ><)「ありがとう、なんです……」

( <●><●>)「それに彼女も、そんな事で貴方を嫌いになんてなりませんよ」

( ><)「そうですか……」


 歩きながらお互い顔を見ずに話します。
 蝉はまだうるさいんです。
 そこで僕はでも、と言って続けました。


( ><)「天国に行く気は無いんです」

( <●><●>)「チッ」



65: 15 :2008/08/30(土) 20:55:07.67 ID:EI6UmYT9O

( ><)「ただいまなんです」

(*‘ω‘ *)「おかえりっぽ……」

( <●><●>)「どうしました?」


 いつもとは全く違い元気の無い彼女に、ワカッテマスくんは声を掛けました。


(*‘ω‘ *)「……お前も私も、帰って来いって言われたっぽ」


 はあ、と溜め息をついて彼女は席に着くと机に突っ伏しました。
 一方のワカッテマスくんは、ただ立ち尽くしていました。
 僕は何も言えません。



67: 15 :2008/08/30(土) 20:58:19.43 ID:EI6UmYT9O

(*‘ω‘ *)「……ビロード、私達はこれから帰らなきゃいけないっぽ、それは私達がしてはならない事をしたからだっぽ」

( ><)「それって……」


 してはならない事、なんて。
 僕が思い当たる事で、アレ以外に何があるんですか?
 彼女は覚悟を決めたかの様に言います。


(*‘ω‘ *)「ここに来た事だっぽ」


 予想通りの返事に僕はうなだれました。
 だって二人共、僕を理由にここへ来て、僕に希望を与えてくれて。
 これからも、どちらへ行く事もなく一緒に居られると。

 けれどそう思ったのは間違いだったと、そういう事なんでしょう?



68: 15 :2008/08/30(土) 21:01:07.75 ID:EI6UmYT9O

 最初は嫌で仕方無くて、一々二人の喧嘩の仲裁をさせられたりしてうんざりしていた僕ですけど。
 本当の僕を知りながらも、それでいても一緒に居てくれる二人は、今や僕にとって何にも変えられない存在でした。
 なのに、それは罪で、許されないなんて……そんな、中途半端な。

 そんな中途半端なものなら、最初から、要らなかったんです。


(*‘ω‘ *)「これから帰ったら私達は……どうなるか……」

( ><)「帰れば良いんです」

( <●><●>)「ビロード?」



71: 15 :2008/08/30(土) 21:04:15.78 ID:EI6UmYT9O

(♯><)「帰れば良いんですって言ったんです! 期待させて、希望まで持たせて……それなのに! 勝手に帰るなんて!」


 ああ、分かってるんです。
 そんなの自分勝手なんだって。
 でも止まらないんです、そうでもしないと嫌で嫌で仕方無いんです。


(*‘ω‘ *)「……」

(♯><)「結局は皆消えちゃうんです! どっかに行っちゃうんです! もうそんなんなら、どこへでも行けば良いんですっ!」

( <●><●>)「……分かりました」

(;*‘ω‘ *)「ワカッテマス!?」



72: 15 :2008/08/30(土) 21:07:25.04 ID:EI6UmYT9O

( <●><●>)「ちんぽっぽ、貴女も帰るのです」

(;*‘ω‘ *)「いやだってそれじゃあ……ビロードが……」

( <●><●>)「ビロードはもうそれを望まない、でしょう?」

(♯><)「そうなんです……」


 ワカッテマスくんは、半強制的に彼女を連れて帰りました。
 さようならの一言も無しに。
 また一人なんです。

 言ってから後悔しても遅いんです。
 もう二人はここに、いや既に地球上には居ないんです。
 いや、僕が言わなくても二人はどこかへ帰ってしまってたでしょう。

 もうどうにもならないんです……。



73: 15 :2008/08/30(土) 21:10:11.99 ID:EI6UmYT9O

 あれから時が経つのは早く、あっという間に新学期になりました。
 僕は一応行くつもりですが、どうしても頭から二人の事が離れません。
 忘れたい事程忘れられないんです。

 そんな時、玄関からチャイムの音が聞こえました。
 誰でしょう、こんな朝から。


( <●><●>)「……全く、飽きれちゃいますよねえ……」

(*‘ω‘ *)「全くだっぽ、罰がまさか」

(;><)「に、人間になってる……?」


 そうなんです、人間なんです。
 ドアを開けた先には、僕の学校の制服と同じものを着た二人がいたんです。
 けれど前と違うのはそれが人間になっていたという事で。



76: 15 :2008/08/30(土) 21:13:47.07 ID:EI6UmYT9O

(;><)「え、えぇ……?」


 僕は今何が起きてるのか分かりませんでした。
 だって急に二人が人間になって、それで何故か僕の所へ来て。
 ああもう訳分かんないんです!


( <●><●>)「ほら、早く鞄持って下さい……遅刻しますよ」

(;><)「えぇ!? ちょっと今そんな事言ってる場合じゃ……!」

(#*‘ω‘ *)「転校初日から遅刻なんかしたくないっぽ!」

( <●><●>)「結果的にビロードを連れて帰れませんでしたが、こうする事が一番良かったのはワカッテマス、ほら走りますよ」



77: 15 :2008/08/30(土) 21:16:04.49 ID:EI6UmYT9O

 すっかり人間らしくなった二人と、僕は一緒に走っていました。
 これからする事は沢山あるんです。
 謝ったり詳しい話を聞いたり。


 でも、細かい事はずっと後。
 僕はまた二人と一緒に居られるのかと思うと、自然と笑みが零れました。



  僕と天使と悪魔のようです 終わり



82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 21:19:17.25 ID:EI6UmYT9O

あとがき

ギリギリで書いたのでちょっと後半酷い事になりましたが、とりあえず終わりです。
素敵な絵で書けて本当に良かったです。

支援ありがとうございました、ちょっと休憩します。



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