川 ゚ -゚) ふしぎな夢を見るようです。
- 451: ID:L77/mEJ1O :2008/08/29(金) 21:50:47.73 ID:Mhw+BYgl0
- ( ^ω^)小説ラノベ祭り参加作品。
イラストNo.18を使わせていただきました。
この場をお借りして、絵師さまに御礼申し上げます。ありがとうございました。
また、本スレ>>327のお題「夢オチ」を使っています。ありがとうお題くれた人。
そして、これを投下してくれているであろう代理投下人。ほんとありがとう。
ぶっちゃけラストは某作品の丸パクリですが、お楽しみ頂ければ幸いです。
- 452: ID:L77/mEJ1O 1/26 :2008/08/29(金) 21:51:56.41 ID:Mhw+BYgl0
- 目を開けて、最初に思った。
――多分、これは夢なのだろう。
周囲の光景を眺める。自分が今どんな状況にあるのか、明確に把握する。
上から差し込む光。三日月。自分の周りにある、これは。
……そうして、確信した。ああ、間違いない。これは夢だ。
だって、そうだろう?
こんな、雲に乗って夜空を飛んでいるなんて。
なんて、少女趣味なんだろう。思わず笑いがこみ上げる。
今時こんな陳腐なモチーフ、子供向けのアニメでも出てこないんじゃないか?
( ・∀・)「いやいや。そうでもないんじゃないかな?
ほら、昼間とかさ、こう綿々した雲を見てるとさ、あー乗ってみてー、とかふと思わない?
子供っぽいけど、そういう感性ってのはやっぱり大事でしょう」
突然かけられた声に、慌てて振り向いた。
別の雲の上に立ち、ニヤニヤしながらこちらを眺めている、若い男。
比較的整った容姿をしているが、……なんと形容すればいいのか、うん、胡散臭い。
何故だろうか。
見かけにそれほど変わった所は無いのに、それでも、その姿は酷く『間違っている』ように思われた。
- 453: ID:L77/mEJ1O 2/26 :2008/08/29(金) 21:53:13.28 ID:Mhw+BYgl0
- 目を開けて、最初に思った。
――多分、これは夢なのだろう。
周囲の光景を眺める。自分が今どんな状況にあるのか、明確に把握する。
上から差し込む光。三日月。自分の周りにある、これは。
……そうして、確信した。ああ、間違いない。これは夢だ。
だって、そうだろう?
こんな、雲に乗って夜空を飛んでいるなんて。
なんて、少女趣味なんだろう。思わず笑いがこみ上げる。
今時こんな陳腐なモチーフ、子供向けのアニメでも出てこないんじゃないか?
( ・∀・)「いやいや。そうでもないんじゃないかな?
ほら、昼間とかさ、こう綿々した雲を見てるとさ、あー乗ってみてー、とかふと思わない?
子供っぽいけど、そういう感性ってのはやっぱり大事でしょう」
突然かけられた声に、慌てて振り向いた。
別の雲の上に立ち、ニヤニヤしながらこちらを眺めている、若い男。
比較的整った容姿をしているが、……なんと形容すればいいのか、うん、胡散臭い。
何故だろうか。
見かけにそれほど変わった所は無いのに、それでも、その姿は酷く『間違っている』ように思われた。
- 455: ID:L77/mEJ1O 3/26 :2008/08/29(金) 21:56:37.72 ID:Mhw+BYgl0
- ( ・∀・)「あ、怪しいって顔してるね。まぁ仕方無いよね。僕、人間とは色々と違うし。
つーかさ、人間がこんなとこに紛れ込むなんて、珍しいじゃん。どうしたのさ、君?」
わからない。そもそもこれは、夢なんだろ? 何故そんなことを聞く?
( ・∀・)「……うーん、えーとね、君さぁ、まず自分を明確に定義しようか。
ほら、君、自分が誰だかわかるかい?」
…………。
( ・∀・)「答えられないでしょ? ここはね、そういう所なんだ。
大切なのはイメージ。自身が何かを、きっちり思い浮かべなきゃ。
想いが世界を創って、想いが世界を動かすんだ。解るかな? 大切なことだよ、これはね。
自身を確立して、ようやく思考は許されるんだからさ。君、今全然頭回ってないでしょ?
いいかい? 聞くよ。
君は、誰?」
私は。
私は、確か。
川 ゚ -゚) 「……私は、クーだ。クーという」
- 456: ID:L77/mEJ1O 4/26 :2008/08/29(金) 21:59:06.79 ID:Mhw+BYgl0
- ( ・∀・)「お、いいね。あっという間に確立した。はっきり君が見えるようになったよ。
うん、どうやら、君はとても自身を把握しているタイプの人間みたいだね。
なかなか居ないんだ、そういう人。難しいからね。自分は、誰かなんて。
君さ、普段から、自分のキャラクターってものを理解して、演じている部分は無いかな?」
……よく喋る男だ。
川 ゚ -゚) 「それは、絶対に今聞かなければいけない程に、重要な質問なのか?
でなければ、私のほうから聞きたいことが幾つもあるし、そちらを優先したいのだが」
( ・∀・)「おっと、ごめんね。僕ね、話がすぐに脱線しちゃう性質でさ。
よく上司からも怒られるんだよね、関係無いこと話してないで仕事しろゴルァ! って。
その上司ってのがまた――」
素直に思った。
こいつうぜぇ。
川#゚ -゚) 「私から、聞きたい事が、幾つもあるのだが、いいか?」
区切るようにして、はっきりと突き付ける。
( ・∀・)「おっと失敬。聞こうじゃないか」
- 458: ID:L77/mEJ1O 5/26 :2008/08/29(金) 22:00:08.86 ID:Mhw+BYgl0
- 川 ゚ -゚) 「これは、夢なのか?」
( ・∀・)「おいおいおいおい。しっかりしてくれよクーちゃん。
仮にこれが君の夢だとしてさ、その夢の中の住人が、それを知ってるとでも思ってるの?
水槽の中の金魚は、水槽の中に居ることなんてわからないだろう?
それと同じ。世界の形を知ろうなんて、神をも恐れぬ傲慢としか思えないね。
それを知りたきゃ、1つ上の段階に行かなきゃ。つまり、神になれってことさ」
川 ゚ -゚) 「……成るほど、ね」
確かに、今のは馬鹿な質問だった。
ま、こんなこと、夢でもなければ有り得ないだろう。
( ・∀・)「まぁ、その答えは今は保留しておこうか。
夢かもしれないし、現実かもしれない。それが答えだ」
川 ゚ -゚) 「あなたは、何者なんだ?」
( ・∀・)「僕は何者か、ね。難しい質問するねぇ。
まぁ、あれだね。これで分かるかな?」
そう言うと、男はいきなり雲から飛び降りた。
柏 ゚ o゚) 「な――」
当然、落ちる。ここが夢だろうが何だろうが、重力は健在のようだ。
川 ゚ o゚) 「って、おい!」
- 459: ID:L77/mEJ1O 6/26 :2008/08/29(金) 22:01:05.18 ID:Mhw+BYgl0
- 雲の淵から慌てて身を乗り出す。
下を見るが、完全に暗黒。人家の明かりも遥か遠く、うっすらとしか見えない。
当然、彼の姿も無い。
( ・∀・)「はーい、これでどうかなー、……って、何してんの?」
川 ゚ -゚) 「は――!?」
声は、私の上からかけられていた。
そちらに顔を向けると、そこには――
川 ゚ -゚) 「……天、使?」
そう。
古くから数知れぬ程多くの絵画に描かれてきた、あの美しい翼。
宙に浮かぶ彼の背中には、それがあった。
( ・∀・)「あと、これね。大体の人間は知ってるらしいし、
口で説明するより、こっちの方が分かりやすいでしょ。
これが、僕の仕事道具」
彼が腕を一振りすると、手品――いや、本当の魔法のように何かが現れた。
川 ゚ -゚) 「…………いや、分からなくなったんだが」
( ・∀・)「え?」
- 461: ID:L77/mEJ1O 7/26 :2008/08/29(金) 22:03:13.05 ID:Mhw+BYgl0
- 天使のような翼。
それでありながら、その手に握られているのは。
川 ゚ -゚) 「鎌じゃないか。それ、明らかに死神のモチーフだろう。
天使なのか死神なのか、ハッキリしてくれ」
彼の手に握られているのは、巨大な、人の首くらい簡単に斬り落とせそうな鎌。
何で出来ているのか。刃は黒く、光を反射することすらしていない。
( ・∀・)「ありゃ。そういや、人間ってそういうイメージだっけ。
いやさ、ぶっちゃけ死神と天使って、ただの派閥の違いなんだよ。
どっちも、死者を迎えに来るでしょ? 色々縄張りとかあって面倒なんだけどさー、
そもそも元は同じ仕事してる同僚なわけ」
川 ゚ -゚) 「神にまで派閥争いがあるのか……」
後継者問題とかあるのか?
死にそうにないし、歳とらないなら引退も無いだろうに。
( ・∀・)「知性を持った生物がやることなんて、大体似たり寄ったりってことさ。
それはそうと、さっきの質問に答えようか。
一言で言うと、僕は死神さ。そっちの派閥なんだ。
これから死ぬ人に、マーキングするのがお仕事。
こういう風に、仕事をする時に君みたいなのと会うのは……無くは無いけど、とっても珍しい。
大体50年に1回、あるか無いかだ。
ねぇ君、死について深く考えたりしていなかった? そうするとさ、引き寄せられるらしいんだよね」
川 ゚ -゚) 「……いや、特に」
- 462: ID:L77/mEJ1O 8/26 :2008/08/29(金) 22:04:26.77 ID:Mhw+BYgl0
- ( ・∀・)「……ふぅん、そうかい。まぁ、いいや。
そもそも君からすれば、これはただの夢かもしれないんだからさ。
あんまり真剣に考えないでさー、へーふーん死神なんだ、位に考えてくれればいいよ」
川 ゚ -゚) 「へーふーん死神なんだ」
( ・∀・)「本当に言うんだね。悲しいな。もしかして君、そっちから聞いといて、僕のことどうでもいいのかな?
もしかして、あれかい? マイスタージンガーでも口笛で吹きながら登場した方が良かったかな?」
川 ゚ -゚) 「ライトノベルは趣味じゃないな」
( ・∀・)「知ってるじゃないか。えーとまぁ、ともかく。僕は死神だからさ。それだけ分かっておいてくれよ。
じゃあ、行こうか」
行く?
どこに? どうやって?
( ・∀・)「不思議そうな顔してるね。
決まってるだろう? 仕事だよ、僕のね。
大丈夫、直接殺すわけじゃない。
僕はただ、死ぬべき人、死すべき運命の人にマーキングするだけさ。
残虐な光景を君に見せたりはしないよ。虐殺厨じゃないんだからね」
川 ゚ -゚) 「ぎゃく……?」
なんだ、それは。
- 464: ID:L77/mEJ1O 9/26 :2008/08/29(金) 22:06:25.41 ID:Mhw+BYgl0
- ( ・∀・)「おっと失敬。昔の話さ。今覚えている人なんて、どれ位居るんだろうね?
ともかく、行くよ」
そう言うと、彼は翼を大きくはためかせた。
川 ゚ -゚) 「いや。私は、飛べないのだが」
そう。行くったって。
この雲からどう降りろと言うのか。
川 ゚ -゚) 「そもそも、何故あなたの仕事に私がついて行――」
( ・∀・)「ダメだなぁクーちゃん。ダメだよ。ダメダメだね。
僕は言った筈だ。ここでは、想いが形を作り、世界を動かすってね。
ピーターパンを知ってるね? ディズニーじゃなくて、原作の方さ。
ディズニーの方は、ピーターパンがただのヒーローっぽくなっちゃってて、僕は凄く嫌いなんだよねぇ。
アリスといい、プーといい、ディズニーは原作の良さを悉く駆逐してしまうことに、何か誇りでも持っているのかな?
彼らが児童文学というものをどう捉えているのか、1度じっくり問い詰めてみたいもんだ」
川 ゚ -゚) 「死神がディズニー見るのか?」
( ・∀・)「そりゃ見るさ。死神だって天使だって、娯楽は大好きだからね。
おっと、話が逸れたね。まぁともかく、ピーターパンだって言ってるだろう。
信じれば飛べるってね。ユーキャンフライ。簡単なもんだよ」
……信じるのが簡単だとは。言ってくれるものだ。
- 465: ID:L77/mEJ1O 10/26 :2008/08/29(金) 22:07:47.29 ID:Mhw+BYgl0
- 川 ゚ -゚) 「一応それなりに成長した人間としては、
その『信じる』のが、一番難しいのだが」
彼は顔を歪めて笑った。
( ・∀・)「は。自分が飛べると信じることすら出来なくて、
どうやって生きていけるんだい? 何を頼みに生きていくのさ?
しっかりしろよクーちゃん。自分自身信じられなければ、何もかもが信じられなくなるよ」
は。
――いいだろう。やってやろうじゃないか。
アイキャンフライ、アイキャンフライ、アイキャンフライ。
私は、飛べる。
川 ゚ o゚) 「……ふっ!」
( ・∀・)「お?」
果たして、雲から踏みだした私の足は、宙に浮かんでいた。
川;゚ -゚) 「お……お? こ、怖いなこれ!」
何だか足元が、ひどく不安定だ。
自分の下に、支えるものが何一つ無いという状況。
それが、これほどまでに不安を煽るとは。
- 466: ID:L77/mEJ1O 11/26 :2008/08/29(金) 22:11:29.10 ID:Mhw+BYgl0
- ( ・∀・)「うん、上出来上出来。君は今、自らの意志だけで宙に浮かぶことに成功した。
支える物は何も無い。頼りになるのは、己だけだ」
川;゚ -゚) 「怖っ! マジ怖っ!」
いやつーかキャラ忘れる位マジで怖っ!
( ・∀・)「それじゃ、行こうか。今日の僕の担当は1人だけ。楽な仕事さ」
川;゚ -゚) 「待て! 慣れてないんだ、もう少しゆっくり!」
そうして、私たちは下へ――私が普段、生きている世界へと降りていった。
- 468: ID:L77/mEJ1O 12/26 :2008/08/29(金) 22:14:07.67 ID:Mhw+BYgl0
- 川 ゚ -゚) 「……この人、か?」
( ・∀・)「そうさ。こいつに死の運命を刻み付けるのが、今日のお仕事」
今の私たちは、他の人には見えないらしい。
まったく見ず知らずの他人の家、寝室。
そこに、私たちは立っていた。
川 ゚ -゚) 「この人は、なにか悪いことでもしたのか?」
( ・∀・)「いや、特にしていない。
来る前に資料を読んだけど、平凡なもんだよ。
普通に生まれて、普通に学校に行って、普通に就職して、普通に結婚して、普通に子供を授かった。
そりゃ、生きているんだから、それなりに波乱はあるけどね。
それでも、『普通』という言葉で十二分に括れてしまう人生さ」
目の前のベッドで眠っているのは、30台中盤と思われる男性だった。
頭頂部が既にやや寂しいのが気になるが、至って平凡な外見だ。
私は、この人の名前も知らない。
( ・∀・)「んじゃ、はい」
川 ゚ -゚) 「は?」
突然、鎌を渡された。
- 469: ID:L77/mEJ1O 13/26 :2008/08/29(金) 22:15:26.90 ID:Mhw+BYgl0
- ( ・∀・)「それで、どこでもぶっさせばいいから。
血とかは出ないから、安心してね」
川 ゚ -゚) 「な、何を――」
まさか、こいつは。
( ・∀・)「そのために一緒に来てもらったんだから。さ、どうぞ」
私に、この人を、殺せというのか!
川;゚ -゚) 「な……そ、そんな事、出来るわけが……!」
( ・∀・)「だーかーらー、グロかったりはしないって。マーキングするだけ。
実際の死因は、交通事故とかその辺になるから、大丈夫だって」
川 ゚ o゚) 「そういうことじゃない!わかってるだろう!
第一、何で、私が!」
( ・∀・)「そうすることが、君にとってきっと、良いことだと思うからさ。
僕の勝手な判断だけどね、間違ってはないと思うな。一応、その辺のプロだし。
第一、君はこれを夢だと思ってるんじゃないの? なら、まったく問題無いじゃないか」
- 470: ID:L77/mEJ1O 14/26 :2008/08/29(金) 22:18:45.74 ID:Mhw+BYgl0
- 川;゚ -゚) 「だ、だが、夢の中だからって、何でもしていいという話にはならないだろう!」
( ・∀・)「何でもしていいんだよ。夢の中なんだから。
好きな同級生を犯そうが、世界を滅ぼそうが、実際に起きないんだからいいのさ。
――ああ、でも。
ひょっとしたら、夢の中でしたことが、何かしらの影響を現実に与える、ということはあるかもしれないね。
例えば、夢の中で死神の鎌を刺した男性が、次の日の夕方のニュースに出てきてしまう、とかね」
川 ゚ -゚) 「お前……!」
もし、現実に影響を及ぼす夢があるとするなら。
それはもう、夢ではない。
――ただの、現実の、一部だ。
( ・∀・)「殺せないかい?
うん、そうだろうね。普通の人間はそうだろう。
でもね。ここで彼が死なないと、みんなが困るのさ」
川 ゚ -゚) 「……どういう、ことだ? 彼がこれから、何か――」
- 480: 470便宜上鳥つけます15/26 ◆jH6qejmC7g :2008/08/29(金) 23:05:44.92 ID:Mhw+BYgl0
- ( ・∀・)「するわけじゃない。彼は多分、これからも普通に生きていくことだろう。
死にさえしなければね。
いいかい、死はね、悪いから与えられるというような、罰じゃないんだよ。
どうもその辺、人間は誤解しがちだね。死刑とかいう制度があるせいかな?
死はただ、そこに在るだけだ。そこじゃ善悪も正誤も、あらゆる価値観が無意味なんだよ。
わかるかな? 人間がごたごた無駄な装飾を付けているだけなんだよね。
死は、あらゆる意味で圧倒的に平等だ。誰にとってもね」
川 ゚ -゚) 「…………」
何も言えない。
( ・∀・)「それをね、悪いことしてないとか、間違ってないとか、そういうこと抜かして死を回避しようとされると
困るんだよね。世界のルールなんだからさ、それに逆らっちゃダメでしょう」
川 ゚ -゚) 「…………」
この人が、死んで。
奥さんや子供、友人は、どんな想いをするのだろう。
多分。私はそれを、知っている。
- 483: ID:L77/mEJ1O 16/26 ◆jH6qejmC7g [sage] :2008/08/29(金) 23:07:50.57 ID:Mhw+BYgl0
- ( ・∀・)「それにさ、君だってわかってるだろ?
生きることは、殺すことだって。
この男性を殺すのは、君だよ。君をはじめとした、全ての人々、生物。
それらが彼を殺すんだ。ただ、世界がそうあるから。
わかってるだろう? 君は今まで、その手を直接汚さずとも、幾万幾億の人を殺してきたんだ。
その上に、今の君があるんだよ。
今回だって、同じだ。
それでも、ダメかな? 鎌を振り下ろせないかな?」
私は。
私は。
私は――。
(川 ゚ -゚) 「はい、もしもし」
ξ;凵G)ξ「クー……。うぅ、ひっく、うぁ、うぅ……クー……」
川 ゚ -゚) 「……ツン。どうした? 何故泣いているんだ?」
ξ;凵G)ξ「あのね……。あの……」
川 ゚ -゚) 「ツン。落ち着くんだ。一体、何があった?」
(;^ω^)「もしもし。クーかお? 代わったお」
川 ゚ -゚) 「内藤。どうした? 何故ツンは――」
( ^ω^)「落ち着いて聞いて欲しいお。……ドクオが……」)
- 486: ID:L77/mEJ1O 17/26 ◆jH6qejmC7g :2008/08/29(金) 23:10:18.43 ID:Mhw+BYgl0
- 川;゚ -゚) 「…………」
( ・∀・)「さぁ、その鎌を彼に突き立てろ。
君には、その義務がある。自覚していない罪を、思い知れ」
川;゚ -゚) 「……ない」
( ・∀・)「ん?」
川 ゚ -゚) 「すまない。私には、ダメだ。
たとえこれが夢であっても、万が一現実なのだとしても、そんなの関係無い。
私には、人は殺せない」
( ・∀・)「……へぇ」
川 ゚ -゚) 「あなたがさっき言った、世界の仕組みとやらも、分かっているつもりだ。頭ではな。
実感を持っているわけではない。
だが、私は、ダメだ。人が1人死ぬ、ということが、どんなことか……私は、知ってしまっているから。
だから、殺せない」
( ・∀・)「ふーん、そうか。じゃ、仕方無いね」
男はあっさりそう言うと、私の手から鎌を取り返す。
- 489: ID:L77/mEJ1O 17/26 ◆jH6qejmC7g :2008/08/29(金) 23:11:12.62 ID:Mhw+BYgl0
- ( ・∀・)「悪いね。僕を恨むなよ。
恨むんだったら、僕の上司の上司の上司、神様をよろしく」
黒い刃が、眠っている男性の首に突き刺さった。そのまま横に、首を掻き切る。
何も起きない。血も流れ出ないし、傷がついたわけでもない。
……これで、この人は本当に、死んでしまうのだろうか。
( ・∀・)「よし、仕事終わり。じゃ、戻ろうか」
川 ゚ -゚) 「……どこへ?」
( ・∀・)「さっきの雲の所。君、色々話したいことあるんじゃないの?」
- 490: >>489は18 19/26 ◆jH6qejmC7g :2008/08/29(金) 23:14:51.20 ID:Mhw+BYgl0
- 川 ゚ -゚) 「怒っていないのか?」
雲の上に、再び腰掛けて。
私は、男に問う。
( ・∀・)「ん? 何で?」
男も雲の上に座り、翼の手入れをしているようだ。
……毛づくろいとかするのか?
川 ゚ -゚) 「……さっき、私は、殺せなかっただろう」
( ・∀・)「あーはいはいその事ね。
何で僕が怒るのさ? あそこで君がやらずとも、僕がやった。
だから世界に影響は出ない。
さっきはその場のノリで煽りまくってみたけどさ、罪なんてどうでもいいし、
正直、君がやろうとやるまいと、どっちでも良かったんだよね」
はぁ? なんだ、それは。
川 ゚ -゚) 「じゃあ、そもそも、何で私にやらせようとしたんだ?」
( ・∀・)「ただの気まぐれだよ。言っただろ?
人に会うなんて、珍しいってさ」
川 ゚ -゚) 「……お前」
なんだか、ムカついてきた。
- 494: ID:L77/mEJ1O 20/26 :2008/08/29(金) 23:15:39.67 ID:Mhw+BYgl0
- ( ・∀・)「まぁ、たださ。
こんな所に来てしまう人って、大抵の場合、死に引き寄せられてるんだよね。
君もその筈さ。死について、最近深く深く考え込んでるだろう?」
川 ゚ -゚) 「…………」
( ・∀・)「恋人でも、死んじゃったかな?」
川 ゚ -゚) 「……どうかな。恋人では、なかった気がするな」
そう。
私は多分、あいつに、恋愛感情は抱いていなかったと思う。
告白でもされたら、ちょっと揺らいでしまったかもしれないが。
でも。
川 ゚ -゚) 「愛情とか、友情とか、よくわからない。
ただ、大切だったんだ。
ブーンと、ツンと、あいつと……4人で一緒に居る時間が、何よりも楽しかったし、
本当に、本当に好きだった」
だけど。
川 ゚ -゚) 「……何で……自殺なんて……」
ドクオは、自ら命を絶った。
遺書は、無かった。
- 497: ID:L77/mEJ1O 21/26 ◆jH6qejmC7g :2008/08/29(金) 23:18:08.38 ID:Mhw+BYgl0
- ( ・∀・)「自殺か。そいつはちょいと、僕の守備範囲外だね。
……辛かったかい?」
川 ゚ -゚) 「辛かったさ。それに、怒りもあった。
私たちは、友達じゃなかったのか?
なら、何故何も言ってくれなかった?
自殺するほどに追い詰められていたのなら、何故?
何でなんだ?
言ってくれれば、弱音を漏らしてくれれば、
……たとえ力にはなれなくとも、一緒に悩むことくらいはできたんだ。
何故なんだ? 本当に、どうしてなんだ?」
( ・∀・)「多分、それはもう、永久にわからないことさ。
彼はもう、死んでしまった。
それだけのことだ」
川 ゚ -゚) 「……そう、だな」
酷い言い方だが、事実だ。
ドクオはもう、還ってこない。
( ・∀・)「ほれ」
彼はそう言うと、立ち上がって手を広げた。
?
川 ゚ -゚) 「何やってるんだ?」
- 499: ID:L77/mEJ1O 22/26 ◆jH6qejmC7g :2008/08/29(金) 23:19:46.52 ID:Mhw+BYgl0
- ( ・∀・)「ありゃ。説明させないでくれよ、かっこわるいなぁ。
ほら、僕の胸にドーンと飛び込んでおいで。
泣いている間、胸を貸してあげよう」
川 ゚ -゚) 「はぁ?」
( ・∀・)「君は、そういう冷静さの象徴みたいなキャラクターみたいだし、
自分自身、それを自覚してるんだろう?
だから、今まで誰かに縋って泣くなんて、やったことないんじゃないかな。
大丈夫、今、ここには僕しかいない。そもそも夢の中さ。
だから、泣いていいんだよ」
川 ゚ -゚) 「……何、を」
あれ。
何故だろう。
何だか、目が。
川 ;-゚) 「う……」
( ・∀・)「辛かったね。頑張ったね。泣いていいよ」
川 ; -;) 「うわあああああああああああああああああああん!」
- 500: ID:L77/mEJ1O 23/26 ◆jH6qejmC7g :2008/08/29(金) 23:22:03.34 ID:Mhw+BYgl0
- ( ・∀・)「悲しいな。そうだよな。人が死ぬってのは、悲しいよな。
それでいいんだ。死は平等だとか、そういう口先だけの屁理屈ってのは結局どうでもいいんだよ。
大切な人が死ぬのは、悲しい。それだけでいいんだ」
川 ; -;)「ううぅ……ひっく、うわぁぁぁ……!」
男の胸を思い切り掴みながら、泣く。
軽く背中を叩いてくれる男の手が、心地よい。
ああ。
こんなに泣くなんて、いつ以来だろう。
凄い声が出ているのが、自分でもわかった。
( ・∀・)「いっぱい泣きな。そうして泣くだけ泣いて、それから前を向いていけばいいんだ」
川 ; -;)「ううぅう……何で……死んじゃったんだ……!
生きていれば、楽しいことだってあるのに……! 私がそうしてやるのに……!
何で……何も言わず……! 1人で……!」
( ・∀・)「……ちっ。時間切れか。
いいかい、人は死ぬ。誰もそれからは逃げられない。
だから、今を楽しむんだ。大切な人を大切にしてあげなよ。
それだけでいい。それだけ覚えて、生きていってくれ。
笑って泣いて、人生を大切にね。
ああ、どうか。君のこれからの人生が、暖かい幸せに包まれていますように」
- 502: ID:L77/mEJ1O 24/26 ◆jH6qejmC7g :2008/08/29(金) 23:22:46.03 ID:Mhw+BYgl0
- 目が覚めた。
ベッドの上、少し汗をかいてしまっている。
電化製品が稼動する静かな音だけが、部屋に響いていた。
川 ゚ -゚) 「…………」
なんだか。ひどく、変な夢を見ていた気がする。
川 ゚ -゚) 「あれ?」
顔に変な感触があるので触ってみると、ひどく濡れていた。
これは、……涙?
川 ゚ -゚) 「泣いたのか? 私が?」
珍しいことだ。私が、泣くなんて。
川 ゚ -゚) 「…………」
でも、とても穏やかで、いい気分だった。
泣くと気分が落ち着くというのは、本当だったのか。
なんだか、ずっと悩んでいたことが、どこかに落ちてしまったような。
そんな気がする。
- 505: ID:L77/mEJ1O 25/26 ◆jH6qejmC7g :2008/08/29(金) 23:24:24.67 ID:Mhw+BYgl0
- 窓のカーテンを開ける。
もう空の端が明るくなってきていた。
窓を開けると、さえずる鳥の声と、穏やかな風が入ってくる。
不思議だ。
見慣れた筈の夜明けの光景なのに、とても、きれい。
あまりにきれいで、また涙が出てきた。
川 ゚ -゚) 「きれい、だなぁ……」
ああ、そうか。
多分、私はもう大丈夫になったのだ。
とても、残酷なことに。
川 ゚ -゚) 「ん……!」
- 506: ID:L77/mEJ1O 26/26 ◆jH6qejmC7g :2008/08/29(金) 23:25:24.00 ID:Mhw+BYgl0
- 涙を拭って、伸びをした。
いい気分だ。とても、いい気分。
よし。こんな日は大学をサボって、ブーンやツン達と遊ぼう。
きっと、とても楽しいだろう。
川 ゚ -゚) 「うん」
そうと決まれば、早速準備をしよう。
どこに行こうか。考えるだけでワクワクする。
遠足は前準備が一番楽しいというが、これも、その一種なのだろうか。
そうして私は、新しい一日を始めた。
今日が、楽しい一日になればいいと、そう思う。
川 ゚ -゚) ふしぎな夢を見るようです。 fin.
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