( ^ω^)ブーンとビコーズ村の魔物のようです。

279: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 14:16:23.16 ID:spx3wQqG0
青く青く、どこまでも透き通ったかのような空。
そこに浮かぶ、光り輝き、地表を照らす太陽。

まるで天を突き抜けるかのように聳え立つ、山。
そこを中心に、半径50kmほどに渡る木々の群れ。
所謂、樹海。

正確に言うならば、樹海とはまた少し違うが、兎にも角にも、何の準備も無しに入れば死は必須であろう。
いや、例え準備をしていても、すぐに引き返さなければ、無事に生還するのは至難である。
勿論、魔物の類が出るかもしれないため、その危険度はさらに増す。

そんな、まさに危険の代名詞と言っても過言ではない領域に、自ら進入しようとしている者がいた。
名は、ブーン。
身軽に動ける服装に、軽いリュックを背負い、木々の前に立っている。

彼の目の前には、深緑と緑で彩られた木々の群れ。
彼は一度、周りを軽く見渡すと、そのまま目の前に立ち並ぶ木々の中へ足を踏み出したのであった。



                  ( ^ω^)ブーンとビコーズ村の魔物のようです。



281: 【No19】祭り参加 :2008/08/29(金) 14:19:12.05 ID:spx3wQqG0
(;^ω^)「ひぃ、ひぃ、ふぅ……、あっー、もう! なんでこんなに蔦が多いんだお!」


時はしばらくして、ブーンは、彼の進入を良しとしない森の、邪魔立てを受けていた。
道をふさぐように絡まりあう蔦。
草と草の間にひっそりと、しかし強固に伸びている蔦。

彼はそれらを切り、さらに奥へと進んでいく。

蔦、倒木、川、etc……。
様々の障害物が、彼の行く手を拒んでゆく。
まるで、森そのものが、彼を、自らの懐に入れまいとしているかのようであった。

しかし彼は、その困難に負けじと、ナイフを振るい、倒木を上り、川を渡り、時には遠回りもした。
そこまでして、山を目指す理由が、彼にはあった。


少々昔話をしよう。
彼、ブーンは、ある小さな村に住んでいた。
村民合計100人にも満たない、小さな村だ。

ブーンには弟がいた。
いつも顔色が悪く、マンドクセと言うのが癖で、何をするのも面倒くさそうにしている奴だった。



283: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 14:21:29.87 ID:spx3wQqG0
('A`)「おい、ブーン。今日は川まで行こうぜwww」

( ^ω^)「だめだお、今の時期の川は危ないからいっちゃだめってカーチャンがいってたお」

('A`)「あ、そうだっけな……まいったな、何をしようか」

( ^ω^)「木登りでもしておいしい木の実でも見つけようだお!」

('A`)「お前本当に食い物の事しか頭にないよなwwwwまぁおkwwwwいこうぜwwww」

このような流れで、彼らは普段を過ごしていた。
彼は、実の兄であるブーンのことを呼び捨てにしていた。
また、ブーンもそれを気にしないでいた。
それほど、二人の仲は良かったのだ。

また、二人には、勿論のことだが、両親が居た。
やさしい母親と、厳しくも自分たちを思ってくれている父親だ。

だが、ある日、事件は起こった。
既に影は東へ長く伸びていたが、まだまだ日は落ちそうに無い時間帯だった。
前日、村は狩猟採集共に豊作であったため、その日は特にする事がなかった。
だが、偶々、本当に偶然であるが、その日、ブーン一家の木の実の貯蓄が心もとなくなっていた。

J( 'ー`)し「さぁて、ちょっと晩御飯の前に木の実でも取ってきますかね。貴方、子供達をよろしくお願いしますね」

(`∠´)「うむ。気をつけてな」

そう言った後、彼らの母は森へ出かけた。
村が闇に包まれても、母は帰ってこなかった。



286: 【No19】祭り参加 :2008/08/29(金) 14:23:41.65 ID:spx3wQqG0
家族は皆、不審に思っていた。
沈黙がその家を支配していた。
そして、我慢の限界を超えた父が、不意にその沈黙を破った。

(`∠´)「少し、様子を見てくる。絶対に家をでるんじゃあないぞ、分かったな?」

( ^ω^)「大丈夫だお!」

('A`)「親父こそ、気をつけてな」

(`∠´)「うむ。行ってくる」

父は、狩猟用の弓と槍を持って、森へ出かけた。
やや強めな風が、木の葉のオーケストラを指揮していた、寂しい夜だった。
調子よく返事はしたものの、兄弟は、とても不安だった。

父が行ってから、二刻半が経とうとしていた。
兄弟は両親が不安で不安で仕方がなく、それでもお互いを励ますように、一つの毛布の中に二人で包まっていた。
そして、帰ってきたら、お帰りと言おうと言い合い、両親が帰ってくるのを待った。
結局、その日は、父親も帰ってこなかった。


それでも尚、二人は両親が帰ってくるのを待った。
外では何の虫かは分からないが、虫が鳴いていた。
が、時間が立つと、次第にその音を無に帰していった。



289: 【No19】祭り参加 :2008/08/29(金) 14:26:50.88 ID:spx3wQqG0
一段と強い風が吹きはじめた。
すぐに止んだ。

犬が鳴いた。
どうやら、他の猟犬と喧嘩をしているようだった。
すぐに鳴き止んだ。

次第に、空が明るくなってきた。
地面が、森が、家が、闇から色を取り戻してきた。

誰かの声がした。
みんなが騒ぎ始めた。
それでも言いつけ通りに待った。

影が、最後に見た方向の逆の方向へ伸びていた。
まだ、両親は帰ってこなかった。

もう既に、影が姿を消そうとしていた。
隣の人が家へ駆け込んできた。

「大変よ! 早く村役場に来てちょうだい! 貴方たちのご両親が……」


その先は、何を言っていたか覚えていない。
ただただ、村役場に、両親に会うことに必至になっていた。

(;'A`)(;^ω^)「はぁ、はぁ、はぁ……っ、はぁ、はぁ……」

走り、走り、走り続けた。
わずか30秒ほどで着いた。



291: 【No19】祭り参加 :2008/08/29(金) 14:30:00.69 ID:spx3wQqG0
(;'A`)「どけ、どけよ!」

(;^ω^)「ブーンタックル!とりゃ!」

彼らが人ごみを掻き分け、掻き分け、見たもの。

J(i:i;l。)し   (Ф∠´;)


それは、見るも無残な母親の屍と、右腕を森に忘れてきてしまった、右目の無い父親だった。
ヒソヒソと話す、周りの者達。
ところどころに聞こえる、ロマネスクと言う声。

(Ф∠´;)「うぅ……息子達よ……やったものを怨むな……怨むなら……」

父親は、とても苦しそうだった。
それで何かを伝えようと、必至に、掠れる声を絞った。
突如、思い出したように、今までの苦しそうな顔が嘘のように父親は喋り始めた。

(Ф∠゚;)「今から、行ってやる。今度こそ、行ってやる……モウダメシヌグハァ 」

そのの後の言葉を発そうと、声を絞った父親。
しかし、彼の言葉は、最後まで続かなかった。
彼は、左目を見開いたまま、盛大に吐血して息絶えた。

('A`)( ^ω^)「…………」

ブーンとドクオは泣かなかった。
父を信じて待った結果、こうなった。
もう、父の言葉は信じない、そう心に誓った。



292: 【No19】祭り参加 :2008/08/29(金) 14:32:36.46 ID:spx3wQqG0
だが、悲しくなかったわけではない。いや、寧ろその逆だ。
二人は、この惨劇を引き起こした者に、復讐することを決めた。
そのために、二人は村を出て、都会へ、都会へと進んでいき、遂にトレジャーハンターになり、
その職業柄を活かして彼らは情報を集め、この山にロマネスクという化け物が居るという情報を得た。


そして、今に至る。
未だに、障害物が、ブーンを阻止しようと行く手を阻んでいた。

(;^ω^)「ほっ、とりゃっ! くそ、まーだ出てくるお、この蔦!」

斬っても斬っても出てくる蔦。
方向感覚を狂わせる、同じような倒木、花、草。
それでもブーン草木を書き分け、前へ前へと進んでいった。
そして、遂に彼の視界に道が入った。

( ^ω^)「ほりゃっ! ……っと、やったお!道だお!」

それは、道というよりは、多少草木の分けてあるだけのものと言った方が正しかった。
だが、それはつまり村か、山への道かは分からないが、希望の道であった。
既に、彼が用意した水分はほとんど失われ、食物は虫に食われ始めていた。

彼はその道を進んでいった。
多少の草木はあるものの、通りやすい道だった。
しかし、あるところで、変化があった。
ある一本の蔦が、地面すれすれで伸びていたのだ。



294: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 14:35:16.94 ID:spx3wQqG0
( ^ω^)「何だろう、この変な蔦。怪しいおー……」

そんな冗談を口走りながら、罠だ、と、ブーンは悟った。
更に、こういう場合は、大体が二重に張ってあるものだと、ブーンは知っていた。
彼のトレジャーハンターという職業は、伊達じゃあなかったのだ。

( ^ω^)「ちょいと確認。ふひひwwww」

彼は、とりあえずそのあたりを調べてみる事にした。
案の定、罠は二重に張ってあった。
全く幼稚な考えだ、と、罠を作った者を心の中で嘲りながら、ブーンは罠の一歩手前に右足を置いた。


罠が作動した。
一瞬だった。


(;゚ω゚)「ホワット!?」


右足が沈んだかと思うと、急にその足は重力に反し上へ向かい、そのまま彼の体を浮かばせた。
ただ浮かぶだけであればよかったのだが、なんとその罠は、筒状のところへ彼を誘う形式を取っていた。
つまり、両手は筒の出口に向いているか、筒の中にあるということだ。
旨く筒の中にあれば、確かにその蔦は切れるのだが、如何せん手の自由が利かない。
そのため、蔦を切ったとしても、頭から落ちるため、無事ではすまない、ということだ。

(;^ω^)「あいたたた……まいったおー……」

ブーンは、製作者を嘲ったことを深く後悔した。



296: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 14:37:10.65 ID:spx3wQqG0
足の自由が利かないまま筒状のものに入れられるとは、とても旨くできたものであった。
そう、降りなければ、頭は常に下を向いたまま。
つまり、すぐに頭へ血が上るのだ。
これからどうなるのだろうかと思いながら、ブーンは気を失った。


なんだろうか、体が上下する感覚がする。
そう思うと共に、彼は目を覚ました。

(;^ω^)「う〜ん、なんなんだお……?」

そう思い、周りを見てみると、彼は一本の木に縛られ、運ばれていた。
運んでいるものたちは、片方しか見えないが、かなり古い衣装をしていた。
簡潔に言えば、上半身が裸で、腰蓑をつけている、ただそれだけの簡単な衣装だ。
体はあまり屈強には見えないが、ブーンを木で二人で軽々と運ぶということは、かなりの力持ちであるはずだ。

(^ω^)「う〜ん、まいっちんぐマチコ先生だおwwww」

この状況で冗談を言う余裕があるブーン。こっちみんな。
だが、実際には、そんな余裕は全く無かったのだ。
そう、これは自分で自分の心を解すための冗談。

( ∵)「……!」

どうやら、ブーンがおきたことに彼らは気づいたようだ。
だが、特に何をしようともせず、ただただブーンを運んでいく二人。
気がつけば、村らしきものが見え始めていた。



300: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 14:44:33.48 ID:spx3wQqG0
村の入り口へ着いた。

ミ( ∵)( ∵)( ∵)( ∵)( ∴)( ∵)「……」

全く同じ顔をした男達が、一斉に飛び出してくる。
そして、そのままブーンの周りを囲み、村のはずれにあたる所へ連れて行った。
ブーンは手と絡み合った木を地面に頑丈に固定され、身動きが取れないと確認された後、放置された。

( ^ω^)「………」

全く、無用心な村だと、ブーンは思った。

彼は、いつでも抜け出せた。
袖にナイフを隠していたから、いつでも彼の自由を奪う憎たらしい縄を斬り、村を出ることができた。

( ^ω^)「でも……」

そう、彼の荷物は全てどこかへ持っていかれていた。
流石に何の持ち物も無しにこの樹海を出ることはできないであろう事を考えると、今は期ではない気がした。
だから、待った。期が訪れるのを。

遠くから見た感じでは、どうやらこの村は狩猟と採集、それに畑作を主とした、かなり安定した村のようだ。
畑作は大きくはないが、村の人口自体が少ないため、特に問題はないようだ。倉庫もあるようだ。
きっと、自分を捕まえた理由も、狩りの成果を見に来たときに危険だと判断したからだろうと彼は思った。

あまりにもする事がなく、呆然と空を見上げると、か細く、しかし美しく星が光っていた。
とても、暇な夜だった。



302: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 14:47:15.21 ID:spx3wQqG0
…………

ブーンはいつの間にか眠っていたようだ。
彼が目を覚ますと、目の前には女性がいた。

川 ゚ -゚) 「………」

その女性はただ黙ってこちらを見つめていた。
髪は黒く、腰まであり、顔立ちは整っており、スタイルもよく、見かけはとても美しい。
ただ、その身なりは貧相で、麻布のシャツがスカートと合体したような、簡単なつくりの服を着ているだけであった。

( ^ω^)「(綺麗な人だおー……)」

そうブーンが彼女に見とれていると、彼女はブーンに語りかけてきた。

川 ゚ -゚) 「Are you our enemy?」

ブーンには彼女の言葉が分からなかった。
少し考えた末、ブーンは、首を傾げた。

彼女は、その行動で何となく意味を理解したようだった。
そして、手でジェスチャーをし始めた。
空を切るように、一つの円を描き、その下に、ごちゃごちゃと色々書いていく。
またしてもブーンは首を傾げた。

彼女は一つため息を吐いた。
それに少し苛立ちを覚えつつも、ブーンは黙って聞くことにした。
そして、彼女は、地面に絵を描き始めた。



305: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 14:52:08.13 ID:spx3wQqG0
まず、簡単な円を描いた。
その中に、一人の顔を、そして、その下に、線を描いた。
いくつもいくつも、線を描いた。

それは、まるで植物の根っこのようだった。
その根っこ一本一本に、人の顔が描かれていた。

そして最後に、彼女は、一番下に『my』という記号を書いた。
その隣には、彼女にとても似た顔。

その図を全体的に見れば、上の方が丸や、顔が大きいのが分かる。
ブーンは、つまりこの図は力関係を現しているのだと思った。

彼女は、彼女の下に何人かの顔を描いた。
その全ての顔に、×をつけた。

そして、自分の横に魔物の口を連想させるものを描いた。
その口の横には、太陽が二つとと月が三つ。

まず、月を一つ消した。
次に、太陽を一つ消した。
また、月を一つ消した。
太陽を一つ消した。
月を一つ消した。
ブーンと彼女の顔を消した。



307: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 14:55:15.74 ID:spx3wQqG0
ブーンは、全てを理解した。
つまり、彼女は、生贄か何かにされてしまうのだ。
あの口のようなものが魔物だとすれば、生贄の線が濃い。

( ^ω^)「(丁度いいお……ふふふ、なんて運がいいのだろうかお)」

そうブーンは思った。
彼は元より父親の仇打ちで化け物を倒し、そのついでにお宝を頂くつもりだったのだ。
つまり、魔物の巣窟まで道案内されるというこの現状は、彼に取って夢にも思わない機会だったのだ。

彼は少しにやけた後、地面に描かれている口を、その足で踏み潰した。

( ^ω^)「魔物なんて、僕がぶっ潰してやるお!」

言葉が伝わらないということは分かっている。
それでも彼は、彼の意思を彼女に見せつけたのだ。

川 ゚ ー゚)「Oh……thank you……」

彼女が何か呟き、ブーンの目を見つめたかと思うと、すぐに踵を返し、その姿を闇へと埋めていった。
ブーンはその時、少し、彼女が笑っていたような気がした。

村が、少しずつ、闇から色を取り戻してきた。



309: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 14:58:15.02 ID:spx3wQqG0
それから二日間、ブーンはかなり暇だった。
やる事といえば、専ら空を見上げる事。
それもまた、退屈であった。

そんなただ退屈な時間を、我慢し、我慢し、遂に二日たった。
既に、日は落ちかけていた。
ブーンは、彼女の代わりに生贄として連れて行かれるのであった。


ミ( ∵)( ∵)( ∵)( ∵)( ∵)( ∵)「……。」


連れて来られたときと同じ、同じ顔をしたやつらが、ブーンを繋いでいる木を引っこ抜く。
そして、そのままある二人が肩に木を背負い、ブーンを担いでいった。
村が闇に染まりかけていた。

川 ゚ -゚) 「………。」

あぁ、この間来た女の子が影から見守っていてくれている。
しかし、本当に綺麗な子だなぁ……、しかも服装がエロいときた。
そういえば名前を聞いていなかったなあ、彼女、なんて名前なんだろう。
もしかしたら名前なんてないのかな。どうなんだろう。
故郷のみんなは元気にしているかな。ドクオは、どうしているんだろうか。

ブーンは連れて行かれている間、そんな事を、ずっと考えていた。


何度体が上下した事だろう。
既に日は落ち、月が地表を、森を妖しく照らしていた。
もう、半刻ほど上り坂を進んでいた。



311: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 15:00:42.58 ID:spx3wQqG0
急に、体が平衡を保った、そう思った瞬間、世界が90度回った。
ブーンと繋がられている木が、再びその先端を地面の中へ姿を消したのだ。
そして、その木が動きにくく、容易くは抜けない事を核確認すると、男達は去っていった。
夜風が身にしみる夜だった。

ブーンは、魔物が来るのを待った。
もしかしたら、魔物なんて居ないのかもしれない。
だが、何故かブーンは感じていた。ここには、居る、と。


暫くして、不意に、洞窟の奥から音がした。足音だ。
重量感溢れる、到底人とは思えない足音だ。
その闇の奥からは、二つの金色の輝きが、孤独に光っていた。

そして、遂に月光の中へ、姿を現した。
情報の通りの、まるで化け猫をさらに巨大化させたような姿をしていた。

───ロマネスク。

ブーンの両親を殺した、化け物、仇。
その両眼は、彼の父親がつけたであろう縦一文字がついていた。


( ^ω^)「遂に出会えたお……ロマネスク……ここであったが百年目だお……!」


既に、ブーンの思考はロマネスクを倒すことしか働いていなかった。



313: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 15:04:31.72 ID:spx3wQqG0
( ФωФ) 「You are victim,aren't you? ……I don't think to kill you.
        if you escape from here now,I'm not killing you.」


ロマネスクが、何かを喋った。
ブーンは理解できなかった。いや、しようともしなかった。
ブーンの頭の中には、ロマネスクを殺す方法がいくつか浮かんでいた。

ロマネスクがゆっくり近付いてきた。
ブーンは、あと一歩で、手が届く、そこまで近づけた。
そのギリギリの領域に、ロマネスクの足が入ってきたと共に、ブーンは動いた。
素早く縄を隠し持っていたナイフで斬り、そのまま逆手に持つ。
左を踏み出し、腰を回し、その勢いを持ってロマネスクの左目を引き裂く。

(#^ω^)「これは、とーちゃんの分だお!」

そう叫び、そのままナイフを順手に持ち、真下に振り落とす。
突然のことで、ロマネスクは油断していたようだ。好都合だった。
ロマネスクの右肩が、赤い花を咲かせた。
しかし、そんな事ではブーンの会心は終わらない。
そのままブーンは右足を踏み出し、ロマネスクの額、目と目の間を、右手を逆袈裟型に振り上げた。

(#^ω^)「これも、トーチャンの分だお!」

(#Ф/ωФ) 「whyyyyyyyyyyyyy!」

が、しかし、ブーンのナイフがロマネスクの体に届く前に、左からの強烈な衝撃によって、ブーンは宙を浮いた。
ロマネスクの右腕が、ブーンの腹に入っていた。
そして、そのまま壁へ叩きつけられた。



314: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 15:07:14.30 ID:spx3wQqG0
(#-ω-)「グフッ……うぅ……」

腹を叩きつけられたことで、肺に酸素が足りなくなっていた。
ブーンは、必至に酸素を補おうと、呻く。
腹は、先程の攻撃でいくらか抉られていた。
そのため、呻くたびに、神経を焼き切るような痛みがブーンを襲っていた。

( Ф/ωФ)「uh………」

しかし、それはロマネスクも同じである。
先程ブーンにやられた顔面の傷と、無理な状態からの攻撃により、ロマネスクも調子は宜しくなかった。
だが、やはり化け物。その強靭な精神を持って、未だ動けずにいるブーンに先制を仕掛けた。
両手を頭上に持ってくる、大振りな構え。
その隙を、ブーンは見逃さなかった。
足に仕込んでおいたナイフを取り出すと、最後の力を振り絞って、地面を蹴った。

(#^ω^)「これは、カーチャンの分だおおおおおおっ!」

素早くロマネスクの懐へと入り、その勢いを殺さずに、額へとナイフを突き立てる。
咄嗟の判断ができず、うろたえるロマネスク。
僅か1秒にも満たない間に、ロマネスクの額に、金属が生えた。
そしてそのまま、糸が切れたか人形ように、ロマネスクは動かなくなった。

(#^ω^)「はぁ、はぁ、はぁ………」

( ^ω^)「やった……やったお!僕は、やったお!」

ブーンは、既に満身創痍であったが、その苦痛よりも勝利の喜びの方が大きかった。
だが、それも僅かな間で、僅かに顔を出し始めた太陽を背に、彼の意識は闇へと落ちていった。



317: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 15:10:15.49 ID:spx3wQqG0
気がつけば、辺りは真っ暗であった。
洞窟の入り口に、雲の間から僅かに姿を見せる月が反射する光が、優しく感じられた。

とりあえず、山から下りよう。
そう思い、頼りない足取りで、彼はゆっくりと山を下っていった。


何度太陽と月が入れ替わっただろう。
実際にはそこまで時間が経ったわけではないが、彼には永遠にも思えた。
覚束無い足取り、満身創痍の体で、蔦、草、倒木、行く手を阻むそれらを超えてきた。

(  ω )「もう……限界だお……」

彼がそう思ったとき、遂に、彼の視界に村が見えてきた。
急に、足取りが軽くなったような気がした。
彼は、やや小走り気味に村へ駆けていくのであった。


(;^ω^)「おっ……着いたお」

彼が村の門前にたどり着いたとき、一人の男が気がついたようで、異国語で叫んでいた。
満足に動けない彼は、すぐに捕らえられてしまった。

捕らえらたと言っても、最初のように酷い扱いではない。
まず最初に、その村独特の治療をされ、危ないと思ったところは彼が口出し、とりあえずの処置を行った。
その後、倉庫のようなところで、扉には錠をされ、一応は出れなくなっていたが、三食の飯と水が支給された。
望んだものを分かりやすく図示すると、それも持ってきてくれた。時々違うものがあったりしたが。
悪くはない、待遇だった。



318: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 15:14:58.72 ID:spx3wQqG0
しかし、やはり彼は暇であった。
暇で暇で、しかし痛む体であまり激しい動きはできない。
手持ちにあるものは、ナイフ。
彼は、暇を紛らわすため、時々見に来る看守のような人に、やや太め、短めの木の棒を頼んだ。

それは、半刻もしないうちに届けられた。
それをナイフで巧みに削っていく。

( ^ω^)「できたお!」

一つの筒であったそれは、不恰好ながらも見事に最初に会った彼女の顔をしていた。
削り始めたときは太陽が明るく陽気に照らしていたが、完成したときには、月が怪しく光っていた。


何度それを繰り返したであろう。
最初に作ったものを見せると、看守らしき人は大いに感動して、一気に10本ほどそれを持ってきてくれた。
来る日も来る日も木を削るブーン。
それが暇を紛らわすのに一番で、且つブーンも楽しんでいた。
ナイフでナイフの模造を作ったり、男たちの顔をつくったりと、楽しんでいた。


洞窟で気がついてから、太陽と月が幾度も交差していた。
ついに、再び生贄の日がやってきた。
だが、村は、誰も生贄を出さなかった。


結局、その日、そして次の日、さらに次の日も、ロマネスクはやってこなかった。
ブーンは、村の勇者として称えられ、あの女性と誓い合った。
彼は、この村で一生を過ごそうと心に決めた。
とてもとても幸せな暮らしをした。



320: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 15:17:17.36 ID:spx3wQqG0
ある日、といっても、ブーンが女性と誓い合った日からわずか二週間ほどであるが、事件は起きた。
村に、ロマネスクがやってきたのだ。
男達は、すぐに戦闘体制に入ろうとしたが、既に時は遅く、満足に戦える男は三、四人しかいなかった。

( Ф/ωФ)「whyyyyyyyyyyy!!!!」

ミ( ∵)( ∵)( ∵)( ∵)( ∴)( ∵)「ahhh--!」

右手で払う。村人が五人ほど飛んで行った。
左手で払う。家が崩壊した。
走る。何人もの村人が、地面に赤い花を咲かせた。

( ∵)ミ( ∴)ミ( ∵)ミ( ∴)ミ( ∵)ミ( ∴)ミ( ∵)ミ「ahhhhh---!」

逃げまとう村人達。
襲い掛かる恐怖。

そして、遂にその恐怖は、ブーンたちの住む家の前までやってきた。
ブーンは裕福な暮らしをし、ブクブクと太っていた。
すでに、あの時のように戦える状態ではなかった。

(;^ω^)「お、お前は……なんで生きているんだお!」

( Ф/ωФ)「……whyyyyyyyyyyyy!!!!」

(;^ω^)「や、止めるおおおおおおっ!」

ロマネスクの、怒りを込めた、会心の一撃。
ブーンの家は、容易く崩壊した。
言うまでもなく、村はほぼ全滅した。



321: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 15:19:11.26 ID:spx3wQqG0
その後、村を滅ぼしたロマネスクは、元の洞窟へと帰っていった。
彼は、既にブーンとの戦いで満身創痍、その傷はほとんど治っておらず、まともな治療もしていなかった。
薄れ行く、ロマネスクの意識。

( Ф/ωФ)「………。」

化け猫は、洞窟の中で、父親の事を思いながら、静かに事切れた。


                  ( ^ω^)ブーンとビコーズ村の魔物のようです。 終わり

                  ( ФωФ) ロマネスクは優しい化け猫のようですに、続く(かもしれない)



323: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 15:22:27.86 ID:spx3wQqG0
はい、今作品はここまでです。No19という題材でしたが、どうでしたか?
まだまだ未熟な私ですが、まぁ多めに見てやってください。

あれ?これなんでこんなんなんだよwwwwって思った方、本日(たぶん)もう一作品投下しますので、そちらを見てから何か言ってやってくださいな。
今作品はNo19,No14を合併して作っております。とりあえずブーン視点でしたので、No19という事で。
次は、ロマネスク視点で行きますね。

感想批評他ありましたら、後ほどorしたらばにでもお願いいたします。



じゃあ、他の人、せいぜいがんばりなさいよ。
べ、べつに応援とか心配とかそんなんじゃないんだからねっ!



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