( ^ω^)ξ゚听)ξ('A`)三人、のようです

362: No.20『( ^ω^)ξ゚听)ξ('A`)三人、のようです』 :2008/08/31(日) 22:55:02.98 ID:E8Fy08ELO
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空は藍色。
胸一杯に吸い込んだ潮風。
子守歌にも聞こえる波の音。
海岸沿いに伸びる見慣れた通学路を私たちは歩いていた。

昇り始めた月を見上げる私は、言いようのない寂寥に駆られた。
昼間に比べて明らかにクールダウンした気温は私の内心を反映しているようで、
そこまで思い至って私は、どんなに強がっても、やはり自分の気持ちは誤魔化しきれないのだと思った。



365: No.20『( ^ω^)ξ゚听)ξ('A`)三人、のようです』 :2008/08/31(日) 22:58:14.02 ID:E8Fy08ELO
それはたぶん私の前で両手を広げて馬鹿みたいにはしゃいでいる奴も、
そして、最後尾を相変わらず黙したまま付いてくる奴もそうなのだろう。
十数年を共に生きてきた私には分かる。同じように、こいつらも私のことを分かる。
その反応は三者三様だけれど、それでも全てが私たちらしいそれ。

お調子者のブーンは少しでも場を盛り上げようと子どもみたいにはしゃぎ、
三人の中で一番精神年齢の高いドクオは時折ブーンのボケに律儀につっこみながらも、
"楽しい一日の終わり"を儚むように空を見やっていた。
ブーンほどお調子者でもなければドクオほど達観もできない私は、
せめていつも通りであろうと二人にきつい言葉を投げかけた。

二人が企画してくれた私の"お別れ会"。
その時、丸一日を費やすその会も、最後の行程に入っていた。



366: No.20『( ^ω^)ξ゚听)ξ('A`)三人、のようです』 :2008/08/31(日) 23:02:06.72 ID:E8Fy08ELO
『( ^ω^)ξ゚听)ξ('A`)三人、のようです』




事の発端は何てことはない。
父の仕事の都合とやらで海外へ移住をすることになった、それだけだ。
せっかく新しいクラスにも慣れてきたのに、友達もできたのに、思いつく言葉はあっても、
どれも口ついて出ることはなく、感情ばかりが空回りしたのを覚えている。
ただ、あの二人と腐れ縁を続けていくことができないのが、無性に寂しかった。

ただ結局、私が何かを言う前に、父は私にすまない、と頭を下げ、それで終わり。
父子家庭だから。父は不器用だし、私がついていかないわけにもいかない。

そんなこと、わかる。だから私は父にわがままを言えなかった。


ξ゚听)ξ「……いつ、いつ出発?」


父の驚いた顔。たぶん、私が共に行くことを拒むものだと、そう思っていたのだろう。



369: No.20『( ^ω^)ξ゚听)ξ('A`)三人、のようです』 :2008/08/31(日) 23:05:20.83 ID:E8Fy08ELO
父がもうちょっと実直じゃなくて、誠実じゃなくて、優しくもなければ。
そう思った。悔しいけれど、父は実直で誠実で、優しかった。
私はそんな父が好きで、だから拒むことなどできなかった。

父の涙を堪えながらの返答は聞き取りづらかったけれど、意味は伝わった。
私が日本に居ることができるのは夏の終わりまで。つまり、そういうことだった。
短い。なんて短い。
表情に出てしまったのか、目を真っ赤に腫らしている父がもう一度謝った。


ξ゚听)ξ「いいよ。さ、ご飯を食べよう。あと半年あるんだから、ゆっくり準備しよう」


最後は、自分に言い聞かせたものだった。
表情と感情が一致してるとは、とても思えなかった。



370: No.20『( ^ω^)ξ゚听)ξ('A`)三人、のようです』 :2008/08/31(日) 23:08:21.38 ID:E8Fy08ELO
◇◇◇


翌日。
私は珍しく寝過ごした。考えることが多すぎて、眠れなかった。
父は既に家を出ていて、テーブルの上に不細工なおにぎりが二つ載っていた。
隣に置かれたメモに書かれた文字は、涙と思しき液体で滲んでいた。

『先生には事情を伝えたので、辛かったら休んでもいい。
へたくそだけど、おにぎりつくりました』

まったく、と苦笑。
おにぎりを手に取るとあっさりと崩れたので、箸でつつきながら時計を見れば朝の九時で。

朝のSHRは当然として、一時間目はとっくに始まっている。
あまり、気分は乗らない。かといって、残り少ない学校生活を自分から削るような真似もしたくなかった。

あいつらに事情も話さなければならない。
あと、叩き起こしに行けなかったことを謝らなければならない。
本当は義務じゃないんだけど、なんだか何年も続けていると義務にも思えるから不思議だった。



371: No.20『( ^ω^)ξ゚听)ξ('A`)三人、のようです』 :2008/08/31(日) 23:11:18.68 ID:E8Fy08ELO
◇◇◇


いつもの交差点に辿り着くまで約五分。
本来ならば、ここに来るまでに内藤家と鬱田家を襲撃するミッションがあるが、今日はない。
さすがに二人とも起きて学校に行っただろうし、至ってスムーズな登校となる、かに思われた。


( ^ω^)「おっおっwwやっとツンの到着だおwww」

('A`)「おせー。一時間目とかとっくの昔に始まってるじゃねーか」

ξ゚听)ξ「……あんたら、何やってんの?」

(;'A`)「おま……言うに事欠いてそれかよ」

( ^ω^)「ツンを待ってたんだお!!」

ξ゚听)ξ「……」



372: No.20『( ^ω^)ξ゚听)ξ('A`)三人、のようです』 :2008/08/31(日) 23:13:55.83 ID:E8Fy08ELO
満面の笑みで迎える特徴的な口調の男、内藤ホライゾン。通称ブーン。
やる気なさそーにこちらを見やる年中無気力男、鬱田ドクオ。
眉間を押さえ、呻く。
相変わらず、人の予想とか期待とかいったものをことごとく裏切る奴らだ。


ξ゚听)ξ「あんたら……もう一時間目始まってるわよ」

('A`)「それ、さっき俺がいっt」

(;゚ω゚)「え……?」

ξ;゚听)ξ(;'A`)「気づけよ……」


若干顔色を悪くしたブーンに、ドクオも眉間を押さえた。
思わず笑ってしまった。
ドクオより不気味なモノでも見るような視線を感じたので睨み付けてやる。
よくわからないけどすいません、と何故かブーンが謝る。ドクオが、おお怖い、などと煽る。

いつも通り。
あまりにいつも通りで、これが夏の終わりまでには無くなる、その事実が夢か幻かのように思えた。



374: No.20『( ^ω^)ξ゚听)ξ('A`)三人、のようです』 :2008/08/31(日) 23:16:31.07 ID:E8Fy08ELO
('A`)「まあ、冗談はここまでにしておいて、どうする?」

( ´ω`)「今から授業出ても怒られるだけだお……」

('A`)「んじゃあいつものように学校の屋上で暇つぶしするか」


そう言って二人が歩き出した。
いつもなら、しょうがないわね、と言って付いて行くのだけれど、何故か足が動かなかった。

心配そうにブーンが振り返った。
ごめん、と言って、私は足を踏み出し、


('A`)「なんだかなー」

(;^ω^)「ど、ドクオっ!!」


ぴたり、とドクオの足が止まり、ブーンが焦ったような声を出した。
振り返ったドクオ。その瞳が私の目を射抜いていた。
心の中まで覗かれるような錯覚に、思わず私は視線をそらした。
言いたくないならいいけど、ドクオの声。ブーンが若干怒ったように再びドクオの名を呼んだ。



375: No.20『( ^ω^)ξ゚听)ξ('A`)三人、のようです』 :2008/08/31(日) 23:19:23.07 ID:E8Fy08ELO
相変わらず鋭い。
私が悩んだりすると、いつだってこいつらが真っ先に気がつく。
ブーンは今回は深刻だと、そっとしようと思ったのだろう。
ドクオは、悩むくらいなら行動しろ、と伝えたかったのだろう。

全く、いつも通り。
いつも通りじゃないのは私だけ。


ξ゚听)ξ「……行きましょ」

(;^ω^)「ツン……」

ξ゚听)ξ「屋上で話すわ」

('A`)「……」


足取りは、重かった。



378: No.20『( ^ω^)ξ゚听)ξ('A`)三人、のようです』 :2008/08/31(日) 23:23:46.08 ID:E8Fy08ELO
◇◇◇


こそこそと登校し、忍び足で向かった校舎の屋上は、当然ことながら誰もいなかった。

嫌味なくらいに突き抜けた青空の下、二人が私の方を振り返った。
ブーンは、言いたくないならいいお、と言い、ドクオは無言でこちらを見据えていた。
言いたくないのは事実。でも、いずれ知らされることであるし、
ならば私の口からそれを伝えようと思った。

一つ深呼吸。
今までの人生の中で、一番緊張していた。


ξ゚听)ξ「高校まで続いたあんたたちとの腐れ縁も、とうとうおしまいなの。
     父さんの仕事の関係でね、私は夏休みの終わりと同時に海外に行く」

(;^ω^)「ちょ、どういうことだおっ!?」

('A`)「……海外、か」

ξ )ξ「うん。ごめん」



382: No.20『( ^ω^)ξ゚听)ξ('A`)三人、のようです』 :2008/08/31(日) 23:29:35.27 ID:E8Fy08ELO
(;^ω^)「そんな……そ、そうだおっ!!こっちに一人暮らしとか……
      なんなら僕の家に居候してもいいお!!」

('A`)「落ち着けブーン。それぐらいツンも考えただろう。
   なのにそれをしないという理由を察しろ」

(#^ω^)「ドクオは嫌じゃないのかおっ!?」

('A`)「そりゃ、嫌だ。だが喚いても始まらない。
   それにツンはそれを望んじゃいないだろう?」


ブーンがそこではっとしたように息を呑んで、ごめんだお、としおらしく謝った。
こういう時のドクオの冷静さは、いつも頼りになる。

私はどんな表情をすればいいのか分からなくて、ただ作り笑いをするしかなかった。
ブーンはしょげたように俯き、ドクオは無表情のまま目を閉じた。



383: No.20『( ^ω^)ξ゚听)ξ('A`)三人、のようです』 :2008/08/31(日) 23:33:22.72 ID:E8Fy08ELO
気まずい沈黙。

言ってよかったのだろうか。ばれるまで黙っていても良かったのではないか。
そんな思いが頭の中を巡っていた。
ゆっくりと屋上の錆びた手摺りのところまで歩み、後悔と共に寄りかかった。
何もかもが始めてのことで、どうすればいいのか分からなかった。


そのまま一時間目は終わった。
私たちは無言のままに教室に戻り、既に先生から話を聞いていたらしいクラスメートに私は囲まれ、
二人は遠くからそれを見つめていた。
その距離が、ひどく私には辛く感じられた。



388: No.20『( ^ω^)ξ゚听)ξ('A`)三人、のようです』 :2008/08/31(日) 23:48:38.13 ID:E8Fy08ELO
その日から。
私たちはどこか気まずい空気の中を共に過ごした。
限られた期間をどこかぎくしゃくし、遠慮し合った。

いままでこんなことは無く、私はひどく動揺し、二人もまた、そうだったのと思う。
登下校もあまり共にしなくなり、ブーンもドクオもあまり互いに話さなくなったようだった。
それをもたらしたのが私だと思うと、ひどく罪悪感に苛まれるもので、
私はいつも内心で謝っていた。本当は口に出したかったけれど、それは躊躇われた。

関係が修復されるきっかけもなくやがて夏が来た。
嫌な時は、永く感じられても終わりはくるのだ。
砂時計の砂はもう全て落ちかけていた。

夏休みに入った私は、引っ越しの準備に追われることになった。
後悔と、悲哀を引きずったまま海外へと向かわなければならない、そう思いながらだ。



391: No.20『( ^ω^)ξ゚听)ξ('A`)三人、のようです』 :2008/09/01(月) 00:00:47.85 ID:VjftSom6O
ξ゚听)ξ「あ……」


そんな時。
携帯に着信した一通のメールがあった。


『お別れ会を開きたいので、来週の日曜日を空けておいて欲しいお』


送信者は内藤ホライゾン。
躊躇う必要などなかった。予定があったとしても無理矢理にでも空ける。
私は携帯を握りしめた。


『いいよ。何時にどこにいけばいい?』



393: No.20『( ^ω^)ξ゚听)ξ('A`)三人、のようです』 :2008/09/01(月) 00:04:03.55 ID:VjftSom6O
◇◇◇


空はもう濃紺に染まっていた。
もうこれが最後だと思うと、胸がつかえるような感じがした。
いつかと同じように錆びた手摺りに寄り掛かる私。
隣には、二人がいた。


('A`)「俺たちは気が利かないし、どういったのがおまえを喜ばせるのか見当も付かん。
   だからまあ、定番デートコースだったのは勘弁して欲しい」

( ^ω^)「おっおっww両手に花、ならぬ両手にアホだったおww」

('A`)「それ、全然うまくねえぞ」

ξ゚听)ξ「ほんとに気が利かない奴らだわ」

( ^ω^)「コースを決めたのはドクオだからクレームはそっちにどうぞだお」

(#'A`)「おまえのは釣り堀コースとかわけわかんねえからだろ!!」



397: No.20『( ^ω^)ξ゚听)ξ('A`)三人、のようです』 :2008/09/01(月) 00:08:04.67 ID:VjftSom6O
そこで私たちは笑った。
他の人には全然おもしろくもないやりとりだろうけど、それで笑えるのが私たちで、
私たち三人揃ってこそのものだった。
そして、ひとしきり笑った後、ブーンが続けた。


( ^ω^)「でも、最後のここは、よく三人でいた思い出の場所だから、勘弁して欲しいお」

ξ゚ー゚)ξ「ふふ。そうね。勘弁してあげる。
     それに、本当は楽しかった。ありがとう」


なんだか、初めて素直に自分の気持ちを言えたような気がした。
二人も若干驚いたように顔を見合わせ、そして、笑みとともにどういたしまして、そう言った。


('A`)「そういやいつだかここで、腐れ縁もおしまいって、ツンが言ったよな」

ξ゚听)ξ「……?」

( ^ω^)「あー、言ったお」



398: No.20『( ^ω^)ξ゚听)ξ('A`)三人、のようです』 :2008/09/01(月) 00:12:13.72 ID:VjftSom6O
('A`)「でもさ、遠い場所でもさ、生きている限り必ず会えるんだから。
    俺たちがお互いに想っている限り、終わりはしないだろ?」


くせぇ、とブーンが吹き出した。ドクオが赤面しながら反論し、くさいわね、と私が続けると今度はすねた。

ドクオを笑いながらも、私は、でも、と思った。
そう、生きて想い続ける限り、縁は切れないのだ。
それがどんなに遠くても。
私たちがそれを望むかぎり、いつだって一心同体であれる。

だから、大丈夫。
こいつらのことを生きて想い続けることができない、なんてことは、
死んでも無理そうだから。



399: No.20『( ^ω^)ξ゚听)ξ('A`)三人、のようです』 :2008/09/01(月) 00:16:05.57 ID:VjftSom6O
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眼を開ければ、鏡に映った、かつてより少しだけ大人びた私がいる。
この日のために服も買ったし、髪もセットした。
どこからどうみても完璧。
向こうで数多の男どもを虜にした私は健在だ。

先ほどより三度目となる深呼吸とともに空港のトイレを出る。
あのアホどもはまだいない。時間にルーズなのは何年経っても変わらないようだ。
くそぅ。早くしないと、殴っちゃうかも。


「いきなり物騒だな、おい」

「そういうところは変わってないようだおwww」


振り返る。


('A`)「よう」

( ^ω^)「おっおっwww」

ζ*゚ー゚)ζ「遅いわよ。ばかども」


想い続けるかぎり、いつだって私たちは繋がっている。



401: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/01(月) 00:21:30.07 ID:VjftSom6O
おわりました
このペースで猿くらうとは思わなんだ

>>391と>>393の間に何かぬけてねぇか、クソ
と思った人
ところがどっこい書いてません……!!これが現実……!!
No.20の絵師の方にはこんな中途半端してすみません、とあやまります



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