从 ゚∀从空の向こうへのようです
- 342: 41 从 ゚∀从空の向こうへのようです :2008/08/29(金) 18:14:53.40 ID:rKJw8wFIO
- 从 ゚∀从「だから、俺を信じろって」
ハインはそう明るく告げると振り返って笑みを見せた。
誰もいない格納庫。
ハインの愛機の前に2人はいた。
視界の右半分にある窓からは黒い海が見える。
宇宙海賊VIPPERSのエースパイロットである彼女。
対するジョルジュは整備士であり、実際には彼女を止める権限なぞ無かった。
从 ゚∀从「なんでそんなに信用しねえんだよ」
( ゚∀゚)「お前は無茶をする傾向にあるからだよ」
溜め息混じりにジョルジュは返す。
- 344: 41 从 ゚∀从空の向こうへのようです :2008/08/29(金) 18:16:58.84 ID:rKJw8wFIO
- ( ゚∀゚)「護衛も無しに1人で敵要塞のエネルギー炉爆破?出来るわけねえよ」
从 ゚∀从「でもステルス機能は完璧なんだろ?」
( ゚∀゚)「理論上はな。実際にはコンピューターシミュレーションほど上手くは飛べない。
どうしたって磁気の乱れに引っかかって見つかるよ」
从 ゚∀从「だからお前が整備してくれたら俺はシミュレーションなんかよりずっと上手く飛べるよ」
そうだろう?
そう言って彼女はまた自信ありげに笑う。
右手を斜め上に、左手を斜め下に。
彼女は手を広げ、くるっと半回転してジョルジュに背を向けた。
从 ゚∀从「お前が整備してくれたらこの体より俺の思い通りに動くだろ?」
広げた手をそのまま伸ばして愛機に触れながらハインは問うた。
- 348: 41 从 ゚∀从空の向こうへのようです :2008/08/29(金) 18:22:47.56 ID:rKJw8wFIO
- ( ゚∀゚)「いくらお前でも危ない」
実際ハインの力量ならシミュレーションと同等、もしくはそれ以上に飛べる可能性は充分あった。
だが、所詮は「可能性が充分ある」だけ。
確実ではない。
( ゚∀゚)「俺はそんな危険な任務に行かせるために整備するんじゃない」
从 ゚∀从「お前の整備で俺が飛べば危険なんて無いさ」
後ろを向いたまま明るい声で言う。
( ゚∀゚)「それでも危険がある任務だから止めてるんだ」
「なぁジョルジュ」
ハインはジョルジュに向き直って笑う。
从 ゚∀从「俺が行かなきゃ誰が行く?」
ジョルジュは黙って俯いた。
- 349: 41 从 ゚∀从空の向こうへのようです :2008/08/29(金) 18:25:18.71 ID:rKJw8wFIO
- 誰かが行かなければならない任務であることは確かだった。
政府軍との戦闘で疲弊したVIPPERSを狙って来る、という情報が入ったのは数時間前。
今戦闘を行えば大敗を喫して最悪全滅することは確実だった。
幹部が下したのは、単機の隠密行動による敵母船の破壊。
開発されたばかりの完全ステルスとハインの技術に頼りきった作戦だった。
その任務に指名されたのは、エースパイロットのハイン。
誰にも負けず、任務は全て完遂。
撃墜数もダントツ。
彼女が一人称を「俺」に変えたのはいつだったか。
少女は覚悟を決めて戦闘機に乗った瞬間からずっと、女ではなく戦士であり船員だった。
明朗で決断の速い、最強の。
( ゚∀゚)「でも危険なんだ」
- 350: 41 从 ゚∀从空の向こうへのようです :2008/08/29(金) 18:27:47.97 ID:rKJw8wFIO
- 从 ゚∀从「でも俺は行くよ」
そして決めたことは曲げない。
信念は貫く。
エースパイロットである責任は、誰より危険でも怯まないこと。
危険な任務でも必ず全うすること。
从 ゚∀从「俺を信じて待っててよ。必ず戻るから」
―――お前を行かせたく無いんだ
―――お前が危険なのは嫌なんだ
ジョルジュは言葉を喉の奥でひねりつぶした。
彼女の覚悟に傷を付ける権利なぞ無い。
ただの整備士のジョルジュには無い。
- 351: 41 从 ゚∀从空の向こうへのようです :2008/08/29(金) 18:29:31.46 ID:rKJw8wFIO
- 一つ息を吐いて言った。
( ゚∀゚)「最高の状態に整備してやるよ」
从 ゚∀从「ありがとうジョルジュ」
彼女は飛びきりの笑みを見せると窓の外に目をやった。
ジョルジュもつられて右を向く。
ハインは漆黒が広がるだけなのに何かが眩しいかのように手をかざす。
从 ゚∀从「必ず戻ってくるよ。俺は、エースだから」
ジョルジュはハインに触れることも、言葉を返すことも出来ずに漆黒の空間を眺めていた。
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