( ・∀・)モララーは人形のようです

693: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 11:05:04.47 ID:djbhxrUT0
耳がちぎれたり、足がもげたり。
皮膚が裂けたり、内臓が飛び出たり。

僕の体はボロボロだけど。
それでも僕は、生きているんだ。
いつまでも顔に笑みを貼り付けているんだ。

http://vipmain.sakura.ne.jp/light_novels/novels_img/061.jpg

そう、変わることのない笑顔を。君に。




( ・∀・)モララーは人形のようです



695: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 11:08:13.19 ID:djbhxrUT0
少し前のことなのに、なんだかとても昔のことのように感じる。
おもちゃ屋さんの中、いつものように棚からお客さんを眺めていた。
いろんな人がいるから、結構楽しかった気がする。

(,,゚Д゚)「……」

ふと、僕を見つめ続ける視線を感じた。
今思い出すと、だいぶ懐かしいなぁ。

強面のおじさんが

ポッ(,*゚Д゚)「……ゴルァ」

一瞬綻んだ表情を見せてくれたこと。

( ・∀・)「……」

僕はあなたみたいに表情を変えることはできないから。
変わらない、変えられない笑顔で見つめ返していたんだった。



697: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 11:10:02.43 ID:djbhxrUT0
ひょいとおじさんが僕を持ち上げて、レジのほうへと持っていく。
レジに通されるなんて初体験だったからドキドキしたもんだったよ。

( ・∀・)「……」

体験してみればなんてことはない。
僕の首筋にあったアクセサリーのようなものに赤い光を当てられただけなんだから。
ちょっと拍子抜けした記憶があるな。

(,,゚Д゚)「……ゴルァ」

おじさんがお金を払って、僕は袋に入れられて。
景色が見えなくなって数時間、ひたすら揺れていた。
この時間があまりにも退屈だったのは覚えているよ。

「ただいま」「おかえり」「お土産」「わーい」

揺れに慣れなくて、気分が悪くなり始めた頃。
袋の外から、こんな感じの会話が聞こえた。

(,,゚Д゚)「これだ」

袋の上から景色が飛び込む。
同時に、おじさんのゴツゴツした手も入り込んできた。
僕はそれを、笑顔で見続けていた。



700: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 11:13:08.65 ID:djbhxrUT0
(*゚∀゚)「うぉ! 超かわいいー!」

おじさんの硬い手から、フワフワした手へ。
見てみると、まだ小さな女の子が僕のことを満面の笑みで見つめていた。

それが、僕とつーちゃんの出会いだった。

(*゚ー゚)「つー、良かったわねぇ。お父さんにありがとうは?」

(*゚∀゚)「父ちゃんテラサンクスwwwwwwww」

(,*゚Д゚)「……ゴルァ」

一家のほのぼのとした空気。
おもちゃ屋さんにいたときよりも、ここはなんだか暖かいみたい。
僕の笑顔は変わらないけれども、それでもいつもよりも笑っている気がした。

そして僕は後に、自分で表情を変えられないことを死ぬほど後悔するなどとは考えてもいなかった。



702: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 11:15:36.60 ID:djbhxrUT0
ピンクの絨毯に、小さな学習机。
窓の下には、何かのキャラクターが描かれたシーツのベッド。
その近くの棚には、僕の仲間の人形がたくさん並んでいた。

( ・∀・)「……」

僕は、その仲間たちにどこか違和感を抱いたんだけれども。
その違和感のハッキリとした正体がわからなくて、とりあえず深く考えないでおいた。

(*゚∀゚)「ここが今日からあんたの部屋だよ!」

僕はつーちゃんに部屋へ案内されたわけなんだ。
そして僕は棚に並ぶ集団へ仲間入り。

と、思いきや。

(*゚∀゚)「あんたは私と一緒に寝るの!」

フワリとした感覚と、柔らかいものに締め付けられる感覚が同時に感じられた。
僕はベッドの上で、つーちゃんに抱きしめられていたんだ。

( ・∀・)「……」

照れくさくて、それでも嬉しくて。
笑顔は変わらないけれども、僕に表情があればきっと相当複雑な顔をしていたんだと思う。

……いや、普通に真っ赤になってただけかも。



704: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 11:17:28.14 ID:djbhxrUT0
人形だって、眠る。
寝顔は変わらないけれども、僕だって眠るんだ。

(*-∀-)「……zzz」

( ・∀・)「……」

つーちゃんに抱きしめられて、暖かいベッドの中。
ゆっくりと眠りについていく。

意識を失う瞬間。
何故か棚の上の仲間たちが気になったけれど、やっぱり睡魔のほうが強いみたい。
すぐに仲間たちは頭の隅に追いやられて、僕は深く深く眠った。

(*-∀-)「……zzz」

( ・∀・)「……」

それが、最初の夜。
異変が起き始める、最初の夜だった。



709: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 11:21:55.71 ID:djbhxrUT0
痛い、痛い、痛い。

人形にだって痛覚はある。

痛い、痛い。

そんなに引っ張るのは誰?
壊れてしまうよ。

痛い。

真っ暗闇の中、僕は確かに異変を感じた。

いたい。

それは夢の中の出来事だったのかもしれない。

いたい、いたい。

それでも、ハッキリと感じたんだ。

いたい、いたい、いたい。

僕は棚の人形たちの仲間入りをしてしまうのかなぁ。



711: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 11:23:59.62 ID:djbhxrUT0
(*;∀;)「あー! あー!」

朝、つーちゃんの大きな泣き声で目を覚ました。
なんだろう?
昨日の笑顔とは対照的な表情で、僕の事を見ている。

(*;∀;)「やっぱりまたなっちゃった!」

また……?

つーちゃんの言葉に疑問を持ちつつも、僕は変わらぬ笑顔を浮かべる。
……あれ?
なんだか、頬に違和感。

(*・∀・)「……」

(*;∀;)「ほっぺに傷がついてるよー!」

傷?
どうやら夜の間に感じた痛みは、夢じゃなかったみたい。
つーちゃんを泣かした原因が僕の頬にあるようだった。



713: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 11:26:51.54 ID:djbhxrUT0
ふと、窓ガラスに映った自分の姿が見えた。

(*・∀・)←頬に傷がついた僕

(*;∀;)←泣き顔つーちゃん

うわ、見分けづらい。
それでも、確かにつーちゃんの涙の原因がわかった。

(*;∀;)「なんで傷がつくのー!」

(*・∀・)「……」

泣き止んでよ、つーちゃん。
このままだと見分けがつかないから。

とりあえずこの日は、なんとか泣き止んでくれたつーちゃんが外へ出て行き。
そしてなんとなく暮れていった。

(*゚∀゚)「おやすみー」

また僕はつーちゃんと同じベッドで眠る。



716: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 11:29:11.34 ID:djbhxrUT0
でも。

(*・∀・)「……」

この日は耳がちぎれ。

(*゚∀・)「……」

次の日は片目が取られ。

(*゚∀・)「……」

更にまた次の日は腹を抉られ。

(*;∀;)「うえーん」

僕がボロボロになっていくその度。
つーちゃんは僕のために涙を流してくれた。



717: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 11:31:45.68 ID:djbhxrUT0
何故僕は日を追うごとにボロボロになるんだろう。
毎晩、毎晩。
一体、僕の身に何が起きているんだろう。

(*゚∀・)「……」

よし、決めた。
僕は今晩、どんなに眠くたって起きていてやる。

(*゚∀・)「……」

棚の上にいる仲間たちも、僕のことを応援しているように見えた。
変わらぬ笑顔で僕はそれに答えよう。
僕らのつーちゃんを、つーちゃんの笑顔を僕は守る義務があるんだ。

そしてまた、その日のお日様はゆっくりと地面へ姿を隠していった。

(*゚∀゚)「また寝るよ!」

つーちゃんと一緒に暖かい布団へ入る。
今夜が、決着だ。



719: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 11:33:50.90 ID:djbhxrUT0
(*゚∀・)「……」

電気も消して、真っ暗な空間の中。
つーちゃんの可愛い寝息だけが聞こえる。

(*゚∀・)「……」

僕は、ひたすらそのときが来るのを待っていた。
暗闇の中、笑顔を貼り付けたまま。
未だ見ぬ敵を想像して、そいつを睨んでいた。

(*゚∀・)「……」

一時間、二時間。
人形にも体内時計はある。
だいたいそのくらい経った頃かな。

(*゚∀・)「……」

僕の体に痛みが走った。
……ついにきたんだ。

真っ暗で相手があまりよく見えない。
それでも僕は集中して、暗闇の向こうをじっと見つめた。
ぼんやりとした姿が、僕の視界の中でだんだんと輪郭を見せてくる。



723: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 11:37:10.65 ID:djbhxrUT0
見えてきたその相手は。

(*- -)「……」

つーちゃんだった。

つぶらな目を静かに閉じ、フワフワな髪を揺らし。
静かな吐息と、暖かな腕が僕を包んで。

それでも、彼女の元から痛みは発生している。
なんだ、犯人は寝ている君だったのか。

自分で僕を壊して、壊れた僕で自分が泣いて。
ははは、おかしいや。

(*- -)「……」

(*゚∀・)「……」

あぁ、可愛いな。
そう素直に僕は思った。

ただ一つ、欠点を挙げるとすれば。



724: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 11:39:17.56 ID:djbhxrUT0
(*-з< * ゚ ∀・)

彼女の吸引力がちょっと尋常じゃないことくらいかな。




    ミシミシ
(*-з< * ゚ ∀・)

ほら、吸いすぎて変な音してる。
え、何これ? 寝相の一種?




    ブチッ
(*-з< * ゚ ∀・)

いたっ。



729: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 11:42:53.87 ID:djbhxrUT0
(*゚∀・)「……」

結局、次の日から僕は棚の中へ仲間入りした。
そこで初日から違和感を覚えた仲間たちに囲まれている。

(メメメメω゚)「……」

(’A(#)「……」

ハナ´・ω・`タバ「……」

みんな変わらない表情で、ボロボロなままで。
あぁ、なんだ。
違和感の正体はこれだったのか。



731: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 11:45:25.36 ID:djbhxrUT0
(*゚∀゚)「ただいまー!」

あ、つーちゃんが帰ってきた。

ξ゚听)ξ「……」

右手にはかわいらしい女の子のお人形。
はは、あの子が僕らの仲間入りするのはいつになるのかな。
表情を変えることができたなら、僕は彼女を救ってあげることが出来るのだろうに。

残念だ。

僕はこれから変わらない笑顔で、つーちゃんと新しい人形の生活を見守っていこうと思う。

そう、いつまでも。



             〜終〜



732: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 11:47:08.80 ID:djbhxrUT0
NO.61の絵師さん申し訳ない。
希望ジャンルはシリアスだよねそうだよね。
ごめんね。お兄ちゃん途中で力尽きちゃったよ。
でもほら、途中まではふいんきシリアスだったから許してね。
あと途中でさるったよ。読んでる人達ごめんね。
きっとエロを期待してたよね。そうに決まってる。そうなんだろ?馬鹿やろう!
せっかくだからその脱いだズボンを上げて、露にしている粗末な物はしまってね。

そんじゃお兄ちゃんは寝ることとするよ!



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