('A`)貧相な刑事と煙なようです
- 34: 73 ('A`)貧相な刑事と煙なようです :2008/08/30(土) 01:19:50.77 ID:wQTADkWlO
- 貧相な男が煤けた路地の壁にもたれかかり、煙草に火を点ける。
貧乏神でも憑いてそうな顔だった。
くしゃくしゃのコートや磨り減った靴、一見すると流れ者にも見える。
事実、懐の警察手帳だけが彼を流れ者ではなく刑事だとする唯一の証だった。
('A`)「……で、お前は今回の件どう思う?」
煙を吐き出しながら空中に問いかける。
と、男の吐いた煙が人の顔を形づくった。
- 35: 73 ('A`)貧相な刑事と煙なようです :2008/08/30(土) 01:21:29.01 ID:wQTADkWlO
- ( ゚д゚ )『そうさなぁ……あの娘さんあたりが嫌な感じだが』
煙の顔がしゃべった。
('A`)「そうか。だが彼女のアリバイは完璧だぞ?」
( ゚д゚ )『でも嫌な感じすんだよ。殺されたおっさんに
なんのよしみも無えのにギャン泣きだしさぁ』
('A`)「そりゃそうだがな」
男はハイペースで煙草を吸い、煙を吐き出し続ける。
吐き出された煙は全てそのしゃべる顔を構成する筋となり、しばらくは空中に留まっていた。
あっという間に二本目に手を伸ばす。
- 36: 73 ('A`)貧相な刑事と煙なようです :2008/08/30(土) 01:22:55.70 ID:wQTADkWlO
- ('A`)「じゃあ今回はしばらくあの娘んとこ頼めるか」
( ゚д゚ )『おうよ……しっかしお前肺癌になりそうだな』
('A`)「煙の精のお前が言うな」
男は軽く笑うと手で煙の顔をかき消した。
火を点けたままの煙草を持って路地を出る。
少し歩いて署に入っていった。
- 37: 73 ('A`)貧相な刑事と煙なようです :2008/08/30(土) 01:24:08.62 ID:wQTADkWlO
- ( ゚∀゚)「あードクさん!どこ行ってたんすかー?」
入るなり軽そうな若者といった外見の部下が寄ってきた。
('A`)「うるせえヤニだ。それより参考人の娘さんどこだ?」
( ゚∀゚)「多分今聴取が終わって……あ、出て来ましたよ」
部下が指した方に目を向けると、ちょうど女性が歩いて来る。
大人しそうな、美人だった。
- 39: 73 ('A`)貧相な刑事と煙なようです :2008/08/30(土) 01:25:56.64 ID:wQTADkWlO
- 貧相な男は煙草を吸うと煙を大きく吐き出した。
一瞬顔が見えて、筋となってその美人の肩のあたりにまとわりつく。
これで煙の精があとは調べてくれる。
肩の辺りにうっすら漂う奴が。
煙の精の「嫌な感じ」は外れたことがない。
後はそれを不自然ではない程度に調べて証拠を固めれば良かった。
('A`)「頼んだぞ……と」
貧相な男は首をすくめて煙草を消すと、女性の調書を読むために奥へ入っていった。
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