( ^ω^)思い馳せるようです

526: 84 :2008/09/01(月) 16:17:11.46 ID:VKlXqp4FO

 入道雲特有の白さと雄大さは澄み切った青い空によく似合う。
 近頃のゲリラ豪雨なんて嘘の様に。
 少し暗めの車内とは対称的なそれに僕はすっかり見とれ、そして思い出していた。


――( ^ω^)思い馳せるようです



527: 84 :2008/09/01(月) 16:20:03.40 ID:VKlXqp4FO

J( 'ー`)し「もうすぐよ、懐かしいねぇ……」

( ^ω^)「おっおっお、僕も楽しみだお」


 運転席にいるカーチャンが僕に声を掛けた時、僕は一度現実に戻った。
 周囲の景色はすっかり灰色のビル街から緑や青といった自然豊かな風景へと変わっている。
 僕は今、長い夏休みを利用して、昔住んでいた町に向かっているのだった。

 ちょっと古めの建物が目立つ様になり、向日葵や畑も増えていく。
 僕はその度に懐かしいと思い、昔はよく遊んだなあと思い馳せていた。
 遊んでいた、といえば、僕には昔、よく遊んだ子がいた。



528: 84 :2008/09/01(月) 16:23:21.66 ID:VKlXqp4FO

 名前はツン、確かこれはあだ名で、本当の名前はツンデレ。
 名前の通り性格はツンデレで、きっと、将来は美人になるんだろうと思っている。
 高校三年、最後の夏、僕は彼女に会うのも楽しみの一つとしていた。

 約六年振りの再会、か……。


( ^ω^)「お、海だお、懐かしいお」


 窓から見える風景の先に、空とは違う、青が広がっている。
 勿論海の事だ。
 昔はよくそこで遊んだものだ、ちょうど今と同じ時期に。


( ^ω^)「また遊びたいおー……」


 ここには一週間いる予定なので、一日は遊んだり出来るかもしれない。
 昔はよく、砂場でお城を作ったりして、ベタな感じに開通させたりして。



530: 84 :2008/09/01(月) 16:26:15.19 ID:VKlXqp4FO

( ^ω^)『繋がったおー!』

ξ*゚听)ξ『繋がった!』

( ^ω^)『これで握手するお!』

ξ*゚ー゚)ξ『これからも友達ね!』


 今思えば、この小学六年生時代こそが僕にとってのリア充時代だった。
 snegな幼馴染み、自然豊かな町。
 転々と引っ越す中でもここだけは忘れた事が無かった。

 理由としては一番長く居たから、というのもある。
 けれど僕の中でも印象的な町だったからというのが一番の理由で。
 印象的、というのはツンの事だった。



532: 84 :2008/09/01(月) 16:29:04.76 ID:VKlXqp4FO

 昔、僕が引っ越す事をツンに伝えようとした時の事。
 その日も今日みたいな天気で、あの海に二人で居た。
 ツンは白い帽子にワンピース、それは、まるで入道雲の様な。


ξ゚听)ξ『どうしたの?』


 風が強いのか、帽子を抑えて。
 僕の方を振り返りながら聞いた。
 決心は出来た、と僕は話し始める。


( ^ω^)『引っ越すんだお』

ξ;゚听)ξ『はあ!?』


 彼女は慌てて振り返った。
 一瞬帽子が落ちそうになる。
 予想通りの反応だった。



533: 84 :2008/09/01(月) 16:32:14.03 ID:VKlXqp4FO

( ^ω^)『だから引っ越すんだお』

ξ#゚听)ξ『分かってるわよ、馬鹿! 何でって聞いてるのっ!』

( ^ω^)『それはあれだお、オトナの事情ってやつだお』


 僕のその言葉に、彼女はムスッとして。
 多分大人、が気に入らなかったんだと、そう思った。
 けれど僕だって別れは辛かった。


( ^ω^)『きっとまた会えるお』

ξ゚听)ξ『……』


 これ以上居てはならない気がして、僕はその場を去った。
 それに僕も、これ以上居たらせっかくの決心が揺らいでしまうと思った。



534: 84 :2008/09/01(月) 16:35:13.79 ID:VKlXqp4FO

( ^ω^)「……」


 彼女は今、どうしてるんだろう。
 海沿いを走る車、そこから見える景色を目で追いながら僕は思う。
 しばらく走って行くと、砂浜の先に崖の様になった所を発見して、僕はカーチャンに声を掛けた。

( ^ω^)「あ、カーチャン! 一度、あそこで止めてほしいお!」

J( 'ー`)し「はいはい」



536: 84 :2008/09/01(月) 16:38:08.83 ID:VKlXqp4FO

 そこは僕にとって思い出の場所だった。
 ツンに別れを告げたのもそこ。
 そこから見える景色はとても綺麗なものだった。


( ^ω^)「……ッ」


 僕は走ってそこまで行くと、普段からの運動を怠っているせいか息切れを起こす。
 そして顔を上げると、人がいた。
 白い帽子にワンピースという格好、それにくるりとした金髪。



537: 84 :2008/09/01(月) 16:41:51.82 ID:VKlXqp4FO

「ブー……ン?」


 聞き慣れたその声は。
 見慣れていたその姿は。
 どれだけ年月が経とうと彼女で。


「ツン、久しぶりだお」


 僕の夏が今、始まる。


――( ^ω^)思い馳せるようです
 終わり



540: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/01(月) 17:00:15.00 ID:VKlXqp4FO
あとがき

あとがきでさるさん食らうのは予想外でした。

以上です。
昨日から急に書いたので宣言はしてません。
本当なら昨日投下出来たのですが、色々あって少し遅れた投下となりました。

では支援ありがとうございました。



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