(*゚ー゚) 箱入り娘の恋煩いなようです

306: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 20:55:23.17 ID:t1MuMy0I0
果報は寝て待てと言うけれど
果報からすれば「せっかく来てやったのに寝てんじゃねーよクソが」と
不愉快極まりない態度と取られてしまう事もあるので、
事前にパーティグッズ(クラッカーとか垂れ幕? とか)を準備して、
ピザーラにピザでも配達して貰って快く迎える必要があるんじゃなかろうか。
いや、ピザハットでも良いですよ別に。
果報にそんな意思は無い、と頭の固い大学準教授は黙っていてね。
ここで言う果報はあれだから、恋人の話だから。
運命の出会いを辛抱強く待っている日本全国の独り身諸君、ただ待つだけじゃ能が無いゾ☆
石の上にも三年? 三年あったら色々出来るでしょう?
待てば海路の日和あり? うるせぇ山賊にでもなってろ!
私は待つの。待ち続けるの。『あなた』のために待ってるの。
でもただじっとしている訳じゃないの。『あなた』好みに待ってるの。
だから早く気付いてね。

( ∵)「ねーお母さん、なんであのお姉ちゃんダンボール箱に入ってるのー?」

J( 'ー`)し「目を背けては駄目よ。屑が充満するこの国の現状、
      そして、それらに干渉しない無能な官僚達が私達の命を握っている事をね」

(*゚ー゚) 箱入り娘の恋煩いなようです



308: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 20:56:49.20 ID:t1MuMy0I0
(*゚ー゚)「今日は来ないかなぁ」

正しくは今日“も”なのだ。
彼は今日も来ない。私がこんなに待っているのに彼は来ない。

(=゚ω゚)ノ「にゃー」

彼はこないけど猫は来る。
街から離れた河原の土手だし、野良猫が居たっておかしくもないけど。

(*゚ー゚)「他に行く場所は無いわけ?」

(=゚ω゚)ノ「無いよぅ。街は人も多いし交通量も半端じゃない。コンクリばっかで天然の餌が無い。
     人間が捨てた残飯を巡ってカラスと争うのも馬鹿らしいし、結局はここが落ち着くんだよぅ」

(*゚ー゚)「ふーん……やっぱり、いよぅは普通の野良猫だね」

大体いつもと変わらない会話。
ミャウリンガルが無くても、私は猫の言葉が理解できる。
この『いよぅ』という猫に限らず、私は全ての猫と会話が出来る。……多分。
超能力でも何でもなく、ある人に猫語を教えてもらったから。

(=゚ω゚)ノ「猫王ショボンのようには生きられないよぅ」

(*゚ー゚)「いいよねぇ、ショボン……何であんなにカッコいいんだろう……」



309: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:00:00.05 ID:t1MuMy0I0
猫王。
それが彼。
私の待ち続けている、彼。名をショボンという。
猫界で最も栄誉ある賞、ベストオブ野良猫ボーイのグランプリに三年連続で輝いた野良猫のカリスマ。
道で傷付いた子猫や迷子になった子猫を世話している猫界のマザーテレサだ。

 ∧_∧
(´・ω・`) マタタビが俺にもっと輝けと囁いている

一年前、人間の私は猫に恋をした。

大企業の社長の弱みを握っている父と大企業の社長の弱みを握っている母を親に持つ私は、
幼い頃から煌びやかな大豪邸と緑溢れる広大な庭で育った。
なんて言ったって8000坪の敷地。私にとってはそこが一つの国で、外の世界が想像つかなかった。
幼稚園だって学校だって、執事が毎日リムジンで送り迎えしてくれるせいで、
一般人の歩く道、一般人が暮らす街、一般人が吸う空気とは極力接触しなかった。
流石に遠足で皆バスに乗る時、私だけヘリがチャーターしてあったのはどうかと思ったっけど、
父も母も私を大切に思っている事は嬉しかったし、『箱入り娘』という響きも別に嫌いじゃなかった。

( ´_ゝ`)「しぃさん、私をぎゅぎゅっとしてください!」 提供 ロッテ

(´<_` )「そのアイスはなんだ兄者」

今まで何人の男から愛の告白を受けただろうか。
体育館裏に呼び出されては、一方的に「好きです。付き合って下さい」
決まって私は丁寧に断る。野犬とは付き合うなと父から言いつけられているからだ。



311: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:01:48.44 ID:t1MuMy0I0
ミ,,゚Д゚彡「お前に相応しい男は私が見つける」

父は絶対だった。
名門の女子高に入れられ、恋愛とは益々疎遠になっていく。
リムジンから見る外の景色。自分と同じ、高校生の男女が手を繋いで歩いている。
羨ましくもなんともなかったが、楽しそうに笑う彼らを見て、多少不安になる私がいた。

あの二人はお互い好意を持っていたから今に至るのだろう。
父が決めると豪語している、『私の男』はどうだろうか。
その人を好きになれるか、その人は自分を好きになってくれるのか。

( ^ω^)「今、一目見て好きになりましたおwwwwwwwww
       是非健全なお付き合いさせて頂きたいですおwwwフヒヒwwwwwサーセンwwwwww」

ミ,,゚Д゚彡「大企業の社長の弱みを握ってめっちゃ金持ちになった成金大富豪の息子さんだ。
      お前の写真を見せたらえらく気に入っちゃったらしく、
      Tシャツにプリントして毎日着ているらしい。内藤君は良い青年(32)だよ。
      お付き合いして損は無いと父さんは思うぞ。なぁ、しぃ」

( ^ω^)「自力で彼女は作れなかった。乗るしかない、このビッグウェーブに」



312: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:05:02.03 ID:t1MuMy0I0
ぽっちゃり系の域を完全に逸脱している。
彼の風貌は醜悪そのものであった。
何故か茶髪、何故かロン毛。油ギッシュで身体中テカテカ。
右耳と下唇をチェーンで繋げており、左鼻と左耳をチェーンで繋げており
上唇と右まぶたをチェーンで繋げており、舌と左まぶたをチェーンで繋げている。
なにそれ、地下鉄の路線図? よく喋れるな、と逆に感心もしたが、
こんなギトギトの豚に抱かれるくらいならサラダ油の風呂に浸かるほうがマシだ。

その夜、初めて父に逆らった。

ミ,,゚Д゚彡「なんで分かってくれないんだ! 天下の内藤グループと繋がりを作っておけば
      我々は安泰なんだぞ! もう高校生なんだからそれくらい理解出来るだろう!」

(*゚ー゚)「嫌だ! 絶対に嫌だ!」

(*゚∀゚)「しぃ! 人は外見じゃないのよ!」

ミ,,゚Д゚彡「母さんの言う通りだ! 確かに彼の見てくれはちょっぴり個性的だが
      そんな事で愛は崩れたりしない!」

(*゚ー゚)「愛って何の愛よ! ふざけないで!」

こんなに大声で叫んだのは、恐らく産声を上げた時以来だろう。
腹部が凄く熱い代わりに、自分の大声に驚いた頭がさーっと冷えていく。



315: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:09:14.39 ID:t1MuMy0I0
冷静になった。
改めて理不尽だと思った。
家を飛び出した。
不運にも雷雨の夜だった。


見慣れた道なのに歩くのは初めて。
傘も差さずに、前も見ずに途方に暮れる迷子一人。
土砂降り、雷鳴、暗闇、三拍子揃って私は鬱。行く当ても無い。流石に家には戻れない。

自分以外、誰もいない。


(´・ω・`)「にゃあ」


自分以外、誰もいない。


(´・ω・`)「にゃあーん」

(*゚ー゚)「何よ……」

自分以外……猫がいた。

毛並は白、というより肌色に近い。
野良猫に違いは無いだろうが、私の前に堂々と立ち(座り?)塞がり、
じっと見つめているその顔は、妙な威圧感とオーラがあった。



316: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:10:29.65 ID:t1MuMy0I0
(´・ω・`)「にゃあ」

猫が歩き出す。
振り返って私を見る。
「ついてこい」という意味だろうか。
迷子の迷子の子猫さんだとばかり思っていたが、この猫にとっての迷子はどうやら私らしい。
ああ、同情されてるんだ。俯きながらも、他に目指すべき場所が無い。
ただただ私は猫の尻尾を追いかけた。

街からは完全に離れた藪の中。
辿り着いたのは、小さな小屋。
ぼろいのは見ての通りだったが、雨風だけはどうにか防げそうだった。
部屋の中は薄暗くて視界が利かなかったが、写真立てや額縁らしきものが見えた。
人の生活感が、ある。

(*゚ー゚)「ここがあなたの家?」

(´・ω・`)「にゃあ」

(*゚ー゚)「そうなんだ」

('A`)「ちげーってよ」

(*゚ー゚)「ぎゃあああああああ!」

物陰からちっさいオッサンが現れた。



317: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:12:04.38 ID:t1MuMy0I0
ちっさいオッサンは毒男と名乗った。
身長は125cm程度。なんと0.8hydeだ。
数年前リストラされ、家族には見放され、
素寒貧になった所でこの猫に此処を案内されたらしい。
詰まる所、私と一緒だ。

('A`)「だが珍しいな。人間を連れてくるとは、俺以来じゃないのか? ショボン」

(´・ω・`)「にゃあ」

('A`)「そうだよな、子猫は頻繁に連れてくるけど」

(*゚ー゚)「……話通じてるんですか?」

('A`)「んああ、猫って日本語分かるっぽいよ。
    それに俺は三年間ここでショボンが連れてくる猫の世話を
    している内に猫語を覚えてしまってね、通訳だったら任せな」

冗談にしか聞こえなかったが、顔がマジだった。

(´・ω・`)「にゃあ」

('A`)「あんな雨夜にレディー一人で危ないじゃないか。風邪でもこじらせたらどうすんだい。
    貴女の眼が余りにも寂しげだったので、案内させて貰った。迷惑だったら謝る」

(*゚ー゚)「そ、そんな長い文を喋ってたの?」



320: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:15:38.85 ID:t1MuMy0I0
(´・ω・`)「にゃあ」

ショボンが口に何かをくわえて私に差し出した。毛布だ。
毒男さんの話に従うならば、こうやって行く当ても無い子猫に温もりを与えているのだろう。
若干埃が被っていたが、気にならないほど胸が熱くなった。

('A`)「ヒョウ! 流石だぜショボン、この男爵! やっぱり俺が認めた猫だ!」

うぜ。

(*゚ー゚)「ありがとう。ショボン……」

そのまま瞼が重くなって、雨粒が地を打つ音が消えて、やがて視界が黒に溶けていった。



それから私は彼を見ていない。



(*゚ー゚)「逢いたいな」

('A`)「それは恋だよ」

(*゚ー゚)「毒男が言うと気持ち悪いね」

('A`)「なぁにかえって免疫がつく」



321: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:17:20.81 ID:t1MuMy0I0
一週間待った。
あの優しい小屋で待った。
毒男さん曰く迷子の子猫を連れてくるのは決まってこの場所なのだ。
待ってれば逢える。来ない。待っていれば来てくれる筈なのだ。来ない。

逢えない時間が二人の愛をなんちゃるか、といった具合にショボンに逢えない間、
私は色々妄想するようになった。所謂ショボンの擬人化だ。

(´・ω・`)「わりぃ……汗拭いてくれないか」

(*゚ー゚)「あぁん、喜んで」

ヘブン状態!



322: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:19:30.89 ID:t1MuMy0I0
私は待っている。
彼を待っている。

(*゚ー゚)「行動を起こさなきゃ駄目だ」

('A`)「その結果が猫コスプレか」

完璧な猫耳。ヘアバンド? なにそれ。
完璧な尻尾。ゴムホース? 違います。何を言っているんですか。
これでダンボールに入れば完全に迷える子猫ね。
野良猫がちょくちょくやって来る河原の土手にポジションをセッティングして、はいおk。
必ず彼は現れる。

('A`)「ああ……色んな意味で迷走してやがる」

(*゚ー゚)「こんな事初めてだわ。ショボンの事を考えるだけで性的に興奮するの」

だってショボンは私の目の前に現れた王子様ですもの。

(*゚ー゚)「猫語をkwsk教えてくれると助かるなぁ」

('A`)「レッスン料二万」

あーよかった。カードと通帳持ってきて。



323: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:21:33.53 ID:t1MuMy0I0



一年が経つ。



(*゚ー゚)「ショボンが迷子の子猫の世話をしていたのは猫界でも有名よね」

(=゚ω゚)ノ「でもここら一年、その話は聞いてないよぅ」

(*゚ー゚)「なんでだろう」

(=゚ω゚)ノ「疲れたんじゃないかよぅ?」

そこじゃない。
私が気掛かりになったのは行動の起源。

(*゚ー゚)「なんでショボンは迷子を救うような行動を起こしたのかな」



324: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:23:20.55 ID:t1MuMy0I0
('A`)「知りたい?」

ハロワ帰りの毒男が会話に混ざってきた。
どうせ今日もハロワのお姉ちゃんの話を聞きながら、ハロワで働くにはどうすればいいか
考えていたんだろう。
てかいつ再就職するんだろう。
なんて心配をカトリーヌに乗せて吹き飛ばす言葉が飛び出す。

('A`)「あの小屋さ、売れない画家が住んでたんだ」


('A`)「ある捨て猫と一緒に」


毒男はぽつりぽつりと語り始めた。



325: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:32:18.94 ID:3CsyzPloO
今投下してる者の携帯たが
これでおわりだ
さるくらったとか関係なくおわりです
粗末な出来ですまん絵師
つーのも元々書いてる途中短編てより5話くらいの中編にしようかとおもったんだが時間ねーよチクショーで急遽まとめたんだが半端になってしもうた
いつか完璧にまとめるんで石だけは投げないで



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