超光戦姫ツンデレイナーのようです

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 22:37:47.75 ID:/0GUokfdO
天は揺れ、
地は裂け、
海は荒れ狂っていた。

草木は枯れ果て、
砂塵が舞い、
呪詛のような地響きが、
終わりの時を刻む様に、
うねりを上げて大地を覆い尽くしていた。


その星は確実に、死につつあった。



( ゚д゚ )「で……出来たぞ!」

川 ゚ -゚)「博士、これが……!?」
( ゚д゚ )「ああ。これが、対DATウイルス用戦闘ユニットだ。ようやく完成した」
( ゚д゚ )「……この星を救うには、あまりに遅すぎたが……」
川 ゚ -゚)「……。ですが、新たな悲劇を防ぐ事は出来ます」
( ゚д゚ )「──その通りだな、急ごう」
川 ゚ -゚)「脱出ポッドの調整は済んでます、後は乗り込むだけです」
( ゚д゚ )「準備が良いな。よし、行くぞ!」



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 22:41:16.91 ID:/0GUokfdO
( ゚д゚ )「ユニットの格納は完了した、そっちはどうだ?」
川 ゚ -゚)「システムオールグリーン。いつでも発進出来ます」

女の声を聞き、男はふとモニターへと目を向けた。
そこには荒れ果てた地上の風景が映し出されている。

( ゚д゚ )「この星とも、さよならなんだな」
川 ゚ -゚)「……そうですね」

男は誰かの死を悼むかのように目を伏せ、そして口を開いていた。

「行ってくれ」
「了解」

女が操作レバーのスイッチを深く押し込むと同時、ポッドが低い駆動音と共に上昇──

『重量オーバーです。発進出来ません』

しなかった。

「……」
「…………」

カチッカチッ

『過積載だっつってんだろ宇宙法引っかかってんだよ何か降ろせや』

「……」
「…………」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 22:44:31.75 ID:/0GUokfdO
鏡を眺め、ため息を一つ。

窓を見れば、やたらめったら青い空には何かこうもこもこした積乱雲。
青雲のCMに出そうな感じの。

ξ゚听)ξ「むう」

蝉の鳴き声と微かなクーラーの音をBGMに、私はひたすら呻き声を上げていた。

別に何か問題がある訳じゃない。
既に八月も末、宿題は何とかかんとか終わらせた。
夏バテだってしていないし、夏休みが終わることにだって──
まあ、多少は憂鬱ではあるけども。いつまでもダラけている訳にも行かない。

そう、特に問題は無いはずなのだ。


ξ゚听)ξ「うーん……」
ξ゚听)ξ「変えてみるべきかなあ……髪型」

頭の両端、弧を描いているツインテールを指先に絡めながら、
机に肘を着いてみる。

自慢とまではいかないが、手入れされ整っているという自負はある。
自分にとっては随分と馴染んだ髪型だ。恐らくは、他人にも。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 22:46:04.72 ID:/0GUokfdO
それを何故変えようかと思ったかと言うと──


事の発端は、夏休み前。
体育の後の休憩時間の話。

(;^ω^)「あーあっついおーやってられんおー」
ξ゚听)ξ「汗ダッラダラね。まあ、ピザには辛い時期だものね」
( ^ω^)「失敬な、僕は雰囲気ピザなだけだお。巷で流行りの動ける雰囲気ピザだお」
ξ゚听)ξ「んなモン流行るのはどの巷だ」
( ^ω^)「そんな事よりアレだお、何かツンの髪は見てると暑そうだおね」
ξ゚听)ξ「そう?私は平気だけど。後おねは止めろ」
( ^ω^)「いや、見てる側が何だか暑そうに見えるんだおね。
       何かこう……超電磁的な」
ξ゚听)ξ「どんな例えだ。あとお前今わざとおねっつったろオイ」


──。
何て事はない。ただ、これだけの話だ。

ξ゚听)ξ(単なる軽口だってのは分かってるんだけどね……)



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 22:48:17.07 ID:/0GUokfdO
別にブーンが今の髪型を嫌っている訳ではない。
むしろ好んでいる(らしい)。
そう、変える必要は無い。分かってはいるのだ。

だが。

ξ゚听)ξ(夏休みは全然会えなかったのよねー……)

両親が親戚の集まりで一緒に田舎に帰らされたりなんだりで、
夏休み中、結局奴とは一度も会っていない。

いや、会ってないからと言って何がどうなる訳でもないけど。

要するに、イメージチェンジというか。
夏休み明けはそういうのには良い機会だし。

そういうアレだ。
例えば誰でも幾ら今の髪型が好きだっていっても、年がら年中ずっと同じでは飽きるだろう。
卵ご飯大好きな人だって三食ずっと卵ご飯では厳しいだろう。ソースは画面の前の君達でいい。

ちょっと冒険してみても良いんじゃないか?
そういうアピールがやっぱり必──


ξ゚听)ξ「いやいやいやいやいやいやいや。何考えてんの私」
ξ゚听)ξ「というか長いから。冒頭からこれはキツいから」
ξ゚听)ξ「あーもう腹立つわーアイツ学校で会ったら絶対脇腹に膝入れてやる」

ξ゚听)ξ「……。出かけよ」



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 22:51:50.92 ID:/0GUokfdO
所変わって、街の中心部。

相も変わらず、暑かろうが何だろうがお構いなしに人でごった返している。
行き交う車と、アスファルトからの照り返しが肌をじりじり焦がす。
がっつりクリームは塗ってはいるがぞっとしない感覚だ。

道路の向こうは蜃気楼で揺らめいている。
今にも渡哲也が仲間と共に現れそうだ。

ξ;゚听)ξ(あっつう……人酔いしそ)

この間までひなびた片田舎で過ごしていたこともあって大分しんどい。

ξ゚听)ξ(行きたい店が無きゃ、こんなとこ来ないんだけどー)

衣替えに備えて、秋物の服を補充しておきたかった。
ついでに月刊AAテンプレランキングも買いたいし。

言っておくが別に髪を切りに出掛けた訳ではない。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 22:55:04.49 ID:/0GUokfdO
( ФωФ)「アンケートにご協力下さーい」
ξ゚听)ξ「……」

( ФωФ)「都市部におけるストレスケアに関するアンケートを取っていまーす。ご協力下さーい」

いつもの店へと向かう路地の途中、普段は見かけない妙なモノが道を塞いでいた。

この暑さの中で、テレビで人気の宇宙人の着ぐるみが、
アンケート用紙と子供用の飴らしいカゴを持って行き交う人に声を掛けまくっている。
胡散臭いことこの上ない。
というか着ぐるみでアンケート取るな。

( ФωФ)「あ」
ξ゚听)ξ(げ、目が合った)

即座に視線を明後日の方向に逸らし、足早にその場を立ち去ろうとする。
が、時既にお寿司。わさび醤油。

( ФωФ)「アンケートにご協力下s」
ξ゚听)ξ「ごめんなさい」
( ФωФ)「お時間取りませんから、若い方の統計もひt」
ξ゚听)ξ「やりませんごめんなさ──」

『ピーピーピーピーピー』

( ФωФ)「!!」
ξ゚听)ξ「?」



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 22:58:26.59 ID:/0GUokfdO
アンケート用紙を執拗に差し出してくる着ぐるみの奥から、妙な電子音が聞こえてくる。
同時に、着ぐるみに腕をがっちり掴まれた。

ξ゚听)ξ「え? え?」
( ФωФ)「……見つけた」

何を。

( ФωФ)「すいません、ちょっとこっちに……」

着ぐるみはぼそぼそと呟きながら、ぐいぐい強引に私の袖を引っ張ってくる。
やばいこれは普通に怖い。

ξ;゚听)ξ「っい──」
ξ;゚听)ξ「イヤァアアアアアアアアア!!!!」
( ФωФ)「オゥフッ!?」

私は悲鳴と共に思いっきり着ぐるみの脇腹に膝を入れ、
手が離れた隙に一目散に逃げ出す。
辺りの視線を感じるが、知ったことじゃない。

ξ;゚听)ξ(何アレ? アレが変質者ってヤツ?!)
ξ;゚听)ξ(まさかこんな真っ昼間から──)
( ФωФ)「おい! 話を聞いてくれ!!」
ξ;゚听)ξ「ぎゃあああああああああ!!」

いつの間にか併走するように着ぐるみが真横にいた。
顔こっちに向けたまま全力疾走する姿は不気味この上ない。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 23:01:15.29 ID:/0GUokfdO
ξ;゚听)ξ「変態! 鬼畜! 変質者! こっちみんな!!」

( ФωФ)「あいた! いてっ!! だから少しは私の話を──」
川 ゚ -゚)「とーぅ」
(#)゚д゚)三( ФωФ)「あべし!?」

いきなり現れた謎の女性のラリアットを受け、
着ぐるみの頭をふっ飛ばしながら路上に転がる男。中身は思ったより老けていた。

川 ゚ -゚)「駄目ですよ博士。それではまんまイカレポンチです」
(#)゚д゚ )「それはいいけど何で殴ったの」
ξ゚听)ξ「……あのー……」

川 ゚ -゚)「脅かしてすまない、私の名前は素直クール。クーとでも呼んでくれ。
     こっちのおっさんがミルナ。まぁ博士とでも呼んでやってくれ」
(#)゚д゚ )「え、何そのぞんざいな扱い」

ξ゚听)ξ「あー……えーと」
川 ゚ -゚)b「お詫びに何か奢ろう。何か飲みたい物はあるか?」
(#)゚д゚ )「あの、私の話聞いてる?」
ξ゚听)ξ「…………」

結論から言えば、ここで私の運命は大きく狂わされてしまうのだが──

そうとは知らず、この時の私はホイホイついて行ってしまった。
皆は真似したら駄目、お姉さんとの約束だ。マジで。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 23:02:57.09 ID:/0GUokfdO
( ゚д゚ )「──……という訳だ」

喫茶店の一角に陣取り、私が無難極まりないチョイスの烏龍茶をストローで啜っている最中、
おっさんもといミルナ博士とやらがいきなり口を開いた。

ξ゚听)ξ「何が」
( ゚д゚ )「……あれ、場面展開の間に説明した体じゃないのか」
川 ゚ -゚)「博士上読め、されてない空気です」
( ゚д゚ )「ああ、そうか……すまない」

依然として着ぐるみのまま頭だけ小脇に抱えた状態の博士が、
手元の珈琲に凄い勢いで砂糖をぶち込みながら咳払いする。

( ゚д゚ )「結論から言おう」
ξ゚听)ξ「有り難いわね」
( ゚д゚ )「この星が危い。危ないんだ」
ξ゚听)ξ「…………」

( ゚д゚ )「我々の星で生み出されてしまった忌むべき細菌兵器……DATウイルスが、この星を蝕みつつある。
     ウイルスのせいで地球がヤバい」
川 ゚ -゚)「流石博士、全く無駄の無い説明です」
ξ゚听)ξ「…………」

カラン、と音をたてて烏龍茶の中の氷が転がった。
外の暑さのせいか、空調の割と効いた店内でも水滴がつく程に冷えている。
違いの分かるような舌ではないけど、結構美味しい。気がする。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 23:05:41.62 ID:/0GUokfdO
ξ゚听)ξ「で?」

( ゚д゚ )「うむ。我々の住まう星はウイルスにやられ、為す術無く滅びた。
     だが、私はウイルスを駆逐する兵器の開発に成功したんだ」
ξ゚听)ξ「はあ」
( ゚д゚ )「この兵器は精神の力で動く。しかし、
     不測の事態によって一番肝心な精神制御システムをオミットするしかなかった」
ξ゚听)ξ「ふぅん」
( ゚д゚ )「この兵器を駆使するには、純粋な少女の精神エネルギーが……
     つまり君の力が必要不可欠なんだ」
ξ゚听)ξ「へぇ」

( ゚д゚ )「この星を……我々の故郷の二の舞にはさせたくない。協力してくれないだろうか」
川 ゚ -゚)「これ以上無いほど簡潔かつ的確な説明です、博士」

ξ゚听)ξ「……」

窓の外から、ビルの合間の空を眺める。

ξ゚听)ξ「……分かったわ」
( ゚д゚ )「おお、手を貸してくれるか!」
川 ゚ -゚)「やりましたね博士」
ξ゚听)ξ「その前に、ちょっとトイレに……」
( ゚д゚ )「ん、分かった」

私はゆっくりと席を立ち、
トイレに行くふりをして、
全速力で店を出た。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 23:07:35.86 ID:/0GUokfdO
ξ;゚听)ξ「ッッぜええ、はぁ、っ、っおえ……」

やたら上下する肩をなだめるように深呼吸しながら、公園のジャングルジムに背を預ける。
額の汗を拭いつつ、辺りを見回して安全確認。
大丈夫、何か人生オワタって顔したサラリーマンがブランコに座ってる以外は人の気配は無い。

ξ;゚听)ξ「本当に世の中、色んな基地外がいるのねー……」
\(^o^)/「仕事クビ」

ちょっと面白そうだと思ってついて行ったのがそもそも間違いだった。
きっとあんな感じで馬鹿高いモノを売りつけられたり、どこぞの層化に入信させられたりするのだろう。
いやはや勉強になった。

ξ;゚听)ξ「あーもう、汗だく。時間も無駄にしたし……最悪だ」
\(^o^)/「人生オワタ」

襟元を摘んでパタパタさせながら、何気なく滑り台に目をやる。

川 ゚ -゚)「わーい」

ぞうさん型滑り台のてっぺんから、クーとかいう女が前転で転がり落ちていた。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 23:10:22.78 ID:/0GUokfdO
川 ゚ -゚)「残念ながら、博士の言っていたことは本当だ」

砂場で妙に精巧なビル群を作りながら、クーは淡々と口を開いた。
私はと言えば、ベンチに力無く腰を下ろした状態でうなだれている。
どうやら逃げるのは無理らしいと悟った訳で。

ξ゚听)ξ「あれが事実なら本当残念ね、色んな意味で」
川 ゚ -゚)「ああ、そうだな」

顔を上げ、クーの姿を眺める。
よくよく見れば、綺麗なストレートの黒髪に汗一つかいていない血色の良い肌、
シャツにジーンズなんてラフな格好が似合う整ったスタイルと、何だか腹の立つ容姿をしている。
ストレートは昔一度やってみようとしたけど、生来どうにも癖っ毛が直らず──

川 ゚ -゚)「最近、君は妙な事件ばかり起きていると思わないか」
ξ゚听)ξ「ふぇ?」
川 ゚ -゚)「テレビで見るだろう、何か意味分からん事件とか」
ξ゚听)ξ「えーと……例えば?」
川 ゚ -゚)「2ちゃんねるでググれ」
ξ゚听)ξ「ああ……」



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 23:12:12.18 ID:/0GUokfdO
川 ゚ -゚)「あれらは割とほぼ全て、DATウイルスに因るものだ。
     DATウイルスはじわじわと人心を狂わし、凶行に走らせる。まさに悪魔の兵器だよ」

クーはそう呟きながらビルの一つを蹴飛ばし、砂屑へと回帰させる。

ξ゚听)ξ「じゃあ、今この場所にも?」
川 ゚ -゚)「もちろんだ、まだ危険値よりずっと低いが、日本はほぼ全地域汚染されている。
     現時点でも精神の脆い者には、十分な脅威だ」

クーはポケットから、こちらに何か紙を放ってきた。
先ほどのアンケート用紙だった。
中身はまあ、推して知るべし。

ξ゚听)ξ「……危険値を超えたら?」

もう一つ、砂のビルを蹴り飛ばす。

川 ゚ -゚)「終わりだ。精神を完全に支配され、
     ウイルスの破壊衝動と知性を備えた最悪の生物になる。28日後ってレベルじゃねーぞ!」

ξ゚听)ξ「そんなの……どうすれば良いのよ」

川 ゚ -゚)「弱点はある。元々兵器として作られた特殊なウイルスだからな」



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 23:14:32.87 ID:/0GUokfdO
更に砂ビルを蹴り飛ばす。砂が靴に入ったらしく、足を左右に振っている。


川 ゚ -゚)「各一定エリアごとにリーダーが……便宜的に女王ウイルスとでも言おうか。
     それが通常のウイルスをコントロールしているんだ」
ξ゚听)ξ「あー、それを叩けば働きウイルスは死ぬってやつ?」
川 ゚ -゚)「その通り。何かあれば即尻尾を切れる、都合の良いウイルスだろう?」
ξ゚听)ξ「都合の良いというか何というか……」

最後のビルを踏み潰して、クーは天を見上げた。

川 ゚ -゚)「だが、その女王が問題でな」
川 ゚ -゚)「実体を成し、地上の生物に擬態する。
     見た目はおろか機械系統も誤魔化し、おまけに戦闘能力はまさしく兵器なバケモノなんだ」

ξ゚听)ξ「まるでTやらΣウイルスね」

川 ゚ -゚)「インスパイア(笑)だ。博士の造ったセンサーですら、近くに寄らなければ反応しない。
     女王を全て潰せなければ……」

ξ゚听)ξ「……その砂場みたいになる訳?」
川 ゚ -゚)「いや、これは単にブラストドーザーごっこしてただけだ」
ξ゚听)ξ「分かりにくいネタを……」



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 23:16:33.47 ID:/0GUokfdO
私は深々と息を吐き、頬をかく。

ξ゚听)ξ「ここまで聞いといて何だけどさ」
ξ゚听)ξ「貴女の話、全然信じられないよ。当たり前だけど」
川 ゚ -゚)「……そうか」
ξ゚听)ξ「それに万一本当だったとしても、そんなバケモノ相手に戦える訳無いし」

クーはただ黙って立ち尽くしたまま、私を見据えている。
私は時計塔に目を向けて─もうすぐ電車の時間だった─、ゆっくり腰を上げる。

ξ゚听)ξ「奢ってくれて有難う。ごめんね」

スカートの裾を叩き、公園を後にしようと足を向けたところで──

川 ゚ -゚)σ「ツン、君は好きな人がいるだろう」

体が固まった。

川 ゚ -゚)σ「今日は髪型についてあれこれ悩んでしまい気分転換しに買い物に来た。違うかい」

ξ; )ξ「……何言ってんの?」

川 ゚ -゚)σ「時間を無駄にさせてしまった詫びだ。君の悩み、解決させて欲しい」

ξ; )ξ「……」

いやいや、これは流石に無い。
いくら何でもこれに乗せられたら私終わったなである。



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 23:19:14.08 ID:/0GUokfdO
数分後。

ξ゚听)ξ「……それが噂の?」
川 ゚ -゚)「ああ。対DATウイルス用兵器……レイナーユニット、とでも言っておくか」

ああ、私\(^o^)/オワタ。
──しかし実際にクーが持っていた鞄から取り出してきた物体は、
胡散臭くはあるがちょっと凄そうな代物だった。
丸い液晶の下にエンブレムみたいな青い羽状の装飾が付いていて、一見盾に見える。

川 ゚ -゚)「これには意識を読み取ったり、思考をクリアにしたりする機能もあるんだ。
     ひょっとしたら君も結論が出せるかもしれんぞ」
ξ゚听)ξ「ふぅん……?まぁ、そう言うなら……」

本日二度目のふぅん。
一回目と何ら変わりは無い。
無いって。

川 ゚ -゚)「待っててくれ、今シンクタンクモードにさせるから。えーと……あれ、これだったっけ」

リモコンみたいな装置をあれこれと弄るクー。
おいおい大丈夫なのか。

川 ゚ -゚)「あ、いけねセンサーモードにしちゃった」
ξ;゚听)ξ「のわ!?」

盾っぽいのがいきなり浮かび上がり、ぐるぐる回転し始めた。
これは……何か……
超電磁っぽい。



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 23:21:24.81 ID:/0GUokfdO
盾『テーレッテーテレレレーレレーテレレテーレープァーラーン』

ξ;゚听)ξ「ええ!?」
川 ゚ -゚)「!!」

いきなり盾から北斗の拳の次回予告とかで流れてるやつが鳴り響き始めた。
誰の趣味だ。

ξ゚听)ξ「あの、これ止められなi」

川 ゚ -゚)「この近くにいるぞ! 女王ウイルスが!!」

ξ;゚听)ξ「ええええええええ!? マジでええええ!? どこ!?」

川 ゚ -゚)「半径十五メートル!!」

ξ;゚听)ξ「近ッ!? そんな近くにいんのって──」




/(^o^)\「バレタ」



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 23:23:33.81 ID:/0GUokfdO
\(^o^)/「オ……」

\\(^^o^^)//「オワ…………」

\\(((^^oo^^)))//「オワワオワオワオワタタタタ」


ξ゚听)ξ「ちょwwwwねーよwwwwwwww」

さっきまで悲壮感漂いまくってたサラリーマンから、何か凄まじい威圧感的な何かが放たれている。
正に何てこったい、彼が女王ウイルスだったとは。
というか何で最初からいたんだ。

川;゚ -゚)「このパワプロでデブを彼女にしなければ手に出来ないようなプレッシャー……! 間違いないこいつだ!!」
ξ゚听)ξ「もういちいち突っ込んでらんないんだけど──」

\(^o^)/「オワタァアアアアアアアアバスタァアアアアアアアアアアア!!!!」


川 ゚ -゚)「危い!!」
ξ )ξ゚ ゚「ええええええええええええええええ!?」

サラリーマンの手が真っ白に光り輝いたかと思った次の瞬間、
私達の居た公園が粉々に吹き飛んだ。



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 23:27:42.66 ID:/0GUokfdO
ξー匆)ξ「ん──」
ξ゚听)ξ「…………」

目を開けたそこには、真っ青な空が広がっていた。
近場の空港から飛び立ったであろう飛行機が、
チョークで線を引いたかのように綺麗に白を残していく。

私、飛んでるのだろうか。
口笛は何故遠くまで聞こえるのだろうか。
アルムの森の木は作中のどこに登場するのだろうか。教えてお爺さん。

ξ゚听)ξ「──」

体を反転させれば、眼下には私がさっきまでいた公園(だった場所)が広がっていた。
耳元ではごうごうとやたらに風の音。
まあ、結論から言えば、

ぶっちゃけ落ちてた。

ξ )ξ ゚ ゚「ぎゃああああああああああああ死ぬうううううううううううう!!!!」
川 ゚ -゚)「ツン!! ユニットを装着して変身するんだ!!」
ξ;゚听)ξ「え、何!? 変身!?」
川 ゚ -゚)「良いから早く!! マジヤバいって奴がこっち飛んでくるってキタァアアアアアアア!!!!」

\(^o^)/「オワタオワタオワタオワタオワタオワタオワタオワタ
///   オワタオタクオワタオワタオワタオワタオワタ」

ξ;゚听)ξ「いやあああああああああああ!! へ──」

 『変  身!!』



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 23:30:14.81 ID:/0GUokfdO
〜変身バンク開始〜
ピカーン(全身フラッシュ+服吹き飛ぶ)


キュピーン(腕)


キュピピーン(脚)


キュピピピーン(胴体とか+マフラー広がる)


ピョワーーン(頭+金髪化)


ヴォン(エンブレムに( ^ω^)マーク)


シャキーン(ポーズ)


\ξ゚听)ξゝ「乙女のツンデレ力に変えて!」
\ξ゚听)ξゝ「悪しきウイルス根こそぎ浄化!!」
\ξ////)ξゝ「い……言っとくけど、地球の平和の為なんだからね!」
\ξ゚听)ξゝ「超光戦姫!! ツンデレイナー!!! VIPに代わって、凸撃開始!!!!」

デケデン!

〜変身バンク終了〜         ※DVD版は無修正です



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 23:32:45.66 ID:/0GUokfdO
\ξ゚听)ξゝ「…………」

川 ゚ -゚)「…………」

/(^o^)\「…………」


ξ////)ξ「えええええええ何今の!? どゆ事!? しかも何この服!? あとAAくらい変えろ!!」
川 ゚ -゚)「気にするなロスじゃ日常茶飯事だぜ! とりあえずしがみついてんのマジしんどいから下ろしてくれ!」
ξ////)ξ「あうう……」

\(^o^)/「オワタオワター!!」

ξ////)ξ「るっさいダボ!!」
\(^o^(#)\「アブドゥルッ!?」


蠅を追い払うように振った手のひらが偶然当たったかと思った瞬間、
物凄い勢いでオワタ(仮名)が吹っ飛んでいく。

ξ゚听)ξ「わ、何これ」
川 ゚ -゚)「これが噂のツンデレパワー……いやあ凄い」

クレーターと化した公園に軟着陸しつつ、クーを地面に降ろしてやる。

ξ゚听)ξ「ツンデレパワーて……何じゃそら」
川 ゚ -゚)「話は後だ、あの程度ではまだウイルスは死なん。
     私は遠距離から通信で支援するから頼んだぞ!」
ξ゚听)ξ「え、ちょっ」



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 23:36:12.24 ID:/0GUokfdO
言うが早いか、あっという間に遠くへ逃げてしまった。
何か体よく逃げられた気がする。

壁|o^)/「オ…」
壁|三\(^o^)/「オワテナイ!」
\(^o^)三\(^o^)/三(^o^)/「フォオオオオオオオオオオオオ!」

ビルの壁にめり込んでたオワタ(仮)が、何やら気合いを高めつつ此方を凝視してくる。
何てこった、本当に戦う羽目になるとは。
しかもこんなカッコで。

〔(^ω^)〕『こちらクー。ツン、良く聞くんだ』

ξ;゚听)ξ「のわ!?」

いきなり額のエンブレムから声が流れてくる。
しかも、この声は……

〔(^ω^)〕『安心しろ、敵には聞こえない。良いか、ユニットにはアシストオペレーションプログラムがある。
        技術の無い君でも何か凄い格闘術とかが使えるはずだ』

ξ; )ξ「いやつーか何でブーンの声なのよ! やりづらっ! 凄いやり辛い!!」

〔(^ω^)〕『何だって?
        ……あ、ツンデレ出力向上の為に想い人がシステムボイスになると博士が言っていたな』

ξ////)ξ「はぁ!? 何よそれ!?」



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 23:40:46.27 ID:/0GUokfdO
\(^o^)/「オワタァアアアアアアアアアアアアアアアア」

〔(^ω^)〕『来るぞ!! 武器で防御するんだ!!』
ξ;゚听)ξ「武器!? どこに!?」
〔(^ω^)〕『テンション上げて念じれば勝手に出るから!』
ξ;゚听)ξ「だから何でそんないいかg」

\(^o^)/「ブラスタァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

ξ; )ξ「あああああもー、なる様になれぇええええ!!」

オワタ(仮)が高く掲げた両手から眩く輝く黄金の光線が射出され、私目掛けて収束する。
当の私は、そのテンションとやらを上げつつ手を振り払った訳だが──

どうやら上手くいったらしい。

手のひら辺りの空間がぐんにゃり曲がったかと思えば突如角張った剣が現れ、
甲高い反射音と共にオワタブラスターを天高く打ち上げた。

\(^o^)/「オワ!?」
〔(^ω^)〕『良いぞ! この上ない威力だ!!』
ξ゚听)ξ「何か上手く行ってんのね……実感無いけど」



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 23:45:21.77 ID:/0GUokfdO
〔(^ω^)〕『自信を持て。
        君は基準値を遥かに超えた純情なツンデレ乙女心エネルギーを持っているんだからな』

ξ゚听)ξ「だから何なのそれ……」

\(^o^)/「オ、オ」
\(#^o^)/「オワタァアアアアアアアア!! オワタスラッッッシュ!!」

飛び道具は効かないと踏んだのか、万歳体勢のまま此方に走り寄ってくるオワタ(仮)。
今更だけどまともな言葉はしゃべれないのだろうか。

ξ゚听)ξ「や……やったるわよ!!」

ツンブレード(何か刃にそう書いてあるからそう命名)を構え、オワタ(仮)の手刀(?)を受け止める。
何故か激しい金属音が鳴り、ドラゴンボールみたいな効果音を響かせながら足元を中心に地面が大きくひび割れる。
おいおいマジか。

\三\(^o^)/三/「オワタオワタオワタオワタオワタオワタァアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
ξ゚听)ξ「ほ、うわ、った、って、うわうわうわうわ!?」
〔(^ω^)〕『聞け! ツン!! DATウイルスは負の感情をエネルギーに活動している──
        分かり易く言えば朝から晩まで掲示板に張り付いて煽る事だけが生き甲斐のような奴の精神が糧なんだ!!』



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 23:48:01.11 ID:/0GUokfdO
こんな時に何を言ってるんだこいつは。
そう口にする余裕すらなく、オワタ(仮)から繰り出される手刀をひたすら受け止め続ける。
金属音に隠れて分かりにくいが、
心なしかブレードやスーツのあちこちから軋むような音が聞こえてきている気がした。

〔(^ω^)〕『それに対抗するには逆のエネルギー……甘酸っぱい青春のリア充エネルギーが必要なんだ!
        ブーンとやらにキュンキュンしろ! 悶え狂え!!』

ξ# )ξ「む、無茶言うなァアアア!! あとブーンの声で言うなァアアア!!」
\(^o^)/「オワタッッ!!」

ξ;゚听)ξ「ッ──きゃあ!?」

オワタ(仮)が振り上げた腕に打ち上げられ、ツンブレードが宙を舞う。

しまった、防御が間に合わな──


\(#^o^)/「アタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ」
\(#^o^)/「タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタオワッタァアアアア!!!!」

ξ )ξ「きゃあああああああああああ!!?」

\(^o^)/「オワタ…ヒャクレツケン!!」

ξ )ξ「ばべるぶぁ!!?」



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 23:52:19.31 ID:/0GUokfdO
またしても豪快に吹き飛ぶ私の体。
しかも今度はF1も真っ青なビューティフルマックスピードでビルに──

ξ )ξ「ッッ!!!!」

雷でも食らったような衝撃と轟音を受けながら、
鉄筋コンクリートの壁を突き破り、デパートの中に雪崩れ込む。

ツルツルに磨かれた床の上を滑りに滑り、誰かが座っているらしい休憩所の椅子を跳ね飛ばして、ようやく動きを止めた。

ξ )ξ「ん……っぐ……」
〔(^ω^)〕『ブッ……ッヅヅ…ツン、……ヅ……大丈夫か!?』
ξ 听)ξ「なんとか、ね……」

あちこち震える体を叱りつけながら、
テーブルに手を付いてゆっくり体を起こす。
起こした先で、不意に目が合った。
ちょうどこの場所で休憩していたのだろう。
カップのコーラをストローで飲んでいたようだ。もっとも今は派手にぶちまけられているが。
その間抜け顔は、割とよく見る顔だった。
馴染みの顔だった。


( ゚ω゚)


ξ )ξ゚ ゚



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 23:55:17.35 ID:/0GUokfdO
ξ# )ξ(だあああああ今一番会いたくない人暫定ナンバーワンに会っちまったよオオイなんだよこのお約束はァアアア!!)

〔(^ω^)〕『落ち着けツン! お約束ならこんなとこでいきなり正体はバレないはず──』

(;^ω^)「つ、ツン……何かのバイトかお? というか大丈夫かお!?」

ξ# )ξ「ウォオオイ早速バレちまったじゃねーかコラァアアアア!!」
〔(^ω^)〕『お前の彼氏空気読めねーな! てか短編だから最終回的展開もおkなの忘れてたぜ!!』
ξ# )ξ「ミもフタもねー事言うな!! あと彼氏じゃねーよ!!」

(;^ω^)「あの、ツンさん?」

ξ;゚听)ξ「え、あ、うん! あのねブーン、これにはマリアナ海溝より深い理由があって──」

\(^o^)/「オワタゴクトケンー!!!!」

ξ# )ξ「ぅおあぶねぇええええええええ!!!!」
( ゚ω゚)「のわひょーっ!?」



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/30(土) 23:57:59.31 ID:/0GUokfdO
目の前のブーンと床に転がってたドクオ(多分一緒に来てたのだろう。跳ね飛ばした椅子に座ってたらしい)を抱え、真横に飛ぶ。
コンクリートを突き破り、まるで槍が突き刺さるかのようにオワタ(仮)が床に脚を突き立てていた。
ぼごん、と鈍い音を立てて床が陥没する。

(;゚ω゚)「ちょ、ちょちょちょ何これ何これ何これ」

脇で慌てふためくブーンを後目に、脳内で呟く。

ξ゚听)ξ(ねえ、クー)
〔(^ω^)〕『何だ』
ξ゚听)ξ(何か目の前にウィンドウが出て
      『AOシステムにエラーが発生しています。システムの維持ができません。再起動して下さい』って出るんだけど)
〔(^ω^)〕『……。それはよく出るPOP広告だ、気にするな! 気合いで何とかするんだ!!』
ξ# )ξ(嘘つけええええ! 何だ最初の間は!! もう突っ込みきれんぞ色々!!)

\(^o^)/「オワタクラッシュ!!」

(;゚ω゚)「ひぃい!?」
ξ゚听)ξ「ちぃっ──」



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 00:03:47.89 ID:Y8lRj41+O
オワタ(仮)から放たれた衝撃波をバリアっぽい何かで防ぎ、
フロアの片隅に抱えた二人を解放しつつも、私は焦っていた。
明らかに体が重い。

スーツの各所から火花が散り、
何か視界の端のヘルプモニタっぽいところでは延々とエラーが吐き出され続けている。赤文字で。

デパートは既に逃げ惑う人々で阿鼻叫喚の地獄絵図だ。
こんな場所で戦うべきじゃないのだろうが、奴を上手く外へ誘導できそうもない。

ξ゚听)ξ「っど……どうすれb」
\(^o^)/「オワタダッシュッ!!」
ξ;゚听)ξ「ぐっ!!」

容赦なく繰り出されるオワタ(仮)の拳。
すんでのところでかわし、受け止め、弾き返す。
ぶつかり合う度に大気が震え、スーツが悲鳴を上げる。

\(^o^)/「オワタァ……」
\(^o^)/「カッタッ!!」

オワタ(仮)がおもむろに脚を振り上げる。
受け止めようと突き出した、右腕の装甲が──

電光を撒き散らし、粉々に弾け飛んだ。

ξ゚听)ξ「ッ──」
ξ )ξ「きゃああああああああ!!!!」

(;^ω^)「ツーーーーン!!」



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 00:07:06.02 ID:Y8lRj41+O
オワタ(仮)の蹴りをまともに受け、フロアの床をバウンドしながら転がってゆく。
目の前には、ガラスの壁が広がっている。
薄いその壁の向こうは、デパートにはよくある全階ぶち抜きの吹き抜けだ。

ξ )ξ「ぐっ……!」

体が、動かない。
今の状態じゃ、一階に落ちたらひとたまりも──

(#`ω´)「だらっしゃああああああ!!」
ξ#)゚听)ξ「うぐぇ!」

いきなり横から突っ込んできたブーンにより、ベクトルを直角に変えられる。
しっちゃかめっちゃかになりながらも、すんでのところで階下に落下する事は免れたようだ。

(;^ω^)「ツン! 大丈夫かお!?」

ξ#) 听)ξ「あり……がと。次からは、もう少し加減してね」

〔(^ω^)〕『ヅヅ……ッヴ、もういい! ユニット……解除し……ブツッ……逃げるんだ! 遠隔操作でも時間稼……ザザ』



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 00:10:16.37 ID:Y8lRj41+O
クーからの通信は壊れたラジオのように不明瞭。
スーツ自体はと言えば、本当に機能しているかどうかすら怪しい。
既にモニターは暗くなっていた。

負ける、というか死ぬのだろうか。
何て間抜けな死に様だコレ。笑えもしないぞ。

ξ゚听)ξ「ブーン……私は、もう平気だから。早く、逃──」

上半身を起こし、立ち上がろうと腰を上げかけた瞬間。
床にばさりと何かが広がった。
何かというか、私の髪だった。

∩゚听)ξ「あ」

さっきのオワタカッターとやらで斬られていたのだろう、
右の束ねていた髪が、ごっそり無くなっていた。
床に広がった髪が、次第に金から普段の黒へと戻っていく。

∩゚听)ξ「……切れちゃった」
(;^ω^)「つ、ツン?」

∩ )ξ「…………」



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 00:13:54.31 ID:Y8lRj41+O
意外と結ぶのが面倒だったり、
左右のカーブのバランスが雨の日は物凄まじいことになったりしてたけど。

何だかんだ言って、やっぱりお気に入りの髪型だった。
それがまぁ、こんな情けないことで。

何か、右側が軽い。

寂しい。

(;^ω^)「ツン! 大丈夫だお! 良い機会だし、何か髪型変えてみるってのも手だお?」

僅かに滲む視界の端で、あたふたとブーンがまくし立てる。
肩を震わせ始めた私を見て、ブーンはがっしと私の手を掴んだ。

(;^ω^)「新学期だし気分転換とか大事だお、
       きっと短い髪型も似合うお、っつーかツンなら何でも似合うお!
       だってほら、結構前のうんたらかんたらかくかくしかじか」





('A`)「あーやってね、時々二人の世界に入るんすよ。あれが辛くてね。
    本当、あれが無ければ良い連中なんですけど……」
\(^o^)/「オワタ……」



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 00:17:22.99 ID:Y8lRj41+O
( ^ω^)「──だから、泣くなお。ツンは何でも似合うけど……」
( ^ω^)「泣き顔だけは似合わないお!!」


('A`)「はいきたー倍プッシュどーん」
/(^o^)\「ギップリャ!」


∩ )ξ「…………」

足が震える。
肩が震える。
先ほどとは違う意味で、全身が震えている。

∩ )ξ「黙って、聞いてりゃ……こっ恥ずかしいことを、延々と…………」

どこからともなく地響きにも似た音が聞こえてくる。
もしもこれが漫画ならコマの余白にひたすらゴゴゴと書かれていることだろう。
力が、溢れてくる。

( ゚д゚ )「来たな……! レイナーユニットが真価を発揮する時が!!」
('A`)「うわ、なに誰よおっさん」
( ゚д゚ )「レイナーユニットには読心機能も備わっている。
     これの発展型として、装着した女性は乙女のイノセンスモードになることが出来るのだ!」
('A`)「だせぇネーミングだな……」



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 00:20:56.75 ID:Y8lRj41+O
( ゚д゚ )「イノセンスモードに移行した少女は、
     意中の人間からの言葉が普段よりもダイレクトに伝わる! その差は実に通常時の五倍(当社比)!!」
('A`)「何か知らんが馬鹿だというのは分かった」

( ゚д゚ )「思考能力も普段より向上していることで、
     自分の気持ちも普段以上に正確に的確に把握することが可能!!
     それが更なるツンデレを引き起こす!!」
('A`)「普通に意味分からんわ」

( ゚д゚ )「まさに恋が引き金のツンデレがツンデレを呼ぶ永久機関!! 使徒なんか喰わなくていいんだよ!!」
('A`)「それは凄いな」


∩ )ξ「う……う、う」

ξ////)ξ「むきゃーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
(;^ω^)「うおっまぶしっ」

赤いマフラーが暴風雨の真っ只中のように荒れ狂い、
スーツから眩い光が全方位へと放たれる。
黄金の髪も光り輝き、切れた方の髪からは光の束がネオンのように瞬いていた。



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 00:23:16.76 ID:Y8lRj41+O
ξ////)ξ「あのねぇ!! こっちだってねぇ!! 髪型変えよーかなーとかそういうの考えてたのよ!
      ふ、フォローとかいらないのよ! いちいち言うな恥ずかしい!」

(;^ω^)「何かサーセンww」

ξ////)ξ「誰のせいでこんな……ってゆーか、あああああもう何なのよもー!!
      こんなカッコで何か言ったってサマにならねーよ馬ー鹿!!」

頭をわしゃわしゃ掻き(と言ってもメットがあるので全然掻けない)、
おもむろにオワタ(仮)の方へ向き直る。

ξ////)ξσ「とりあえずそこのあんた!! 先に片付けてやるからかかってきなさい!!」

\(^o^)/「オワタ?」
\(#^o^)/「フォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

オワタ(仮)から紫色のオーラが湧き上がり、フロア全体を小刻みに振動させる。
普段なら背筋が凍るようなプレッシャーなのだが──


不思議と今は怖くない。
何だってやれる気がする。



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 00:24:28.51 ID:Y8lRj41+O
ξ゚听)ξ「ツンブレード!」

右腕を掲げ、叫ぶ。
言い切るよりも早く先ほどの剣が虚空から現れ、私の手元へと引き寄せられる。

ξ゚听)ξ「ブーン、下がってて。……はああああああ……!!」

腰を落とし、半身を捻る。
剣を水平に構えた腕を目一杯引き、弓のように引き絞る。

川 ゚ -゚)「博士! これが……!」
( ゚д゚ )「来たか、クー。ああ、これがレイナーユニットの……
     いや、違うな。彼女の真の力だよ」

ξ#゚听)ξ「はあああああああああああ!!」

叫びに呼応するように、床に散らばっていた私の髪が浮き上がる。
それらは再び金色の光を纏いながら、剣と砕けた右腕の装甲に巻き付いていく。
そして、私の右手は──


(;^ω^)「こ、これは!」
('A`)「……ドリルかよ」


黄金に輝く巨大なドリルと化していた。



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 00:26:16.30 ID:Y8lRj41+O
\(#^o^)/「オワタァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

ξ#゚听)ξ「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

フロアの床を蹴り砕き、二人同時に疾走する。
交錯するのは、正に一瞬。

\(#^o^)/「オワタペガサスリューセーケn」
ξ#゚听)ξ「超!! 電!! 磁!! ツンデレドリルスマッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!1111111」





\((^(   )^))/「オポチュニティ!」



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 00:29:09.40 ID:Y8lRj41+O
\((^(   )^))/「アッーーーー!!」

巨大な穴を穿たれ、オワタ(仮)はロックマンのように粉々に弾け飛ぶ。
塵一つ残さない、見事な散り様だった。

ξ゚听)ξ「はぁ……はぁ…………」

スーツが光を失い、体が普段の感覚に戻っていくのを感じる。
しかし、それよりも早く──

(;^ω^)「ツン!?」

私はばったりと床に倒れ込み、意識を失っていた。



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 00:30:31.89 ID:Y8lRj41+O
ξー匆)ξ「…………」
ξ゚听)ξ「はっ!?」

J( 'ー`)し「気がついた?」

目を覚ましてまず出迎えてくれたのは、見慣れた天井、聞き慣れた声。
普段よくテレビを見ながら寝転がるソファーに、横になっていた。
額には濡れタオル。

J( 'ー`)し「あなた軽い熱中症で倒れたみたいよ、親切な方がタクシーで連れてきてくれたの」
ξ゚听)ξ「え、あ……そ、そうなんだ」

額を押さえながら、ゆっくり身を起こす。
切れたはずの髪も元に戻っていた。
夢、だったのだろうか。
いや、そうであって欲しいのだが。

J( 'ー`)し「お母さん心配してたのよ、VIPデパートで崩落事故が起きたってテレビで言ってたし。
      やっぱりバブルに建てられたものは駄目ねぇ」

ξ゚听)ξ「崩落……事故?」

J( 'ー`)し「巻き込まれなくて良かったわ……。ん? どうかしたの?」

ξ゚听)ξ「ううん、何でも……二階で休んでくる」



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 00:32:13.33 ID:Y8lRj41+O
ドアを閉め、カーテンを開く。ついでに窓も開けてみた。


窓から見える景色は何の変哲も無い、普段通りのそれだ。
一連の異常事態が本当に夢だったように思えてくる。


ξ゚听)ξ「どこからどこまでが夢なのかしら。喫茶店から逃げた辺りからかな……?」
〔(^ω^)〕『残念ながら全て現実だ』
ξ )ξ ゚ ゚「んのわああああああああああ!!!?」

いきなり下からにゅっと突き出てきた例の盾が、
窓を閉める暇も無く室内に侵入してくる。

〔(^ω^)〕『今回の活躍、見事だった。有難う。初戦からあんな手強いウイルスを退治した上に、
        ユニットと髪すらも自己修復させるとは……やはり君は凄い』

∩ )ξ「アーアーキコエナーイキコエナーイ」

〔(^ω^)〕『だが、この街にもまだまだウイルスは潜んでいる。
        君の力が必要だ』

∩ )ξ「聞こえない事には答えられなーい」

〔(^ω^)〕『たたかわなきゃ、げんじつと』

ξ;凵G)ξ「……ち、ちくせう……!」



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 00:34:54.32 ID:Y8lRj41+O
ξ;凵G)ξ「くそう、夢であって欲しかったぜ……
       休み明けたらどんな顔してブーンに会えばいいんだよぉ……」

〔(^ω^)〕『安心しろ、彼らには全て説明しといた』

ξ#;凵G)ξ「オイ余計駄目だろ! あんな電波話!」

盾を殴ろうと拳を突き出すが、すんでのところでかわされた。
盾はくるくると回ったまま、部屋の中を蠅のように飛び回る。ウザい。

〔(^ω^)〕『……真面目な話、君のような適正者が見つけられず、滅んでしまった星もある』

ξ゚听)ξ「! ……」

〔(^ω^)〕『君は、五億に一人の逸材なんだ。
        友人たちや母親を救う為にも、やってくれないだろうか……?』

ξ゚听)ξ「……」

盾……というかクーの声は(ブーンの声だけど)、真剣そのものだった。
相変わらず胡散臭いことこの上ないが、もう、今更逃げ道は無いのかもしれない。

ξ゚听)ξ「……分かったよ。でも、一つお願いしていい?」

〔(^ω^)〕『何だろうか。何でも言ってくれ』



ξ゚听)ξ「語尾に、おを付けてくれる?」



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 00:36:34.76 ID:Y8lRj41+O
『ほう……ついに奴らが現れたか』

「知っているんですか?」

『当たり前だ。故郷を滅ぼした頃からの付き合いだからな。
 まだ我ら撲滅を諦めないとは、暇な奴らよ』

そこはどこかの隠し扉の先の地下室。
怪しい通信機が備え付けられたいかにもな空間で、
いかにもな会話が繰り広げられていた。

『して、この星では珍しく適正者が見つかったようだが。そいつの力はいかほどかね』

「ぼちぼちって所じゃないでしょうか。基準分かんないので適当ですけど」

『クク……そうか、久しぶりに面白い物が見れそうだな。
 そいつは貴様の知り合いのようだ、存分に貴様には働いてもらおう』

「仰せのままに」

『期待しているぞ、深淵の貴公子よ』





('A`)>「はっ! 必ずやこの地球、陛下の物にしてみせます!!」



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 00:37:47.88 ID:Y8lRj41+O
超光戦姫ツンデレイナーのようです おしまい



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