( ´_ゝ`)兄者の赤い糸のようです
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:15:14.61 ID:8Zo+67PZ0
- 夕暮れを背に立つ二つの影。
なにやら言い争いをしてるようだが、慌てているのは片方だけのようである。
「無いってなんなんですか! わかんないんです!」
「私の過失なのはわかってます」
「そ、そんな落ち着いてる場合じゃないんです!!」
「私には全部わかってます。大丈夫です」
「じゃあ今すぐ見つけるんです!!」
「……」
「わかってるんじゃないんですか!!」
「元はといえばアナタのミスなのもわかってます」
「うう……それはごめんなさいなんです」
( ´_ゝ`)兄者の赤い糸のようです
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:18:00.59 ID:8Zo+67PZ0
- (;´_ゝ`)「殺される」
エロゲを手に入れ我に返った俺は、自分の人生が後数時間であろうことを悟った。
母者がメガネを買ってこいと言って渡した金を使ってしまった。
教科書等ならともかくとして、あろうことかエロゲを買ったなんて言ったら何が起きる。
間違いなく俺の首が飛ぶ。
いや、五体満足でいられる可能性は低い。
しかし、最後の初回限定版を目の前にして、諦める事など出来るわけが無い。
不可抗力だよ、これは。
いっそのこと帰らずに、どこかへ逃げるか?
いや、そんな金があったらメガネを買って家に帰るだろう、常識的に考えて。
(;´_ゝ`)「く、メガネがその辺に落ちていてくれさえすれば……」
あたりを見回した俺は、店の入り口の観葉植物に目が止まった。
どうやら俺に女神が微笑んだようだ。
赤い花を咲かせた観葉植物の側に、花に混じってメガネのフレームらしきものが見える。
あれはおそらく誰かの落し物。
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:20:03.29 ID:8Zo+67PZ0
- 道行く人を見てみるが、探している様子の人物は見当たらない。
きっとアレは女神様からの贈り物だ。
俺はゆっくり忍び寄り、それを手に取ると走ってその場から離れた。
ある程度離れると、さっそくメガネを掛けてみる。
その瞬間、視界いっぱいに赤い線が映った。
( ´_ゝ`)「な……」
道路、電柱、家の屋根。
足元を見れば俺の靴の下にも赤い色が見える。
(;´_ゝ`)「な、なんじゃこりゃああああああああ」
思わず叫んだ俺に、通行人の視線が集まる。
俺はメガネを外すとまた走った。
家の前に着き、先ほどの赤い線に怯えつつメガネを掛けてみる。
やはり、いたる所に赤い線が見えた。
( ´_ゝ`)「これは……糸?」
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:21:27.66 ID:8Zo+67PZ0
- さっきはいきなりだったのでたいして見ていなかったが、
落ち着いて線を見てみると、ただの線ではなく何やら糸のように見える。
触ろうと手を伸ばすが、それは叶わなかった。
どうやら見えるだけで触れないようだ。
(*´_ゝ`)「運命の赤い糸が見えるメガネ☆ を手に入れた!」
( ´_ゝ`)「そんなわけあるかよ」
自分で自分に突っ込みを入れつつ、俺は家に入った。
持ち主の分からない謎のメガネ。
きっと何か呪いのメガネだろう。
きっと前の持ち主も赤い糸が見えまくって発狂して捨てたに違いない。
いや、もうそれでいいよ。
だって返したら俺が母者に殺されちゃうし。
まずは貰った金でメガネを買ったことを母者に伝えなければならない。
俺はエロゲを背中に隠しつつ、母者のいる居間へと向かった。
家の外では赤い糸が何本も見えたが、家の中には一本の赤い糸しかなかった。
居間と父者の部屋の中に繋がっている。
まさか、本当に運命の相手と繋がっている赤い糸なのだろうか。
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:23:02.68 ID:8Zo+67PZ0
- @@@
@#_、_@
( ノ`)「おかえり、買ってきたのかい?」
つまらなそうに雑誌を読んでいた母者が顔を上げ、声を掛けてきた。
エロゲを持つ手に力が入る。
大丈夫だ。
俺はメガネを掛けている。
嘘はばれる訳が無い。
( ´_ゝ`)「ただいま、買って来たぞ。今流行りの赤いフレームだ」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「……お釣りは?」
(;´_ゝ`)「な、ないです。ぴったりでした」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「そうかい。なかなかセンスのあるメガネだね。大事にするんだよ」
そういうと母者は視線を雑誌へと戻す。
ページを捲る母者の小指から赤い糸が伸びているのが見える。
その先は見えないが、父者の部屋で間違いないだろう。
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:24:30.91 ID:8Zo+67PZ0
- (;´_ゝ`)「じゃあ、俺は部屋に戻るぞ」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「あんた、いつ学校に行くんだい」
後ろ歩きで部屋から出て行こうとした俺に母者が聞いてきた。
俺は二年になって最初の一日しか登校していない。
エロゲをクリアする為に仮病を使い一日休んだら休み癖が付いてしまったのだ。
いじめにあっているということをそれとなく仄めかすなど、
色々誤魔化しながら毎日エロゲをやっている。
そんな風に適当に過ごしていたら気が付けば夏休みが終わり、新学期が始まっていた。
(;´_ゝ`)「え、えーと、もうすぐ、かな。なーんて」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「いじめられてたなんて、嘘じゃないのかい?」
(;´_ゝ`)「い、いや」
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:26:18.97 ID:8Zo+67PZ0
- 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「お茶……」
俺が返答に困っていると父者が部屋に入って来た。
湯飲みを持つ父者の手に、赤い糸が見える。
俺は「部屋に戻る」と小さく言い、父者の赤い糸の先を目で追う。
それは母者の小指と繋がっていた。
これはまさか……冗談ではなく本当に運命の赤い糸というやつか。
落ちていたメガネを拾って掛けたら運命の赤い糸が見えるようになる。
なんという超展開。
俺はこれから悪の組織と戦ったりしなければいけないかもしれない。
色々な考えが頭の中を巡った。
階段を上り、弟者の部屋の前を通る時、楽しそうな声が聞こえてきた。
どうやら彼女が遊びに来ているようだ。
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:28:12.51 ID:8Zo+67PZ0
- ドアを少しだけ開けてこっそりと中の様子を伺おうとしたが、すぐばれた。
(´<_` )「なんだ兄者、覗きとは気味が悪い」
('、`*川「兄者さん……そういう趣味があるんですか?」
やはり弟者の彼女、ペニサスさんが居た。
ペニサスさんは弟者の学校の先輩で、ちょっとだらしない所が魅力的な女性だ。
そしてもちろん、二人の指はしっかりと糸で結ばれていた。
二人仲良くソファに座り、俺のことを見つめている。
視線が突き刺さるように痛い。
( ´_ゝ`)「今日は学校じゃないのか?」
俺は負けじと言い返した。
(´<_` )「今日は学校の創立記念日で休みだ。昨日も言っただろう?」
弟者とは高校が別だ。
そういえば確かに昨日聞いた気がする。
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:31:10.76 ID:8Zo+67PZ0
- (;´_ゝ`)「し、知ってるんだから! 別に弟者と話がしたかったわけじゃないんだからっ!」
(´<_` )「それより兄者こそ学校へ行け」
( ´_ゝ`)「俺は腹が痛いから学校を休むそうだ」
(´<_` )「ほほう。腹が痛くてもメガネは買いに行けるのか」
(;´_ゝ`)「ぐ……」
('、`*川「兄者さん、赤いメガネ似合ってますね」
(*´_ゝ`)「ありがとうございます」
(´<_` )「……」
(´<_` )「まぁ、邪魔だから出てってくれ」
俺はドアを閉めた。
すぐに中からいちゃつく声が聞こえ始める。
間違いない。
これは運命の赤い糸だ。
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:33:25.85 ID:8Zo+67PZ0
- 俺は無言で部屋に戻り、エロゲを机の上に置いた。
今はエロゲよりもこのメガネと糸の事が気になる。
ベッドに寝転び自分の手を見ると、
左手の小指に一本の赤い糸が巻き付いている。
街の中で最初にメガネをかけた時、赤い糸はそこら中に見えた。
今も窓の外を見れば赤い糸だらけ。
それを考えると、赤い糸はすべての人についているのだろう。
全ての人に運命の相手はいるのではないだろうか。
出逢えるか出逢えないか。
気付くか気付かないか。
それだけのことなんだろう、多分。
( ´_ゝ`)「俺にも……運命の人がいるのか」
しばらく考えてから起き上がると、
財布と携帯を持ち、玄関へと向かった。
自分の左手に結ばれている糸は、玄関を出て左に伸びているようだ。
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:36:02.87 ID:8Zo+67PZ0
- さっそく糸の先を探す旅に出ようではないか。
どこまでも伸びる赤い糸の先に、運命の相手がいる。
なんというロマンティックな展開だ。
やっとの事で相手を見つけた途端、おそらく俺の運命の人は魔物か何かにさらわれてしまう。
しかし、この赤い糸がある限り俺は彼女を探し続けるのだ。
何度二人の仲が割かれようとも、俺は、俺は……!
( ´_ゝ`)「俺は何度でも君を助ける!」
(*´_ゝ`)「兄者さん、ステキ……!」
自分の運命の相手との出会い。
考えるだけでわくわくする。
周りの視線が痛い。
思わず声に出てしまっていたようだ。
仕方ない脳内だけで妄想しよう。
俺はそう決めると、歩き続けた。
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:38:59.83 ID:8Zo+67PZ0
- 脳内で運命の人を15回ほど助けた頃、
俺は、自分の学校の校門に辿りついた。
(;´_ゝ`)「えーと、学校の中に糸が続いているわけだが」
どう言う事だろう。
まさか学校の中に運命の相手がいるとでも言うのだろうか。
そんなバカな。
俺の学校は男子校だぞ。
まさか、数年後の俺がニューハーフ……もしくは相手がニューハーフ……。
いや、ガチホモかもしれない。
そんな、まさか、な。
( ´_ゝ`)「世の中知らなくて良いこともあるというしな」
帰ろう。
もし男の指と結ばれていたら、俺は樹海に行かなければならない。
ガチホモになるくらいなら死んだ方がマシだ。
「おう、やっと学校に来たか」
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:40:30.04 ID:8Zo+67PZ0
- 踵を返し一歩踏み出そうとした時、俺を呼び止める声がした。
振り返ると、担任の高岡先生が立っていた。
科学の高岡先生。
女性なのだが、言動がまったく女らしくない。
しかし美人でスタイルは良く、一部の生徒には人気があるようだ。
从 ゚∀从「久しぶりだな。メガネなんか掛けてイメチェンか?」
(;´_ゝ`)「た、たかおかせんせい」
从 ゚∀从「結構似合ってるじゃねーか」
(;´_ゝ`)「はぁ……、あ、ありがとうございます」
从 ゚∀从「せっかくここまで来たんだから授業に出てけよ。次は俺の授業だからさ」
そう言ってニヤニヤと笑いながら、俺の肩に手を置く。
(;´_ゝ`)「い、いや、僕はおなかが痛くてですね……」
慌てて逃げようとして気付いた。
高岡先生は女性だ。
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:42:56.86 ID:8Zo+67PZ0
- この学校には何人か女性の先生がいる。
保険のしぃ先生、家庭科のつー先生。数学のクー先生。
もしかしたら、その人達と繋がっているかも知れない。
俺はひとまず肩に置かれた先生の指を見た。
先生の右手に糸が結ばれている。
ゆっくりと目で追う。
先生の糸は学校とは反対方向に伸びていた。
( ´_ゝ`)「よし!」
从 ゚∀从「あぁん? 何がよし、だ」
( ´_ゝ`)「やはりおなかが痛いので僕は保健室に行きます!!」
先生の手を強引に振り解き、俺は学校へと走った。
从;゚∀从「おい! 待てよ! てめー!」
高岡先生が何かを叫んでいたが、無視した。
美人な先生だが、怒ると怖い。あまり関わりたくない。
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:45:25.42 ID:8Zo+67PZ0
- まずはしぃ先生の糸を確認しようではないか。
保健室に着き、ドアを力いっぱい開く。
( ´_ゝ`)ノ「こんにちは! お腹が痛くて休みに来ました!」
(*゚ー゚)「あら、兄者くんじゃない。最近見なかったから退学したのかと思ってたわ」
さすがしぃ先生。
俺のことを覚えていてくれたなんて感激だ。
少し幼さを残すこの可愛らしい笑顔を見る為だけに
一年の後半、ほぼ毎日保健室に通った努力は無駄じゃなかった。
(*゚ー゚)「お腹痛いの? それにしては元気ね?」
( ´_ゝ`)「いやあ、先生の顔見たら治りました」
(*゚ー゚)「あらあら、うふふ」
ドアをゆっくりと閉めながらしぃ先生の手を見る。
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:49:09.34 ID:8Zo+67PZ0
- 右手には……ない。
左手には……指輪。
指輪?
(;´_ゝ`)「せ、先生。その薬指の指輪は……」
(*゚ー゚)「ふふ、先月結婚したのよ。ギコ先生とね」
(;´_ゝ`)「なん・・・だと・・・」
認めない、認めないぞ。
俺の天使、しぃ先生があんなセンスの欠片も無い男と結婚だと!
幸せそうに指輪を撫でながらしぃ先生が頬を染めている。
その手から伸びた糸は、窓から外へと繋がっている。
確か保健室の窓からグラウンドが見渡せたはずだ。
俺は窓に駆け寄りギコ先生を探した。
あの野郎がいつも着ているのは蛍光ピンクのださいジャージ。
そんなの着てる奴はこの学校には一人しかいない。
思ったとおりすぐに見つかった。
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:51:18.00 ID:8Zo+67PZ0
- 姿を確認すると、窓から伸びる赤い糸を目で追った。
糸はグラウンドに立っている体育のギコ先生と繋がって……
(;´_ゝ`)「繋がってねぇええええええええええええええ!!!」
しぃ先生の指から伸びた細い糸は、ギコ先生とは別の方に伸びている。
授業中の生徒達の赤い糸が入り乱れて良く見えないが、
ギコ先生の手からも別の方向へと糸が伸びているようだ。
(*゚ー゚)「ど、どうしたの?」
(;´_ゝ`)「い、いえなんでもないですすみあsdれyhg」
結婚した相手と繋がっていないということはつまりはそう言う事だろう。
俺は逃げるように保健室を後にした。
非常に複雑な気分だ。
(;´_ゝ`)「しかし人生、何があるかわからないな……」
保健室を出て、適当に歩きながら時間を潰す事にする。
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:54:00.41 ID:8Zo+67PZ0
- 今は授業をしている時間帯。
つー先生とクー先生がどこの教室にいるかはわからない。
ふと自分の指から伸びる糸を見てみると、階段の上へと伸びていた。
そういえば、一人づつ見ていくよりこれを追いかけた方が早いんじゃないか。
教室の中に繋がっていたら、授業が終わるまで待てば良い。
さぁ、運命の人を探さなければ。
意気揚々と階段を駆け上がり、廊下を走る。
通り過ぎようとした教室からクー先生が出て来て俺を呼び止めた。
川 ゚ -゚)「廊下を走るな」
長い黒髪が美しい。
この人と俺の指の糸が繋がっていたらいいのに。
川 ゚ -゚)「それに、今は授業中のはずだが」
( ´_ゝ`)「いやあ、クー先生ではないですか」
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:55:41.50 ID:8Zo+67PZ0
- 川 ゚ -゚)「サボっているのか」
(;´_ゝ`)「はは、今日は良い天気ですね」
川 ゚ -゚)「高岡先生がさっき探していたのは君か?」
( ´_ゝ`)「多分違います」
川 ゚ -゚)「そうか。ならいいんだが」
そう言ってクー先生は俺の横を通り過ぎて行った。
その手から伸びる糸は、先生が出てきた教室の中へと続いている。
( ´_ゝ`)「まさか……」
教室のドアを1cm程開けて覗いてみると、見知らぬ生徒が一人で机に向かっていた。
_
(;゚∀゚)「あー……、くそ。わかんねぇ……」
机に肘を付き、その手を額に当て真剣に悩んでいるようだ。
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:57:20.73 ID:8Zo+67PZ0
- _
(;゚∀゚)「でもこのプリントが満点だったら、クー先生デートしてくれるって言ってたし……」
_
(;゚∀゚)「頑張るしか……ねぇよなぁ」
名前は分からないがどうやら補修を受けているようだ。
授業中のはずなのに個人レッスンとは、よほど頭が悪いのだろう。
それでも、クー先生のような美人とデートの約束をするとは何て羨ましい奴だ。
( ´_ゝ`)「むう」
教室の中に一本だけある赤い糸は、名も知らぬ彼の指と繋がっていた。
なるほど、彼とクー先生は運命の相手というわけか。
ゆっくりとドアを閉めると、後ろをに気配を感じた。
从#゚∀从「おい、兄者」
いつの間にか後ろに高岡先生が立ってる。
酷く不機嫌そうだ。
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 21:59:14.70 ID:8Zo+67PZ0
- 从#゚∀从「俺から逃げるとは良い度胸じゃねぇか」
(;´_ゝ`)「に、逃げたなんてとんでもない」
从#゚∀从「あのなぁ、俺が人の心配するのは珍しい事なんだ。わかるか?」
(;´_ゝ`)「はぁ……、なんとなく」
从#゚∀从「じゃあ授業に出ろ」
( ´_ゝ`)「嫌です」
从 ゚∀从「今日授業に出てたら、休んでた分は目をつぶってやるよ」
(;´_ゝ`)「ま、マジですか……?」
从 ゚∀从「ああ、真面目に言っている。お前はやれば出来る生徒だって俺は知ってるからな」
……オカシイ。
何かがおかしい。
(;´_ゝ`)「先生、俺を騙そうとしてるんですか」
誰かが俺のことを褒めるなんてありえない。
ましてや、高岡先生が。
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 22:04:12.45 ID:8Zo+67PZ0
- 从;゚∀从「騙す? 何でだよ」
……いつもの高岡先生じゃない。
何か、企んでいるんじゃないだろうか。
从 ゚∀从「なんつーか、お前がいないと毎日張り合いがなくてな」
何か照れたように笑う先生が怖くて目が離せなかった。
蛇に睨まれた蛙。というのは今の俺のようなことを言うのだろう。
しばらく見詰め合っているとチャイムが鳴った。
( ´_ゝ`)「先生! こんな所に鳩が!」
从;゚∀从「は、はと? うわぁ!」
俺は得意の手品で鳩を出すと、その場から逃げ出した。
そして自分の指の赤い糸を辿る。
ようやく糸の終わりが見えた。
どうやら教室の中に続いているようだ。
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 22:06:41.94 ID:8Zo+67PZ0
- ( ´_ゝ`)「俺の教室じゃないか」
そう漏らしてから、気付く。
科学の高岡先生じゃなかった。
保険のしぃ先生じゃなかった。
数学のクー先生じゃなかった。
もし家庭科のつー先生の授業だったなら、移動教室のはずだ。
つまり教室に人がいるわけが無い。
しかし目の前の教室には明らかに人のいる気配がする。
最悪だ。
見つけてしまった。
俺の未来のお婿さんになるやつを……。
俺の人生が終わった。
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 22:09:06.52 ID:8Zo+67PZ0
- ( ^ω^)ノ「あっ! 兄者が学校に来てるお! 久しぶりだおー」
( ФωФ)「一学期丸々休むとは、ニート生活はさぞかし楽しかったであろう?」
( ・∀・)「具合でも悪かったのかい?」
(´・ω・`)「メガネ買ったの? なかなか似合ってるね」
教室の前に呆然と立ち尽くす俺に、級友達が言葉を投げかけてくる。
俺は自分の指から伸びる糸をただただ見つめているしか出来なかった。
(;´_ゝ`)「お、おい」
やっとの事で声を絞り出すと俺は慌ててブーンの肩を掴み、前後に揺すった。
(;´_ゝ`)「ブーン! お前ツンデレと付き合ってたよな! まだ別れてないよな!」
(;^ω^)「どど、どうしたんだお、急に」
(;´_ゝ`)「お前はツンデレと結婚するよな?」
(;^ω^)「け、結婚? まだそこまで考えてな……」
( ;_ゝ;)「結婚しないなら俺がツンデレと結婚する!!」
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 22:10:53.65 ID:8Zo+67PZ0
- (;^ω^)「ちょ、ちょっと待つおwwwwwwwwww」
(;・∀・)「ど、どうしたんだよ。やっぱりまだ具合悪いの?」
モララーに後ろから押さえられて、俺は我に返った。
そして、再度ブーンの手を見る。
俺の手とブーンの手はしっかりと赤い糸で結ばれていた。
あ、今気付いたけどこの糸伸縮するんだな。
そんなことはどうでもいいか。
( ´_ゝ`)「もうお終いだ。俺は樹海へ行く」
( ФωФ)「兄者殿はツンデレ嬢の事を好きだったのか?」
(´・ω・`)「どうやらそうみたいだね」
(;^ω^)「そ、そうだったのかお。なんかわかんないけどごめんお」
なにやら旧友達が勘違いをしているようだ。
しかし、俺はもう樹海へ行くからどうでもいい。
さようなら、俺の運命の人。
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 22:14:16.43 ID:8Zo+67PZ0
- 一人、校門の前に立つ。
樹海へ行くと言ったのに誰も心配してくれない。
級友の優しさも、所詮上辺だけの物であったようだ。
俺はやはり樹海へ向かうしかないのだろうか。
このメガネの所為か?
いや、このメガネが無ければ俺は母者に殺されていただろう。
命を救ってくれたこいつの所為にするのは良くない。
これも運命だな。
家とは反対の方向、駅の方向へと歩き出そうとした時に、誰かが声を掛けて来た。
「待ってください」
低い、聞いた事の無い声だ。
俺に、と思ったが勘違いかもしれない。
そのまま歩き出す。
( ><)「待ってくださいなんです!」
(;´_ゝ`)「ぬわっ」
なにやら背の低い少年が俺の腰に飛びついてきて、
バランスを崩し倒れそうになった。
なんだこいつは。
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 22:16:37.52 ID:8Zo+67PZ0
- ( ><)「そのメガネ返してくださいなんです!」
(;´_ゝ`)「何を言って……」
( <●><●>)「そのメガネが私のメガネだということはわかってます」
さっきの声。
振り返ると、長身でスーツの男が後ろに立っていた。
(;´_ゝ`)「え、え? 何?」
( <●><●>)「貴方が拾った事もわかってます」
( ><)「返してほしいんです!」
少年が俺のメガネを取ろうと手を伸ばしてくる。
しかし、背が低くて俺の顔に届かないようだ。
(;´_ゝ`)「こ、この赤いメガネですか?」
ひとまず少年を引き剥がし、俺はメガネに手をかけた。
スーツ姿の男がゆっくりと頷く。
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 22:19:28.00 ID:8Zo+67PZ0
- ( <●><●>)「そうです。そのメガネをかけると赤い糸が見える事はわかってます」
( ´_ゝ`)「やっぱりこれ、運命の赤い糸なんですね?」
( ><)「そうなんです! 運命の相手と繋がってるんです!」
( ´_ゝ`)「やはり、ブーンが運命の相手……か」
( ><)「それがないと仕事が出来ないんです! 早く返すんです!」
少年はぴょんぴょんとジャンプして俺のメガネを取ろうとしている。
はは、小僧には届くまい。
( ><)「届かないんです! 早く返すんです! 誰の為にがんば……」
( <●><●>)「ビロードは少し黙ってください。兄者さんが混乱してるのはわかってます」
少年が一生懸命に話そうとするのを、男が遮った。
どうやら少年はビロードというらしい。それより……
(;´_ゝ`)「なんで俺の名前知ってるんですか」
( <●><●>)「それは今は関係ないことはわかってます」
(;´_ゝ`)「え、そうなの?」
- 36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 22:21:49.09 ID:8Zo+67PZ0
- 疑問を口にしたのにあっさりと話を流される。
この威圧感のある話し方は、それ以上聞いても無駄だと言う事を表しているのだろう。
( <●><●>)「そのメガネは、私が昨日落とした物です。
私達の仕事は運命の管理。この小さいビロードは赤い糸を結ぶ仕事をしています」
( ><)「小さいは余計なんです!」
( <●><●>)「そして私はビロードの上司。部下のミスの尻拭いをする事も上司の仕事のひとつです」
(;´_ゝ`)「は、はぁ……。そういう職種もあるんですか」
運命の管理? なにやらとても信じがたい話だ。
しかし、このメガネをかけると赤い糸が見えるのは俺が身を持って体験している。
という事は、本当にそういう仕事があるのだろう。
俺は無理矢理納得すると、うんうんと頷いた。
( <●><●>)「そのメガネが無いと赤い糸が見えず、仕事にならないのです」
( ><)「だから返してくださいなんです!」
なるほど、やっぱりこのメガネは普通のメガネじゃないのか。
でも、これを返したら母者にメガネを買ってない事がばれてしまう。
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 22:23:12.41 ID:8Zo+67PZ0
- ( ´_ゝ`)「話はわかりましたが、返すことは出来ません。俺はメガネがないと死んでしまう」
( <●><●>)「そう言うことは、わかってます。変わりにこのメガネを差し上げます」
そう言ってメガネケースを差し出してきた。
俺はそれを受け取り、開いてみる。
( ´_ゝ`)「おお、まったく同じメガネ」
男は微笑んだ。
そして、俺の顔に手を伸ばし、静かにメガネを取った。
( <●><●>)「形状はまったく同じなので、問題ないと思います」
( ><)「やった! メガネが返って来たんです!」
貰ったメガネを掛けてみると、いつもと変わらぬ景色が鮮明に見える。
どうやら度数もぴったり合っているらしい。
そして、赤い糸は欠片も見えなかった。
( ´_ゝ`)「素晴らしい」
( <●><●>)「返してくださりありがとうございます」
男はそういうと俺に頭を下げる。
無駄の無い紳士的な動きだった。
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 22:27:37.04 ID:8Zo+67PZ0
- ( ><)「じゃあさっそく僕が間違えた糸を直してくださいなんです!」
( <●><●>)「言われなくてもわかってます」
( ><)「確かこの……」
( <●><●>)「それ以上言うと、始末書を書かなければいけなくなるのはわかってます」
( ><)「ご、ごめんなさいなんです」
未だに慌てている少年に男が淡々と返事を返している。
男とは対照的に少年からは、落ち着きが感じられない。
これが上司と部下の差なのか?
( ´_ゝ`)「あ、そういえば」
( <●><●>)「質問があるのはわかってます。ひとつだけなら答えます」
メガネを掛け、ネクタイを直すと男が俺を見つめた。
黒目がちな大きな目、言葉だけでなく、この目からも威圧感を感じる。
(;´_ゝ`)「え、えーと。俺にそんな仕事の話して良かったんですか?」
( <●><●>)「貴方が他の人に言いふらさない事はわかってます。
それに話せばメガネを返してくれることもわかってました」
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 22:31:59.19 ID:8Zo+67PZ0
- ( ><)「良くないんです! 僕が怒られちゃうんです!」
少年が不満そうに男に文句を言う。
男は気にする様子も無く、言葉を続けた。
( <●><●>)「メガネを落としたのはこちらの責任ですし、
仮に貴方が誰かに話しても、誰も信じない事もわかってます」
確かに信じないだろう。
運命の赤い糸(笑)とか言われるのが目に見えている。
( <●><●>)「ちょっとした不思議体験しちゃった♪ くらいで済ませておくのが良いと思います」
( ´_ゝ`)「なるほど、わかりました。メガネありがとうございます」
俺がお礼を言うと、男が少し微笑んだように見えた。
気付けばどこから出したのか、二人はシルクハットを持っている。
( <●><●>)「では、兄者さん、御機嫌よう」
( ><)「樹海へ行かずに家に帰るんです!」
そういうと二人はシルクハットを被った。
その瞬間、二人は俺の目の前から消えた。
霧のように、でもなんでもなく、一瞬で消えた。
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 22:32:43.61 ID:8Zo+67PZ0
- ( ´_ゝ`)「間違えた糸……」
それはこの付近なのだろうか。
ビロードと呼ばれた少年の口ぶりからはそう伺える。
( ´_ゝ`)「という事は、俺の糸が間違ってたのかもしれない」
よくよく考えれば、男と結婚するなんて俺が許さない。
むしろ無理だろ。
(*´_ゝ`)「運命の相手はしぃ先生かもしれない」
(*´_ゝ`)「きっと近いうちに、俺の魅力に気付いてくれるだろう」
久しぶりに学校に来たら、休んでいたのが馬鹿らしくなってきた。
明日からは学校に通うことにするかな。
( ´_ゝ`)「そういえば、エロゲを買ったんだった」
(*´_ゝ`)「さっそく帰ってヒロインと運命の出会いをしよう」
俺は少しの期待を胸に、
少年に言われたとおり、まっすぐに家に帰る事にした。
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 22:35:12.39 ID:8Zo+67PZ0
- ――科学室
从#゚∀从「なんだ、結局兄者は帰ったのか」
高岡は不機嫌そうに出席簿に欠席の印を入れる。
その様子を見て、モララーが口を開く。
( ・∀・)「何だか錯乱してるみたいでした」
( ФωФ)「恋の病のようであった」
(´・ω・`)「樹海へ行くとか」
( ^ω^)「殺されかけたお」
それぞれ、久しぶりに見た兄者に対しての感想を言い始めた。
高岡はそれを聞きながら、教科書をペラペラと捲くり始める。
从 ゚∀从「せっかく学校に来たのによくわからないやつだな」
( ・∀・)「高岡先生は兄者のこといつも心配してますね」
( ^ω^)「僕はスルーかお」
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 22:39:24.79 ID:8Zo+67PZ0
- 从 ゚∀从「一学期丸々学校に来なかったんだ、そりゃあ心配だよ」
モララーの言葉に高岡は、動揺をした様に声を荒げた。
(´・ω・`)「じゃあ、ドクオのこともたまには思い出してあげてください」
ショボンがニヤっとわらって突っ込みを入れる。
その言葉に、高岡は再度出席簿を開いてドクオの欄をチェックした。
从;゚∀从「そういや、休んでたっけ?」
( ・∀・)「今日だけじゃなくてドクオは一学期初日から来てないですよ」
( ^ω^)「僕が生きてる事を喜んでくれお」
生徒達が先生を茶化し始めた頃、シルクハットを被った二人が高岡の横に立っていた。
ビロードが高岡を指差し、嬉しそうに言う。
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 22:45:02.35 ID:8Zo+67PZ0
- (*><)(やっと見つけたんです! この人なんです!)
( <●><●>)(本当はハインリッヒ高岡と流石兄者さんの糸が繋がってる事はわかってます。
なんで男性同士を繋いだりしたのかが分かりません)
( ><)(僕にもわかんないんです!)
スーツ姿の男はハサミを出すと、高岡の指に巻きついている糸を切った。
そして手袋をはめ、兄者から伸びていた糸を結びつける。
( ><)(よし、直ったんです! ありがとうなんです!)
( <●><●>)(まだ終わってないのはわかってます。この間違って付いていた糸を直さなければいけません)
(;><)(うう……。ごめんなさいなんです)
( <●><●>)(早く終わらせて帰りましょう)
男はそういうとビロードと手を繋ぎ、指をパチンとならした。
元々見えていなかったが、二人は教室から完全に姿を消した。
从#゚∀从「うるせーぞ、お前ら! 今日は教科書の28ページからだ。早く開け!」
从*゚∀从(それにしても兄者は元気そうだったな。家庭訪問に行ってやるか)
終わり
- 49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/31(日) 22:47:42.50 ID:8Zo+67PZ0
- 以上で終わりです。
投下してみたら意外と短かった……。
間に合わないかと思ってしたらばでごめんなさい宣言をしたけど、
どうしても書き上げたくて今日一日これに費やしました。
若干荒削りで申し訳ないですが、書き上げられてちょっと満足してます。
No.99の絵師さん見てくれてると嬉しいな。
読んでくれた方もありがとうございました!
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