( ・∀・)充実した高校生活のようです

361: ( ・∀・)充実した高校生活のようです 1/13 :2008/08/29(金) 19:18:04.25 ID:aWbk033j0

   ─── 9月上旬 5時限目 屋上 ───

 昇降口から足音が響いてくる。
10分ほど前に昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴って以来の騒音だ。
やがて足音の主は屋上に飛び出してきて、僕を見ると呆れたように言った。

(;´_ゝ`)「ゼェ……ゼェ……… やっぱりここだったか……」

( ・∀・)ノ「やあ、学級委員長サマ。
       せっかくエレベーター付いてるのに階段で駆け上がってくるとは、ご苦労様だねえ」

( ´_ゝ`)「うるさい。エレベーターの生徒の使用は厳禁だ」

( ・∀・)「相変わらず妙なところで真面目なんだから。どうせ授業時間中だし誰も見てないよ?」

( ´_ゝ`)「そういう問題じゃない」

 チーン、と古臭い音がして、エレベーターのドアが開く。
中から出てくるのは、目の前で息を整えているのとほぼ同じ顔。

(´<_` )「お、やっぱりここだったか」

( ・∀・)「……副委員長サマは違う考えをお持ちのようだけど?」

(#´_ゝ`)「弟者! エレベーターの生徒の使用は厳禁だ!」

(´<_` )「階段を使ったのに俺より早いとは流石だな、兄者」

(#´_ゝ`)「話を聞け!!」



364: ( ・∀・)充実した高校生活のようです 2/13 :2008/08/29(金) 19:20:13.41 ID:aWbk033j0

(´<_` )「そんなことよりモララー、さっさと観念してもらえるか?」

( ・∀・)「教室に戻っても寝てるだけなら、居ないのと変わらなくないかい?」

(#´_ゝ`)「そんなこと……? 校則をそんなこと扱いするのか!」

(´<_` )「出し物案は一応クラスの総意という建前だからな。サボりが居る状態だといつまでも決定できん。
      それと兄者、うちの50年前に作られた校則にはエレベーターなんて文明の利器は登場しない」

( ・∀・)「仕方ないなあ、キミ達のために戻ってあげようか」

(#´_ゝ`)「揚げ足を取るな! 生徒会規則も守るべきであるという点においては変わらん!」

(´<_` )「よし、ではさっさと教室に戻ろう。どうせうちのクラスの文化祭実行委員殿がお怒りだ」

( ・∀・)「あー、妹さんの方は真面目だからねえ。もう少しのんびりしたかったなあ」

(#´_ゝ`)「貴様ら! エレベーターの使用は許さんぞ!」

 ああ、楽しい。



367: ( ・∀・)充実した高校生活のようです 3/13 :2008/08/29(金) 19:23:49.50 ID:aWbk033j0

   ─── 教室 ───

 僕より20cmほど低い位置にある小さな顔。
睨みつけてさえいなければ、上目遣いも加わって可愛いと思うのに。
ところで怒ってても口角が上がってるのは、一種の才能かな?

(#゚ー゚)「それで? どうしてこんなに遅れたのかな?」

( ・∀・)「兄者によって階段を使うことを強制されたからです」

(#゚ー゚)「私が聞いてるのはそこじゃないって分かってるよね?」

(*゚∀゚)「もういいじゃん、しぃ。戻ってきたんだしさ。
    どーせモララーにそーゆーこと言っても効果無いって知ってるっしょ?」

 フォローしてくれてるのか微妙な言い草は、ニヤけているような笑顔の女の子。
委員長達と違って、こっちは二卵生双生児だろうなあ。
それでも顔は似てるしどっちも可愛いし口角上がってるし。
恐るべし双子。

(#゚ー゚)「あーもー! お姉ちゃんは甘すぎるよ!
    今年は学校創立50周年の記念すべき文化祭なんだよ!
    なのに────

(*゚∀゚)「さて、モララー。何かてきとーな案無い?
    毎度のことだけどみんな恥ずかしがっちゃってさー。
    実質的に提出できそうな案がないんだよねえ」



370: ( ・∀・)充実した高校生活のようです 4/13 :2008/08/29(金) 19:26:26.02 ID:aWbk033j0

( ・∀・)「『恥ずかしがっちゃって』?
      うちのクラスってもっと元気だったと思うんだけど」

 騒ぎたいだけのような奴らでも、こういう時は役に立つ。
身内しか笑わないウケ狙いが多少は入るにせよ、2つ3つは意見を出してくれる。
と思っていたんだけど。

(*゚∀゚)「キムチの歴史展がお望み?」

<ヽ`∀´>  ←どう考えても提案者

( ・∀・)「ああー、なるほど」

 あながち予想が外れていたわけでもないけど、ウケ狙いが行きすぎちゃったわけか。
いや、提案者は本気なんだろうけど。

(*゚∀゚)「元気な奴らはぜーんぶ面白がって乗っかっちゃってさ。
    モララーが先頭に立って企画から展示に客集めまで頑張ってくれるんならやるけど?」

(;・∀・)「いや、それは勘弁願いたいなあ。
      ってか客集める必要あったっけ?」

(*゚∀゚)「出し物の体を成すぐらいにはね。
    最低500人くらいかなー」

(;・∀・)「軽く言うけどそれってまともな出し物でもなかなかキツくない?
      ましてやそんなフザけた出し物で…」

<#`A´> 「ファビョーン!  半島の誇りをフザけたものとは何事ニダ!」



372: ( ・∀・)充実した高校生活のようです 5/13 :2008/08/29(金) 19:30:06.21 ID:aWbk033j0

 ああ、失言。
ついうっかり心の声が出てしまった。

( ・∀・)「あー、ごめん、ニダー。キムチを馬鹿にしたわけじゃないんだ。
      僕みたいな奴が先頭に立ってやっても偉大な歴史を汚すだけだと思ってさ。
      きっとそんなもんニダーが見たらふざけた出し物だと思うだろ?」

<ヽ`∀´>「そういうことならその通りニダ。
      次からはもっと誤解されにくいように言えニダ」

( ・∀・)「分かった、気を付ける」

(*゚∀゚)「よく口が回るねえ」コソコソ

( ・∀・)「キミに言われたくないなあ」コソコソ

(#゚ー゚)「お姉ちゃんも一緒になって何コソコソ話してるの!?
    モララー君はさっさと出し物の案を考えて!」

 あれ、何で考えるの強制されてるんだろう?
まあ、サボりのペナルティだと思えばいいか。

(;・∀・)「あーはいはい、喫茶店とかどう?」

(;゚ー゚) 「え? あ、うん。いいんじゃないかな」

( ・∀・)「あ、いいの? じゃ、おやすみー」

(;゚ー゚) 「あ、ちょっと!」



374: ( ・∀・)充実した高校生活のようです 6/13 :2008/08/29(金) 19:33:24.48 ID:aWbk033j0

   ─── 放課後 ───


(´<_` )「モララー、起きろ」

( -∀-)「んう?」

(;´_ゝ`)「まさか本当に寝るとはな」

 何時から寝てたんだっけ。頭が回らない。
寝起きだから仕方ないんだけど。あ、そうだ。

( -∀・)「……話し合いは?」

(´<_` )「とっくに終わった。多数決で喫茶店に決まったぞ」

( -∀・)「んー…… みんな単純だねえ……」

(´<_` )「キムチでなければ何でも良かったんだろうな」

( -∀-)「ぐふう」

(;´_ゝ`)「寝るな寝るな。他人事みたいな言い方だが、お前も巻き込み済みだぞ」

 え?



376: ( ・∀・)充実した高校生活のようです 7/13 :2008/08/29(金) 19:36:50.57 ID:aWbk033j0

(´<_` )「つーによると、提案者には先頭に立って文化祭を盛り上げ、成功させる義務があるそうだ」

(;・∀・)「え?」

( ´_ゝ`)「俺らも実行委員の姉妹も、雑務やら会議やらでなかなか忙しいんだ。
      少なくとも準備期間中の実質的なリーダーはお前だな」

 ああ、やられた。

(;-∀-)「サボった時点で決定されてたんだろうなあ。
      屋上なんか行かなきゃ良かった。
      いや、サボらなかったら無事だったって保証も無いか」

(´<_` )「つーのことだからな。お前はそれなりにリーダーシップもあるし、
       何だかんだで真面目だし、目をつけられていたのは間違いないだろう」

(;・∀・)「あーあ。仕方ないなあ。手が空いたら手伝ってよ?」

( ´_ゝ`)「うむ、それは約束しよう」

 まあ、こんな風に忙しくなるのもいい。
それに何だか、楽しくなりそうだし。



378: ( ・∀・)充実した高校生活のようです 8/13 :2008/08/29(金) 19:40:32.50 ID:aWbk033j0

   ─── 10月下旬 文化祭当日 教室 ───

 そこからの2ヶ月はものすごく忙しかった気がする。
教室内の装飾、メニューの企画、役割の振り分け、etc
とにかく何でもかんでもリーダーが中心。
溜まった疲労もとんでもないけど、全てが今日報われる ……はず。

(´<_`;)「終わった……」

(;´_ゝ`)「やっと終わった……」

(;・∀・)「なかなかギリギリだったねえ」

(*゚∀゚)「ま、とにかく  準 備 完 了 ! 」

 「ヒャッホー」だの「疲れた」だの一気に沸き立つクラスメイト。
でも、今までリーダーやってきたのに他の人にまとめられるのは腹が立つ。

( ・∀・)「はいはいはい、落ち着いてね。
      今終わったのは準備。本番はこれから」

 一旦鎮める。みんなちょっと不満そうな顔。
まあまあ、そんな目で見ないでよ。
僕もこれで終わるほど空気読めなくはないつもりだからさ。

(*・∀・)「じゃ、楽しんでいきましょー!」

「「「「「オー!」」」」」



380: ( ・∀・)充実した高校生活のようです 9/13 :2008/08/29(金) 19:43:56.96 ID:aWbk033j0

 店員役は女子の役割だから、男子である僕は必然的に裏方だ。
ようするに、コーヒーだの紅茶だのナポリタンだのオムライスだのを作る役。
仕事場は、調理場として区分けされた教室の一画。だったはずなんだけど。
予想以上の大盛況。さらにみんなの認識はリーダー=雑用。
教室中どころか学校外まで走らされて、開店から3時間ほどでヘトヘトになってしまった。
たまらずそこらの椅子を引き寄せて休憩を取る。

(;-∀-)「これは死ねる」

(*゚ー゚)「お疲れ様。はい、お水」

(;・∀・)「ありがとう。でも、ここに居ていいの?」

(*゚ー゚)「お昼時も過ぎたし、一段落ってとこじゃないかな。
     私も休憩入れないと倒れそうだし」

( ・∀・)「……視線で呪い殺されそうだなあ」

(*゚ー゚)「え?」



381: ( ・∀・)充実した高校生活のようです 10/13 :2008/08/29(金) 19:47:28.81 ID:aWbk033j0

( ・∀・)「ほら、客の半分くらいはしぃにつられて入ってきただけだからさ。
      みんなこっち睨んでる」

 ついでに言うと、残りの半分はつー目当てだろう。
高校生が作るものを好き好んで食べに来る人なんて、そうはいない。

(*゚ー゚)「もー、そんなことないって」

 冗談だと受け取られたらしい。
自分の可愛さを自覚してないのかなあ。
自覚してないところがまたいいんだろうけど。

(*゚ー゚)「そんなことよりさ、さっき女の子達で話してたんだけど」

( ・∀・)「ん、何?」

(*゚ー゚)「モララー君、今日まで頑張ってくれたし、ここからは遊んできたら?」

( ・∀・)「え?」

(*゚ー゚)「もう一番忙しい時間帯は過ぎただろうし、リーダーへのご褒美ってことで」

(;・∀・)「いいの?」

(*゚ー゚)「いいのいいの」

( ・∀・)「じゃあお言葉に甘えようかな」



384: ( ・∀・)充実した高校生活のようです 11/13 :2008/08/29(金) 19:50:16.11 ID:aWbk033j0

 休憩に使っていた椅子を元の場所に戻すと、ドアに向かって歩き出す。
すると、調理場から怒声が響いてきた。

<おいコラリーダー、どこ行ってんだ!

(・∀・ )「リーダー特権で遊んでくる!」

<ふっざけんな!

(・∀・ )「じゃーなー!」

<あの野郎、とっ捕まえてやる!

(゚∀゚*)「ちょっと調理場、オムライスまだかい!?」

<うっ、あと1分! 1分待って!

(゚∀゚*)「おっそいなー! お客さん帰っちゃうよ!」

( ・∀・)「ありがとう」

(*゚∀゚)「気にしない気にしない。いってらっしゃい♪」

( ・∀・)「うん、行ってきます」



385: ( ・∀・)充実した高校生活のようです 12/13 :2008/08/29(金) 19:53:55.07 ID:aWbk033j0

   ─── 屋上 ───

 夕日を眺めていると、チーン、と古臭い音が鳴った。
完璧に重なった2つの足音は、振り向かなくても誰のものか分かった。

( ・∀・)「エレベーター使っていいの?」

( ´_ゝ`)「今日は疲れてるからな。特別だ」

( ・∀・)「店は?」

(´<_` )「閉店直前まで大盛況だった」

( ・∀・)「それは良かった」

( ´_ゝ`)「それにしても、何もこんな日まで屋上に居ることはないだろうに」

( ・∀・)「遊び始めて2時間くらいで全部回っちゃってさ。
      そこからずっと暇で暇で」

(´<_` )「寂しかったか?」

 え?

( ´_ゝ`)「文化祭に来ていたのはカップルやグループばっかりだったからな。
       1人で回るのは寂しかったんじゃないのか?」

 図星だった。でも、認めたくなかった。
認めてしまったら、みんなの気遣いを否定してしまう気がして。



387: ( ・∀・)充実した高校生活のようです 13/13 :2008/08/29(金) 20:02:40.84 ID:aWbk033j0

(´<_` )「みんなお前を見送った後で気付いてな。
      つーも珍しく顔をしかめていた」

( ・∀・)「うん、今日はずっと教室に居た方が楽しかったかもしれない」

( ´_ゝ`)「そうか……」

 それでも、

( ・∀・)「でも、気遣ってもらって嬉しかった。
      相殺してお釣りが来るほどね」

 気付いたんだ。
結果は逆効果だったかもしれない。
けど、気遣ってもらったことは否定しなくていい。
気遣ってくれるような友達に、囲まれていたことにこそ価値がある。

(´<_` )「……クサいぞ」

( ・∀・)「自覚してる」

( ´_ゝ`)「よし、帰るか。打ち上げだ」

( ・∀・)「うん、そうだね」

 ずっとみんなが一緒に居られるなんて思わない。
でも、『みんなで居られる時間が、少しでも長く続きますように』。
柄にもない呟きは前を歩く2人にも聞こえていたはずだけど、
2人とも聞こえない振りをしてくれた。



389: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/08/29(金) 20:11:05.77 ID:aWbk033j0
最後の最後にさるった
書き込みが無いのは読んでくれてるからだと思い込んでやる!

支援してくれた方々、ありがとうございました
投下するの初めてなもんで、支援ついただけで嬉しかった

ずーっと心臓バクバク腕ガクガク
緊張したー


書き上げたばっかで後書きまで頭回ってなかった
まとまりの無い後書きだけど許せ



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