病院とトラウマと僕のようです

317: 病院とトラウマと僕のようです :2008/09/21(日) 03:50:55.65 ID:O/xBWzqsO
僕は病院が嫌いだ。
もうそれなりに大人になったというのに、未だに医者が怖い。
あの理科室のような臭いや、待合室の雰囲気も苦手だ。

だから風邪を引いた時も、出来るだけ薬で直すことにしている。
一年ほど前、高熱にうなされ、これはひょっとすると結構やばいんじゃないかと思った時も、僕は病院に頼ろうとはしなかった。

……なぜここまで病院を避けるのかと言うと、僕にとっての病院とは、「トラウマ」の宝庫だからである。





病院とトラウマと僕のようです



319: 病院とトラウマと僕のようです :2008/09/21(日) 03:54:48.69 ID:O/xBWzqsO
一つ目のトラウマは、実はほとんど覚えていない。
なぜなら当時僕はまだ物心のつかないほどに幼かったからだ。

僕は生まれつき、腎臓に病気を患っていた。
ただ、僕はそのことについて、あまりよく知らない。
その時のことを知ろうと思えばきっと簡単で、母や父に聞けばいいのだろうけど、そのことを聞くとなると、僕はおそらく無条件で両親に感謝の言葉を言わなければならなくなるだろう。
当然感謝はしている。それこそ、言葉では言い表せない程に。
それでも、面と向かって、あるいは電話越しでさえ、あの時はありがとうと言うのには、結構な勇気が必要だった。


少し脱線したが、とにかく僕はその時のことを深くは知らない。
つまり、断片的に残っている記憶の中に、一つ目のトラウマがあるのだ。



320: 病院とトラウマと僕のようです :2008/09/21(日) 03:59:40.79 ID:O/xBWzqsO
それは多分三歳くらいの頃だろう。僕は父に抱かれ、バナナ味のジュースを飲みながら、病院の待合室にいた。
きっと検査かなにかでだ。
僕は父の逞しい腕に抱かれることも、甘い甘いバナナジュースも大好きだったので、とても幸せだった。

だがしかし、その幸せとの別れはすぐに来ることになる。ジュースを飲み終えたころ、僕は名も知らぬ白衣を身にまとった男に抱きかかえられ、運ばれた。

医者だ。

( ;ω;)「お父さん!うわあああ!!お父さぁぁぁん!!」

僕は泣いた。大声で泣き喚いた。
幼心に、きっとこれから痛いことをするのだろうと感づいていたのかもしれない。
端から見れば僕は迷惑なガキだっただろう。だが、当時の僕からすればそんなの知ったことではなかった。
苦しくなるくらいに、僕は泣いた。



322: 病院とトラウマと僕のようです :2008/09/21(日) 04:03:43.89 ID:O/xBWzqsO
診察室だか処置室だかに入った頃には、苦しくなるくらいに、ではなく、実際に苦しくなっていた。
それでも僕は泣き叫んだ。そうしなければ、もう二度と両親に会えないような気がしたから。
そして、父と母の名を叫びながら

( ;ω;)「お父さぁん!!お母さん!!ウワワワァオェェェッ!!」

僕は吐いた。盛大に床にぶちまけた。

その時の酸っぱい臭いと、かすかに香るバナナの匂いを僕は今もしっかりと覚えている。
心なしか黄色い嘔吐物は、今でも瞼の裏に焼き付いて離れない。


おかげ様で、今現在、僕はバナナジュースが大嫌いである。



323: 病院とトラウマと僕のようです :2008/09/21(日) 04:06:47.28 ID:O/xBWzqsO
……二つ目に紹介するのは、五歳だか六歳の時の話だ。

僕は盲腸で入院していた。
大きな総合病院での生活は、それなりに快適ではあったが、手術の日が近づくにつれ、徐々に恐怖は増していった。
腹を切る、という行為が、非常に怖かったのを覚えている。
麻酔をするから痛くはないという事は知っていたが、それで安心できるほど僕はまだ大人では無かった。

そんな僕を勇気付けてくれたのは、とある看護士さんだ。


(*゚ー゚)「ブーン君、調子はどう?」

(*^ω^)「おっお、大丈夫だお」

(*^ー^)「そう、よかった」

彼女はとても優しかった。
付きっきり、という訳じゃないが、なにかと僕を気にかけてくれた。



324: 病院とトラウマと僕のようです :2008/09/21(日) 04:10:43.49 ID:O/xBWzqsO
例えば誰かに、彼女を尊敬していますか、と問われれば、僕は迷わずにはいと答えるし、もしかして彼女は初恋の相手ですか、と問われれば、僕はそうかもしれませんね、と答えるだろう。
そのくらい、僕はその看護士さんのことが好きだった。
脳内で美化しているのかも知れないけれど、結構美人だったし。


……そんな彼女の支えのおかげか、あるいは医者の腕が良かったからか、無事に手術は成功した。

麻酔から目を覚ました朝、僕は解放感で一杯だった。
退院したら、友達と遊べる。
大好きなサッカーもできる。
味気ない病院食ともおさらばだ。

……だがその解放感はすぐに消え去った。

( ^ω^)「……?」

下半身に違和感がある。
具体的に言えば、股間、に。



325: 病院とトラウマと僕のようです :2008/09/21(日) 04:14:28.99 ID:O/xBWzqsO
(;^ω^)「…………」

絶句だった。僕は五歳ないし六歳にして、初めて絶句するということを経験した。

ち○この穴に、「くだ」的な何かが刺さっている。
幼い僕の心を動揺させるには十分すぎる大事件だった。

(;^ω^)「……あうあう」

……面会に来てくれた母にさえ、その事は秘密にした。
今考えると、母は気付いたのかもしれないが。
実の母親とはいえ、尿道に何かが刺さっているのですがこれは何の真似ですかね、最近のトレンドですかね、などと聞く気にはなれなかった。

不思議と痛みは無かったので、それから何日か、僕は滞りなく、ある意味元気に療養生活を続けた。
尿道に刺さった何かなど、忘れてしまったほうが幸せかもしれない。
現実逃避以外の何ものでも無いのだが、当時僕は真剣にそう思っていた。



326: 病院とトラウマと僕のようです :2008/09/21(日) 04:18:39.69 ID:O/xBWzqsO
そんなある日のことだった。

(*゚ー゚)「ブーン君、こんにちは。手術頑張ったね。偉いね」

(*^ω^)「頑張ったお!」

久しぶりに、あの看護士さんが様子を見に来てくれた。いつものナース服と、いつもの笑顔に僕は心底癒された。
しかし軽くお喋りをした後、彼女はとんでもない行動に出たのである。

(*゚ー゚)「じゃあ、ちょっとごめんね」

( ^ω^)「お?」

(*゚ー゚)「お布団捲るね」

( ゜ω゜)「なっ!」

(*^ー^)「ちょっと痛いけど、我慢してね」

( ゜ω゜)「や、やめっ!アッー」

彼女は、勢いよくとは言わないまでも、なかなかの勢いで尿道に刺さった「それ」を引き抜いた。

( ;ω;)「い、痛っ!うう……」

(*^ー^)「はい、終わり」

僕の初恋も終わった。



327: 病院とトラウマと僕のようです :2008/09/21(日) 04:26:17.28 ID:O/xBWzqsO
……後で聞いたのだが、全ての元凶である尿道に刺さったそれは、手術後の為、立ってトイレに行けない僕が、用を足すためのものらしかった。

今でも、おぼろげながら彼女の顔は覚えている。
きっともうおばさんになっていて、もしかすると看護士を辞めているかもしれない。
ただ、排尿をするたびに思い出す彼女の笑顔を、僕は一生忘れられないだろう。



この他にも、病院に関するトラウマはまだまだある。
が、この二つ以外のものは洒落にならないものばかりなので、紹介するのはやめておく。



328: 病院とトラウマと僕のようです :2008/09/21(日) 04:30:32.76 ID:O/xBWzqsO
一応、最後に断っておくが、僕は医者や看護士さんを恨んでる訳ではない。
むしろ感謝の気持ちで一杯である。


でも、トラウマはトラウマだ。トラウマなのだ。

だから僕はこれからもずっと病院が嫌いだろうし、出来るだけ病院に行きたくないという気持ちも変わらない。


つまり、今シクシクと痛んでいる奥歯も、おそらく無視することになるのだろう。

憂鬱だ。



329: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/21(日) 04:32:15.07 ID:O/xBWzqsO
以上です。支援ありがとうございました。保守代わりにはなったかな。

では、読者に戻ります。



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