傷と罪のようです

358: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/21(日) 10:07:57.08 ID:Or2eVGOaO
俺は良くチャットをしている。普通のチャットでは無く、所謂なりきりチャットと言う奴だ。
なりきり歴は凡そ7年。もう行き付けのサイトでは最古参だ。

久々に新しい良さそうなサイトを見付けたから、フラフラと楽しんでいた。なりきりにも様々な出逢いや別れが有り、面白いし本気になれる。これも一つの世界、人生と言う物を楽しめる場だと思う。

さて、そろそろ本題に入ろう。俺はある日出逢った相手と仲良くなり、アドレスを交換して度々メールをしたりチャットで待ち合わせをして話したりと楽しんでいた。
そんな関係が一ヶ月、二ヶ月と経ち…出逢いから半年になろうとした頃、俺は自分の変化に気づいた。



360: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/21(日) 10:09:26.64 ID:Or2eVGOaO



傷と罪のようです



361: 傷と罪のようです :2008/09/21(日) 10:11:57.87 ID:Or2eVGOaO
('A`)「あ、メール来てる」

毎日のようにメールを交わす二人。時折、数日メールの感覚が空くと何か有ったかと不安になった。

('A`)「そいや、今日約束してたな。時間に遅れねぇようにしないとな」


数時間後、約束のチャット部屋


(;'A`)「今晩和〜、ちょっち遅れてすんません」

(*゚ー゚)「気にしなくて良いよ、私も来たトコだから!」

(*'A`)「有難う御座います、相変わらず優しい言葉あざっすww」

(*゚ー゚)「そう言うドクオ君も相変わらずだよねww」

(*'A`)「とーぜんッスwww」



362: 傷と罪のようです :2008/09/21(日) 10:13:31.65 ID:Or2eVGOaO

そっから数時間、他愛もない会話をした。が、ふと俺が話を切り出したんだ。

('A`)「あの…しぃさん、話が有るんです。実は…その…」

(*゚ー゚)「ん?何だい、お姉さんに言ってごらん?」
('A`)「………俺、しぃさんが好きです。お相手様としてじゃなく、女性として」

(*゚ー゚)「え………」

('A`)「だから、付き合って下さい」

(*゚ー゚)「……ゴメン。付き合いたくないとか、嫌いとかじゃないの。多分、私もドクオ君の事好きなんだと思う。でも…」



363: 傷と罪のようです :2008/09/21(日) 10:15:37.75 ID:Or2eVGOaO

('A`)「でも…?」

(*゚ー゚)「昔ね…なりきりで知り合った人とリアルに会った事が有るの。その人の事、好きだったんだと思う」

('A`)「………」

(*゚ー゚)「でね、ホテルに連れ込まれて色々酷い事されたの。痛い事とかも、色々ね。それから、リアルに繋がるのが怖いの…だから、今は付き合えない…ごめんなさい…」

(#'A`)「………」

(*゚ー゚)「…ドクオ君…?」

(#'A`)「そいつ、リアルにブチ殺したい。親でも解らんぐらいに整形して、アンタの前に土下座させて謝罪させたい」

(*゚ー゚)「……怒ってくれて、ありがと」



364: 傷と罪のようです :2008/09/21(日) 10:17:16.24 ID:Or2eVGOaO

それから数ヶ月。
俺は無理に付き合ってとは言わない事にした。彼女の傷を抉りたく無かったから。
前と変わらぬ関係を保ち、楽しく過ごしていた。

出逢いから一年を過ぎ、彼女も俺の事を好きだと言ってくれるようになった。俺に会う為にダイエットして、恥ずかしくない姿になりたいとも言ってくれた。


俺は今までの思いがはち切れ、自分の姿形や過去に患っていた鬱や多重人格の話なども全部打ち明けた。

それから、彼女からの返事は無くなった。



365: 傷と罪のようです :2008/09/21(日) 10:19:37.64 ID:Or2eVGOaO

四日後



('A`)「……今日、約束の日だったよな…来るかな…」

('A`)「…来ねぇよなぁ……そりゃ引くっつーのよなぁ……あー、待ち合わせの茶室行きたくねぇなぁ……」

('A`)「…………行くか」


俺は自分の中で賭けをした。
彼女が来たら、いつも通りにしよう。
彼女が来なかったら、全てを無かった事にして彼女の前から消えよう。

そして、約束の時間。約束の場所。
彼女は来た。
来てくれただけで嬉しかった俺は、すっかり舞い上がっていた。言うなれば、操に近い状態だった。



366: 傷と罪のようです :2008/09/21(日) 10:21:19.90 ID:Or2eVGOaO

(*゚ー゚)「あ、はは…裏切り者のしぃさんの登場でぇす…」

(*'A`)「来て、くれた…アハハハ、来てくれたよ!来ないんじゃないかと思ってた!」

(*゚ー゚)「…本当はね、来ないつもりだったんだ…裏切り者だし、ね…」

(*'A`)「裏切り者何かじゃないッスよ!俺、本当に嬉しくて…!」

(*゚ー゚)「ん、ゴメン…ちょっと待って。話、聞いてくれるかな」

('A`)「え、あ…はい。」



376: 傷と罪のようです :2008/09/21(日) 11:12:48.04 ID:Or2eVGOaO

彼女の話を要約するとこうだ。

俺の最後のメールの直後、バイト先の後輩からメールが来たらしい。
しかも、その内容が内容だった。話によると、『卒業式の日に体育館裏に呼び出してするような内容』らしい。

本気で悩んだと言っていた。
自分が好きだと言った俺か、本気で思ってくれてるらしい後輩か。

三日三晩悩み、仕事もミスを連発し、後輩とも顔が合わせられず、約束の時間の直前まで固まっていた結論が、『どちらも無かった事にする』だったそうだ。

しかし、彼女は来た。
何故かと言うと、キッチリと話をする為だと言う。
その内容は、俺にとって余りに辛い話だった。



378: 傷と罪のようです :2008/09/21(日) 11:15:17.42 ID:Or2eVGOaO

(*゚ー゚)「……ね、私は君を裏切った…だから、裏切り者。近くていつでも会えて凭れられる後輩を選んで、君を傷付けるんだから」

('A`)「……………」

(*゚ー゚)「でも、君とは友達で居たいの。…我儘だよね、最低だって解ってるんだけど…これが私の本心」

('A`)「……俺には、おめでとうとも何も言えないッス。けど、今日だけは勘弁して下さい…マジだった相手に完璧フラれて笑ってられる程、俺は強くないッス……明日、明日からはいつも通りに戻りますから」

(*゚ー゚)「…うん……お休みなさい……」



380: 傷と罪のようです :2008/09/21(日) 11:20:14.67 ID:Or2eVGOaO

彼女は茶室を出た。俺は暫く呆然としていた。
賭けには…負けた、のか?
解らねぇ。何も解らねぇ。
ただ、一つ解るのは俺の心の中が怒りと悲しみと悔しさでドロドロだったって事だけ。

俺が気付いた時には、そのドロドロを吐き出すように、一人の茶室で溜まった負の感情をブチ撒けていた。
今思えば、何故そんな事をしたのか解らない。それが無ければ、また未来は変わっていただろうに。



381: 傷と罪のようです :2008/09/21(日) 11:25:44.77 ID:Or2eVGOaO

(#'A`)「畜生オオォォォォォォォッ!!」

(#'A`)「畜生ッ!畜生ッ!畜生オォォォォッ!みんな…みんな大ッ嫌いだッ!」
(#'A`)「後輩君も、俺の気持ちも、全部死んじまえェェェッ!!」

しぃさんが入室しました
(*゚ー゚)「……………」

Σ(;'A`)「…ッ?!」

(#'A`)「見るな!見るなあああぁぁぁぁ!俺の汚い部分なんか見るなあああぁぁぁぁぁぁ!」

( ;A;)「見ないでよ…何で見るんだよぉ……何で帰って来ちゃうんだよぉぉ……」

(;゚ー゚)「…ご、ごめんなさい…名前がまだ有ったから…謝ろうと、思って……ごめんなさい!もう帰るから!傷付けて…ごめんなさい…!ゴメンナサイ…!」

しぃさんが退室しました



383: 傷と罪のようです :2008/09/21(日) 11:29:31.46 ID:Or2eVGOaO

('A`)「……………」

('A`)「…きえた……」

('A`)「俺の恋も…彼女の気持ちも…楽しい思い出も…全部きえた……」

('A`)「あははは…きえた……あは、ははははははは!」

('∀`)「きえた!何もかもきえた!あはははは!きえたきえたァ!あはっあはははははははは!」

(#'A`)「みんな…消えちまえェェェェェェェェェ!!」


ドクオさんが退室しました



384: 傷と罪のようです :2008/09/21(日) 11:35:46.22 ID:Or2eVGOaO

それから一月。
彼女からの連絡は何一つ無い。
俺が正常に戻り謝罪の意を込めたメールを送っても、返事は一言も無かった。


ただ、某SNSの彼女の日記に書いてあった文章の一節が突き刺さった。


『もう私の事を見なくてもいいよ
私も貴方を見ないようにするから』


涙が出た。ただ、涙が出た。
二日後、新たな文が書き足された。

『罪は消えません
何をしても消えません
私の罪は殺人よりももっと重い。
人の肉体ではない、
人の心を傷付けました。
ならば……
私は……』



386: 傷と罪のようです :2008/09/21(日) 11:39:59.99 ID:Or2eVGOaO

('A`)「…………俺のド阿呆……」


俺は二つの文を読み、メールを送った。SNSのミニメだが。普通のメールを送る勇気は、まだ無い。
内容は謝罪と、彼女に非は無い事。それと、彼女が許してくれるなら、友達に戻りたいと言う内容だった。

返事は無かった。
今も、返事は無い。



傷と罪のようです 完



389: 傷と罪のようです :2008/09/21(日) 11:42:22.04 ID:Or2eVGOaO

有難う御座いました。

先ず、本当にすまない。初めての投下でさるってビビってジタバタしてたら、一向に解除されない悪循環に陥ったっぽいんだ。

こんなモンの為に支援してくれた皆、本当に有難う。

ちなみに、これは俺の事だ。隠しも何もしない、俺の事だ。しかも、先日起きたばかりホヤホヤのお話。

兎に角、皆様に感謝と謝罪を。



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