( ^ω^)たちは現実から逃避したいようです

981: bIs9yfsB0 1/8 ◆M91keNlQGc :2008/09/23(火) 00:06:53.26 ID:4JNo7LNa0

('A`)「――端的に言ってしまえば、俺たちがこの世界にいることは何の意味もない。
    ただ何となく生まれてきて、それでもって死にたくないから生きているだけに過ぎないんだよな」

( ^ω^)「そもそも『生まれてきた』っていうのは受身形で、僕らの意思はどこにも含まれてないんだお」

('A`)「そうそう。それなのに世間一般の人々はみんな普遍的であることを強要するんだよな。
    個々の人格なんて全然尊重されてない。本当に苦痛だらけの世の中だよな」

( ^ω^)「未来に希望が持てないのに『未来の自分に悔いが残らない生き方を』なんて言われても…
      もし裏切られたら生きていけないお。でも今のままだと確実に後悔してしまうし…」


中学三年生の十二月末。
恋人達のクリスマスも間近となり、クラスメートは冬休みの予定に思いを馳せている中、


( ^ω^)「…受験制度なんて無くなってしまえばいいのに…」('A`)


僕たちはまさに『崖っぷち』に立たされていた。



    ( ^ω^)たちは現実から逃避したいようで



983: 2/8 ◆M91keNlQGc :2008/09/23(火) 00:07:50.46 ID:4JNo7LNa0

僕ブーンこと内藤ホライゾンが受験しようと思っているのは、県内偏差値がトップの私立の難関校。
当然、安全圏には達していない。この前の模試では努力圏だった。つまりは落ちる確率の方が高いって事。

そして隣で一緒に中二トークを繰り広げているドクオこと鬱田毒男の志望校も、ブーンと同じ難関校。
こちらの学力はブーン以下で、前回の模試ではなんと奮闘圏の称号を獲得した。落選確実って事。
もう一度確認するが、今は中学三年生の十二月末。そして模試があったのは十一月末。

廊下でほのぼの(?)と中二病がかったトークをしている暇は皆無だということは、誰が見ても明白だった。


( ^ω^)「でも必死に勉強するのは絶対に嫌だお」

('A`)「俺達って、万が一高校に入れても、絶対落ちこぼれるよな…」

( ^ω^)「本当に未来は真っ暗だお…」

('A`)「あーあ、死にてえ」

( ^ω^)「ドクオが言うと妙にリアルだおw」


それでも、志望校は変えなかった。「自分だけは受かるだろう」という根拠のない自信があったから。
万引きをするDQNと同じような発想。頭が悪いというよりは頭が弱いイメージだ。
そしてドクオも、俺と同じような考え方をしているようだった。

でも、現実はそんなに甘くなかった。



984: 3/8 ◆M91keNlQGc :2008/09/23(火) 00:09:07.44 ID:4JNo7LNa0

('A`)「俺、志望校変えるわ」

突然の宣告。
普段の中二トークをするのと同じような口調で言ったその言葉は、
僕をどん底に突き落とすような真っ暗なものだった。

( ^ω^)「…え?」

('A`)「俺の実力じゃ絶対行けなそうだしな。きっぱり諦めた方がいいかなって。
    奮闘圏とかもう話にならないっしょ」

('A`)「それに俺んち金あんまりないしな。私立高って受験料もすごい高いわけだしさ。
    お袋に負担かけてまで自分の学力確かめる気にはなれないし」

('A`)「まあブーンだったら大丈夫だろ。今から死ぬ気で勉強すれば行けるって。
    精々高校でハブられたりしないように気をつけろよww」

そうまくし立てて、ドクオはトイレに逃げて行った。
残された僕は、ただ目の前の現実に呆然としていた。

裏切られたように感じた。
小学校からずっと一緒だったドクオに、こんなに急に別れを切り出されて。
高校でも今まで通りに中二トークをドクオとするものだと思ってたのに。

ドクオに裏切られた。
親友だと思ってたドクオに裏切られた。

次の日から、僕はドクオと話さなくなった。
昼休みは、ただよく分からないままに勉強する時間へと変わった。



985: 4/8 ◆M91keNlQGc :2008/09/23(火) 00:10:21.45 ID:4JNo7LNa0

心に空いた大きな穴を塞ぐために、僕は一生懸命勉強をした。
僕が高校に受かることが、ドクオに対する仕返しのような気がした。
何としても受かってやる。そして現実から逃げたドクオを見下してやる。

醜い心を剥き出しにして、僕は勉強した。


そして、何事もなく合格した。
今までの模試の結果は、堕落しきった生活からきたものだったことを、僕はその瞬間に知った。

ドクオとつるんでいたから、今までの僕は駄目だったのか?
なら丁度いい。僕はもうこれまでの僕じゃない。
ドクオと違う学校に進んで、ドクオと交わらない生活を歩んでいくさ。
そうすれば。

そうすれば、もっと成功できるんじゃないか。


僕はいつからか、ドクオを害悪なものと捉えるようになった。
別れの挨拶は、なかった。


僕も、ある意味では現実逃避をしていたんだ。



986: 5/8 ◆M91keNlQGc :2008/09/23(火) 00:11:07.01 ID:4JNo7LNa0
高校生活は、全然楽しくなんかなかった。

部活は消去法から無部を選択。
クラスの仲間とは全然打ち解けられず、いつの間にか孤立。
進学校なので、周りの奴は一つの例外もなくみんな頭がいい。


( ^ω^)「みんな頭いいのになんでスポーツも万能なんだお…」

( ^ω^)「しかもなんでみんな入学二ヶ月でここまで仲良くなってるんだお…」

( ^ω^)「僕だけ浮いてるみたいだお、ってか実質浮いてるお…」


( ´ω`)「疲れたお…」


僕の精神は限界だった。
もうこんな学校行きたくない…。家に引きこもりたい…。
マイナスな考えばかりが頭をよぎるようになった。

そして。
何の前触れもなく、急にドクオからメールが来た。


「今度の日曜日、暇なら俺んち来いよ」



988: 6/8 ◆M91keNlQGc :2008/09/23(火) 00:13:26.82 ID:4JNo7LNa0
('A`)「おう、久し振りだな」

自尊心なんて欠片も残っていなかった。学校から逃れられればそれでよかった。
僕は確実に病んでいたと思う。
ドクオからの誘いは、救いのように感じられた。

( ^ω^)「で、急にどうしたんだお?」

('A`)「いや、あのさ…
    …お前、死んでないかな、って」

( ^ω^)「え」

( ^ω^)「 」

( ゚ω゚)「馬鹿にすんなお!自殺してるわけないお!久々に会って一言目がそれかお!」

('∀`)「悪い悪いwww だって高校入ってからお前の話全然聞かないし…」

('A`)「…それにお前、すごい疲れてる顔してるぞ?大丈夫か?」

気づいたら泣きだしていた。

ドクオも、高校で急に友達が増えるわけもなく、今も数人の友達と話す程度しか接点がないらしかった。
曰く「こういうのには慣れてる」らしい。まあ独男だし。毒男だけど。
別の高校に進むのも結構苦渋の決断だったらしい。今となっては昔の話。

お互いに近況報告をして安心し合った僕たちは、夜が更けるまでずっと中二トークをしていた。
半年振りくらいのそれは、信じられないほど面白かった、気がする。いつの間にか夜は更けていた。



989: 7/8 ◆M91keNlQGc :2008/09/23(火) 00:14:35.99 ID:4JNo7LNa0
('∀`)「なあ、来週も遊ばないか?どうせお前暇だろ?」

( ^ω^)「ふざけんなww 遊ぶに決まってるおwww」

そうして僕たちはまた別れて行った。

今でも僕たちはたまに遊ぶ。
くだらない話をして笑い合う。
それが僕たちの現実逃避の方法で、ある意味ではリアルだった。

そして今。


(´・ω・`)「ねえ、その本何?」

( ^ω^)「純粋理性批判っていう哲学の本だお。君も読むかお?」

(´・ω・`)「その本中二臭いだろ。とっくの昔に読んだよ。
       …君もカント好きかい?」


僕には、新しい転機が来ようとしているみたいだ。

未来は誰にも分からない。明るいのかも、暗いのかすらも。
だから無邪気に中二トークができるのさ。


    ( ^ω^)たちは現実から逃避したいようです・了



991: 8/8 ◆M91keNlQGc :2008/09/23(火) 00:18:57.81 ID:4JNo7LNa0
後書き

とっても眠いです。頭がボーっとしてます。
よって色々ごちゃごちゃな出来になりました。申し訳ない。

本当はもうちょっと長く真面目にやろうと思ったんですが、
日付超えちゃったし明日も予定入ってるし

( ^ω^)「ま、いっか」

なノリででかしてしまいました。
ちなみに自分ブーン小説を書くのは初めてです。本当に申し訳ない。

この小説を読んでいただいて、ちょっとでも楽しい思いをして頂けたら幸いです。
板汚し失礼しました。

では。



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