('A`)ドクオと古いトモダチなようです
- 3: Juno ◆ceCH051qMk :2008/09/22(月) 23:23:20.49 ID:v+LXasrZ0
- ('A`)ドクオと古いトモダチなようです
これは、今から数年前、まだ自分が青春を謳歌できた頃の、思い出話である。
小学校の頃から続く腐れ縁で結ばれた、男女5人の、思い出話である。
○年越しの「つかみ」
放課後、正門前。
夕日のかげる長い坂道に、いい年した二人の男が立っていた。
一人は、群青色のジャンパーを羽織った、丸すぎるピザ。
もう一人は、黒いトレンチコートを羽織った、顔色の悪い痩躯。
彼らは夕日を背負う母校を、眺めていた。
('A`)「・・・・・・久々に来るとよ、あの頃が懐かしいとか思うよな?」
( ^ω^)「ブーンもそう思うお。・・・・・・いろいろあったからかおね?ドクオ」
('A`)「ああ」
ドクオと呼ばれた痩躯の男が、懐からタバコとライターを取り出した。
( ^ω^)「タバコ、やめたんじゃなかったお?」
('A`)「こいつは特別だ」
ケントメンソール。かつてこの母校で嗜好し始め、医者に止められた今でも、時々吸っている。
1本くわえ、火をつける。葉の薫りよりも強いメンソールの香りが、口に広がった。
そういえば、肺に入れずふかしだけで1本吸いきるのは、あいつも一緒だったな、と。
柄にもなく、そんな感傷に浸った。
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/09/22(月) 23:25:08.49 ID:v+LXasrZ0
- ( ^ω^)「――――ドクオ、聞きたいことと謝りたい事があるお」
3本目も終わりに差し掛かった頃、突然ブーンが口を開いた。
秋口の日は短い。周囲は薄暗く、既に夕闇に沈みつつある。
('A`)「ん?どうしたよ?」
(;^ω^)「――――とりあえず、今全力で走れるかお?」
(;'A`)「3本ニコった後だ、1時間は走れねぇぞ・・・・・・」
(;^ω^)「おっおっ。そーだったお。・・・・・・今のうちに謝っとくお」
ブーンは1歩後退すると、両手を広げた。このポーズは――――
(;^ω^)「すまんお――――読みが外れたようだお」
――――ヤツの、全力疾走の――――
「ドックオーーーーーーッ!!」
一瞬、後ろからヘッドライトで照らされたと思うと、既にブーンはこちらに背を向けてスタートを切っていた。
――――声に聞き覚えがある。ありすぎる。全く、あれから何年経ったと思ってやがる。
タバコを素早く携帯灰皿に押し込むと、ブーンとは対象的に、俺は振り向いて両手を広げた。
迫り来る、スクーターのヘッドライトに。
从*゚∀从「ドックオーーーーーーーッ!!」
(#)A`)「・・・・・・ってそれは危nモルスァ」
回避行動もとれず、スクーターに轢かれた。
でも無傷ってすごくね?(実話)
- 8: Juno ◆ceCH051qMk :2008/09/22(月) 23:27:59.37 ID:v+LXasrZ0
- うはwww名前欄入れ忘れたwww
○年前の「サイカイ」
VIP中学入学式当日。北東にあるこの地は春の訪れが遅く、まだ肌寒い風が吹く。
さすがに雪は溶けたが、まだ綻び始めたばかりの桜並木では、いささか雰囲気が寒すぎる。
体育館から西校舎へと歩くのは、真新しい学生服を着た痩躯の男だった。
('A`)「正直マンドクセ・・・・・・」
入学式を終えると、各クラスでHR、その後教材の受け渡しとなり、4時ごろには部活紹介のため実質フリーとなる。
普通、趣味なりなんなりを取っ掛かりに新しい友達作りに精を出したり、昔馴染みの友人と集まってワイワイ騒いだりと、学生ならば明るく元気に動き回るものだ。
しかし、腰が重いというか、そういうのが面倒で仕方がないが故に、喧噪を避けて廊下をぶらついていた。
その結果。
(;'A`)「・・・・・・ココドコデスカ?」
迷った。
Zを横倒しにしたような形の校舎は、中央の連絡通路を境に東校舎、西校舎と呼ばれる。
面倒なのは、西3階、東4階と、西より東の方が階が1つ多く、しかも音楽室や美術室といった人気のない教室ばかりが東4階に集められている。
無論、それは後から知ったことであるが。
人がいればまだ聞けるが、まだ他も準備ができていないのか、人影がない。
静かすぎるせいか、自身も音を立てないよう、自然と歩方や呼吸まで制限してしまう。
鳴るは風、響くは足音、遠くに階下の人の声――――
- 9: Juno ◆ceCH051qMk :2008/09/22(月) 23:29:29.02 ID:v+LXasrZ0
- ――――静かで、風が抜け、人気もない。個人的には居心地が良いのだが、入学早々人を避けてどうするよ。
( 'A`)「(・・・・・・音楽室・・・・・・2つあるってことは、吹奏楽部と合唱部、軽音のどれかがある、か)」
――――吹奏楽部ならお邪魔してみるかな。曲がりなりにも楽器は吹ける。誰か知り合いでもいればいいが。
などと考えながら、廊下をふらついていた。
「ぅわ、人気ないなぁ」
後ろ、自分が上ってきた階段の方から、女の声がした。
鳴るは風、運ぶは香り、繋ぐはかつての縁(えにし)と記憶――――
そこに
从 ゚∀从
彼女は、颯爽と現れた。
記憶に残る、柑橘系の香りのまま。
真新しいセーラー服に、小さな鞄を提げて。
視線が合う。
はじめは偶然だと思った。
だが、違う。明らかにこちらを見ている気がする。
- 10: Juno ◆ceCH051qMk :2008/09/22(月) 23:31:15.85 ID:v+LXasrZ0
- ( 'A`)「・・・・・・」 从∀゚ 从))))
('A` )「・・・・・・」 从∀゚ 从))))
( 'A`)「・・・・・・」 从∀゚ 从))))
Σ( ゚A゚)「!!」 「♪」从∀゚ 从
――――気がついた。いや、思い出した。この女は記憶にない。だが
(;'A`)「(ミカンの香りと、長い前髪と・・・・・・猫目!)」
俺はこの子によく似た少女を、5年も前に見たことがある。
その子は親の仕事の都合で、前の学校を途中で去っていった。
―――その時に、俺は何かを預け、何かを預かったような?
なんだっけ・・・・・・拳?勝負?心?
从 ゚∀从「・・・・・・ドクオ?」
(;'A`)ノ「お、おぅ・・・・・・久しぶりだな、ハイン」
「ドックオーーーーーーッ!!」三从*゚∀从ノ(#)A`)「ミギャ」|壁
「あ」Σ从*゚∀从ノ(#)A)ゴッ!|壁
「ドクオ!?ドクオ!?」从;゚∀从ノシ(#)A)キュゥ|壁
5年ぶりのエンゲージ。
再会と同時に抱きつかれ、壁に頭を打ち、素で気を失った。(実話)
- 11: Juno ◆ceCH051qMk :2008/09/22(月) 23:33:15.05 ID:v+LXasrZ0
また、この日この時を以て、
5年前、別れ際に交わした勝負を、
再開することとなる。
- 12: Juno ◆ceCH051qMk :2008/09/22(月) 23:35:02.61 ID:v+LXasrZ0
- ○年続いた「日常」
( ^ω^)「おいすー」
('A`)「おいす〜」
ブーンは毎朝、俺のことを迎えに来た。
同じ学校、同じクラス、家も近所の昔馴染み。
学校までの20分程の語らいは、俺達にとって必要不可欠なものだった。
('A`)「・・・・・・そういや、昨日のテレビ見たか?空飛ぶバイクとか」
( ^ω^)「おっおっ、モロ見えニュー速部だおね?黒いバイクが飛んでたおw」
(*'A`)「あれいいよな!俺もああいうの造ってみてぇよww」
(*^ω^)「おっおっwwブーンは乗ってみたいおww」
lw´‐ _‐ノv「自分の技術や体格を見てから物を言え」
(;'A`)「うおっ!朝から痛いとこ突くな!」
( ^ω^)「おっおっwおはようだおw」
lw´‐ _‐ノv
シュー。近所に住む同級生。美術部。
俺と同じ系統の趣味を持つ、この頃は数少ない「同族」の一人。
何を考えているのかよく分からんが、恐ろしいまでの洞察力を誇る。
('A`)「そういやクーは?」
lw´‐ _‐ノv「既に行った模様。生徒会は何かと忙しいとさ」
( ,,゚Д゚)「原因の一人が何を言ってやがるゴルァ」
(*゚ー゚)「もう、朝から威嚇しないの」
('A`)「あれ、ギコさんにしぃさん、今日は早いですね?」
(*゚ー゚)「うん、ちょっと今日は忙しいからね」
( ,,゚Д゚)(*゚ー゚)
一つ先輩のギコさんとしぃさん。
ギコさんは柔道部の部長を、しぃさんは生徒会の書記を務めている。
構内でも有名なカップルで、暴走しがちなギコさんを押さえるストッパーのしぃさんの手腕によく助けられる。
- 13: Juno ◆ceCH051qMk :2008/09/22(月) 23:37:06.00 ID:v+LXasrZ0
- lw´‐ _‐ノv「なにを言っておられるか全く分かりませんが主将」
( ,,゚Д゚)「――――じゃぁ聞くが、昨日学校近隣の各玄関先に顔面の掘られたカボチャが届けられていたそうだが、心当たりは?」
lw´‐ _‐ノv「いやん♪それは文化祭に出品予定の習作よ♪」
マチナサイ(;゚ー゚)つ(((#,,゚Д゚)ゴルァ
(;^ω^)「心当たりとかそんなレベルじゃないお」
('A`)「今年はカボチャか?顔面って、何をどう掘ったんだよ」
lw´‐ _‐ノv「ふっふっふっw世の中にはカービングなる技術があってだな、薄いナイフで野菜や果物をアートに出来るのだよ」
('A`)「また新たな技を・・・・・・」
lw´‐ _‐ノv「(ちなみに現在要姉を作成中。文化祭には新刊も間に合いそうだ)」
(*'A`)「(嫁ktkr!新刊は俺の分もストック頼む)」
lw´‐ _‐ノv「(お代はいつもので)」
(;^ω^)「こっちはなんか取引してるお」
ξ ゚听)ξ「道の真ん中で何やってるのよ・・・・・・」
('A`)「お?おはよう」
(*^ω^)「おはようだお」
(*゚ー゚)「おはよ」
ξ ゚听)ξ
クラスの違う同級生のツン。二人姉妹の姉だ。妹をデレという。
当時ブーンの彼女だった、可憐な少女だ。
病気のせいで身長が135cm程度しかなかった彼女は、成長しない自分の身体にコンプレックスを抱いていた。
- 14: Juno ◆ceCH051qMk :2008/09/22(月) 23:39:06.69 ID:v+LXasrZ0
- ξ ゚听)ξ
クラスの違う同級生のツン。二人姉妹の姉だ。妹をデレという。
当時ブーンの彼女だった、可憐な少女だ。
病気のせいで身長が135cm程度しかなかった彼女は、成長しない自分の身体にコンプレックスを抱いていた。
ξ ゚听)ξ「で、なにしてるの?」
('A`)「おおよそいつもの風景。
シューの奇行→ギコさん発動→しぃさん制動。
なんならお前も参加してくか?観客として」
ξ ゚听)ξ「冗談wwこのまま遅刻なんてしたくないわよww」
(*^ω^)「だおだおw」
ξ ゚听)ξ「――――それにドクオ、この時間じゃ、もう手遅れにならない?」
('A`)「ん?手遅れ?」
現在時刻8:45。HRまであと15分ある。手遅れには・・・・・・
ん?「手遅れ」・・・・・・
从 ゚∀从「確かに手遅れかもww」
( ゚A゚)「ハイン!!」
从 ゚∀从
ハイン。クラスの違う同級生。
一応最古参の昔馴染みだが、一度転校し、音信不通になっていた。
今年になって戻ってきた。幾分系統が異なるが、似た趣味を持つ「同族」の一人。
- 15: Juno ◆ceCH051qMk :2008/09/22(月) 23:42:50.05 ID:v+LXasrZ0
- 从 ゚∀从「おはよう。そしてドクオ、放課後ちょっと付き合って」
(;'A`)「あのぉ、今日は俺、ちょっとブーンと予定が・・・・・・」
从 ゚∀从「ふ〜ん・・・・・・」
从 ゚∀从「白ワンピ、可愛かったな」ボソッ
(;゚A゚)「全力でお供します!させてください!!」
从 ゚∀从「おぉ、助かる♪」
昔馴染みでもごく一部しか知らない黒歴史。
これを振りかざされたものは、おとなしく従うほか無いのである。(実話)
あれは事故だ。ほんの出来心に偶然が重なった事故だったんだ(本音)
- 17: Juno ◆ceCH051qMk :2008/09/22(月) 23:44:57.83 ID:v+LXasrZ0
- ○年前の「過ち」
人間、誰でも完璧ではない。必ず欠点なり苦手なものなりがある。
多分に漏れず、俺も欠点が存在する。
ただ、俺の欠点は「現在にあるもの」より、「過去に作ったもの」の方が大きな問題になっていた。
チラッ(;'A|柱
ススス(;'A`)|柱
――――東校舎一階、中央廊下。昇降口まで直線15m。障害物なし。付近に人影なし。完全にノーマークだ。
(;'A`)「(悪いなハイン。俺は今日は予定があるんだ。お前に捕まる訳には・・・・・・!)」
予鈴まで残り約5分。離脱するなら――――今だ!
('A`)「――――さらば!」
三(;'A`)
三三(;'A`) |柱
三三(;'A`)' 从|柱
三三Σ(;゚A゚) \从∀゚ 从|柱
ハグ( ゚A从∀゚ 从|柱
从 ゚∀从「や」
(;'A`)「おう」
从 ゚∀从「どこ行くの?」
(;'A`)「ちょっと職員室まで」
从 ゚∀从「真顔で硝子張りの嘘つくのはやめようね?職員室と逆方向に鞄もって疾走してたらあり得ないでしょ?」
(;'A`)「はい。サーセン」
从 ゚∀从「これは、白ワンピの写真掲載じゃぬるいかもね」
(;゚A゚)「!」
从 ゚∀从「昨日アルバムから発掘したフリフリスカート姿の写真も載せようか」
(;゚A゚)「!!」
从 ゚∀从「そういえば、私のチェックのプリーツスカートの写真もあったっけな」
(;゚A゚)「サーセン!全力で手伝わせて頂きます!!だからお慈悲を!!お慈悲をぉ!!」
从 ゚∀从「ん〜、どうしよっかな〜♪」
- 18: Juno ◆ceCH051qMk :2008/09/22(月) 23:46:29.37 ID:v+LXasrZ0
- (;゚A゚)「ちょっ、何でもやるから!頼む!!」
从 ゚∀从「・・・・・・じゃぁ、滞ってるポスターづくりを手伝ってもらおうか」
(;'A`)「あ、あぁ、それくらいなら。ベタ担当か?」
从 ゚∀从「ん。あとペン入れも手伝って。一人じゃちと広い」
( 'A`)「あいよ」
从 ゚∀从「――――あと、さ。ちょっとお願いが」
( 'A`)「ん?」
从 -∀从「ちょっと、寒くてさ。抱きしめてくれない?」
( ゚A゚)
(;'A`)「――――めっちゃ人いるから、居なくなってからでいい?」
从 -∀从「写真3枚が校内新聞に掲載されてもいいなら」
(;'A`)「――――保健室か上行ってからで。最大限の譲歩だ」
从 ゚∀从「ん。逃げるなよ」
(;'A`)「制服の裾捕まれてちゃ逃げれねぇよ」
( 'A`)「ところで、あの幼少時代の黒歴史、消しちゃだめか?俺の女装した写真なぞ大した価値無いだろ」
从 ゚∀从「だめにゃん♪アレがないとお兄ちゃんに逃げられるにゃん♪」
(;'A`)「可愛く言ってもだめ。頼むから」
ギュッ从 -∀( 'A`)
从 -∀从「ドクオが・・・・・・約束を思い出してくれたら、いいよ」
( -A-)「・・・・・・」
( 'A`)「まだ、美術室には着いてないぜ?」
从 ゚∀从「ん、そうだったね」
結局4階の美術室で暖めてあげました。
同時に、カウンセリングまがいのこともしてみました。
翌日、校内新聞に从 ゚∀从と('A`)熱愛の文字が躍りました。(実話)
- 19: Juno ◆ceCH051qMk :2008/09/22(月) 23:48:36.58 ID:v+LXasrZ0
- ○年目の「人間関係」
クラスに必ず居るやつ、というと、どんなヤツを思い浮かべるだろうか?
メガネの秀才?大柄な大将?窓際に座るマドンナ?
あいにくうちのクラスにはいずれも居なかったが、代わりに「カウンセラー」がいた。
といっても、免許を持っているわけでもなく、学校には週3日来る専門のカウンセラーがいる。
では、なぜそいつが「カウンセラー」と呼ばれていたかというと。
( ;ω;)「ドクオ〜!相談に乗って欲しいお〜」
lw´‐ _‐ノv「ドクオ殿、次の新刊のネタについて意見を」
(*゚ -゚)「ドクオくん、ちょっとギコの事で、聞いてほしい事があるんだけど」
('A`)「・・・・・・」
不思議と相談事が舞い込んでくるからである。
いや、いちいちそれに律儀に答えているあたりも問題なんだろうが。
从 ゚∀从「いやいやモテるねドクオww」
('A`)「これが笑い事じゃねぇっつの・・・・・・」
逃げ場の一つとなった美術室のベランダ。この時期は少し寒いが、静かにしたいときにはここほどいい場所はない。
喧騒ははるか遠くに。自身の思いはすぐそこに。普段人気の少ない東校舎四階の、一番手前にあるこの教室は、来るものを拒まぬ隠れ家だった。
从 ゚∀从「でもいいんじゃない?他人に頼られるってのは、それくらいの価値があるってことでしょ?」
('A`)「全てがそうでもないさ。俺の場合は、価値どうこう以前に「話せそうな雰囲気」ってので話してくるのが多い」
――――他人からの評価は大体決まっている。「落ち着いている」「肝が据わっている」「年を食っている」
いずれも、滲み出すオーラ的な何かを指して言っているんだろうが、実際そんなことはない。
自分でも分かるほど子供っぽいところが多い。外界の評価と内面の性質は、ほぼ完全に相反している。
それでもそんな評価ばかりを得てきたのは・・・・・・他ならぬ、俺自身にあったんだと思う。
- 20: Juno ◆ceCH051qMk :2008/09/22(月) 23:50:38.28 ID:v+LXasrZ0
- ('A`)「――――ハイン」
从 ゚∀从「ん?」
('A`)「お前は、俺の事をどう見てる?」
从*゚∀从「そりゃ、便利なアシで仲のいい友達で、抱き枕だ」
(;'A`)「お前がどう思ってるかじゃなくてだな。お前は俺をどういう性質の人間だと思うってことだ」
从 ゚∀从「なんだ、簡単じゃん。
――――落ち着いてて何事にも動じない人。大人びた雰囲気の人間。
と見せかけて、実は「驚く」「悲しむ」「怒る」といった感情表現が下手な、内向的詩人」
从 ゚∀从「あと、自分のせいで他人が傷つくのを嫌う、自己犠牲主義者。偽善者ってのも含まれるね」
('A`)「・・・・・・」
从;゚∀从「えっと、怒った?」
('ー`)「いや、感心した。大した観察力を持ってるな、お前は」
从;゚∀从「・・・・・・頭でも打った?」
('A`)「真顔で心配すんな」
この時だけ。本当にこの時だけ、俺は彼女に心から感謝した。
あぁ、この世界にも、俺の内面に踏み込んでくるヤツがいるんだな。
((从;゚∀从))「・・・・・・さむいな、さすがに」ブルッ
( 'A`)「・・・・・・ハイン」
从 ゚∀从「ん?」
(-A从 ゚∀从ギュ
从 ゚∀从「・・・・・・え?」
( -A-)「さっきの礼だ。今回だけな」
从*゚∀从「おう♪」
彼女の柑橘系の香りが、少し優しく感じた。
その光景を後輩に見られ、しばらく廊下を歩けなかったが。(実話)
- 21: Juno ◆ceCH051qMk :2008/09/22(月) 23:52:13.90 ID:v+LXasrZ0
- ○年の絆
この話は、あまり明確な記憶がない。
ただ、あいつが泣いていて
( ω )
あいつが倒れていて
ξ )ξ
あいつが血まみれになって
从 ∀从
あいつが俺をひっぱたいた
lw´ _ ノv
だから、この話だけ、残された俺の記憶と、当事者達の記憶を元に、現実に限りなく近いレベルまで再構成している。
厳密な意味でのノンフィクションではないかもしれないけれど。
だが、この話があって、初めて今の俺達の状態を語れる。
故に、この話を最後に書こうと思う。
あの日は、確か朝から雪が降っていた。
教室にはファンヒーター1機しかなく、廊下側の席だった俺は一日中黒いコートを着て過ごしていた。
これが親父からもらった古いトレンチコートで、厚手だが重くて大変だった。
(('A`))「うぅ、さむ」
( ^ω^)「おっおっwブーンは暖かいおw」
(('A`))「てめぇは肉ジャン着てるからな」
- 22: Juno ◆ceCH051qMk :2008/09/22(月) 23:54:03.09 ID:v+LXasrZ0
- ポケーξ ゚听)ξ「・・・・・・」
('A`)「(あれ・・・ツン、様子おかしい?)」
(;^ω^)「(――――入院していたデレちゃんがICUに入ったらしいんだお。もう三日もあの状態だお)」
('A`)「(ふーん・・・・・・大変だな)」
――――なんだろう。何か、胸の奥に、引っかかる。鉛の針を打ち込まれたような、手首に何か巻き付いたような。
( □_□)「授業始めるぞー、教室戻れー」
授業開始と同時に、思考中断。
だけど、何か、気になった。
――――今思えば。この時何か手を打っておけば、この後の事態を回避できたのかもしれない。
でも――――雑多な知識しか持ち得ない俺には、そこまでの根性も解析能も無かった。
故に、おおよそ最悪といえる事態を引き起こす。
最初に気がついたのは誰だったか。
午後の授業にツンの姿がなかった。
放課後、いつものメンバーで集まった俺達は、当然この話題に触れた。
lw´‐ _‐ノv「ふむ、ツン嬢が居なくなったか」
从 ゚∀从「職員室に早退する旨は伝えられていないそうだ。親御さんともまだ連絡がとれないらしい」
(;^ω^)「デレちゃんはICUに入ってるお。もしかしたら、何かあったかもしれんね」
('A`)「・・・・・・」
- 23: Juno ◆ceCH051qMk :2008/09/22(月) 23:55:42.78 ID:v+LXasrZ0
- 从 ゚∀从「ん?どうしたよドクオ」
('A`)「ん・・・・・・どうも、気になってな。やばい気がするんだ・・・・・・この辺が、やけに重い」
そういって、俺は自分の鳩尾の辺りを指した。
他の連中は気に留めなかったが、一人だけ、それに気がついたやつが居た。
从 ゚∀从「・・・・・・ブーン」
( ^ω^)「お?」
从 ゚∀从「ちょっとツンの家に急いで連れてってくれないか?」
(;^ω^)「お?いいけどなぜに?」
从 ゚∀从「――――勘だ。最悪の」
俺達は、学校から自転車に乗ってツンの家へと急いだ。
車もバイクも無く、外は雪が降っていたが、自転車で急いだ。
――――道中、動機がひどくなるのが分かった。体温が下がってるのに、汗がでて、手袋が滑る。最悪の気分だ。
ツンの家に着いて、違和感を感じた。
ツンの自転車はある。車はない。恐らく病院か仕事に行っているのだろう。
その状況下で、玄関の鍵が開いていた。
玄関に上がると、奥からいやな臭いが、した気がした。
- 25: Juno ◆ceCH051qMk :2008/09/22(月) 23:57:12.78 ID:v+LXasrZ0
- lw´‐ _‐ノv「靴はある・・・・・・」
('A`)「・・・・・・」
( ^ω^)「お?微香空間変えたのかお?」
――――気づいた。もう一つの違和感。この臭いは嗅いだことがある。しかも、割と最近だ。
――――この臭いは――――親父のいる警察署の、あの車庫の一角で嗅いだのと、同じ臭い――――
( A )「――――」
从 ゚∀从「ドクオ、これは・・・・・・」
――――血の臭い――――
(;'A`)「ブーン、ツンの部屋は?!2階か?!」
(;^ω^)「お?そうだお?」
聞くなり、俺は階段を駆け上がっていた。後ろから土足だとか聞こえたが、そんなの関係ない。
――――最悪の事態を想定。存命している場合、救命に必要な知識と技術をフィードバック。経験が必要な場面においては――――
ξ )ξ /.
( A )「――――」
――――ストップ。ホワイトアウト。最悪の事態、だった。
天気が悪く室内が薄暗かったのは幸いだったのかもしれない。
絨毯は血まみれで、原色不明。まだ乾いておらず、室内には独特の錆びた臭い。
その中心には件の少女。ただし、右手には血の着いたカミソリを持ち、左手には
( ω )「・・・ツン?」
lw´‐ _‐ノv「これは・・・」
从 ゚∀从「――――冗談、だろ」
左手首には、深い切り傷と、多量の出血痕
- 26: Juno ◆ceCH051qMk :2008/09/22(月) 23:59:03.34 ID:v+LXasrZ0
- ――――胸の重みが外れ、意識が、白くなる。
( ;ω;)「ツン!ツン!!」
あいつが、走り寄って、泣いている
ξ )ξ
あいつが、血だまりの中、倒れている
从;゚∀从「クソ!出血が酷い!!」
あいつが、あいつを抱き起こし、血にまみれる
思考がまとまらない。知識も技術も、必要なものは取り出せるのに、何をどう使用したらいいか分からない。
ツールだけあっても、説明書がないと使えないのと、同じ。
説明書が、プランニングが、行動設定が、出来ない。
――――出血量から、彼女の残り時間を推察。あまり長くはない。
そこまで理解できているのに。このままでは、仲間を一人失うと理解できているのに・・・・・・
俺は、凍ったまま――――
パァンッ!!
( ;ω;)「お?」
从;゚∀从「なに?!」
突然の乾いた音に、二人が反応する。反応すると言うことは、彼らが音の発信源では無いと言うことだ。
突然の音は
(メ'A`)
俺の左頬と
lw´ _ ノv
彼女の右手がぶつかった事によって生じていた
- 27: Juno ◆ceCH051qMk :2008/09/23(火) 00:00:05.33 ID:VVGRRu+Y0
- (メ'A`)「――――え?」
何が起こったのか、分からなかった。
lw´‐ _‐ノv「――――目は、覚めたかな?少年」
目が覚めた。シューの言葉に、ようやくその意味を知った。
lw´‐ _‐ノv「多分、君が一番こういった状況での動き方を知ってる。だから、頼みたい」
lw´‐ _‐ノv「ツンを救うための指示を」
(メ'A`)「・・・あ・・・」
lw´‐ _‐ノv「今なら、出来るだろう?少年」
――――出来る。思考が追いついた。何が必要か、わかる・・・・・・
( 'A`)「――――おぅ。応えるぜ、シュー」
視線を前へ。もう一度、ツンとその周辺状況を確認した。
自分を自分の後ろから眺めるような感覚。
――――そうだ、客観的に状況を捉え、必要なものを見定めろ。自分を含む全てを遊戯盤と駒として捉え、最善手を打て。
――――出血量、変色具合から、残り時間を8分と目安推定。
――――室温は低く、体温も低下している事から、大量の出血の危険性は低い。
――――過度な保温はこの状況下では出血量の増大を招く危険性があるため、止血処理の優先が必要。
――――通常の圧迫止血では対処しきれないため、てこ圧迫止血による大動脈管の止血が必要。
――――既に意識不明。生存率確保のため、意識回復処置を実施。ただし、動かさないよう注意。
――――止血帯の使用は3時間以内。救命センターへの搬送は可及的速やかに実施。連絡必要。
――――必要手順は以上の項目。これらを並列して処理、実行。メンバー分けは適材適所に。
――――以上内容を実施した場合、彼女の生還率は、50%前後と推定。
('A`)「オーケー、十分だ」
――――ギアが入り、クラッチが繋がる。アクセルを開けば
- 28: Juno ◆ceCH051qMk :2008/09/23(火) 00:01:27.55 ID:VVGRRu+Y0
- (#'A`)「ブーン!119に電話して、救急車1台、大至急だ!!」
(#'A`)「シューは他の部屋から毛布と清潔なタオルを数枚!!」
(#'A`)「ハイン!!止血と保温と意識回復を同時にやる!!手伝え!!」
――――凍った歯車が、動き出した。
その後の事は、正直ほとんど誰の記憶にも残っていなかった。
ブーンは半泣きで救急車を呼び、学校へも連絡を入れてくれた。
シューは毛布やタオルの他に、箒や救急箱を持ってきてくれた。
ハインはツンの保温と意識回復に努め、俺は包帯をベースにタオルと箒の柄、コートのベルトで圧迫止血を施した。
救急車が到着したのは、電話から7分程度後。予想残り時間ぎりぎりの、ヒーローの登場だった。
そして、ツンを乗せた救急車と共に病院へ行き
彼女の妹、デレが亡くなったことを、俺達は知った
ツンが回復してから聞いた話であるが、あの日はデレが自宅に帰って来る日だったのだそうだ。
しかし、三日ほど前から容態が急変し、ICUに入れられた。医者からは、だめかもしれないと告げられていたらしい。
家の電話に来たその連絡を、一人で帰った彼女が受けてしまった。
元々不安定な精神状態だった彼女は、半ば日常化していたというリストカットをし、寒い部屋でいつもより深く切ったらしい。
俺達がそこに現れたのは、完全な偶然という事になっている。
そして今のところ、俺はあそこまで気分の悪くなるような事態には、陥っていない。
- 29: Juno ◆ceCH051qMk :2008/09/23(火) 00:02:14.84 ID:VVGRRu+Y0
- ○年越しの後日談
その日も雪が降った。あのときと変わらず、寒い。
从 ゚∀从「――――しっかし、あの時はさすがに駄目かと思ったよ」
('A`)「ん?あの時?」
从 ゚∀从「ツンが倒れてた時さ。私の親も鑑識だったから、どのくらいで仏さんになるかは聞いてたから」
('A`)「あぁ、あれか。なに、普通は手首を多少切った程度じゃ致死量の血は流れないよ」
そう。普通、手首を切った程度では、致死量の血液は流れない。手首には非常に太い腱があるため、カミソリやカッターでは切り込みが出来る深さに限界がある。痛みもひどい。
ただし、痛みに構わず切り続けた場合や、刃を斜めに差し込んで切った場合、腱を抜けて動脈に到達し、大量に出血する。
ツンの場合、斜めに深く切り込んでいたために、腱の脇を抜け、動脈と付近の血管を巻き込んで切断したらしい。
从 ゚∀从「それにしちゃぁ、やばそうな感じだったな」
('A`)「あぁ、痛みに慣れて無かったせいで、途中で気を失ったみたいだが、血圧の急激な降下は意識障害を引き起こすからな。そのまま仏じゃいただけないだろ」
('A`)「そういや、他の連中は?」
从 ゚∀从「ツンはまだ入院中。体力が回復すれば退院だと。ブーンが見舞いに行ってるよ」
从 ゚∀从「シューはクーや荒巻先生を通じて事後処理の最中。あの場で気をしっかり持ってたのはあいつだけだったからな」
从 ゚∀从「親御さんは大変みたいだけどね。1人死んで1人自殺未遂じゃ、参るよフツー」
('A`)「まぁ、仕方ないさ。親父やばあさんの知識が役に立った。ツンも生きている。トゥルーエンドなら、これでいいだろう?」
从 ゚∀从「あれ?親父さんは元鑑識だけど、おばあさんは?」
('A`)「元看護婦。救急センターにもいたから、現場での緊急処置は結構な種類だったぜ?」
从 ゚∀从「なるほど。しっかし、やっぱドクオは知識だけすごいのな?」
- 30: Juno ◆ceCH051qMk :2008/09/23(火) 00:03:21.80 ID:VVGRRu+Y0
- ハインの言葉が、刺さる。そう、俺が持ち得るのはあくまで知識だけ。経験に基づく技術は、何一つないのだ。
('A`)「――――俺が唯一許容された在り方だ。経験も積むようにするが、どうしてもそっちの学習は遅くてな」
从 ゚∀从「――――なら、私が経験をカバーするのもありだよな?」
('A`)「・・・・・・」
从 ゚∀从「な?」
(-A-)「・・・・・・まぁ、そうしてもらえると助かるかな」
从 ゚∀从「♪」
「――――そういや、さ。約束のことなんだけど」
「ん?思い出した?」
「――――あぁ。どちらが先に幸せになれるか。先になった方が、命令権を1つ得る。だったな?」
「うんうん。正解。それで?」
「――――現状を以て、引き分けってのは、どうかな?」
「・・・・・・え?」
「・・・・・・不満でないなら、俺が幸せにしようと言ってるんだ」
「・・・・・・ちょっと、時間くれないかな?予定狂っちゃったから」
「構わねぇ。いくらでも待つぞ?」
この日も雪が降った。幾分、雪の冷たさが心地よかった。
あれから6年が過ぎました。
今でも時々会ってますが、未だに明確な返事を貰ってません。(実話)
そして、白ワンピやフリフリスカート以外にも写真があったことが、最近分かりました(涙)
話としては以上です。支援や指摘くれた人達ありがとう!ちょっとバスってきます。
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