( ^ω^)川゚-゚)'A`)´・ω・`)゚-゚)ξ

3 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/23(日) 21:44:15.36 ID:+n8uvgsp0
( ^ω^) 「ク、クーっ!? あ、えと……」

突然のクーの出現に、ブーンは混乱しながらも、何か言おうとした
もごもごと蠢く口の中に、潜んでいた言葉は、謝罪かも知れないし、追及だったかも知れない
だが、言葉が、閉ざされた口から出るより早く、クーが言った

川゚-゚) 「今日の夕飯は、私がつくることとあいなった」
(;^ω^) 「いや、それより、今日は何の用で……って、えっ!?」
川゚-゚) 「今日の夕飯は、私が作る。と言ったのだが?」

クーに先手を打たれ、今、自分が言おうとしていた事、クーが今言った事
両方を、いっぺんに理解しようとしたブーンは……以下のように、壊れた

いま、クーは、なにを、いったんだろう
きょうの、ゆうはんは、わたしが、つくる
たぶん、そんなかんじ

川゚-゚) 「既に、おばさんには伝えてある。夕飯のしたくはなかったと思うが……どうした?」

で、じぶんは、いま、なにを、きこうとしていたんだっけ
くーは、こんなじかんに、なにか、ようでもあるのかお?
うん、たしか、そんなかんじ
なぁんだ、きくひつよう、なかったじゃない

川゚-゚) 「ふむ、もうこんな時間か。先に台所に行っているぞ? あと、さっき渡した山菜も持ってきてくれ」

ああ、だから、きょうかーちゃんは、うちのごはんをしょぶんしてたんだぁ
それで、きをつかって、がいしょくにいったんだなぁ
なぁんだ、わかってみれば、そんなものかぁ



4 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/23(日) 21:44:35.45 ID:+n8uvgsp0
結局、クーが呼ぶまで、ブーンは壊れたままだった
ここで時間は戻り、場面も台所に戻る

川゚-゚) 「ブーン、辛いものは苦手だったか?」
( ^ω^) 「ちょっと苦手だお」
川゚-゚) 「そうか、なら、今日は辛くないのにする」

そう言って、クーは持ってきた買い物袋から、野菜類を取り出した
ネギやほうれん草などの青野菜、それとニンジン。山菜はすでにまな板の上に乗っている

( ^ω^) 「あ、クー、それならうちの冷蔵庫にあるお? わざわざ持ってこなくても」

今日、カーチャンは、食材は好きに使っていいと、書置きを残している
きっと、このことを見込んだ上で、そう書いたのだろう

川゚-゚) 「いや、おばさんからは好きに使っていいと言われたが、流石に悪い。買ってきた」
(;^ω^) 「だから、今日帰り道で会わなかったのかお……」

特に楽しそうにするでなく、淡々と、テキパキと作業をこなすクーを見ながら、
ブーンはそのことに安堵とすると同時に、残念に思っていた

今、自分は、流されるまま、クーが夕飯をつくるのを見ている
だが、帰り道、何も考える暇もなく、クーに会えていたなら、何も言えなかったかもしれないが、
こうして、もやもやとすることもなかったのかもしれない、と

川゚-゚) 「……迷惑、だったか?」
(;^ω^) 「え……?」

我知らず、ため息をついていたブーンに、クーはぽつりと聞いた



5 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/23(日) 21:45:14.56 ID:+n8uvgsp0
しゅる、と髪を纏めていたゴムを外し、うつむく

川゚-゚) 「すまない……私は、いつもこうだな。お前のことも考えず、振り回すばかりだ」
( ^ω^) 「クー?」
川゚-゚) 「いや、わかっている。だが、言い訳だけ、させてくれ」

何も考える事ができずに、こく、と首を縦にふった

川゚-゚) 「今日の昼、お前は転校生と学食に行ったと、言っていただろう?」

頷く

川゚-゚) 「それが、な……。校内案内の続きだ、と言うのは、分かっている。お前の仕事だともな」

それは、違うのだが。今、クーの話に、横槍を入れたくはない、黙っている

川゚-゚) 「だが、その間、私はお前がどこかで腹を空かせているのではないか、
     そんなことを考えて、お前を探していたんだ……的外れな想像だったが、
     それで山菜を集めた、なんて、笑い話にもなるまい?」

はは、と無表情に笑うのは、自嘲なのだろうか

川゚-゚) 「結局、私が一人で勘違いして、一人で動いていた、ただそれだけのことだ
     そう、お前は関係ない。ただ、私が悪いだけ」
( ^ω^) 「…………」

なんだろう……今、自分の中にある、この感情は
クーの、どうしようもない、雰囲気に、なぜだかすごく、安心している



6 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/23(日) 21:45:36.05 ID:+n8uvgsp0
川゚-゚) 「それが、何か負けたような気分で、な」

クーはきっと、あの時、恥ずかしいと思ったんじゃないだろうか
自分がブーンを探していたのに、当の本人は、何にも困ってなどいなかった

川゚-゚) 「でも、私がしていたことも、無駄にはしたくなくて……」

いたずら心から、集めたのだろう山菜
きっと、腹を減らしているブーンに、それを手渡して、反応を見よう
そんな事を考えていたのに、ブーンはきっちり昼食を取っていた

無駄になるはずの、山菜、そこに意味を持たせたくて、クーは今日、夕飯を作ると、申し出たのかもしれない
他人から見れば、つまらない意地、というか、奇異に思えるかもしれない、クーの行動と思考
だが、ブーンは、それじゃクーが自分の気持ちを誤魔化した照れ隠しのように、感じた

( ^ω^) 「僕は……すっごくうれしいお? 振り回されるなんて、思ってないお」
川゚-゚) 「ブーン?」

クーの話は、まだ途中だったが、もう聞く必要もない
クーは、今、色々と話してくれた
だが、きっとそれは、本心ではない、とブーンは思った

クーは、負けた気がした、とか、無駄にしたくない、とか、そんな理由を言っていた
でも、さっきのクーの顔と、今のクーの顔を見て、自分が何に安心したのか、確信した

( ^ω^) 「迷惑なわけがないお、クーがご飯作ってくれるなんて、すごい楽しみだお」

クーは、嫉妬してくれている。自分では気付いていなくて、色々理由をつけるけど、きっとそうだ
僕は、クーに、嫉妬してもらいたい、それを期待していたんだ、そう、気がついた



7 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/23(日) 21:46:18.26 ID:+n8uvgsp0
( ^ω^) 「それに、僕は……」

―――グゥゥゥ……

(;^ω^) 「あ……」

安心したからか、腹が鳴った
これから、ちょっといいことを言おうとしたのに、間が悪いにもほどがある

川゚-゚) 「少し、長話しすぎたかもしれないな……ふ、私も考えすぎだった
     お前は、そういう奴だ、私が何をしようと、そんなわけない、と言ってくれる」

私の期待に答えてくれる、とは、言葉にしない
普段は浮かべない、安堵するような笑みだけで、クーは伝える

川゚ー゚)  「なら、私もご期待に沿えるよう、腕をふるうとするか」
( ^ω^) 「……クー」

再び髪を縛るクーに、続きを言おうと思ったが、止めにした

今は、いいじゃないか
焦らなくても、いいじゃないか
今は、クーが作ってくれる料理を、楽しみにしたい

今まで続けてきた、ごまかしの先延ばしとは違う
自分の気持ちを理解した上で、ブーンはそう思った



10 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/23(日) 21:50:42.57 ID:+n8uvgsp0
クーが料理する風景を、後ろから眺めながら、ブーンは考える

( ^ω^) 「………これで、いいんだお」

今までが、どうかしていた
クーに嫌われないか、愛想を尽かされないか、そんなことばかり、自分は考えていた

事実、あの時、クーが何もいわず、先に帰ると言ったとき、
とうとうその時が来た、そう思い、自分は何かを諦めようとしていた

でも、そんな気持ちは、クーも一緒だった
自分に迷惑をかけているのでは、そう思うと必ず確認してくれる
自分と、クーの違いは、それを言葉にするかしないかの違いだけ

だったら、このままだって、いいじゃないか

( ^ω^) 「好きとか、嫌いとか、そういうんじゃないんだお」

そんな、複雑なことは、よくわからない
ただ、自分とクーはこう思っているのは、確かだ

一緒にいたい

お互いに、僕らはそう思っていれば、何をしたって、変わらない
それだけ分かっていれば、後は何も問題はない
それ以上のことは、また、ゆっくり答えを出せばいい



27 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/23(日) 23:37:38.50 ID:+n8uvgsp0
意気揚揚と、登校するショボン
その胸元には、昨日、ドクオに作ってもらったドッグタグが黒光りしていた

(´・ω・`) 「〜〜〜〜〜〜〜♪」

三角形を集合して作ったような黒い龍が、
くすんだ銀色の下地により、その存在感を浮き彫りにしている
実際には沈み彫りで作られているのだが、まあ、そんな揚げ足取りはどうでもいい

(´・ω・`) 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪」

機嫌よく、鼻歌を歌うショボンは、今日は少し校則違反をしている
シャツの第二ボタンまでは留めておくよう、明記されているのだが、
今は第三ボタンまで開け、胸元の龍が露出しているようにしていた

(´・ω・`) 「まあ、先生に見られなければ、いいよね?」

そう、別段、学校についてまで、この格好をしようとは思っていない
登校途中で、ショボンはいつもブーンやドクオと合流することにしている
その時に、ドクオに気にいっていることを伝え、ブーンに少しだけ自慢できれば、それでいい
クーに関しては、どう反応するのか、まったく読めないので、あまり考えないことにする

と、ショボンがブーンやドクオの反応を想像し、笑っていると、向こうに人影二人を発見し、

(´・ω・`) 「あ、ブーン! クーさん! おはよう……?」

手を振ろうとして、気がついた
クーのことは、わかるのだが……その隣にいるのは、だれだろう



28 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/23(日) 23:38:00.42 ID:+n8uvgsp0
川゚-゚) 「ショボン、おはよう」
( ´ω` ) 「お……おふぁようだお……」
(´・ω・`) 「……え? だれ?」

クーの横にいる、この真ん丸い饅頭はなんだろうか
一応、ぱっつんぱっつんのワイシャツに、うちの制服を羽織っているので、うちの生徒であるのは確かだ
だが、自分の記憶の中に、こんなけったいな生物はいないし、ましてや、クーと登校する理由がない

(´・ω・`) 「……? クーさん、ブーンはどうしたの? 今日は一緒じゃないみたいだけど……」

首をかしげて、あたりを探してみるものの、ブーンらしき人影はどこにも見えない
まさか、昨日二人の間に何かあったのだろうか、とショボンが目をむくと、

川゚-゚) 「? ブーンなら、ここにいるが?」
(´・ω・`) 「え? どこ?」

まさか幽霊、なんてオチでは……( ´ω` ) 「ショボーン、ぼくはここだお〜?」

(´・ω・`) 「あ、すいません、今友達探してるんで……あの、クーさん、こちらは?」

初対面なのに、いきなり呼び捨てなんて、と、軽く憤慨する
どうしてクーさんは、こんな無礼な人と一緒にいるんだろうか
と、当のクーは何やら思案顔で、丸い物体を指差した



29 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/23(日) 23:38:32.46 ID:+n8uvgsp0
川゚-゚) 「……それが、ブーンだが?」

指の先を視線で追うと、丸い物体

(´・ω・`) 「……これ?」
( ´ω` ) 「これて……」

指で突っついてみる。ぶにぶにしていて、なかなかにさわり心地がいい

( ´ω` ) 「や〜め〜る〜お〜」
(´・ω・`) 「本当に……これ?」
川゚-゚) 「うむ、それだ」
( ´ω` ) 「二人ともひどいお〜」

ひどいのはむしろお前の体型だ
たった16時間目を離した隙に、曙化するとは、いったい何があったというのだろう
と、ブーンとはとても言い難い、丸い物体は、ショボンのドッグタグに気がつき、丸い指でさす

( ´ω` ) 「あ〜ショボン、それ昨日のやつだお〜? 見せて欲しいお〜」

伸ばした指で、アクセに触ろうとするのだが、ショボンはそのヴィジュアルに一歩引いてしまう
そうすると、丸い物体は、もう少し手を伸ばそうと、足を動かす
ぐにぐにぐにぐにぐにぐにぐにぐにぐにぐにぐにぐに〜〜〜〜〜(丸い物体が移動中)

(´・ω・`) 「ひっ、ひぃぃぃぃぃいいいいいいいっっっ!!」

思わず、悲鳴が出るが、それも無理はない
真正面から見た今のブーンが、近寄る様は、巨大な肉塊が、
ショボンを喰らおうとするようにしか見えないのだ



30 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/23(日) 23:39:00.58 ID:+n8uvgsp0
('A`) 「うおっ!? なんだそのモンスターはっ!?」
( ´ω` ) 「ドクオまで〜ひどいお〜」
('A`) 「ブ、ブーン……なの、か? たった一晩で、何があった?」

遅れてやってきたドクオすらも、変わり果てたブーンのヴィジュアルに、気おされていた
がたがたと震えそうになる両足を叱咤し、視線をクーに向けると、
クーはやれやれと言いた気に、首を横にふった

川゚-゚) 「どうも、昨夜は食べ過ぎたようでな……自己管理が甘いとしか言いようがない」
( ´ω` ) 「…………」

クーに何か言いたいのか、丸い物体が蠢いているが、
クーがそちらに視線を向けると、ピタ、と黙ってしまった
ドクオはそんなブーンの様子に、一瞬だけ、口に笑いを浮かべ、

('A`) 「………。 ………。 ………あ、ショボン、それ着けてくれてんのかっ!?」
(´・ω・`) 「え、え、ええっ? あ、ああ、うん、これ、すっごくいいよっ!?」

クーとブーンを交互に見ていたドクオは、今は何も聞いてはいけないと思ったのだろう、
ショボンに向かって、急激な話題の転換を行ってきた
慌てながらも、ショボンはドクオの内心を察し、それに乗る

('A`) 「結構、苦労したんだぜ? なぁ、二人もそう思うよな?」
川゚-゚) 「銀細工のことはよくわからないが、似合っていると思うぞ」
( ´ω` ) 「うん〜ぼくも、もっとよく見たいお〜〜〜〜〜〜〜!!」

ぐにぐにぐにぐにぐにぐにぐにぐにぐにぐにぐにぐに〜〜〜〜〜(丸い物体移動中)

('A`)(´・ω・`) 「う、うわあああああああああああああああッッツ!!!」



31 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/23(日) 23:39:31.47 ID:+n8uvgsp0
( ´ω` ) 「二人とも〜〜なんでにげるんだお〜〜?」
('A`) 「か、鏡でも見て来い、このファット(脂肪)モンスターっ!」
(´・ω・`) 「ど、どくお、さすがにいいすぎ……でもこわいぃぃぃぃいいい!!!」
( ´ω` ) 「まってお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
川゚-゚) 「ふう……朝から元気なものだな?」

バタバタドスドスぐにぐにと、三人は結局学校につくまで全力疾走する羽目になったが、
不思議なことだが、学校につくころには、ブーンの体型も元通りになっていた

( ^ω^) 「ふう……ようやく、胃の中身がこなれたお……重かったお」
('A`) 「……おまえ、質量保存の法則と真っ向から勝負する気か?」
(´・ω・`) 「ま、まあ、いいじゃない、ファットモンスターはこの世から消えたんだし」

胃の中身がこなれたとか言うレベルじゃないのだが


( ^ω^) 「じゃ、クー、まただお!」
川゚-゚) 「うむ、それじゃあ、また」

クラスの前で、二人が別れ、ブーンが教室に入ろうとした瞬間、

―――シュバババッッッ!!

(;^ω^) 「ふぉっ!? な、何事だおっ!?」

ブーンをすばやく捕らえる、四つの手は、どれも見慣れたもの
ショボンと、ドクオのものであった



71 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/24(月) 11:22:47.73 ID:oLJm3TbG0

(;^ω^) 「ちょwwwww二人ともwwww何事wwwww?」
('A`) 「やかましいっ! おいショボン、そっちは異常はないか?」
(´・ω・`) 「うん、とりあえず人間の身体みたいだよ」

失礼な事を言う二人だが、あんな体型の変化を見れば、無理からぬ事だ
ブーンの身体を無遠慮にまさぐった二人は、そう言うと、さっとブーンから離れる
安堵の息を漏らし、ブーンの肩を叩くと曖昧な笑みで、こう尋ねた

('A`)(´・ω・`) 「で、昨日は何があった?」
(;^ω^) 「…………何もないお?」
('A`) 「……なんだその間は?」
(´・ω・`) 「何もなくて、あの有様はありえないよね?」

じりじりとブーンに近づき、圧迫感を与える二人に、ブーンの目は泳ぐ
ブーンが、こんな態度を取るなんて、珍しいことだった
珍しい分、何かあったのは間違いない
だが、無理に聞き出しても喋らないだろう、というのはわかる
なので、ドクオは別の作戦に出ることにした

('A`) 「まぁ、俺も無理には聞かないが……何だって急激に太ったよ?」
(´・ω・`) 「流石に……あれはちょっと、異常だよ?」
(;^ω^) 「う……あれは、その……」

気遣うように二人に尋ねられると、ブーンも黙っているわけにはいかない
無用な心配をかけるのは忍びないと、ぽつぽつ、昨日あった事をしゃべり始めた



72 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/24(月) 11:23:40.10 ID:oLJm3TbG0
(;^ω^) 「昨日、クーがうちに来て、夕飯を作ってくれたんだお……」

クーは野菜を刻み、小さい器にそれぞれを小分けに置く
続いて肉も細切りにし、これも小さいボールに入れ、塩コショウで下味をつける
最後に、調味料を小皿にて合わせ、準備完了

( ^ω^) 「なんか……こういうのって、なんかいいおw」

エプロンをつけて、クーが料理するさまを、後ろから眺めつつ、ブーンはつぶやく
トントンと、リズミカルにまな板を叩く包丁、くつくつと音を立てるなべ、
これで出来てくる料理が味噌汁だったりしたら、もう完璧なのだが

川゚-゚) 「さて、始めるか」

ブーンの素敵妄想は置いておいて、クーは買い物袋から、おたまを取り出した
おたまと言って、普通のものではない、中華料理用の、ごっついやつだ
クーは煙を立てる中華なべの前に立つと、深呼吸ひとつ

川゚-゚) 「はっ!」

気勢の声を上げたかと思うと、すばやい動きで、材料を投下!
ニンジンがすぐ炒め上がるのと同時、今度はたけのこ、ピーマン
左手でなべを大きく振り、右手のおたまでそれをかき混ぜ、中の具がふわっと宙を舞った
と、油が水蒸気と共になべの上に上がり、それにコンロの火が着火、炎をあげる
中華料理アニメのような光景が、目の前で繰り広げられ、ブーンは思わず、

(;^ω^) 「ちょwwwwwこ、これ、なんか違わないかお?」

ブーン、これは妄想ではなく、現実なのだ
まるでそれを突きつけるように、クーはすさまじい勢いでなべを振った



73 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/24(月) 11:24:05.77 ID:oLJm3TbG0
チャーハン、ホイコーロー、後はブーンには名前もわからないような中華料理が、盛りだくさん

(;^ω^) 「こ、これは……」
川゚-゚) 「少し作りすぎた」

いや、これは少し、ってレベルではない
皆さんは、満漢全席というものをご存知だろうか
中華料理が百品並ぶという、あれだ

さすがに百品もないのだろうが、テーブルを埋め尽くすチャイナ料理はかなりの量
しかも、台所にはまだ何皿も残っているし、加えてデザート類も豊富に取り揃えてあるっぽい

(;^ω^) 「あ、あの買い物袋から、どうやったらこんだけの量になるんだお……?」

買い物袋→良くて10gサイズ
テーブルの上の料理→どうみてもその倍はございます
と、ブーンが首を傾げていると、クーは申し訳なさそうに頭を掻いた

川゚-゚) 「すまない、少し冷蔵庫の物も使わせてもらった」
(;^ω^) 「なるほど、合点がいったお……でも、ということは?」

内藤家の食材は、すべて中華料理になってしまった模様



74 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/24(月) 11:24:26.76 ID:oLJm3TbG0
川゚-゚) 「さあ、冷める前に食べてくれ」
(;^ω^) 「うん、そうだお。早く食べたほうが良さそうだお」

あまりの量に呆然としたが、いつまでもそうしてはいられない
中華料理は冷めると味が極端に悪くなるのだ

(;^ω^) 「いただきますだお」
川゚-゚) 「いただきます」

最初に手をつけるのは、山菜チャーハン
家で作るとべちゃべちゃになりがちなのだが、これはそんな感じはまるでない
レンゲですくって見ると、サクっとした感触が手に伝わる

( ^ω^) 「はふはふ……! う、うまいお!」
川゚-゚) 「そうか、それは良かった。量だけはあるから、いっぱい食べてくれ」

なんでもないようにクーは言うが、これはかなりおいしい
塩加減は薄めではあるが、卵が硬すぎず、ふわっとした食感はジューシーですらある
肉は一切入っていないが、鶏がらスープのもとのうまみが、山菜のうまみを引き立て、
山菜自体も、少々の苦味があるものの、歯ざわりをそのままに、
甘味と香りが何倍にもなって、チャーハンの具材としての役割を十二分に果たしている

( ^ω^) 「はふはふ……はふはふはふはふはふ!!」
川゚-゚) 「慌てるな、そっちのスープと一緒に食べると、なお美味いぞ?」

言われて手にとるのは、卵スープ
するっとしたのど越しのとき卵もさることながら、ややきつめの胡椒の風味が、チャーハンとよくあう
口の中に広がる酸味は、おそらくトマトのものだろう
だが、トマト特有の苦味や青臭さは一切なく、ただ純粋に酸味と甘味が、口の中をさっぱりとしてくれる
さらにホイコーローに至っては……………



75 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/24(月) 11:24:48.95 ID:oLJm3TbG0
このままだと何小説なのかさっぱりなので、この辺りにしておくが、

(;^ω^) 「ううっぷす……」

中華料理は油がきつい。かなりきっつい
いくらスープに酸味を加えて、食が進むようにしたところで、限界はある
皿を二つ三つ完食したところで、ブーンの腹は限界に達してきた

川゚-゚) 「? どうした? まだあるが?」

同じ量を食べていて、どうしてクーはこうも平然としていられるのだろうか
人体の不思議を感じながら、ブーンはギブアップを宣言しそうになる


川゚-゚) 「あ……すまない、ちょっと、油がきつかったか? 好みでなかったのなら……」
( ^ω^) 「むっちゃおいしいおっ!? これならいくらでも食べられそうだお!」
川゚-゚) 「いや、箸も止まっているようだし……」
( ^ω^) 「油大好きだお! むしろ脂肪上等ってなもんだお!」

そう言って、ブーンはがつがつと皿をかきこんでいく
というか、この状況で、もう食べられない、なんて言える人間は男としてどうかと思う
だが、やはり油はきつい。なるたけ手早く飲み込もうと、口に運んでいると、

川゚-゚) 「うまいと言ってくれるのは嬉しいが、もう少し味わって食べたらどうだ?」
(;^ω^) 「あ。ごめんだお……」

一気食いも禁じられてしまった
しかし、ここで退くわけにもいかない
結局、ブーンはすべての皿(デザートも二皿ほど)を平らげるのに、2時間を要した



146 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/25(火) 00:57:11.18 ID:XJMIVa010
(;^ω^) 「そんなこんなで、僕は曙と化したんだお……」
(´・ω・`) 「……そ、それで、あんなに膨らんじゃったの?」
('A`) 「ま、まあ、それは全部食わなきゃ男じゃないが……無茶しやがって……」

実際に見てきたわけではないが、今朝のブーンを見る限り、相当な量だったことはわかる
ショボンとドクオはひとしきり、ブーンに同情したあと、
ドクオはゆっくりとブーンの肩に、手をまわし、小声で聞く

('A`) 「それで? それ以外は何があった?」
( ^ω^) 「何がって……何がだお?」

キョトン、とするブーンの顔は、いつも通りだった
だが、それがおかしい。いつも、この手の話題を振ると、こいつは目が泳ぐはず
なのに、どうして今日は変わらない顔をしているのだろうか

('A`) 「とぼけんな? お前、今日はやたらすっきりした顔してんじゃねぇか?」
( ^ω^) 「別に、本当に何もないお?」

まだとぼけるか、と、ドクオは一瞬、思ったが、ブーンはそんな器用な嘘をつけるやつではない
そう考え直し、これ以上は何を聞いても無駄か、と諦めかけたのだが、

( ^ω^) 「ただ……」
('A`) 「ん?」
( ^ω^) 「無理する必要ないって、気づいただけだおw」

そう言って、笑うブーンの顔が、

('A`) 「………なら、いっか」

どうにも、気に食わなかった



148 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/25(火) 00:57:59.72 ID:XJMIVa010
ドクオはそれっきり、何も言う事なく、眠そうに欠伸をして席に座ってしまった

( ^ω^) 「ドクオ……どうしたんだお?」
(´・ω・`) 「ブーン……いや、なんでもないよ」
( ^ω^) 「ショボン? いったい何のこと……」

首を横に振るショボンに、何を言いかけたのか聞こうとした瞬間、

屍ーズ 「!! 第一次戦闘配備っ!!」
(;^ω^) 「ふぉっ!?」
(´・ω・`) 「まだやってるんだ……」

これでわかってしまうあたり、なんかいやだ

ξ゚-゚)ξ 「おはようございます」
屍ーズ 「お、おは……」

と、屍達が、今日一番のスマイル浮かべる直前、ブーンの横からショボンの姿が消えた

(;^ω^) 「あれ、ショボンはどこだお?」
(´・ω・`) 「ツンさん、ちょっといい?」

声のする方向を見ると、ショボンは屍よりも早く、ツンの横に立ち、

ξ゚-゚)ξ 「え? えと……」
(´・ω・`) 「ごめん、すぐ済むから」
ξ゚-゚)ξ 「あ……ちょっと……!?」

誰が想像しただろう
ショボンはすばやくツンの腕を持つと、そのまま教室の外へと飛び出してしまった



149 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/25(火) 00:58:59.99 ID:XJMIVa010
屍ーズ・(;^ω^) 「…………」

後に残された屍とブーンは、ともに言葉を失った
屍はさわやか過ぎて胡散臭い笑みのまま固まり、ブーンはショボンの後ろ姿を目で追うだけに止まる
気まずい沈黙が、教室中を支配し、しばらくの間を空けてから、

屍ーズ 「ちょ……どおおおいううううううううううことだあああああああああ!!???」
(;^ω^) 「ちょwwwwwおまえらwwwwwwwちょwwwwwww」

屍達は、ブーンに殺到した
予想をはるかに越える事態に混乱し、
皆、涙目になりながら、殴りかかろうとしているのだろうが、拳に力が入らない
ぽすぽす、と、情けない音を立て、ブーンを打っていた拳は、すぐに動きを止め、

屍A 「う、うう……ショ、ショボンがあんな行動するなんて……!」
屍B 「お、俺! 信じてた!! あいつのこと……しんじて、たのに……!!」
屍C 「……うう……やっぱり、昨日の内に始末しとくんだった……!!」
(;^ω^) 「お、落ち着くお……?」

ブーンの胸にすがりつくように、泣き始めた
想像してみよう、男子学生が、十数人単位で泣いているその光景を
ここはいつの間に金八先生の最終回になってしまったのだろう

若干意味合いの違う涙は、五分と続かず、
泣いて、気持ちがすっきりしたところで、湧き上がる感情は……怒りだった

屍ーズ 「おい、ブーン!!」
(;^ω^) 「は、はひぃ!?」

昨日の時とは、レベルの違う、段違いの威圧感をもって、屍達はブーンを囲んだ



戻る次のページ