( ^ω^)川゚-゚)'A`)´・ω・`)゚-゚)ξ

245 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/26(水) 03:24:50.80 ID:jwWfyvZK0
囲む勢いは、熱気を伴い、中にいるブーンを蒸し焼きにしかねない温度を持つ
熱気はそのまま、運動エネルギーに変換され、獣たちの四肢を絶え間なく振動させ、
振動の波が頂点になった時、屍の一人が正気に戻り、周囲を一括した

屍A 「待て! お前ら、昨日のことを忘れたかっ!?」
屍ーズ 「!!」

ブーンに襲い掛かろうとした屍達は、その言葉に雷撃を受けたように止まった
昨日の昼、彼らは今と同じ行動を取ろうとし、そしてツンの不興を買っている
今この場にツンがいないとて、ブーンのその後を知られれば、更なる悪評につながりかねない

屍B 「ならば……どうする?」
屍ーズ 「…………」

理性では理解できても、感情は納得しない
囲む際に発生したエネルギーを、すばやく脳に向け、回転を早めてみるものの、
元のスペックがスペックだ、たいした妙案も浮かぶことなく、無駄なエネルギーの消費に終わる
その際、周囲の熱量は屍達に吸収され、教室の気温は五度下がった

(;^ω^) 「こいつら本当に人間かお?」

ごめん、ちょっと自信ない
考えあぐね、ブーンがひそかに包囲から抜け出ることにも気づかない屍達をよそに、

('A`) 「おい、ブーン、ショボンの様子見に行ってくんね?」

むっつりと、考え込むように黙っていたドクオが、面白くもなさそうに、ブーンに言った
頷きかけ、しかし、ブーンは一瞬、違和感を感じた

( ^ω^) 「うん。……でも、ドクオは行かないのかお?」



246 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/26(水) 03:25:18.04 ID:jwWfyvZK0
ドクオの性格から言って、自分から行かないというのは、珍しい
面倒なことは他人に押し付けるより、自分が率先してやり、さっさと終わらせた方がいい
そんな考え方をするはずなのに、どうして今日に限っては、自分に言うのだろうか
そう思い、ブーンが尋ねると、ドクオは二、三度、あー、とうめき

('A`) 「いや、なんだ? 俺だとよ、多分、話がこじれるだけだろうし。お前が行ってくんないか?」
( ^ω^) 「? 別にかまわないお」

何かよくはわからないが、ドクオにも、事情があったらしい
それならば、と、ブーンは引き受けたのだが……

( ^ω^) 「やっぱり、ドクオはちょっと変だお?」

頼みごとをする、ということではない
ドクオの頼み方に、ブーンは違和感を感じた

いつも、ドクオは自分たちといる時、楽しそう、だけではないが、
とにかく、普段に比べ感情を表に出してくれている気がする
だが、今、ブーンにショボンを見てくるよう頼む様は、普段のそれだった

別に、それがどうした、と、言われれば、それまでだ
しかし、さっき黙り込んで座ってしまった事と、今のドクオの物言いがつながり、
それが何か、言いようのない不安をブーンに与えていた

( ^ω^) 「まあ、ドクオが難しいこと考えるのは、今に始まったことじゃないお!」

考えてもわからないなら、考えなくてもいいと思う
そう自分で決着をつけ、ブーンはショボンを探しに行った



247 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/26(水) 03:25:41.12 ID:jwWfyvZK0
('A`) 「……俺は……何をやってんだ?」

声に出して、自問してみた
自分が、苛立ちまぎれにやったことを考え、自己嫌悪する

('A`) 「アホかよ……」

ブーンは、クーとの関係に、自分なりの答えを出したようだった
それは、自分が満足の行く結果とは程遠いものだが、
クーもブーンも、きっと満足できる、幸せになれる、そんな答えなのだろう
だが、今自分は、ブーンに何をさせようとしているのだろうか

('A`) 「別に、あいつは関係ないことじゃないのか?」

昨日、ツンとショボンが言い合ったことを思い出す
あの場に、ブーンはいなかった
まるで関係ないし、関係する必要は、どこにもない
なのに、自分は、ブーンがそこに首を突っ込むような事を……させようとした

('A`) 「くっそ……あいつに、余計なこと考えてる暇なんか、ねえだろ……?」

ブーンは一人、自分の中でひとつの決着をつけたが、
それは、二人の決着ではない 問題はこれからも山ほど出てくる、そんなのはわかりきっている
解っているのに、自分はそんなブーンに、更なる厄介ごとを苛立ちまぎれに押し付けようとした
余計な考え事をする必要を、ブーンに与えようとした

いや、本人がそのことをわかってさえいれば、自分からそんな厄介ごとから身を退くはず
だが、ブーンは、あのお人好しは、そんなことをするだろうか
……するはずがない、するわけがないのだ



248 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/26(水) 03:26:08.01 ID:jwWfyvZK0
('A`) 「……ほっといても、あいつは首を突っ込む。そうに決まってる」

ショボンとの口喧嘩、ではなく、ドクオが言うのは、ツンの被る、やっかいな仮面のことだ
初日の段階で、ブーンはすでに深入りするような事を言っていた
なら、自分がどうこうするまでもなく、ブーンはもっと踏み込むはずじゃないのか

('A`) 「いや……そんなのは、いいわけだ」

わかっている、全部わかっている
どうして解っていながら、自分がそんなことを頼んでしまったのか、
自分が、何に苛立っているのか、それもすべて、承知の上だ

('A`) 「ほんと……馬鹿じゃねぇのかよ……?」

勝手に苛ついて、勝手に厄介事の種を振りまいて、
それで尚且つ、自分はブーンにこれ以上を望もうとしている
傲慢にも、ほどがある
だが、言わずにいられない……

('A`) 「お前だけ、ずりぃよ……俺にも、すっぱり諦めさせてくれよ……」
ブーンの顔が、目に浮かぶ
本当に、幸せそうに、何も変わっちゃいないのに、それで満足だと言いた気な、あの笑顔
それが、今の自分には……ひどく残酷に見えた

こんなのは、生殺しもいいところじゃないか……
どろどろに濁った感情が、自分の中を流れる感覚は、
自己嫌悪では済まされない、不快感を残すばかりだった

屍達は、ドクオの苦悩をよそに、いまだ会議を続けていた



250 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/26(水) 03:26:36.49 ID:jwWfyvZK0
ショボンは、ツンの手を引き、やってきたのは階段横の空きスペース
実は倉庫になっているのだが、普段使われることはなく、教師や生徒の目はない
ショボンはそこにツンを連れ込むと、やっと手を離した

ξ゚听)ξ 「い、いきなり何すんのよっ!?」

当然、ツンは怒り、地の顔でショボンに怒鳴り散らすが、
全力疾走でここまでやってきたショボンは、しかし、息が切れているので何も言えない
呼吸を整えるまで、数秒を要し、落ち着いたところで、ツンが再度問う

ξ゚听)ξ 「……で、何の用なの?」

苛立ちを隠そうとせず、壁に寄りかかり、しきりに足で床を叩きながら、ショボンを見据えると、

(´・ω・`) 「何って……決まってるじゃない! 昨日の事! 僕はまだ納得してないもん!」

いきりたち、ぷんぷんと怒るショボンを見て、ツンは、またか、と頭を振る
その動作がまた気に障ったのか、ショボンは両腕を振り回した

(´・ω・`) 「なにそれっ!? こっちは真剣に怒ってるんだよ!」

まるで真剣に見えないのは、人徳というのだろうか
むしろほほえましいぐらいの仕草なのだが、だからと言って敵意が雲散するわけではない
怒りをぶつけられた事に、ツンも少し、カチンときた

ξ#゚听)ξ 「……くっだらない。そんなことのためにここまで連れ出したのっ!?」
(´・ω・`) 「くだらないって……こっちは気を使ってここまで来たんだよっ!?」
ξ#゚听)ξ 「それがくだらないって言ってんのっ! あたしに文句があるなら気にしなきゃいいじゃない!」

まくしたてられ、ショボンは言葉に詰まった



251 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/26(水) 03:26:56.35 ID:jwWfyvZK0
そこに勝機を見出したのか、ツンは、ふふん、と鼻で笑い、

ξ#゚听)ξ 「何よ、結局みんなの前で言えないから、こんな薄暗いとこまで来たんじゃない?」
(´・ω・`) 「ち、ちがうよっ!?」

何が、と、口には出されずに問われ、ショボンは声を裏返らせて怒鳴った

(´・ω・`) 「だって、それじゃツンさんも困るでしょっ!?」

思わぬ一言に、ツンも同様、言葉を失うが、それも一瞬、すぐさま態勢を立て直し、反撃

ξ#゚听)ξ 「だーかーら! あたしが気に食わないなら、遠慮すんなって言ってんのよ!」
(´・ω・`) 「だーかーら! それとこれは関係ないことでしょっ!? 
       だったら、その……そこまでしたいわけじゃないし……」

喧嘩している相手に、真っ向から言える内容ではない、と思ったのか、ショボンが口ごもると、
ツンはそれにまた噛み付く

ξ#゚听)ξ 「あーもう、まだるっこしいなっ! はっきり言いなさいよっ!?」
(´・ω・`) 「# あーわかったよっ! 僕はこのドッグタグを認めてほしいだけだもん!
       ほかのことは一切、どうでもいいって言ってるの! ツンさんに興味もないし!!」
ξ#゚听)ξ 「あ……あんたね? こんな美人捕まえて、興味ないってどういうこと!?」
(´・ω・`) 「うるさいなぁ、興味持って欲しいの!? 欲しくないならそんなこと言わないでよ!」
ξ#゚听)ξ 「##……あー言えばこー言うっって、こういう時に使うのかしらっ!?」
(´・ω・`) 「しらんがなっ!? 自分で言っといて人に聞かないでよっ!」

喧喧諤諤、二人の言い合いは、しばらく続いた



252 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/26(水) 03:27:18.44 ID:jwWfyvZK0
先に無為な言い合いに飽きたのは、ショボンだった

(´・ω・`) 「あー、ホント、わからずやだよねっ!? ツンさんって! もういいよ!」
ξ#゚听)ξ 「そっくりそのままあんたに返すわよ……って、何してんのっ!?」

ショボンは言い終えたとたん、ワイシャツのボタンを次々にはずし、
胸が全開にできる辺りまではずすと、シャツを思いっきりツンにはだけた
露出された胸にあるのは、昨日、焼成といぶしと磨きをかけられた、鈍い色合いのドッグタグだ

(´・ω・`) 「昨日はまだ未完成だったけど、ここまで来れば、もうぐうの音も出ないでしょっ!?」
ξ#゚听)ξ 「うぐ……」

胸を張るように、ワイシャツをことさらに大きく広げ、ショボンはツンにドッグタグを見せ付ける
ツンは、ドッグタグを見ると、昨日よりも、より大きくうめき、そしてうつむいた
拳を握り締め、プルプルと震える様は、怒っているようにも泣いているようにも見える
まあ、前者なのは間違いないと思うのだが

(´・ω・`) 「どう? ふふん、文句のつけようもないんじゃない?」

勝ち誇るショボンだったが、その余裕は、すぐに消えることになる
未だうつむいたままのツン、そのリアクションを待っていると、帰ってきたのは、

ξ#゚听)ξ 「全っ然、なっちゃいないわよっ!?」
(´・ω・`) 「!?」

予想だにしない、真っ向からの否定だった



253 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/26(水) 03:27:42.79 ID:jwWfyvZK0
何がなっていないのか、まるでショボンにはわからない
これはこれでカッコいいと思うし、自分にも似合うと思っていた
愕然とするショボンに、畳み掛けるようにツンは続ける

ξ#゚听)ξ 「正直、立体は専門外だけど、言わせてもらえばね!?
       龍を記号化したデザインだってのはわかるけど、ちょっとつくりが甘くない?
       ここなんか、焼成の途中で割れたような跡があるし、それに形が歪だと思わない?」
(´・ω・`) 「う……」

確かに、ツンの言い分はもっともだ
自分でも売っている商品と見比べて、いささか完成度は低いようには思っていた

ξ#゚听)ξ 「シルバーのいぶしだって、これじゃいずれ全部黒くなっちゃうんじゃないの?
       表面の処理も全然磨きが足りてないから、余計なとこまで黒ずんじゃってるし、
       これじゃせっかくの黒い龍なのに、インパクトが足らないとは思わないっ!?」 (´・ω・`) 「で、でも、これはこれで味があるんじゃないの!?」
ξ#゚听)ξ 「それを言ったら、手作りの暖かみってことで、拙作は全部名作になっちゃうんじゃない!?」

ぐうの音も出なかった
こっちがツンをこてんぱんにするつもりが、思わぬ逆襲に、べこべこにされたのはショボンの方だった
ツンはショボンのドッグタグを手にとると、再び観察しはじめ、

ξ#゚听)ξ 「………でも、あたしが言いたかったのは、そんなんじゃない」
(´・ω・`) 「え?」

これだけ言っておいて、まだ足りないのだろうか、
とショボンは思ったが、それは違った

ξ゚听)ξ 「あたしは、あいつにしては、似合わない趣味だ、って、そう言っただけじゃない……」
(´・ω・`) 「……ツン、さん?」



254 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/26(水) 03:28:12.44 ID:jwWfyvZK0
肩を落とし、さっきまでの気勢はどこへやら、消沈するツンに、ショボンは困惑した
もしかすると、自分はそんなにひどいことを言ってしまったのだろうか
いいや、ツンの方がよっぽどひどい、とは、思うのだが

( ^ω^) 「二人ともここにいたのか……お?」
(´・ω・`) 「あ、ブーン」

妙な沈黙の中、タイミング良く現れたブーンに、ショボンは顔をほころばせた

(;^ω^) 「…………」
(´・ω・`) 「?」

いや、この場合、タイミング悪く、と、言うべきなのかもしれない
ブーンの何とも言えない香ばしい表情は、ショボンは最近見たことがあるような気がした
いつだったろう、と、記憶を探ろうと視線を落とし、気がついた

ショボン・胸をはだけて、ドッグタグをツンに見せている
ツン・肩を落とし、ショボンから離れるように、壁に寄りかかっている

別視点から見てみよう

ショボン・ワイシャツ全開で、ツンに迫っている
ツン・ショボンから逃げようとするが、後ろは壁。逃げ場なし

さらに、ブーンのとどめの一言

(;^ω^) 「お邪魔……しましたお……」
(´・ω・`) 「またっ!? またこのパターン!? ていうか、ブーン! ここはとめるとこだよっ!?」

弁明しようとするショボンなのだが、悪いことにツンはさっきから一言も口を開こうとしないのだった。合掌



2 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/28(金) 23:33:41.55 ID:xQ2xo1XV0
今日は予想外が続く日なのかもしれない
ショボンがツンを連行したのも予想外なら、暗がりで屍達以上の行動力を発揮するのもそうだ

いや、予想外だ予想外だと言っても始まらない、むしろ、これは祝福すべきことではないのか
ショボンは見ての通り、お子様だ
自分が言えた事ではないが、いい奴なのに、女に縁がない感じがする

異性に興味すら持っていない節もあったのだが、それがこうして欲望のままいい感じな犯罪を犯している
流石に、これは止めたほうがいいのかもしれない
だが、自分は、友人がこの程度の犯罪で、真っ当な人生を歩むきっかけを掴んでくれるなら……いいと思う

(;^ω^) 「ショボン……僕は何も見なかったお……」
(´・ω・`) 「待って!? ブーン、少しは落ち着いて!」
(;^ω^) 「差し入れとか、するお? 面会も、行くお? 僕らの友情は永遠だお……」
(´・ω・`) 「かってに僕を犯罪者にしないでよっ!? ていうかこの学校はこんな人ばっかりなのっ!?」

ごめん、そんな人ばかりです
どのような脳内ドラマが構築されたのか、ブーンは涙目でショボンの肩を叩き、
うん、うん、わかってる、などと、何もわかっていない台詞を連呼する

(´・ω・`) 「そうじゃなくて、僕は、このドッグタグを……」

うんざりと、肩の手を払いのけ、胸のドッグタグをかざして見せるのだが

ξ゚听)ξ 「……ホント、いい加減にしてよっ!!」
(;^ω^) 「ふぉっ!? ツ、ツン!?」
(´・ω・`) 「え!? ちょ、え、待ってよ!?」

それより早く、ツンが駆け出していた
とめる暇もあればこそ、ツンは二人を押しのけるように、倉庫から飛び出していった



3 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/28(金) 23:34:00.91 ID:xQ2xo1XV0
呆然とツンの後ろ姿を見ていた二人だったが、我に帰ったのは、ブーンが先だった

(;^ω^) 「あ、と、とにかく、追いかけるお!」
(´・ω・`) 「そ、そうだね……って、僕はどうしよう?」
(;^ω^) 「………………」
(´・ω・`) 「何その無言は?」

聞くまでもないと思うのだが

(;^ω^) 「話は、後で聞くお……」
(´・ω・`) 「待って!? 何それ!? やっぱり誤解したままなの!? って、おーいっ!?」

聞き耳持ちません、という感じで、ブーンは倉庫を出る
廊下に出て左右を見てみるが、ツンの姿はない
それほど時間が経っているわけではないので、どっちかに行ったということはなさそうだ
と、階段から足音が聞こえた

(;^ω^) 「上かお?」

下に降りる階段はないので、当然なのだが、急がないといけない
四階分の廊下があるのだから、ここで見失っては探すのも一苦労にちがいない



4 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/28(金) 23:35:07.32 ID:xQ2xo1XV0
階段を駆け上り、尚且つ耳はツンの足音を追う
これはなかなかに神経を使う作業だ

生まれつき、足は速いほうだと思うし、走るのが好きな自分は、ただ走るだけなら何キロだっていける
だが、階段を上り続ける、というのは、さすがにきつい
息が切れ、ももが悲鳴を上げているような感覚のなか、耳にも神経を行き渡らせなければならない

(;^ω^) 「はぁはぁ……ま、まだ上に行くのかお?」

階段を上る音と、廊下を走る音、その違いはほとんどない
だが、階段と平地では、足が刻むリズムがちがう
それだけを頼りに、ブーンはツンを追いかけるのだが、

(;^ω^) 「って、もうここは四階だお?」

そう、走るうちに、ブーンはすでに自分のクラスある、四階まで来てしまっていた
教室に戻り、何でもないような顔をしているのでは、と思っていたが、当てが外れた
この上には、屋上しかないのだが……いや、考えている暇ももったいない

(;^ω^) 「まったく……何があったんだお?」

ショボンが何をしたのか、何を言ったのか、想像もつかない
しかし、ツンのあの疲れたような、悲しいような、あの表情が、頭から離れない
どうしてだろう、自分は、その顔が、教室で見るツンの顔よりも、つらいものに思えた

(;^ω^) 「まさか……本当にショボンが?」

ありえないことをつぶやき、自分をごまかす
きっとショボンがとんでもないことをした、だからあんな顔をしていたんだ
何でもいいから理屈を作らないと、ツンに面と向かうことはできない、そんな気がした



6 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/28(金) 23:35:49.77 ID:xQ2xo1XV0
ツンは、階段を上りきり、目の前の大きな扉を見て、自分が終点まできたことを知った

ξ゚-゚)ξ 「何で……こんなとこ来ちゃったんだろ」

そっと、鉄扉に手を触れてみる。春だといっても、気温は人の肌より、はるかに低い
鉄扉も、当然、その温度だ、冷たい感触が伝わってくる

手を、鉄扉に密着させるようにくっつけてみる
冷ややかな温度と、押し返されるような、硬い反発
まるで、その感触は、お前はここに来るな、と、拒絶されているようだった

ξ゚-゚)ξ 「開く、かな……」

何の気なしに、ドアノブに手をかけ、ひねる
がちゃっ、と、複雑な音がすることはなく、がきっ、と、ノブは回ることなく止まった
当たり前だ、屋上の扉なんて、そうそう開いているはずもない

ξ゚-゚)ξ 「はぁ……」

ため息が出る。頭に浮かぶのは、さっきまでの自分
アクセを認めろと、言い寄るショボンに、自分はやっきになって否定の言葉を連発した
それは、確かに本心だった

未完成で、拙くて、まだまだ改良の余地が山ほどある、そんな作品
今まで、自分が見てきた作品の中でも、レベルが高いとは、とてもじゃないが言えない
だが、それは本心でもないのだ

わけのわからない、矛盾した感情が入っている頭は、重い
ゴツン、と鉄扉に打ち付けるように、重さを逃がして、自分の負担を軽くしようとする
しかし、そんなことで、首の負担は軽くなっても、心の負担は、重くなるばかりだった



8 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/28(金) 23:36:13.05 ID:xQ2xo1XV0
扉にうつぶせるかのごとく、寄りかかっていると、背中に無機質な音がぶつかった

ξ゚-゚)ξ 「!」

誰かが、こっちに来る
理解したとたん、慌てそうになるが、すぐに思い直した

ξ゚-゚)ξ 「……ショボンに何かされた、って言えば、いいよね……」

クラスの人間なら、それで納得すると思う
それに、それでちょっとした仕返しにもなるじゃないか、と結論をしそうになる、が

ξ゚-゚)ξ 「……やっぱり、それは、嫌、かな……」

どうして、自分はこんな事ばかり考えるのだろう
いや、そうされてしかるべきことを、あいつらは自分にしている
だったら、いいじゃないか

だが、思っても、納得できないものが、確かに自分のどこかで存在している
それは、否定しても否定しても、次から次に、異議を唱えるのだ

そうこうする内に、足音はもうすぐそこまで近づいていた

ξ゚-゚)ξ 「別に、いいっかな」

難しく考えるのは、やめよう
出たとこ任せで、この場は切り抜けよう、そうしよう



9 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/28(金) 23:36:38.95 ID:xQ2xo1XV0
踊り場で息を整え、ブーンはツンがいるであろう、屋上扉にのぼる
果たして、ツンはそこにいた

( ^ω^) 「ツン、ショボンが何かしたのか……」
ξ゚听)ξ 「なんだ、あんたか」

変に気負って、損をした
少なからず緊張していたのか、息が漏れた
脱力して、ブーンの顔をにらむように見ようとして、そこでブーンが妙な顔をしていることに気がつく
困惑しているような、焦っている様な……

ξ゚听)ξ 「……何よ?」
(;^ω^) 「ツン……泣いてるの、かお……?」
ξ゚听)ξ 「はぁ? あんたいったい何を言って……!?」

言われて、顔に手を触れてみるまで、自分の顔が濡れている事に気がつかなかった
何時、自分は泣いたのだろう、どうして、泣いたのだろう
考えるのは後にして、顔を袖でぬぐう

ξ゚听)ξ 「な、泣いてなんかいないわよっ!?」
(;^ω^) 「でも……目、赤いお?」

どうなのだろう、自分では見えないから、確認のしようがない
うそか本当かわからないが、つい、目元を袖で隠してしまう

ξ )ξ 「生まれつきよ! もともとあたしは目が赤い方なの、色素が薄いから!」

こんなごまかし方が、あるだろうか
今はこんな言い方しか思い浮かばいのだから、仕方がない



10 :◆3mfWSeVk8Q :2006/04/28(金) 23:37:36.00 ID:xQ2xo1XV0
今日は、本当に予想外が続く日だ
何をどうしたら、こんなところでツンが泣いているなんてことになるのだろうか

(;^ω^) 「…………ツン」

何か、言わないといけない、そう思って、声をかける

ξ )ξ 「何よ……?」
(;^ω^) 「…………」

目を隠したまま問い返され、言葉を飲み込んでしまった
ブーンは、こうなるの恐れ、あんな結論をつけたのかもしれない

ショボンが原因なら、自分はショボンのいいところを挙げて、誤解を解こうとしただろう
もし、それを否定されたら、ショボンに代わって謝ったかもしれない
どちらにせよ、自分は、ツンが何か言う前にそう切り出せさえすれば、
あとは悩むことなく、言う事ができる

しかし、それは出来なかった、する前に、ツンの顔を見て、固まってしまった
こうして、ツンの顔を見ていると、言葉にできない感情が、渦巻くのを感じる
自分の中で、何かが叫ぶ

やめておけ、そこで一歩踏み込もうと思うな
踏み込めば、引きずられるぞ

自分の中の何かは、なぜかドクオの姿で、そう警告してきた
でも……もう一人の自分は、こうも言っているのだ

踏み込まないと……後悔する……それで、いいのか?




戻る次のページ