( ^ω^)がアウターブーンの世界に入り込んだようです

8:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:03:09.00 ID:0IuLjyk60

第七話
「ギコとしぃ」

「クソッたれ!あの野郎、裏切りやがって。絶対許さねえ……!!」

ブルータス、お前もか。はっ、違うな。
俺はあんなクソ野郎のコトなんざこれっぽっちも信用していなかった。
あのクソもハナっから俺を始末する気だったんだろう。

うう……さ、さみぃ……俺はここで死ぬのか……

川゚−゚)「……」
「クー!!」

川゚−゚)「どうやらヤツにはめられたらしいな」
「……ああ。俺もヤキがまわったぜ。まさかこんな最後とはな…・・・」

川゚−゚)「すまない……今回のコトは私にも責任がある」
「……らしくねえな。よせよ。あんたは俺に仕事を回しただけだろうがゴルァ」

川゚−゚)「……」

川゚−゚)「……一つだけヤツに復讐するチャンスがある」

「なに……?」



9:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:03:25.43 ID:0IuLjyk60

(*;_;)「うう……お兄ちゃん……」

兄が、死んだ。

私を車で迎えに来る途中で交通事故にあった。
相手はシャブ中のイカレた野郎。

私のコトを可愛がってくれたとてもいい兄だった。
そんな兄に、私は人に言えない想いを胸に秘めていた。
一人の男として、兄のことを愛していた。

禁断の兄妹愛。
もちろん兄とそうゆう関係にはなっていなかったし、気づかれてもいなかった。

しかしもうそんな葛藤をするコトもない。
胸中の相手は冷たい棺の中。

私の19年間の恋は、何も変化することなく突然の終わりを告げた。

「可哀想にねぇ……しぃちゃん、身寄りないんでしょ?」
「たった一人の家族だったのに……」
「これからどうするのかしら……」



10:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:03:55.00 ID:0IuLjyk60

目を開けても広がるのは変わらない闇。
手足を伸ばそうとするが、すぐに障害にぶつかって動けない。
狭い空間にいるコトがわかる。

「クーのヤツ、ちったあ説明くらいしていけよ……」

ぼやいてみるが、闇は答えない。

闇。
俺が生息する場所。
俺の唯一の安息の地。

だが周りの状況がさっぱり掴めないとなっちゃ、多少居心地が悪かった。
それになんだ。だんだん蒸し暑くなってきたような……?



11:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:04:12.20 ID:0IuLjyk60

「うわ!!あっつ、あちゃちゃちゃ!!」

(*゚−゚)「……!?」

鈍い音を立てて鉄の扉が私の横を飛んでいく。
中から見えるのは足が一本。
その場にいる皆の空気が凍りついた。

(,,゚Д゚)「あちぃぞゴルァ!!!!」
(*゚−゚)「!!!?!??!???」

お兄ちゃんが、生き返った!?



12:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:04:57.65 ID:0IuLjyk60

気絶するヤツ。
悲鳴を上げるヤツ。
お経?みたいのをぶつぶつ言い出すヤツ
そして俺に抱きついてるこの女。

クソッたれ。正直、ものすごくめんどくさい。

いっそのことこのままばっくれちまうかと考えてたそのとき、
周りが急に静かになり、そそくさと部屋から出て行っちまった。

なるほど。クーのヤツ、今回はアフターケアも万全らしいな。

(,,゚Д゚)「……おい女。そろそろ離れろゴルァ」
(*;_;)「うう……お兄ちゃぁん……」

……前言撤回。なんでこの女だけ記憶をすり替えねぇんだ……。



13:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:05:12.01 ID:0IuLjyk60

どうやら俺は焼かれる寸前だったらしい。
この女は妹かなんかか?
クソッたれ。めんどくせえ。
とりあえずひっぺがさねえと……。

(,,゚Д゚)「お、おい。俺はもう大丈夫だから」
(*-_-)「……」

……すー……すー……

(,,゚Д゚)「……おい」

寝るか!?普通この状況で寝るか!?



14:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:08:41.16 ID:0IuLjyk60

免許証に記載されている住所を頼りにこの女の家までやってきた。
背中から静かな寝息が聞こえる。

(,,゚Д゚)「ったくどうしたモンかねぇ……」

とりあえず色々と調べるモンがある。
まずはこのニンゲン、つまり俺のデータを揃えないと。
ヤツへの復讐はその後だ……。

(,,゚Д゚)「……ん?」

空気に伝わる微かな気配。
肌を打つ殺気。

クソッたれ、もう嗅ぎ付けやがったか……!!

女をソファーに寝かせ、周りを見渡し武器になりそうなものを探す。

周りを警戒するが、ソレは姿を現さない。
女の方をちらりと見る。
この部屋を離れるわけにはいかない。
それとも潜んでるヤツを誘導してこの部屋から離れるか……。



15:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:09:03.54 ID:0IuLjyk60

……待て待て。俺は今何を考えてる?
こんな女知ったこっちゃないだろうが。

(,,゚Д゚)「情でも移ったか?馬鹿な……」

ソファーの女を見て、八つ裂きにされる姿を連想する。
すると腹の奥底からある感情が浮上してきた。

それは身を焦がすような怒り。
頭を掻き毟りたくなるほどの焦燥感。

怒りなんて感情は自分の日常的によく知っているものだったが、こんな気分は初めてだ。

女がうっすらと目を開けた。



16:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:22:20.27 ID:0IuLjyk60

(;゚ー゚)「!! お兄ちゃん!!後ろ!!」

とっさに身を屈める。頭上をかすめる風切音。
振り向いて相手を確認することなく、後ろに蹴りを放つ。

「ウグッ!!」

確かな手ごたえ。くぐもった声をもらし、相手は壁に吹き飛んだ。
体勢を整え、女を後ろにして相手を睨み付ける。

「クソォ、ナンでキサマイキテルンダ……」

(;゚ー゚)「な、何アレ……!!」
(,,゚Д゚)「女。怪我したくなかったら俺の後ろに隠れてろ」

立ち上がったソレの姿は、まるで漫画や映画の中から出てきたような悪魔。
頭に二本の角を生やし、背中には蝙蝠のような羽。全身に硬そうな皮膚を持ち、めん玉までどす黒い。



17:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:23:05.78 ID:0IuLjyk60

(,,゚Д゚)「下級悪魔が……!!」

悪魔は咆哮をあげて突進してきた。
馬鹿め、低脳の分際で俺に勝てると思ってんのか。

(,,゚Д゚)「食らえっ!!」

悪魔に向けて手をかざす。
すると手のひらから悪魔を粉々にする俺の必殺ビームが……

(,,゚Д゚)「?」

出なかった。
悪魔も女も口をポカンと開けている。
……視線が痛い。

しまった。
俺は一度死んで転生したんじゃないか。
今の俺はなんの力もない、無力なニンゲンだ――――

(,,゚Д゚)「でぶっ!!」
(;゚ー゚)「お兄ちゃん!!」

「オドロカセンナヨ、ギコ!!」

悪魔のコブシが顔に直撃して、派手にぶっとんだ。
ぶつかった机から書類やらコップやらが散らばる。
反撃に立ち上がろうと着いた手に、硬い感触の何かが当たった。



18:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:24:18.02 ID:0IuLjyk60

刃渡り10センチほどの短剣。それの威力は教会で祝福を受けたとかチャチなモンじゃない。
精錬金属の段階から特殊な過程で鍛え上げられてきた対悪魔用兵器。小型だけど。

問題は、何故こんな極上のアイテムが一般人の家庭にあるかってコト。

(;゚ー゚)「ちょ、来ないで!!」

女に迫りよる悪魔の歯牙。

――――させるかよ。

気づいたら俺は馬乗りになって悪魔の首元に短剣をぶっさしていた。
叫び声までもかき消され、あっという間に灰と化した。



19:1 ◆yl3K3xulPc :2006/05/29(月) 00:24:41.07 ID:0IuLjyk60

(,,゚Д゚)「つ、疲れたぞ、クソッたれ」
(*;_;)「うう……ひっく」

女はまた涙を浮かべて俺にしがみついている。
泣き止むまで硬直したまま動けない。

なんだ?俺こんな情けないキャラだったか?
泣き止んだと思ったら、また寝息が聞こえ始めた。

(,,゚Д゚)「……ちっ」

ガラじゃねえ。わかっちゃいるけど、嫌な気分じゃない。
今度はちゃんとベッドに寝かせた。

「お兄……ちゃん」

足音を立てないように部屋から出て行く。

(,,゚Д゚)「……とりあえず一服だな」

……灰皿が見当たらない。
とりあえず買いだしに行くか。
なるべく大きめのヤツを買おう。

この家とも長い付き合いになるかもしれないしな――――



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