( ^ω^)がアウターブーンの世界に入り込んだようです

4:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/10(土) 16:17:10.15 ID:JjqPffjd0

第十ニ話
「宿るもの」


川゚−゚)「皆さんこんばんわ。アウターブーンの案内人、クーだ」

川゚−゚)「古来より、古くなったモノには魂が宿るという」

川゚−゚)「日本人は古くなったモノに趣を感じるということがあるようだが……」

川゚−゚)「まずはドクオ先生の講義を聞いてみよう」



5:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/10(土) 16:17:26.82 ID:JjqPffjd0

('A`)「大昔、大陸では部族間の争いが激しかったんだ。
    だから大きな部族に対抗するために、民族同士結びつく必要があった。
    そこで神様、宗教の登場ってわけよ」

( ゚∀゚)「ほうほう」

(;^ω^)「ちょ、難しい話かお??」



6:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/10(土) 16:17:49.87 ID:JjqPffjd0

('A`)「皆が一つのモノを信じれば、そこに組織が生まれる。
    つまり宗教の原点は、小さな部族が大きな部族に対抗するために結びつく手段だったんだ。
    偶像崇拝の禁止とか唯一神とかあんだろ?
    あれもつまりはそういうことだ。」

(´・ω・`)「どういうこと??」

( っω-)「……」



7:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/10(土) 16:18:19.17 ID:JjqPffjd0

('A`)「神様の銅像をあちこちに作っちまうと、そこでも分裂しちまうからだ。
    例えば新宿と渋谷に作ったとする。
    そうすると俺は新宿の銅像がいい、いや俺は渋谷のが好きだ、ってな具合にな。
    唯一神なんてのも、折角一つの宗教の下に団結したのに、違う神様を崇拝してたら同じ宗教内で別々の思想が生まれちまう。
    だから神様は一人しかいないようにしたんだな」

( -ω-)「……Zzz」



8:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/10(土) 16:24:41.00 ID:JjqPffjd0

('A`)「それに比べて日本は『八百万の神』だ。聞いた事あんだろ?」

(´・ω・`)「たしかなんにでも神様が宿ってるとかなんとか……」

('A`)「大陸では一つにせざるを得なかったのに、日本は八百万も神様がいるんだ」

('A`)「日本は島国だから民族統一する必要がなかったんだな。世界的に見たら平和だったってわけよ」

( ゚∀゚)「へぇ〜……物知りだなドクオは」

(´・ω・`)「でも随分と偏った話だね」

('A`)「これが正しいとかじゃなくて、モノの考え方の一つだよ」

('A`)「ま、コレも実は人の受け売りだけどな」



9:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/10(土) 16:28:47.86 ID:JjqPffjd0

( ^ω^)「宗教だったらブーンに任せるお!! ブーンは詳しいお!!」

(´・ω・`)「ええ!? そんな知識あったっけ?」

(*^ω^)「ふふん、ゾロアスター教って知ってるかお?」

('A`)「拝火教ってやつか」

(*^ω^)「ゾロアスター教の悪い神様はアーリマンっていうんだお!! FFとかで出てきたお!!」

( ゚∀゚)「あ、聞いたことある」

(*^ω^)「そんで善い神様はたしか……」

(*^ω^)「アフロ増田」

(´・ω・`)「誰!?」

('A`)「アフラマズダだよ馬鹿……」



11:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/10(土) 16:38:01.19 ID:JjqPffjd0

( ^ω^)「ただいまだお〜」

( ^ω^)「あ〜疲れた……ドクオの部屋も居心地いいけどやっぱり自分の部屋が一番だお」

( ^ω^)「ドクオはたまに小難しい話するから参っちゃうお……」

ぷるるるるううるうるるうるう

( ^ω^)「お? 誰だおこんな時間に」

ガチャ

( ^ω^)「はいもすもす」

『あ〜、ワシじゃよワシ』



12:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/10(土) 16:40:00.47 ID:JjqPffjd0

( ^ω^)「お? 誰だお??」

『今近くの公園の公衆電話からかけているんじゃがの。ちょっと帰れなくなってしもたんじゃ』

(;^ω^)「ちょ、だからあんた誰だお?」

『すまんが家まで送ってもらえんかね?待っとるぞ』

がちゃ

ツーツーツー……

(;^ω^)「ちょwwwもしもし!!もしもーし!!」



13:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/10(土) 16:41:01.10 ID:JjqPffjd0

( ^ω^)「……ドラマの刑事はなんで電話切れた後にもしもし繰り返すんだお」

( ^ω^)「ツーツー聞こえてるんだから、電話切れたことわかってるはずなのにしつこいお」

ブーンは混乱する頭をよそに今の声の主を必死に思いだそうとしていた。

( ^ω^)「やっぱり知らない人だお……」

おそらく間違い電話だろう。
声の主は「帰れなくなった」と言っていた。
だとしたら、公園で自分を待ち続けるんだろうか?
それは少し可哀想だ。



14:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/10(土) 16:41:26.47 ID:JjqPffjd0

「お〜こっちじゃこっち!!」

しぶしぶ出かけた公園には、電話ボックスにもたれかかる老人がいた。
頭はすっかり白に染まり、恰幅のいい初老の紳士だった。

(;^ω^)「おっさん、さっきの電話は……」

「夜遅いとこ悪いのぉ」

(;^ω^)「間違い電話だお」

「若いもんに拉致られてな、ここまで連れてこられたんじゃよ」

(;^ω^)「(……ボケてるお)」



15:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/10(土) 16:41:46.82 ID:JjqPffjd0

「足を痛めてもうての。すまんが家まで運んでもらえんか?」

ところどころ痛んだスーツ。
痛めたという右足はズボンが派手に破けており、血が滲んでいた。

(;^ω^)「申し訳ないんですけど、もう一度ご自宅にお電話してくださいお」

「歩けそうにないんじゃよ。おぶっておくれ」

( ^ω^)「……もう一度、電話してくださいお」

「……」



16:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/10(土) 16:42:13.53 ID:JjqPffjd0

それだけ言い残して公園を出る。
老人は立ち去る自分に何も言ってこなかった。

ボケ老人に構ってる暇はない。
……いや、帰ってもすることといえばゲームするだけなんだが。

「お? 戻ってきてくれたのかね」

( ^ω^)「……包帯、持って来たお。足に巻いとくといいお」



17:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/10(土) 16:42:30.18 ID:JjqPffjd0

( ^ω^)「仕方ないから迎えの人がくるまで一緒にいてあげるお」

「……家に連絡しても誰もいなんじゃよ」

( ^ω^)「お……」

「こんな時間に悪かったの……ありがとう」

( ^ω^)「……」



18:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/10(土) 16:43:02.86 ID:JjqPffjd0

(lli゚ω゚)「ふおおおおおおおおおおお!!」

(lli゚ω゚)「お、重いお!!無理だお!!!!」

「ほっほ、無理なんて事はない。筋トレじゃ筋トレ」

(lli゚ω゚)「このボケ老人!!」

「む、ホラいいから進まんかい」



19:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/10(土) 16:43:26.74 ID:JjqPffjd0

「ワシはな、店をやってるんじゃ」

(lli゚ω゚)「そ、そうなのかお。こ、今度おごって、もらうお」

「ほっほ、いいじゃろ」

(lli゚ω゚)「ところで、あと、どれくらい、だお?」

「子供の笑顔が好きでな。人生の楽しみ、生きがいなんじゃよ」

(lli゚ω゚)「シカトかこのボケ老人!!」



20:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/10(土) 16:43:57.67 ID:JjqPffjd0

「おう着いた着いた。ここで結構じゃ」

ブーンは背中から老人を下ろした。
悲鳴を上げていた筋肉が一気に開放される。

「ありがとうなぁ。若いのに感心なことじゃて」

(;^ω^)「いえいえ……よかったです、お……?」

振り向いた先に老人の姿はなかった。

(;^ω^)「おっさん?」

周りを見回しても姿は見当たらない。
狐につままれたようにブーンは立ちすくんでいた。



21:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/10(土) 16:44:19.66 ID:JjqPffjd0

「ありがとうなぁ」

(;^ω^)「!?」

声の方向に振り向く。

ところどころ剥がれた塗装。

右足には不器用に巻かれた包帯。

店の入り口に幸せそうに笑うカー○ルおじさんが立っていた。



22:無一文 ◆yl3K3xulPc :2006/06/10(土) 16:44:54.09 ID:JjqPffjd0

川゚−゚)「人に近い存在ほど魂は宿りやすい」

川゚−゚)「果たしてそれがモノにとっての幸せかどうかはわからないが」



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