( ^ω^)ブーンがモルダーなXファイルのようです

  
5 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:28:18.03 ID:YMM09mMZO
  
am 9:00

【VIP本部-スキナーの部屋前】

( ^ω^)「……」

僕は朝から、スキナーの部屋の前に立っている。

本来はスキナーの部屋の前で秘書にアポイントをとらなければないが、秘書がいないので僕は扉をノックする。

何故か朝食の前朝一番でスキナーに呼び出されてしまった。スカリーがいなくなった事に何か関係があるのだろうか?

( ^ω^)「失礼しますお」

/ ,' 3「モルダー、待っていたぞ」

スキナーの横には、スーツを着てVIPの身分証を付けた見知らぬ若い男が立っていた。



  
6 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:29:04.59 ID:YMM09mMZO
  
/ ,' 3「彼はスカリーが戻るまでの君の新しいパートナーだ」

そう言うとその若い男は僕に右手を差し出す。握手を求めているのだろう。

( ^ω^)「副長官、せっかくですがお断りしますお」

僕は男が差し出した右手を無視した。

/ ,' 3「モルダー、残念だが君には断る権利がない」

( ^ω^)「そうですかお。僕は認めませんお」

男「モルダー捜査官、僕は決してあなたの邪魔をしたりはしない。あなたを尊敬してるんです」

若い彼は、必死な顔で僕を見つめている。

/ ,' 3「モルダー」

( ^ω^)「…分かりましたお。ただし、スカリーが見つかるまでですお」

男「ありがとうございます!早速ですが、注目すべき事件を見つけたので捜査に行きましょう」

そう言うと、男は部屋を出ようと扉へ向かう。

( ^ω^)「待て。君の名前は?」

('A`)「自己紹介遅れてすみません。僕はクライチェックです」



  
7 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:32:42.01 ID:YMM09mMZO
  
スキナーの部屋を出た僕達は共に僕のオフィスへ向かって歩いていた。

( ^ω^)「で、注目すべき事件って?」

('A`)「モルダー捜査官は【ニューオリンズの斧男】って知ってますか?」

ニューオリンズの斧男。確か、1911年から1919年までの間に起きた殺人事件の事だ。
犯人は、錠前をノミでくり抜いては住宅に侵入し、住民の頭を斧で叩き切るという凶行を繰り返した。犯人は捕まっていない筈だ。

( ^ω^)「良くある連続殺人だろ?」

('A`)「えぇ。ですが、"良くある"連続殺人では無いんです」

( ^ω^)「どこらへんが珍しい連続殺人なんだお?」

('A`)「この連続殺人が起きた時に、街では【謎の斧男ジャズ】と言う流行歌が氾濫したんですよ」

( ^ω^)「……流行なんて何がそうなるか分からないお。君が気になってるのは、こんな古い事件の、こんな小さな事なのかお?」

('A`)「それだけではありません。斧男が街で凶行を繰り返したら、少なからずパニックになる筈でしょう?なのに、ニューオリンズでは何もパニックが起きなかったんです」



  
8 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:33:50.35 ID:YMM09mMZO
  
オフィスの目前で立ち止まった僕は、クライチェックに目を合わせる。

( ^ω^)「クライチェック。今のVIPアカデミーでは、100年前の事件についても授業をしているのかお?」

('A`)「頼むから話を最後まで聞いて下さい!今回起きた事件は、100年前の事件と酷似しているんです」

そういう事は初めに言ってくれ。

( ^ω^)「…………。詳しく教えてくれお」

('A`)「被害者は今のところ8人。被害者の家族が地元警察には任せられないと言う事でVIPに捜査依頼が来ました」

地元警察に任せられない?何か裏がありそうだな。

( ^ω^)「分かった。クライチェック、車の用意を頼むお」

僕がそう言うと、クライチェックはオフィスへ入る事なく回れ右して地下の駐車場へと走っていった。

僕はというと、オフィスへ入って遅くなった朝食をとった。



  
9 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:35:09.49 ID:YMM09mMZO
  
【トロピカル州-ビルファーミー-警察署】

pm5:00

ここトロピカル州ビルファーミーは、田舎の農村で住人の半数以上は昔からこの村に住んで農業を営んでいた。
この村の農産物は品質が良いと評判で、農村にしてはそれなりの繁栄を誇っていた。

僕とクライチェックは、車から降りて外観からして巨大な警察署へ入ろうとした。

だが、僕達の進行は警察署の前に立つ威圧的なマッチョ警官二人に妨害された。

('A`)「VIP捜査官のクライチェックとモルダーだ。捜査協力を願いに来たが通してもらえないか?」

クライチェックがVIPの身分証を提示する。

だが、威風堂々と言った感じの警官二人はクライチェックの話を微塵も聞こうとはしなかった。

('A`)「おい!人の話を聞いてるのか?」

( ^ω^)「クライチェック」

僕はクライチェックを制止し、車へと引き返した。

('A`)「あんな対応されてモルダー捜査官は何も思わないんですか?」

ベルトを締めハンドルを握ったクライチェックが僕に尋ねた。

( ^ω^)「僕の事はモルダーで良いし、気持ち悪いから敬語は使うなお。
クライチェック、良いか?世の中には余所者、特にVIPの人間に関わられたくない人間が沢山いるんだお」



  
10 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:36:26.91 ID:YMM09mMZO
  
【ビルファーミー-被害者宅】

pm 7:00

僕がチャイムを鳴らすと、最近付け替えたと思われる鍵がついたドアが開き、被害者の家族と思われる人間が出て来た。
それを見て僕とクライチェックはVIPの身分証を示す。

( ^ω^)「VIP捜査官のモルダーとクライチェックです」

被害者の妻「わざわざ来ていただきありがとうございます。まずは中へどうぞ」

この家は所々にダンボールが置いてあり、どうやらつい最近引っ越ししてきたらしい。

被害者の妻「そこのソファーにおかけください」

( ^ω^)「ありがとうございますお。早速ですが、ご主人の事をお尋ねしてもよろしいですかお?」

被害者の妻「えぇ。夫の事はどこまで知ってるんですか?」

('A`)「ここの警察に協力を断られまして、情報はまだ何も無いんです」

被害者の妻「やはりそうですか…。」

………やはり?

( ^ω^)「失礼ですが、今の【やはり】と言うのは?」

被害者の妻「順を追ってお話しします」



  
11 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:37:03.40 ID:YMM09mMZO
  
('A`)「まずは被害者の名前と、殺された時の詳しい状況を教えてもらえますか?」

クライチェックが手帳とペンを取り出し、準備は万端といった表情で未亡人を見つめる。

被害者の妻「夫の名前はジャン。夫はベッドで死んでいました。
警察によると、寝ている時に殺されたらしいです…」

メモをとっていたクライチェックの手が止まる。

('A`)「寝ている時?その時あなたは一緒にいなかったんですか?
失礼ですが、あなたはお若い。新婚ですよね?なのに、別々に寝ていたんですか?」

クライチェックは矢継ぎ早に質問をする。

だが僕はクライチェックの顔の前に右手を差し出し『お前は黙っていろ』といった表情で彼を見る。

クライチェックは鼻息を漏らし、手帳をコートの内ポケットにしまう。

( ^ω^)「すみません。ですが、なぜ別々にいたんですか?」

僕達の質問に未亡人は答えにくそうに答える。

被害者の妻「………あの晩は、色々と喧嘩してお互い避け合っていたんです」

( ^ω^)「そうですか…。失礼な質問すみません」

被害者の妻「いえ……」



  
12 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:37:42.27 ID:YMM09mMZO
  
( ^ω^)「どのように殺されたかは分かりますかお?」

被害者の妻「…頭部が無くなっていました。警官が言うは斧が凶器だと…」

未亡人の表情が曇る。

( ^ω^)「…先程あなたは、僕達に対する警察の対応をあらかじめ予見されていたようですが、何か心当たりでもあるんですか?」

被害者の妻「その事ですが、余所者に冷たいのは警察に限った事じゃないんです。私達の喧嘩もそれが原因で…」

( ^ω^)「余所者に冷たい?」

被害者の妻「はい。私達はここの人間じゃないんです。
それで、こちらに引っ越して来てから、人付き合いも上手くいかないんです。
ここの警察を信用出来ずにあなた達に捜査を依頼したのも、これが原因で……」

( ^ω^)「そうですか。他に何か手掛かりはありますかお?」

被害者の妻「いえ、鍵を壊されて侵入されたと言う事しか…。どうか犯人をお願いします」

( ^ω^)「任せて下さいですお」

被害者宅を出た僕達は、車へと乗り込んだ。

( ^ω^)「クライチェック、被害者に対する心遣いがないぞ」

('A`)「すまない」

( ^ω^)「最近夫を無くした妻にあんな事を言ったら、的確な証言は得られないお」



  
13 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:38:37.50 ID:YMM09mMZO
  
( ^ω^)「クライチェック、君はこれから他の被害者の家を回れお」

('A`)「分かった。だが、住所が分からないぞ?」

ふざけているのか、それとも真面目なのか。

( ^ω^)「……それくらい自分で調べろお。僕は少し調べたい場所がある」

そう言うと僕は車を降りて街の闇に消えていった。

【ビルファーミー-警察署】

pm 9:00

僕の脳は、確かに昼間の警官の反応は余所者に対する単なる不信感が原因だと判断したが、僕の第六感は脳の判断とは違う何かを感じ取った。

それがゆえに僕はこんな暗い時間にこの警察署に来ている。

正面は昼間のマッチョ警官二人が、まるで昼間から微動だにしてないかと思うほど昼間と同じ格好をして立っていた。

それを見て僕は、警察署を塀沿いにぐるりとまわり、塀の近くに大きな木が植えられているのを見つけその木をよじ登る。

上へ登ると、今までは全く見えなかった塀の向こう側が良く見えた。
僕は望遠鏡を取り出し、灯りが点いている部屋を覗く。



  
14 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:39:48.72 ID:YMM09mMZO
  
書類を作成している部屋や、同僚と談笑している部屋。カップルがキスしている部屋。何か会議をしているかのような部屋もある。

見た感じ怪しい点はないのだが僕は何か腑に落ちなくて、ひまわりの種を食べながら警察署の監視を続けた。しかし、夜が更けるにつれて徐々に灯りの数が減っていく。

最後の灯りが消え、僕のひまわりの種もなくなり木から降りようとした時だった。

今までは他の明るい部屋のせいで気付かなかったのか、それともその部屋は今灯りが点いたのかは定かではないが、僅かに揺れた光を放つ部屋があった。

その部屋を僕が覗くと、予想もしなかった光景が飛び込んできた。

部屋の中央に蝋燭を円形に立てた古めかしいテーブル。

―――部屋から揺れた光が見えたのはこの蝋燭の火のせいだろう。

そのテーブルの周りには、黒いローブを着た人間が数名何かを呟きながら立っていた。

読唇術を学んだわけではないのだが、唇の動きを見るに彼らが意味不明な言葉を言っているのは間違いなかった。



  
15 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:40:46.67 ID:YMM09mMZO
  
( ^ω^)「お…………」

このような儀式行為が警察署で行われていたというあまりの異様な光景に、僕は言葉を失っていた。

異様さは、さらに深く色濃く増していく。

いつの間にかローブを羽織った者達の一人が、右手で鶏の首を持ち左手に装飾が施されたナイフを持っていたのだ。

―――彼らは先程から何かを呟いているが、次第に呟きから叫びへと変わっていく。

次の瞬間には鶏の頭部はあるべき場所から無くなっていた。

一人が切断した鶏を蝋燭の中央へ据える。

それからまた何かを呟き始めたが、蝋燭の火が消えてしまいこれ以上見る事が出来なかった。



  
16 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:41:18.65 ID:YMM09mMZO
  
木を降りた僕はクライチェックに連絡を入れ、僕を拾いに来させた。

………

('A`)「全く、こんなとこを張り込んで見つかったら大変だぞ」

クライチェックはハンドルを握りながら呆れた口調で話している。

( ^ω^)「まぁなぁ……」

('A`)「…何かあったのか?」

何か考え事をして上の空、といった感じの僕の様子を察してクライチェックが声をかけた。

( ^ω^)「説明してやるから黙って最後まで聞けよ」

僕は予めクライチェックの口を閉じさせた上で、僕が見た行為……悪魔教の儀式の説明を始めた。


クライチェックには以下の説明をした。

過去には数多くの生贄が、悪魔教信者によって悪魔に捧げられた事。

現代にも悪魔教信者が数多くいること。

警察署でローブを着た人間がその信者らしく、悪魔の儀式をして生贄を捧げていた事。

最後に、そのほとんどの信者は今は形式的な儀式だけを行い、昔のような生贄は捧げない事。



  
17 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:42:45.06 ID:YMM09mMZO
  
('A`)「モルダーの見間違いじゃないとすると、警察内部の人間が生贄を捧げていた事になるな」

( ^ω^)「まぁ生贄と言っても鶏だけどね」

僕は一言付け足す。

少しの沈黙の後にクライチェックが口を開いた。

('A`)「他の被害者の家を回って色々と分かったよ。被害者は揃って首が無くなっている。しかも、全員がこの地域の出身者じゃないんだ」

( ^ω^)「……」

いよいよ地域ぐるみでの悪魔教儀式の可能性が高くなってきたな。

('A`)「被害者が首を切り落とされたと思われる場所の床やベッドに付いていた痕から、犯行には斧が使われたと分かったらしい」

( ^ω^)「そうかお」

('A`)「同一犯だな」



  
18 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:43:10.26 ID:YMM09mMZO
  
( ^ω^)「で、100年前のニューオリンズの事件との関連性っての説明してくれないか?」

('A`)「もう説明したはずだぞ」

( ^ω^)「良く聞いてなかったお」

クライチェックはまたも呆れたようにため息をもらし口を開いた。

('A`)「……今回も100年前と同じように、この村にパニックは起きていないんだ。こんな小さな村で8人も連続で殺されているのに変だと思わないか?」

確かに変だが、この一連の事件が地域的に団結した住人による悪魔崇拝の儀式殺人とするならば、パニックが起きないのはいたって自然だ。

信号で車を停めた時、僕の耳は僕達以外の車のエンジン音を拾った。
誰かに追跡されているらしい。

( ^ω^)「……クライチェック」

('A`)「あぁ。40メートル後方だ」

ミラーを確認すると、ライトを消した黒い車が闇と同化しながら僕達の追跡をしていた。

('A`)「任せろ」



  
20 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:44:01.71 ID:YMM09mMZO
  
クライチェックはアクセルを目一杯踏み込み車を急発進させた。

追跡者の車も急発進して僕達を追ってくる。

('A`)「……」

まだ自分達が追跡されているのを横目で確認する。

クライチェックは、追跡者との距離がある程度縮まると十字路で急にカーブする。
だが、それに負けじと追跡者も急カーブをする。クライチェックの運転スキルもさる事ながら、相手もなかなかやるらしい。

ガタガタと震える車内。

( ^ω^)「おい、振り切ったら駄目だお」

手すりに捕まって体勢を維持している僕が、熱くなっているクライチェックに声をかける。

('A`)「窓を開けて銃の準備を」

( ^ω^)「おいおい、こんな猛スピードの車から身を乗り出して命中させるほど僕の銃撃は正確じゃないぞ」

('A`)「良いから窓を開けて銃を外に向けて構えて!」

クライチェックの叫びを聞いた僕は窓を開き、流れるように移り変わっていく景色に銃を向けた。



  
21 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:44:52.20 ID:YMM09mMZO
  
車は少し広い開けた道に出る。

道のあちらこちらには石が転がっていて、非常に路面状態が悪い。

('A`)「行くぞ」

クライチェックが声をかけると、追跡者の前方を走っていた僕達の車がスピンし始める。

クルクルと回った僕達の車は綺麗に真横を向き、僕の銃口が追跡者の車を捉える。

僕は迷わずに引き金を引いた。弾はタイヤに命中する。

空気がなくなったタイヤにこの悪路を走る余力など無く、追跡者の車は停止する。

クライチェックがシートベルトを外し、即座に銃を抜いて僕と同時に外へと飛び出す。

( ^ω^)「VIPだ!出てこい!」

僕とクライチェックが車の両側から銃を構え威嚇する。



  
22 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:45:55.39 ID:YMM09mMZO
  
車から出て来た人間は、身なりが整い育ちの良さそうな大男だった。

クライチェックは車の中を調べ始めている。

( ^ω^)「名前は?」

銃口を突きつけられている大男は口を閉じモルダーを睨みつける。

('A`)「車内には他に誰もいない」

フレッド「俺の名前はフレッド。今度は貴様に質問をする。警察署で何か変なものを見たか?」

威風堂々、といった感じの話し方だ。

( ^ω^)「お前は黙って我々の質問に答えろお」

フレッド「他人の警察署を覗いていながら偉そうな事を言いおる」

大男フレッドは、そう言うと懐から手帳を取り出し僕達に見せた。

彼の手帳には彼の顔写真とともに、こんな文字が書いてあった。

【ビルファーミー警察署長 フレッド=ビギンズ】

( ^ω^)「署長……?」

フレッド「自分の警察署を見張る不審者を追跡する署長を捕まえるのがVIPの仕事か?」

威圧的な態度で僕達に接する。



  
24 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:47:49.36 ID:YMM09mMZO
  
('A`)「モルダー」

クライチェックに言われて僕は銃を下ろす。

フレッド「何か見たのか?」

低くうなるような声で喋るフレッド。

( ^ω^)「見たお。
……廊下でキスする若い警官を注意するのも署長の役目だお?」

僕はそう言って自分の車に戻っていった。

遅れてクライチェックがやってくる。

('A`)「怪しいな」

( ^ω^)「怪しいなんてもんじゃないお。アイツ、お香の匂いがしたお」

('A`)「お香?ただの趣味じゃないのか」

( ^ω^)「さっき言い忘れてたけど、悪魔教の儀式にはお香を使うんだお」

クライチェックがベルトを締め、車を出す。



  
25 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:49:36.73 ID:YMM09mMZO
  
( ^ω^)「クライチェック、君はこの街に引っ越してきた家を調べてくれお」

('A`)「分かった。君は?」

( ^ω^)「署長を追うお」

僕はそう言うと、走行中の車のドアを僅かに開けて車外へ飛び出た。

('A`)「全く……。いつか死ぬな」

クライチェックが一人ぼやいてハンドル片手にドアを閉めた。

車からカッコ良く飛び降りた僕の計算外は一つ。地面にある石の存在を忘れていた。
飛び降りて地面を転がったは良いが、地面の無数の石が僕の背中にいくつか刺さった。

( ^ω^)「いてーお…」

自然と独り言が出る。

僕は気を取り直して、先ほど署長の車をパンクさせた場所まで静かに歩いて行った。

……車がパンクしてどうやって帰るかは見ものだな。

そんな事を考えていながら歩いていると、何人かの話し声が聞こえた。



  
26 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:50:27.32 ID:YMM09mMZO
  
?「******!」

?「*********」

遠すぎて良く聞き取れない。僕は歩を進める。

どうやらさっきの署長の車がある辺りのようだ。

?「それで逃がしちまったんですか?」

フレッド「まだ見られたとは分からないからな」

僕が奴らのすぐ近くの草村に隠れると、会話の内容が良く聞こえた。

他の誰の声かは分からないが、署長の声だけは分かった。

?「…こんなのさっさと終わらせちまいましょう」

フレッド「それには私も異論はない。やるなら明日の夜だ」

( ^ω^)「………」

彼らの会話を熱心に聞いていた僕は、背後からバッドを持って迫る黒ずくめの男に気付かなかった。

頭を殴られた僕は朦朧とする意識の中、組織が新たに開発したという証拠が残らない新薬の実験台にされてしまう。

目が覚めると僕の体は……



  
28 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:52:09.37 ID:YMM09mMZO
  
なんてバーローな展開はなく、彼らの密談を聞き終えた僕はすぐさま場所を離れ、クライチェックの元へ向かった。

………翌朝………

カプセルホテルで一夜を過ごし、そのホテルの前で座っている僕の元へ一台の車がやって来る。

('A`)「乗れ」

( ^ω^)「遅かったな。で、この街に引っ越してきた人間は何人いるお?」

僕は車に乗り込みベルトを締めた。

('A`)「死人が出ていない家族はあと一つしか残っていない」

( ^ω^)「住所は分かるな?」

頷くクライチェック。

( ^ω^)「スーパーに行ってくれ」

('A`)「何をしに行くんだ?」

( ^ω^)「朝飯がまだなんだお」

僕の耳は、どっかで聞いた事があるようなため息の音を拾った。



  
29 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:54:45.13 ID:YMM09mMZO
  
pm 11:00

僕達は車に乗りながら、くだらないラジオ番組を延々と聞いていた。

('A`)「本当にここで事件が起きるのか?」

( ^ω^)「黙って見てろお」

僕とクライチェックは昼間からこの家を見張っている。

突然ラジオにノイズが入り、男のうめき声が聞こえた。

その後すぐにラジオからは何の音もしなくなる。

('A`)「……今のは?」

( ^ω^)「くるぞ…」

僕は、知らないうちに口に溜まった唾液を飲み込む。

遠くから、一人の大きな人間がゆっくりゆっくりと歩いてくるのが街灯に照らされて見えた。

僕もクライチェックも言葉を発しない。

その大きな人間が近づいてくるに従って、その姿をハッキリと見る事が出来た。

頭部には緑色の禍禍しい仮面。何かの儀式で使うような顔をすっぽりと隠せる大きな物だ。

そして体は、黒いローブでしっかりと隠されていた。



  
30 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:55:13.16 ID:YMM09mMZO
  
その人間は僕とクライチェックの車の方を向くと、ジッと僕ら一人ずつと目を合わせた。
奴は仮面を被ってはいたが、何故か目が合ったと感じた。

(;'A`)「……」

(; ^ω^)「……」

自然と僕達は汗をかく。

仮面に気を取られて気付かなかったが、その右手には大きな斧が握られていた。

仮面の大男が僕達から視線を外し、張り込んでいた家へとゆっくり向かって行く。

早く行って逮捕しなければとは思っているんだが、体が動かない。

心の中心をダイレクトに切り裂かれるかのような恐怖。

沈黙が恐怖を何倍にも高めているのか?

恐怖で体が動かないなんて何年ぶりだろう?



………いや、体が動かないのは恐怖のせいではない。

冷静になってみても全く動かないのだ。



  
31 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:57:24.74 ID:YMM09mMZO
  
その後奴は鍵を強引に破壊し、屋内へと侵入していく。

焦り

不安

恐怖

僕自身はその全てをぬぐい去ったつもりでも、体は1センチも動かない。

そうこうしてるうちに大男は家から出て来た。

右手に恐怖の表情を浮かべた生首を携えて。

男は僕達に近寄って来る。

いや、僕達ではなく僕だ。僕のすぐ横のドアの前に来た。

サイドガラス一枚の向こう側には、殺人鬼が凶器を持って立っている。

首を横に向けようにもやはり体は動かない。

蛇に睨まれた蛙って、こんな気持ちか?

見なくても奴が顔を僕の近くに持ってきたのが感じられる。

ガラスがあるのに鼻息が僕の頬にあたっているみたいだ。



  
32 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 20:59:45.18 ID:YMM09mMZO
  
大男は、僕の顔をジッと見た後に来た道を戻って行く。

奴の姿が見えなくなると同時に、僕の体が運動を始めた。

('A`)「……金縛りってやつか?」

( ^ω^)「……クライチェックもか。…奴を追うお」

クライチェックがエンジンを始動させ、僕達は大男の後を追った。

奴の追跡は、首から滴り落ちる血があったため容易だった。

車を飛ばし道を進んでいた僕達の前に現れたのは一軒の大きな建物だった。

やはりここに着いてしまった。

('A`)「ビルファーミー警察署…」



  
33 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 21:00:30.61 ID:YMM09mMZO
  
車を降りた僕達は、銃を構えながら玄関から警察署内へと入った。

中は暗かったので、懐中電灯を点けて探索する。

首がない人間の石像。

苦痛の表情を浮かべた天使の石像。

拷問されていながらも、快楽の表情を浮かべる全裸の美女。

それらを壇上から眺めている、悪魔。

少々悪趣味だが、素晴らしい内装の警察署だ。

('A`)「モルダー、上だ」

クライチェックは懐中電灯で階段の血痕を照らしている。

僕達は慎重に階段を上がっていった。

血痕はまだ続いている。

僕が木の上から覗いていた部屋の階で血痕は階段を進むのを止め、フロアを進んでいた。

何やらうめき声が聞こえる。

……だいぶ大勢の人間がいるようだ。



  
34 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 21:02:21.13 ID:YMM09mMZO
  
( ^ω^)「(行くぞ)」

僕は口パクでクライチェックに意志を伝えた。

ドアの隙間から光が漏れている部屋がある。

どうやらその部屋から大勢のうめき声が聞こえてくるらしい。

ドアの近くまで来ると、お香の匂いが漂ってきた。

僕達は銃を構え直し、突入の準備を始める。

( ^ω^)「(3…)」

('A`)「(2…)」

( ^ω^)('A`)「(1…)」

僕達が部屋に突入しようとした時だった。

ドアがいきなり開き、部屋の中へと僕達の体が吸い寄せられた。



  
36 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 21:03:40.66 ID:YMM09mMZO
  
フレッド「やぁ!君達!僕の誕生パーティーへようこそ!」

署長が満面の笑みで僕達を迎えた。
返り血のベットリとついたローブを着ながら。

( ^ω^)「いや、そんなつもりはなかったんだけどな。それより、何歳の誕生パーティーだい?」

何かの力によって銃を手から弾き飛ばされた僕は、署長に向かい虚勢をはる。

フレッド「ん〜、0歳かな〜!」

ふざけているのか?
気が狂ったのか?

昨夜の厳格な雰囲気は微塵も感じられない。

('A`)「モルダー……この部屋って人が大勢いた筈だよな」

確かにこの部屋からは大勢の声が聞こえた筈だ。

フレッド「あぁ、みんななら僕と入れ替わりに楽しい所に遊びにいったよ」



  
37 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 21:05:58.10 ID:YMM09mMZO
  
( ^ω^)「入れ替わり?」

フレッド「てゆーか、あんたらも楽しい所に連れてってやるよ」

署長の声が金切り声の別人の声と重なり合う。

フレッド「じゃあそろそろ死ね」

署長の声は完全に消え去り、誰か分からない高い金切り声が署長の口から出る。

その時、ドアの方から男の声が聞こえた。

?「デービス!」

僕が振り向くと、真っ黒なスーツを着た初老の男が三名部屋に入ってきた。

フレッド「君達の一族って本当にしつこいな〜。一回地獄に落とされて100年間じっとしてたんだから、そろそろいいだろ」

署長の声が金切り声から普段の低い声に戻る。

?「こっちに来てすぐですまんが、もう一度戻ってもらうまでだ」

男達が折り畳まれた紙を取り出す。

フレッド「おっとっと!まだ終幕は早いよ!」

署長はニコニコと笑顔で窓に向かって走り出した。

そして窓を突き破り、署長は暗闇の中を全力疾走し消えて行った。



  
38 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 21:07:46.17 ID:YMM09mMZO
  
?「あんたらは?」

黒スーツの男が僕達に声をかけてきた。

( ^ω^)「VIPの捜査員のモルダー。この街の連続殺人を追っていたんだお。失礼ですがお名前は?」

銃を拾い、服の埃を落としながら僕は喋る。

?「私達はダンテと呼ばれている。個人に決まった名前はない」

('A`)「そのダンテの皆様はどのような集団なんですか?」

クライチェックが懐疑の眼差しで自らを"ダンテ"と呼ぶ者達を見ている。

ダンテ1「我々の一族は悪魔払いだ」

ダンテ2「その年代年代のダンテは、ある強大な悪魔を封じ込めている」

( ^ω^)「なるほど。あなた達は特定の悪魔専属のエクソシスト(悪魔払い)って事ですね?」

ダンテ1「そう思ってもらって構わん」

ダンテ3「我々の到着が遅れて君達を巻き込んでしまった。その謝罪は何なりとしよう」

( ^ω^)「あなた達の情報を全て教えて下さいだお」



  
39 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 21:09:07.09 ID:YMM09mMZO
  
僕は断られるのを前提していたが、意外とあっさり承諾される。

ダンテ2「ふむ。全てとはいかないが、今回の事件の事については疑問を残さないように説明しよう」

………………

僕達はダンテに事件の概要を伝えられた。

ビルファーミーでの連続殺人事件の事後処置は、署長なき警察が行う事になった。

【VIP本部-地下駐車場】

('A`)「世の中には、未知の世界ってのが本当にあるんだな」

一段落したクライチェックが疲れた表情で語る。

( ^ω^)「まぁ、Xファイルを知らない人間には簡単には受け入れられない事実だお」

('A`)「そうか……。すまん、野暮用があって少し外出する。報告は頼んだ」

駐車場に車を停めたクライチェックはそう言うとどこかへ歩いて行った。

僕はオフィスへと向かう。



  
40 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 21:10:06.51 ID:YMM09mMZO
  
オフィスへと到着した僕は、スキナーへ提出する報告書を手早く済ませた。

報告書の内容は

【精神異常者による犯行。犯人を突き止めたが犯人は逃走。追跡は地元警察に委託】

といった簡素なものだ。

一気に書き上げた僕は、Xファイルで保管するための報告書を作成した。



  
41 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 21:11:13.05 ID:YMM09mMZO
  
File No.X-1882

【ビルファーミー連続殺人事件の概要】

この事件は至って複雑な事件である。

(事件自体については別紙にまとめた。以下はXファイル的見地からの報告書である)

我々は、ニューオリンズでの100年前の事件(事件の内容は別の資料を参考とした)と酷似している事から捜査を開始する事にした。

捜査初期は、地域住民による部外者の迫害殺人を睨んでいたが、その実は予想出来ない程の深い事件であった。

捜査を進めていくうちに、ダンテと呼ばれる悪魔払い集団に接触。彼らに事件の概要を説明された。以下は彼らの言葉を多々引用している。

この事件は、100年前当時のダンテにより悪魔払いされた悪魔を蘇らせるために、悪魔教の信者が引き起こした。

復活の儀式のために悪魔の信仰が全くない死体が必要だった彼らは、部外者を連続して襲って首を切り取っていたと思われる。(ダンテの話しぶりから、ビルファーミーの住民はすべて悪魔教信者だったという事だろう)



  
42 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 21:14:05.81 ID:YMM09mMZO
  
悪魔の復活には三つのものが必要らしい。

・悪魔信仰のない者の首

・悪魔を召喚するための器となる人間
(これには適性があり、悪魔信仰する名家の当主クラスでなければ悪魔召喚に耐えられないらしい)

・悪魔教信者の呪文

以上が揃って初めて悪魔召喚が成功するらしい。

今回の事件でデービスと呼ばれる悪魔が、元ビルファーミー察署長のフレッド=ビギンズを器にして復活した。
デービス(フレッド)は逃走。その行方は現代のダンテが現在追跡中。

悪魔と関わる場合には気を付けなければない事がある。

悪魔と目を合わせたら、悪魔に顔を覚えられる。

僕とクライチェックは目を合わせてしまった。ダンテに簡単な悪魔除けをしてもらったが、定期的に悪魔除けをしなければデービスに見つかるらしい。

(悪魔が関係する捜査には以上を気を付けつもらいたい)

記録者
・ブーン=モルダー

担当捜査員
・ブーン=モルダー
・クライチェック



  
43 名前: File6.【スマイル】 ◆JXck9Ucovk 投稿日: 2007/02/06(火) 21:15:02.05 ID:YMM09mMZO
  
【VIP地下駐車場】

外出したはずのクライチェックは、何者かの車に乗って誰かと話をしている。

('A`)「モルダーは素晴らしい捜査官だ。 推理力・判断力・行動力、ともに特A級です」

?「……早くモルダーに全幅の信頼を置かれるようにしろ」

('A`)「分かっています」

To Be Continued.



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