( ^ω^)ブーンが宇宙艦隊を指揮するようです

  
2: ◆1RCx6ePe5g :2007/02/11(日) 12:52:52.53 ID:OLWwrSTc0
  
第三話「第一波」

(; ^ω^)「って、そこが艦橋かお!」

(´・ω・`) 「さぁ、多分乗組員一同自分たちの新たな上官殿がどんな人物か気になっているでしょうから」

アルワナ・ウェージャフの艦橋は円形に近い形状をしていた。
二人が入った入り口は中央の司令座とその右前方の補助司令座からなる一段高いスペース。
そこから見て正面に大きな空間が広がり、手前に4つ並んだ首席士官用座席と
その前方に扇状に四列座席が設置されている。

壁面は白色、座席群の更に前には超大型の仮想窓がある。
大きさは大体直径50メートルと言った所だろう。
この空間で96名が勤務をしており、他の区画に24名が存在する。

基本的に艦の運営は司令官が指示を出し、副長がそれを補佐。
出された指示は4人の首席士官が処理を行い、それぞれの部下は無人艦の操作を担当する。
首席士官の四名はそれぞれ航術・主計・砲術・技術であり、各30名・15名・30名・15名の部下を持つ。



  
3: ◆1RCx6ePe5g :2007/02/11(日) 12:53:22.69 ID:OLWwrSTc0
  
ついでにここで戦闘艦隊の構成も説明してしまおう。
1個戦隊は1隻の有人旗艦と99隻の無人艦で構成される。
無人艦は特に規定が無い限り、ある程度の指示さえあれば自律戦闘が可能であり、
特に重要ではない星系や航路警備には基本的に無人艦が活用される。
その戦闘能力はそこいらの人間よりは優秀と言えるだろう。

だが、その欠点は大局的視点の欠如にある。
無人艦に任せればその場その場の戦闘では勝てるものの、戦略的敗北が相次ぎ
結果的に戦争には負けると言う事例が多い。

その為に有人艦が統制を行い、時によっては無人艦は有人艦の盾になる。
万が一有人艦が撃破された場合、新たな旗艦が設定されなかった場合は
それ以上の損害を防ぐ為に、自動的に戦闘宙域から離脱し待機するようになっている。



  
4: ◆1RCx6ePe5g :2007/02/11(日) 12:53:51.05 ID:OLWwrSTc0
  
(´・ω・`) 「首席士官4名はこっちへ来てくれ」

艦橋に入ったショボンはまず、そう声をかけた。
それに応じて男女各二名が上がってくる。
階級章はいずれも鉄色星一つ、准尉の証だ。
彼らはショボンとブーンに向き合うように横一列に並ぶ。

(´・ω・`) 「此方が我が第817戦隊の司令官となる、内藤ホライズン中尉だ。
     順に自己紹介を頼む。」

その言葉にまずは一番左の最も背の高い男が自己紹介を始める。
髪は短髪、見た目からして力強い印象を受ける、如何にも軍人然とした人物だ。



  
6] ◆1RCx6ePe5g [支援感謝、試験gngr] : 2007/02/11(日) 12:54:38.79 ID:OLWwrSTc0
  
( ,,゚Д゚)ゝ「ギコ=ハーマン准尉であります。本艦の首席技術士官を務めさせて頂きます」

次に2番目。
此方は黒々としたロングヘアーが白い肌に映える。
可愛らしいと言うよりも凛とした、と言った方がしっくり来るだろう。

川 ゚ -゚)ゝ 「クー=クーリンシュ准尉です。首席砲術士官を務めます。よろしくお願いします」

3番目は此方も女。
髪は金髪ロール、身長は低め、十分美人と言えるだろう。
だがそんな事よりもあまり感情を表さない、もっとはっきり言ってしまえば不自然な無表情をしている。

ξ゚听)ξゝ「ツン=デルーサ准尉。首席主計士官です」



  
7: ◆1RCx6ePe5g :2007/02/11(日) 12:54:57.62 ID:OLWwrSTc0
  
最後はやや長めの黒髪に色白と言うか青白い肌。
やや不健康そうで軍人とは程遠いイメージを与える男。

('A`)ゝ「高木ドクオ准尉。首席航術士官を務めます」

ブーンの最大の親友ことドクオ、その人である。

ブーンは四人の顔を一人ずつじっくりと見てから
( ^ω^)「自己紹介ご苦労だお。
    この太陽星系駐留艦隊第817戦隊の乗組員120名の命運は、
    事実上君たちと僕と少尉の手に委ねられているお。
    恐らく当面戦争は無いと思うけれど如何なる時でもその実力を遺憾なく発揮してくれる事を期待するお」
そう言った。



  
8: ◆1RCx6ePe5g :2007/02/11(日) 12:55:18.99 ID:OLWwrSTc0
  
ブーンの言葉は、少なくともその時点では常識的なものだった、が。
つい一瞬前の常識が今も正しいとは限らない。

艦橋に突然鳴り響く警報音、直後にショボンの席の通信端末が入信を告げる。
ショボンは慣れた動きで、席に着き通信回線を開く。
その様子をブーン含め多くの艦橋要員が見ていたがうろたえる者は居ない。
歴戦の勇士だから…ではなくただ単に現状を飲み込めず訓練だと考えるものが大半だからだ。

(;´・ω・`) 「…そうですか…直ちに」

応対するショボンの顔がたちまちの内に緊張していく、その様子を見たブーンは何か嫌な予感がした。
そして、嫌な予感とは往々にして当たる。



  
9: ◆1RCx6ePe5g :2007/02/11(日) 12:55:40.84 ID:OLWwrSTc0
  
(´・ω・`) 「中尉、少佐から全戦隊の司令官に緊急通信があるそうです」

( ^ω^)「わかったお。准尉たちは持ち場に戻って待機してくれお」

その命令を受けた4人は何か違和感のある上官の態度に疑問を抱きつつもそれぞれの座席に就く。

直後にドクオはツンから肩を叩かれ、

ξ゚听)ξ「ちょっと、ドクオ!」

('A`) 「ん? なんだ?」



  
10: ◆1RCx6ePe5g :2007/02/11(日) 12:55:59.52 ID:OLWwrSTc0
  
ξ゚听)ξ「なんだ、じゃ無いわよ。さっきの少尉の様子、なんか何時もの訓練のときとはえらく違わない?」

ツンの疑問はドクオの中にも当然あるものだった。
ドクオは配属以来4年間ショボンとは付き合いがある。
その間幾度もの訓練を経ているがそのいずれにおいてもあそこまで緊迫した表情を見せたことは無かった。

('A`) 「まぁ、俺もそれは感じた。少尉があんな顔をしたのを見た事は俺も無い」

ξ;゚听)ξ「でしょ?もしかして、戦争でも始まるとか?」



  
11: ◆1RCx6ePe5g :2007/02/11(日) 12:56:17.45 ID:OLWwrSTc0
  
('A`) 「流石にそれは無いと思うぞ。
   確かに俺たちと連中は犬猿の仲だが今更戦争おっぱじめるような間柄でもなぁ」
  
ξ゚听)ξ「そう言われてみればそうだけど…」

結局その場はそれで終いだった。
しかし、ツンのその推測は正に直球ど真ん中だったりするのだが。

一方ブーンは既に回線を開き、何時でも応対できるように準備を整えていた。



  
12: ◆1RCx6ePe5g :2007/02/11(日) 12:56:34.01 ID:OLWwrSTc0
  
( ^ω^)(司令官だけ…いったい何の話なのかお…)

先刻の何かもやもやとした感じを抱えつつも時間を過ごす、その時目の前の仮想窓にシャキンの姿が映った。



  
16: ◆1RCx6ePe5g :2007/02/11(日) 15:08:18.13 ID:OLWwrSTc0
  
(`・ω・´)「諸君。
      たった今、太陽星系への大規模跳躍を確認した
      我が国の使用する跳躍周波を解読されたと考えられる。
      数は不明だが、コンピュータは少なくとも基幹艦隊クラス、即ち500兆隻分以上の質量を持つ事を示している。
      恐らく艦隊か機動要塞の何れかだろう」
     
シャキンは硬い表情のまま続ける。



  
17: ◆1RCx6ePe5g :2007/02/11(日) 15:08:48.49 ID:OLWwrSTc0
  
(`・ω・´)「本国に問い合わせた所。
      同時に第4超銀河団のヘルメス星系、第8超銀河団のイスパニア星系にも同クラスの跳躍が確認されたとの事だ。
      何れも我々の太陽系のように超銀河団の中心近くに存在する星系だ。
      相手は惑星連邦、これだけの兵力を動かせる国家は我々人類統合体を除けば連中しかありえない。
      第4・第8、両方面には丁度第11基幹艦隊・第57基幹艦隊が駐留しており、奇襲攻撃とは言え簡単にやられはしない。
      しかし、我が太陽星系にはムーンベースと幾つかの防衛施設、
      それ以外にはたった1個分艦隊、10万隻の兵力しかない。
      これだけ圧倒的な戦力差があれば正に抵抗は無意味だ、本国も銀河系からの撤退を決定した。
      作戦計画は既に転送してある。健闘を祈る」



  
18: ◆1RCx6ePe5g :2007/02/11(日) 15:09:34.31 ID:OLWwrSTc0
  
(; ^ω^)「マジかお…?」

通信が切断されても暫くブーンは現状を飲み込むことが出来なかった。
戦争?ここ600年は無かったことだ。
軍でもまともな戦闘経験がある人間など存在しない、敵にしろそれは同じだ。
しかし、侵攻する以上は相当な訓練を積んでいるであろう事は想像に容易い。

ブーンは確かに自分の意思で軍に入った、だがそれはあくまで条件が良いから。
徴兵制が存在しないのだから皆志願兵だが、大抵は



  
20: ◆1RCx6ePe5g :2007/02/11(日) 15:10:23.34 ID:OLWwrSTc0
  
(まさか自分の時に戦争が起こるなんて事はありえまい)

そう思っているに違いなかった。
統合体設立以前に経験した独立運動の最中での小競り合いを最後に平和が続いた人類統合体。
かつて最強を謳われた栄光のスターフリート、それはもう昔日の栄光。
治安維持能力は優秀だが、こと戦争においてはろくな覚悟も出来ていない、平和ボケの集団に過ぎなかった。

(#`・ω・´)「…中尉!!」

現実逃避していたブーンの思考は、ショボン=ジェリコーの押し殺したような怒声によって強引に引き戻される。
振り向けば恐ろしい顔をしているショボンの顔が直ぐ近くに。



  
22: ◆1RCx6ePe5g :2007/02/11(日) 15:19:59.29 ID:OLWwrSTc0
  
Σ( ゜ω゜)「な、なんだお?」

(´・ω・`)「確かにそうなる気持ちもわかります。
      しかし、貴方には他になすべきことがあるのではないですか?
      さっき貴方が言った通り、この艦の命運は我々に。
      もっと突き詰めれば貴方に掛かっているのですよ?」
     
ショボンの顔はもう怖くは無かった。
経験の差、流石と言うべきか、落ち着いた声で諭すように忠告する。
そのお陰でブーンは何とか自分を取り戻すことに成功した。



  
23: ◆1RCx6ePe5g :2007/02/11(日) 15:20:14.49 ID:OLWwrSTc0
  
( ^ω^)「…わかったお」

ブーンは通信モードを全艦放送にし、多くの者が自分と同じように驚愕するであろう事実を告げる。

( ^ω^)「此処、太陽星系とヘルメス星系、イスパニア星系に
       現在惑星連邦所属と思われる、大部隊が跳躍しているお。
       他はともかく、この星系に関しては戦力差は絶望的。
       よって我々は軍事施設から人員を撤収させた上で撤退するお。
       敵の襲来までにはまだ時間がある、とにかく落ち着いて行動して欲しいお」

それだけを告げて通信を切ると一気に力が抜けたようにブーンは司令座に深く座りなおした。



  
24: ◆1RCx6ePe5g :2007/02/11(日) 15:20:34.13 ID:OLWwrSTc0
  
無駄だとは思いつつも落ち着いて、などと言ってしまったがやはり無意味だったようだ。
ここからは全体が浮き足立っているのが手に取るようにわかる。

すかさずショボンが近づき

(´・ω・`)「それでOKです。
      人員の撤収に関する命令は既に発してあります」

( ^ω^)「助かるお。正直言って撤退は間に合うかお?」



  
25: ◆1RCx6ePe5g :2007/02/11(日) 15:21:12.78 ID:OLWwrSTc0
  
(´・ω・`)「そうですね…。」ショボンは首を横に振って「予定通りに行ってギリギリ。遅れれば撤収作業中に敵が出現します」

( ^ω^)「やっぱりそうかお。なんとなくそんな気はしてたお」

(;´・ω・`)「やはりそうですか。私はてっきりその事も口に出してしまうんじゃないかと、ヒヤヒヤしていたんですが」

( ´ω`)「軍大学出の若造でも、その位はわかってるお。世の中には知らない方が良い事も沢山あるんだお…」

その瞬間にも敵は直ぐ其処まで迫っている。
果たして撤退は間に合うのか、そんな事は誰も知らなかった。



  
27: 愛のVIP戦士 :2007/02/11(日) 15:44:07.58 ID:OLWwrSTc0
  
第三話 終



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