( ^ω^)は殺人者のようです
- 108:◆irDDQfcPYE :02/23(金) 16:51 wcZyMYAKO
2月12日、朝。
質素な綿で作られた格闘着に身を包んだブーンは地下3階の練武場にいた。
正面には今や生きる伝説となった男、保安部警備課長のミルナが同じく格闘着に着替え立っている。
( ゚д゚ )「クーから事情は聞いている」
この無口な男はそれだけで会話の結びとしたようだ。
証拠に床に引かれた開始線を跨ぐように、前後に小さく足を開いた態勢を作る。
右足を前に出し、掌を上に向け、両手を前に差し出した奇妙な構え。
( ^ω^)(隙だらけだお…)
3年間も眠っていたブーンが見抜ける程の大きな隙。
一つの課を纏めあげる男が弱いはずはないのだが…
( ^ω^)「よろしくお願いしますお」
言った次の瞬間にブーンの体は宙を舞い、地面へと叩きつけられていた。
受け身も取れずに仰向けに転がされたブーンの胸を踏み付けながらミルナが再度口を開く。
( ゚д゚ )「これでお前はまた死んだ」
また、死んだ。
無口な分だけミルナの言葉は重くのしかかる。
眠っている間にすっかり忘れていた感覚。
一瞬の気の緩みが命を左右する感覚。
まずはそれを取り戻す事から始めよう。
ブーンは素早く身を起こすと、再び開始線に戻ろうと背を向けたミルナの左膝の裏を狙って爪先を打ち込んだ。
読んでいたのかミルナは足の裏でそれを受けると、こちらの勢いを利用し素早く反転。
そのまま空中で首を刈るような蹴りが飛んでくる。
首から上が吹っ飛んだ。
と思える程の衝撃に今度こそブーンは立ち上がれなかった。
ギコの強さとはまた質の全然違う強さ。
攻防の中で上手を取られるのではなく、攻防にすらならない。
( ゚д゚ )「自分に足りない物はわかったようだな。だが今日だけで2度お前は死んだ」
ミルナはゆっくりと口を開く。
( ゚д゚ )「あとは失った筋肉を取り戻せ。次回は明日の同じ時間だ」
(;^ω^)「ありがとうございましたお…」
辛うじて礼を言うと、歩き去ろうとしていたミルナは振り向いて笑った。
( ゚д゚ )「一年で何度死ぬんだろうな」
その時はその真意を理解できなかった。
だがその後ミルナの言葉通り、ブーンは10ヵ月で通算400回以上は「死ぬ」事となった。
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