( ^ω^)は殺人者のようです

109:◆irDDQfcPYE :02/23(金) 17:36 wcZyMYAKO

12月23日。夕方。

ラウンジ本社ビル8階。
武力渉外課長執務室。

普段は静かな部屋に電話の声が漏れていた。

( ・∀・)「うむ。そのようにしてくれたまえ。では」

様々な物が雑多に積み上げられながら、持ち主にしかわからない整合性のある部屋にモララーはいた。

( ・∀・)「さて、君のご希望通りだよ。彼らは今夜ここに来るだろう」

ガチャリと電話を切り、巨大なソファに身を沈めたモララーはくるりとソファを回転させるとドクオに笑みを投げ掛けた。

( 'A`)「…」

だが目前に立つドクオは何も答えず、手の中の繊維を弄んでいた。

( ・∀・)「今日は君の待ち望んだ日だろう?嬉しくはないのかね」

( 'A`)「ブーンは…来るのか?」

( ・∀・)「草の情報に拠ると、ブーン君、クーと警備課から何名か来るようだ」

その言葉にドクオの眉が跳ね上がるが、一瞬で無表情に戻る。

( ・∀・)「やはり総力戦よりは精鋭か。あとは鬼札がどう動くか、だな」

なんとも嬉しそうにモララーは笑う。

理解のできない生き物を前にドクオが選んだ選択は、やはりそのまま沈黙を貫く事だった。



111:◆irDDQfcPYE :02/23(金) 18:47 wcZyMYAKO

12月23日。夜。

突然かかった緊急召集に家で寝ていたブーンは飛び起きた。

車を飛ばしてVIP本社ビルに向かう。

盗聴の可能性があるので詳しい話は会議室で、とオペレーターは言ったが召集の理由はわかっている。

そのためだけに10ヵ月もの間、死ぬような思いを続けたのだから。

(;^ω^)(ミルナ課長以外の人に会うのも1年ぶりだお…)

本社に到着し、エレベーターに乗りながらブーンは考えていた。

軽い音が鳴って13階に着いたのをエレベーターが告げ、ドアが開く。

忙しなく走り回る警備課員や喋り続けるオペレーター達。

1年前と何も変わらない風景がそこにはあった。

深呼吸を一つして、いつものようにドアをノックしてから開ける。

クー課長、ミルナ課長、渡辺さんそして、ツン。

全員が一斉にこちらを向いた。

( ^ω^)「対外警備課、内藤入りますお」

年内で最大最後の作戦が始まろうとしていた。



117:◆irDDQfcPYE :02/27(火) 03:45 CdB2PY38O

川゚‐゚)「今回の作戦は至ってシンプルだ」

言いながらクーは、大急ぎで作られたであろう作戦書を配った。

川゚‐゚)「ツンは現場近くでオペレーターをしてもらう。
その指示の元、モララーのいるラウンジ本社ビルに襲撃をかけ、敵の戦闘課を繊滅。ツンの記憶を戻す」

( ゚д゚ )「敵の数は不明だが戦闘課員の数はうちと大差はないだろう」

クーの説明をミルナが補足する。

(;^ω^)「たった4人だけで敵の本社を制圧するんですかお?」

無謀だ。
少なくとも敵側にはモララー、ドクオ、ジョルジュの3人がいる。
判明してるだけでも3人。当然、前回の襲撃者達は他にもいる。

川゚‐゚)「いや、あと二人…」

言い掛けたその時だった。

(*゚∀゚)「おまたへー」

騒がしくドアをガチャガチャ鳴らして背の低い派手な女が現れた。

( ^ω^)(前に見たことある顔だお…)

(*゚∀゚)「いやー道が渋滞しててまいったまいった!ちょっと聞いてよ〜」

川゚‐゚)「つー。遅刻か」

喧しいつーと呼ばれた女と対照的に、場に魂も凍りそうな冷たい声が響く。

(;゚∀゚)「いやいや今日はちゃんと理由があるんだよ!」

川゚‐゚)「言い訳か。お仕置きだな」

それだけでつーはガタガタと震えだし、スイマセンデシタと小さく呟くとおとなしく席に着いた。

(;^ω^)(二人の間には一体何が…)

川゚‐゚)「内藤は前回の襲撃の時に会ったはずだな?一応紹介しておこう。つーだ」

(;゚∀゚)「ヨロシクオネガイシマス」

川゚‐゚)「このメンバーにあと一人、ラウンジに潜入している課員を含めて繊滅に当たる」

(;^ω^)「ラウンジに潜入って…ジョルジュ先輩やドクオがいるんだからバレてるんじゃないですかお?」

川゚‐゚)「お前はラウンジの襲撃以前に、つーと私に会ったことがあったか?」

なるほど言われてみればそうだ。
ギコは徹底して他の社員とは遭遇しないようにしてきた。

裏切りがあった際、スパイだとバレないようにするために?

それは潜入作戦を日常的に行っているという意味でもある。

川゚‐゚)「そういう事だ。他に質問はないか?」

ξ゚听)ξ「ギコ前課長はどうするんですか?」

今までずっと口を閉じていたツンが、的確な質問を投げ掛ける。

川゚‐゚)「前課長はラウンジの施設を潰してまわっているらしいからな。恐らく現地で合流できるだろう」

ぐるりと一同を見回す。

川゚‐゚)「では行くか。今年の仕事納めだ」

クーの合図をきっかけに、全員が順番に出て、屋上のヘリポートへと向かう。

「内藤…君?」

出ていこうとしたブーンの背に声をかけたのはツンだった。

それに気付いた渡辺さんはブーンに微笑みかけ、軽くウインクを飛ばし先に出てドアを閉めた。

相変わらず喧しい声も徐々に離れていき、会議室は途端に静寂に包まれる。

( ^ω^)「手紙はちゃんと読んだお。今夜が終われば全部元通りになるお」

振り返らずに告げる。

ξ゚听)ξ「うん。待ってます」

付き合うよりも遥かに前、知り合った頃のような口調でツンは話した。

( ^ω^)「記憶が無事に戻ったら、ツンには伝えたい事があるお」

ツンの口調には気付かない振りをして話す。

口調なんて事はどうでもいい。
少なくとも今は。

ξ゚听)ξ「伝えたい…事?」

近くにいるのに触れられない彼女。

( ^ω^)「全部が終わってからだお。それを伝える為にボクはもう死なないお。さ、行くお」

最後まで振り返らずに一気に告げる。
今振り返ると泣いてしまいそうだったから。

ξ゚听)ξ「うん。行こう」

会議室のドアを開けて歩き出す。

失った過去を取り戻すためだけに。



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