( ^ω^)は殺人者のようです
- 159:◆irDDQfcPYE :03/13(火) 02:26 ijJSiUSJO
12月24日。深夜。
渡辺編
エレベーターは緩やかに下降していく。
昔からこの感覚が大好きだった。
開くとそこには見知らぬ世界が広がっているからだ。
それが幸せな世界か残酷な世界かはさて置いて。
エレベーターが停止すると階数を確認する事もなく、渡辺は個室から前転しながら飛び降り、注意深く銃を左右に降った。
从'ー'从(敵影はなし…と)
部屋中に視線を巡らせた後、銃を腰のホルスターにしまい立ち上がる。
そこはあまり広くない部屋で、奥には更にもう一つ扉があった。
从'ー'从(当たり…かな?)
右手はホルスター付近に置いたまま、用心深くドアの把手を軽く捻る。
軽い音と共に向こう側に自動的に扉が開いていく。
すかさず扉の影に身を潜ませ、両手に銃を握り様子を窺う。
从゚∀从「噛まないから出てこいよ!」
あまりに無頓着に、中にいた人間が声をかけてきた。
罠か?否か?
躊躇っても活路は開けない、とはミルナの言だ。
VIPを警護するのと攻め込むのでは勝手が違って当たり前だが、他に手段もない。
せめて相手が何かをする前に撃てるように銃を向けながら身を現す。
自分の前方10歩くらいの位置に彼はいた。
背の小さな若い男。
恐らく自分と大して変わらないのではないか?
攻撃してくる様子はないが気は抜けない。
从'ー'从「あなたは?」
从゚∀从「ハインリッヒってんだ!よろしくな!」
ハインリッヒと名乗ったその男は、渡辺が姿を現した事に嬉々とした様子で声を出した。
从'ー'从「そう、ハインね。あなたはここで何をしているの?」
あくまで銃の狙いは外さないまま更に問う。
从゚∀从「モララー様が入ってきた奴はみんな殺せって教えてくれたぜ!」
ハインは快活に恐ろしい事を言う。
細身だが絞られた彼の体が、それを可能とするだけのスペックを秘めている事は服の上からでも見てとれた。
从'ー'从「私も殺されちゃうのかしら?」
最後の問い。
从゚∀从「おう!ごめんな!でも」
一発の銃声。
最初の一声だけ聞けば十分だった。
銃身を通って発射された弾は必殺の威力と速度を伴って、ハインリッヒの眉間をめがけて空気を切り裂いた。
だがそれは甲高い音を立てて弾き飛ばされる。
从'ー'从「ん?」
ハインは右腕以外動かしていない。
もう一度。
今度は左右の銃による連射。
狙いは左の膝と右肩。
从'ー'从「んん〜?」
从;゚∀从「人の話は最後まで聞けよな!」
今度は当たらなかった。
いや。
狙いは正確だったはず。
そこから推測できるのは只一つ。
从'ー'从(銃弾を…避けた?)
不可能な話ではない。
射角、速度、重量、タイミング。
攻撃とは種類こそ違えど、全てはこの4つの組み合わせでしかない。
从'ー'从(見切られてる…)
認めがたい事実を理解すると、渡辺は銃を腰にしまうと同時にハインに向かって駆け出した。
从゚∀从「おっ!やんのか!」
迎撃する形でハインリッヒが拳を握る。
渡辺が速度をあげるのと反比例して距離は縮まっていく。
その距離が僅かに2メートル程になった時、ハインリッヒが動いた。
ゆらり、と上半身を沈めると低い体勢のまま渡辺の足元に滑り込む。
从'ー'从「!」
その動きを見た瞬間に渡辺は何故だか皮膚が粟立つような感覚に襲われた。
咄嗟の判断で前方への軽い跳躍。
空中での抜銃。
足元を通り過ぎるハインリッヒの後頭部目がけてトリガーを2度、引く。
そして、着弾。
一寸の狂いもなく延髄を撃ち抜かれたハインリッヒは頭蓋の内容物を撒き散らして絶命した。
从'ー'从「…?」
間違いなく死んでいる。
从'ー'从(それにしては…)
妙だ。
さっきの殺気と能力があまりに掛け離れている。
まるで自分の力の扱い方を知らない子供のような…
从'ー'从「考えても仕方ないのかもね」
渡辺は一言呟くと、奥へと続く道を向いて慎重にその一歩を踏み出した。
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