( ^ω^)ブーンが阿部さんに掘られたようです
- 26 :愛のVIP戦士:2007/02/25(日) 01:54:02.98 ID:NmHrejqJ0
- 風の吹いた荒野に、夕闇が迫りはじめていた。
ワイン色の空は次第に暮れなずんでゆき、西の方にかすかに残っていた茜色の輝きの上を、
羊の群れのような形の雲がのろのろと歩んでいく。
その中を横切るように、プレデターの船は銀色の船体を上昇させていった。
( ^ω^)「プレデターさん、さよならだお」
ブーンが手を振った。
阿部さんは腰に下げたプレデターの槍を握りしめながら、つぶやく。
「いい男ってのは、国境も種族も銀河も超えちまうもんなんだな……」
西暦5656年。
プロマリウス星系に展開していた地球帝国軍の艦隊が未確認宇宙生命体と遭遇したとき、
連結して展開する彼らの旗艦にはいい男の肖像とa.b.eという勇者を表す文字が描かれていたという。
しかし、それはまた遙か未来の別の話である。
- 39 :愛のVIP戦士:2007/02/25(日) 02:04:33.66 ID:NmHrejqJ0
- sexual experiments A.b.e
〜登場人物紹介〜
阿部さん ――みんなの知っている阿部さん。
ジョニー ――阿部さんに可愛がられ、ニュージョニーとして覚醒した元保安官。全裸。
ブーン ――金髪のボーイッシュな女の子。謎の組織に追われているらしい。
ドクオ ――黒髪のゴスロリ美少女。本人いわく天才らしい。ブーンを追っている謎の組織の一員。
シュワちゃん ――ドクオの作ったロボット。激闘の末阿部さんに破壊される。
プレデたん ――ドクオの作ったロボット。登場した時にはすでに、現れた本物のプレデターに破壊されていた。
- 45 :愛のVIP戦士:2007/02/25(日) 02:08:11.07 ID:NmHrejqJ0
- 〜これまでのあらすじ〜
ヒッチハイクしたブーンを乗っけた阿部さんは紆余曲折あってジョニーを仲間にし、
ブーンを追う謎の組織(主に美少女)の追撃をかいくぐりながら、
広大なアメリカ大陸を東へとランナウェイするのであった。
プレデターの母艦にアブタクションされたブーンと阿倍さん。
ここでも紆余曲折あってプレデターたちはホモの喜びに目覚め、地球を去っていった。
アリゾナの荒野に戻ったブーンたちは、誰か一人忘れているような気がしながらも、
旅をつづけるのであった……。
- 73 :愛のVIP戦士:2007/02/25(日) 02:28:16.07 ID:NmHrejqJ0
- 「黄金ポテトに熱いナチョ・チーズのトッピング」
金髪の少女は、発泡スチロールのトレイに書いてあった説明書きをそのまま読み上げた。
「食べないの?」
少女と男は、<タコベル>の一番奥まった席に向かい合うように腰かけて座っていた。
脚の線をくっきりと浮立たせたジャージ。少女は襟の開けたシャツの上に、革のジャケットを羽織っている。
男は自動車整備工が着るような緑色のツナギを上下に着こんでいた。腰には何かの工具なのか、
細い銀色の棒がぶら下がっている。
どちらかといえばでっぷりと肥えた客が多いタコベルの店内で、細身の二人の姿はかなり目立っていた。
「……俺はいい。さっき、唐揚げを食べたばかりだからな」
東洋人のツナギを着た男は、店内の太っていた男の客を見て何かを思い出すように切なげな目をした。
「ジョニーのことを考えていたのね」
コバルトブルーの瞳を沈ませて、少女が告げる。
向かい合う二人は、遠くからでは恋人どうしのように見えない事もなかった。
- 90 :愛のVIP戦士:2007/02/25(日) 02:36:39.43 ID:NmHrejqJ0
- ( ^ω^)「やっぱり探しに行くのかお?」
金髪の少女――ブーンがほくほくとポテトを頬張りながら、向かいの男に続けた。
「俺は、ジョニーに約束したんだ。あいつのケツは俺のものだってな。
この瞬間も、誰かに掘られているのではないかと思うといたたまれない気持ちになる」
ツナギの男――阿部さんが答える。
( ^ω^)「やっぱり、誘拐されたのかお……」
お昼ごろにチャイナ・エクスプレスの駐車場で別れたっきり、ジョニーは二人の前から姿を消していた。
二人も地球からしばらく姿を消していたのだが、それはまた別の話である。
「ジョニーは可愛い男だからな。よし。俺は近隣のゲイバーを当たってみよう」
( ^ω^)「じゃあ僕は、警察署に行ってジョニーの行方を知らないか聞いてみるお」
- 103 :愛のVIP戦士:2007/02/25(日) 02:56:50.37 ID:NmHrejqJ0
- 阿部さんは、コンクリートの階段を静かに下りた。
都会の夜空にネオンサインの光る、繁華街のうらぶれた路地の一角である。
それとなくいい男に目を付けた阿部さんは、彼のあとをついていって、この地下酒場に辿り着いたのだった。
固いオーク材のドアを押し開いて、呼び鈴を鳴らす。
まずいジャズが、ゆるやかな雨音のように薄暗い店内を満たしていた。
「ジンフィイズ」
手をつないだ中年の男同士が、酒場の中で踊っていた。
阿部さんは悠然と止まり木に腰かけて、マスターに飲み物を注文する。
アールグレイの髪の二人連れの女が、あからさまに場違いな様子で阿部さんの隣に腰かけた。
ハイボオルなんかを注文して、片方の女が阿部さんに声をかける。
「ねーねー、ツナギなんか着て、あなたもホモなの?」
阿部さんの瞳が、女の方を見遣った。
問題にしていないのだ、という冷淡な微笑が、阿部さんの唇の上に浮かぶ。
「……失礼しちゃうわ」
二人連れの女は、ハイボオルを飲むと酒場の外へと出ていった。
- 121 :愛のVIP戦士:2007/02/25(日) 03:07:49.16 ID:NmHrejqJ0
- 「すいませんね……これはサービスです」
磨き上げられたカウンターの上に、マスターが一杯のバーボンをサーブする。
阿部さんはそれを軽く受け取ると、カウンターの中に立っていた初老の男に声をかけた。
「友達を探してるんだが、全裸のデブの男を知らないか?」
グラスの中で溶けあった氷が、チリンと音を立てた。
「全裸のデブの男ですか……」
清潔そうな白い布でグラスを磨きながら、マスターが続ける。
「全裸じゃない奴はいっぱいるんですが、全裸となると知りませんねえ」
「そうか。邪魔したな」
ドル紙幣をカウンターの上に置いて、阿部さんは止まり木から立ち上がる。
酒場の中にいた男たちは、横目でいい男である阿部さんのことを見つめていた。
オーク材のドアを押し開こうとしたとき、不意に後ろから声がかかった。
- 131 :愛のVIP戦士:2007/02/25(日) 03:15:17.98 ID:NmHrejqJ0
- 「全裸のデブの男かい? 確かに見たよ。一時間ほど前、フェニックス・ホテルの方に歩いていった」
酒場の隅に腰かけていた大学生風の若い二人連れの片割れが、阿部さんにそう告げた。
「そうか。ありがとうよ」
阿部さんは軽く会釈して、地下酒場を後にした。
ちりんちりんと鳴った呼び鈴の音に、店内にいた客たちはほうとため息を漏らした。
「待ってろよ。ジョニー……。すぐに掘ってやるからな」
阿部さんはそうつぶやいて、繁華街をフェニックス・ホテルの方に向かう。
- 139 :愛のVIP戦士:2007/02/25(日) 03:29:33.75 ID:NmHrejqJ0
- ( ^ω^)「おいすー」
保安官事務所の正面から堂々と入ろうとして、ブーンは見慣れた人影を見つけた。
「あんた、なんでそんな恰好で歩いてたんじゃ。少しは気をつけなさいよ」
「はあ……すいません」
ジョニーだった。ブーンはその太った男に近寄って、説教をしていた保安官に挨拶した。
( ^ω^)「この人、僕のおじさんだお。どうかしたのかお?」
「全裸で歩いてたんじゃよ。街の中を」
ほっとしたような顔をして、保安官がブーンのことを見る。
「身分照合をしても登録されてない指紋だって出るし、困っていたところだったんじゃ」
しょぼくれた老人だった。夜警に保安官事務所の前に立つくらいだからそんなものだ。
「この男の知り合いなら、すまんが、中に入って書類を何枚か書いてくれんかのう? 手間は取らせんよ」
( ^ω^)「……ごめんなさいだお」
なるべく苦痛を与えないように、ブーンは一撃で保安官の老人を昏倒させた。
( ^ω^)「ジョニー! さっさと逃げるお!」
- 147 :愛のVIP戦士:2007/02/25(日) 03:38:17.39 ID:NmHrejqJ0
- ( ^ω^)「そうだお。しかし保安官を殴っちゃったから、夜が明けたらまた車を都合して
この街から出ることにするお」
ブーンは携帯を切った。疲れているらしく、ジョニーはすぐにベッドの上でいびきをかきはじめた。
高く昇りはじめた月が、平坦な銀色の光を窓の外の街にこぼしていた。
さすがにホテルだけあって部屋は昨日のモーテルよりは豪華だった。何よりも広い。
( ^ω^)「車は爆発するわ宇宙にまで連れていかれるわで大変だったお……」
ブーンはため息をついて、羽織っていたジャケットをベッドの上に脱ぐ。
ジーンズとシャツも脱いで下着姿になると、そのままホテルのバスルームに向かった。
( ^ω^)「シャワーでも浴びて、さっさとお休みするお」
ぴくりと、ベッドの上に突っ伏していたジョニーの腕が動いたのに、ブーンは気づかない。
- 154 :愛のVIP戦士:2007/02/25(日) 03:51:00.57 ID:NmHrejqJ0
- 少女はお湯を満たしたバスタブの中に、ゆっくりと身体を沈めた。
かすかな浮遊感があって、下半身が持ち上がる。
そのままゆっくりと力を抜くと、お湯の中に平べったいお腹が浮かんだ。
「食べすぎたかなあ……」
唐揚げにタコベルのタコス。少女はお腹をさすって、ため息をつく。
その下のお湯の中に、自分の陰毛が薄く浮かんでいた。
「やだ……」
昨日のモーテルでの痴態を思い出してしまって、少女はかすかに頬を染める。
苦労して取り出した鍵は、今はもっと安全な場所に保管している。
適当にお湯の中から上がろうとした少女の前で、ふいにバスルームのドアが乱暴に開いた。
「ひっ!」
慌てて、少女はお湯の中に自分の身体を沈める。
湯けむりの中に、ジョニーが仁王立ちしていた。
- 166 :愛のVIP戦士:2007/02/25(日) 03:57:32.13 ID:NmHrejqJ0
- (; ^ω^)「ジョ、ジョニー……。お前、男専門じゃなかったのかお?」
ジョニーは答えない。その挙動は、どこかぎこちなかった。
さながら電池の切れかけたロボットのような動き――まさか。
ぴしっと、全裸のジョニーの顔を割るように一本の線が走った。
そのまま、顔が真っ二つに割れていく。
それは、人間の顔ではなかった。精巧に作られたロボットの外皮。
完全に真っ二つに割れた顔の中で、黒髪の少女が微笑んでいた。
偽物のジョニーの身体を、少女は着ぐるみのように被っていたのだった。
(; ^ω^)「トータル・リコールかお……」
アーノルド・シュワルツネッガー主演の映画の名前を、ブーンはつぶやいた。
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