( ^ω^)ブーンが阿部さんに掘られたようです
- 68 :愛のVIP戦士:2007/03/02(金) 23:47:03.78 ID:CBGr8CRO0
- ブーンは、ポリマー製のグロッグのスライドを引いた。
ハンドガードの前に取り付けていたタクティカルライトを触ると、閃光が暗がりを強烈に照らしだした。
両手でグロッグを目の高さで構えて、ぬっとそびえていた上部構造の中に素早く銃口を向ける。
直線の通路だった。途中に、扉のない小部屋がいくつかある。
タクティカルライトのビームの中に、三脚のバイポッドに支えられた何かが見えた。
すらりと伸びた危険な直線。ライフルの銃身。
赤くて薄い糸が、その先端から廊下に向かって一直線に伸びている。
とっさに、ブーンは上部構造に続いていた階段に身を伏せた。
鋭い金属音が上をかすめて、コンクリートの天井からバラバラと散った細かい破片がブーンの髪を汚した。
( ^ω^)「タレットかお……!」
断続的に頭上の闇の中で響いていた連射音が、ふいに途切れた。
ブーンは太腿に付けていたベルトから手投げ弾を取り外す。
安全レバーが弾け飛ぶ音に、上部構造のコンクリートの廊下を円筒形の物体が弾む重い音がつづけて聞こえた。
ブーンは膝を抱えて丸まるようにして、両腕でがっちりと耳を覆う。
炸裂した閃光が、爆風をブーンの背後から噴き上がらせた。
- 69 :愛のVIP戦士:2007/03/03(土) 00:05:32.71 ID:fVuwi8BW0
- 銃身の下部に取り付けられたタクティカルライトが、巻き上がった灰色の煙の中をまさぐった。
ラバーのソールが付いたコロラティのスニーカーが、コンクリートの床に擦れる音を立てる。
通路のどこかで、鋭いライフルの連射音が聞こえた。
薄れていく灰色の煙の中に、床の上に倒された三脚のバイポッドが見えた。
その上に固定されていたアサルトライフルが、ぶざまにひっくり返って天井を射撃している。
ブーンはグロッグの引き金を引いた。ほとんど間をおかずに二発目を放った。
ライフルの下部に取り付けられていた小さなセンサーが、鉛の弾丸に粉々に打ち砕かれた。
タレットが停止する。
( ^ω^)「どうも、ジョニーとドクオはこの先にいるみたいだお……」
煙の晴れはじめた通路の先には、さらに階段が続いていた。
ブーンは身を低くして両手でグロッグを構えたまま、通路を素早く移動した。
階段の壁にさっきと同じようにして張りつく。
グロッグの銃身で上を照らし出すと、そこには鈍い銅色の男が――シュワちゃん二号が仁王立ちに立っていた。
- 75 :愛のVIP戦士:2007/03/03(土) 00:30:32.77 ID:fVuwi8BW0
- ブーンが上でにわかに緊迫した銃撃戦を繰り広げている一方、阿部さんは塔の一階にいた。
上部から伸びている太いパイプに寄り掛かって、手にしていた雑誌を読んでいる。
引き締まった首筋の上で、暗く燃える燈火のような眼が知的なまなざしを投げかけていた。
「『俺が一番セクシー』か……。なるほどね、どこかで見たような顔だがいいルックスをしている」
つぶやいた阿部さんは、雑誌を片手にしたままツナギのジッパーを降ろした。
引き締まった美丈夫の肉体が、廃墟と化していた塔の外壁にかかる。
阿部さんの手が、股間にいきり立っていた自分のイチモツを淫らに摩擦しはじめた。
整った顔立ちをかすかにひそめて、薄目を開けたまま阿部さんは自慰をはじめる。
いい男というものは、何をやっていても絵にはなるものだった。
「ああ……。ジョニー……」
阿部さんの手にしていた雑誌が、ぱさりと下の地面に落ちる。
いつになく巨大化したおのれの男根を、慎ましくも淫らに愛撫するたびに、阿部さんは無我の境地に入っていく……。
ふいに、ガサリと何かがコンクリートの破片を踏み砕く音がした。
濃淡の付いた黒い瞳が、淫蕩な光を内側に潜めたまま、音のする方向を見やる。
- 77 :愛のVIP戦士:2007/03/03(土) 00:47:24.83 ID:fVuwi8BW0
- おぼろげに歪んだその輪郭が、それが人ではない事を告げていた。
薄青色にぼんやりと揺らめいている肌の中に、向こうの風景が透けて見える。
陽光の射さない塔の影の部分に、幽鬼のごときその青年の姿が佇んでいた。
美しい顔は血の気を失ったように蒼白となり、唇からは鮮血がつたう。
脇腹のあたりをひどく負傷しているらしく、その部分だけが真っ青な色を放っていた。
青年は木の幹を削りだして作った棒に、黒曜の石を結わえた見事な一本の槍を携えている。
その身に纏うのはアメリカの先住民――インディアンの衣装だった。
「……ウホッ」
阿部さんはオナニーするのも忘れて、思わずその凄惨な美貌に見入ってしまう。
『ここは……我らラメエ族の聖地……。何ゆえお前は、この聖なる地を汚そうとする……』
くぐもった亡者の声が、おぼろげに霞んだ青年の唇から洩れた。
「性なる地か……。なおさら好都合だ」
阿部さんは、寄り掛かっていたパイプから身を起こして、ずいっとその青年の亡霊に歩み寄る。
- 81 :愛のVIP戦士:2007/03/03(土) 01:03:14.59 ID:fVuwi8BW0
- 「いいのかい? 俺は、幽霊だって食っちまうような男なんだぜ」
男性器を屹立させたまま、阿部さんは槍を構えたままの青年の腕を取ろうとする。
まるで、ドライアイスの煙を掴もうとしたようだった。
阿部さんが青年に触れようとした瞬間に、実体を喪った青年の肌が煙のように阿部さんの指からこぼれた。
「……これじゃあ、俺のケツの中でションベンさせるのは無理だな」
残念そうに、阿部さんがつぶやく。
青年はそんな阿部さんに、手にしていた槍の切っ先を突きつけた。
『ここから即急に立ち去るがよい。……ここは、我らラメエ族にとっては汚してはならぬ聖地なのだ』
「残念だが、それはできない相談だ」
幽鬼のごとき青年に、阿部さんはかすかな微笑を漏らした。
恋している男の顔が時としてそうなる、澄んだように引き締まった頬。美しいうねりを描いた阿部さんの唇が、
静かな弦楽器を奏でるように言葉を紡ぐ。
「俺の友達がこの上にいる。俺は、そいつに必ず戻ると約束した。
そして、いい男ってのは気に入った男を見つけたら、掘らずにはおけないものなんだぜ」
- 85 :愛のVIP戦士:2007/03/03(土) 01:16:27.03 ID:fVuwi8BW0
『……。お前は、あの白人たちとは違うようだな……」
インディアンの青年の亡霊は、ツナギのジッパーを元に戻しはじめた阿部さんを見つめた。
『私はラメエ族の中でも最も勇敢なる戦士、ツコンナ。お前の名は何と言う』
「俺は阿部。阿部 高和だ。見ての通りの自動車整備工さ」
『ジドウシャセイビコウ……。それが、お前の一族の戦士の名前なのか?』
「違う。俺は――――いい男だ。俺のことを呼ぶ時は、阿部さんかいい男と呼んでくれ」
『イイオトコ……。知らない言葉だが、よい響きだ。きっと、お前の一族も誇り高い戦士なのだな』
青年の亡霊は、そうつぶやいてかすかに笑ったようだった。
『わたしのラメエ族は、この大地で平和に暮らしていた。ここは聖なる水が湧き出す神聖なる泉。
わたしは、その泉を守るために一族の中から選ばれた戦士だった』
- 88 :愛のVIP戦士:2007/03/03(土) 01:34:20.89 ID:fVuwi8BW0
- 『そう、わたしは戦士だったのだ……』
透明に澄んだ夜空には、無数の星々がきらめいていた。
中天に昇りはじめた月が、大地の上に光の航跡を投げかけ、そこを通り過ぎた青年の横顔を照らし出した。
片腕に構えた黒曜石の槍が、月を追うように大きく伸びあがる。
「ツコンナ!」
縮れた黒髪を振り乱して、刺繍の入ったスカートを付けた少女が向こうから駆けてくる。
瞳からあふれ出た涙が、歩いてきた青年を立ちどまらせた。
「ラクサミ……」
槍が、乾いた大地の上に落ちる。
青年と少女は、月明かりの中で抱き合った。
「……その辺りは飛ばしてくれて構わん。要点だけかいつまんで簡潔に話してくれ」
阿部さんが、不機嫌そうに言う。
- 92 :愛のVIP戦士:2007/03/03(土) 02:06:46.20 ID:fVuwi8BW0
- 『ある日白人たちがラメエ族の村に侵攻。男はみんな殺されて女は性奴隷。
私は処刑、ラクサミは白人の男に輪姦されて妊娠した上に殺された。その後聖地だった泉の上に、
白人たちは村を作ってこの塔を立てた。私は亡霊になった今でもこの地を守っている』
(悲惨な話をさらりと産業で言うとは、こいつ、できる……。)
戦慄した阿部さんに、青年の亡霊は静かに告げた。
『私は、戦士としての務めを果たせなかった……。ゆえに死してなお、この地に留まっているのだ』
阿部さんは、悲しそうな青年の亡霊に屈託のない笑顔を見せた。
爽やかなその微笑みに、青年はかつて愛した少女のことを思い出して胸がキュンとなる。
「……一族が滅んだのはお前のせいじゃない。そう何もかも、背負い込むことはないぜ」
『阿部さん……』
目を潤ませた青年に、阿部さんは肩を優しく叩こうとして――幽霊だったことを思い出した。
「女を犯されて殺されたというのなら、俺がその復讐をしてやる。白人たちが作ったこの街を犯して、
大地に穴を掘ってやればお前の気も少しは晴れるだろう」
『しかし、そんな事が可能なのか……?』
「いい男の辞書に、不可能という文字は存在しない」
力強く、阿部さんは青年にそう告げた。
- 96 :愛のVIP戦士:2007/03/03(土) 02:39:24.86 ID:fVuwi8BW0
- 「ガガ……ピー……。アベサン……。セックス……」
不穏当な単語の組み合わせが、ウージーを装備していたシュワちゃん二号の身体から響きわたった。
ブーンは階段の脇に身を潜めた。タクティカルライトを装備したグロッグを握りしめる。
「アオオオ……アベサンノチンポ、ブットクテキモチイイナリ……」
どうもドクオの修理は完全ではなかったようだ。ギシギシと音がして、銅褐色のロボットが階段を下りてくる。
突然、連射された一挺のサブマシンガンが、九ミリ弾と空薬莢を雨あられのごとく通路に降らせた。
ブーンは身を低くして丸くなり、必死に頭を守った。
銃弾がうなりをあげ、甲高い音を立てて鋼鉄から跳ねかえり、金属の破片が至るところから飛び散った。
跳弾が当たっただけでも場所によっては人間は死ぬ。だが、そのような事態にはならなかった。
弾倉が空になった。連射が止む。
静まり返った通路と階段を、金属の足がぎしぎしと踏む音だけが響いてくる。
ブーンは深呼吸して、覚悟を決めた。階段の下からすばやく身を乗り出して、グロッグのトリガーを連射する。
不気味な赤色に明滅していたロボットの単眼に、火花が飛んだ。
スライドから灼熱した薬莢が次々と跳ね上がる。
ロボットは落ち着いた様子でウージーに新しい弾倉を装填しようとする。
何度目か指先を引き絞ったとき、乾いた音がした。
剥き出しになったバレルが、後ろに下がったままのスライドの前に突き出していた。
プラスチックの弾倉が、銃底から落ちて通路の床に転がった。
ホールドオープンしたグロッグに、ブーンは新しい弾倉を装填しようとして――。
ロボットの構えたウージーの銃口が、目の前に突きつけられていた。
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