( ^ω^)ブーンが述懐するようです

  
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/20(木) 01:41:50.19 ID:Xy0tmIE3O
  
第一話 ドクオ

彼は元々は、地元・千葉にある「県立ラウンジ高校」に通っていた。そこそこ偏差値の高い、いわゆる進学校である。
ブーンは小さい頃から所謂「出来る子」として生きてきた。中学校での成績も上々、将来はエリートコース間違いなしとまで言われていた。
しかし、彼は決して勉強が好きだったわけではない。勉強にすがるしかなかった…そう言った方が正しいと思われる。



  
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/20(木) 01:46:08.73 ID:Xy0tmIE3O
  
性格は基本的には根暗、スポーツの方でもこれといった活躍もない、顔のスペックもよろしくない…そんな彼にとって、「勉強が出来る」という事実は唯一のアイデンティティーだった。
そして、もう一つ。

「ブーンは大学まで行くんだよな。お金持ちになって、早くトーチャンに楽をさせてくれなwwww」
( ^ω^)
「把握したwwwwww」



  
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/20(木) 01:54:29.68 ID:Xy0tmIE3O
  
小さい頃に父親とした約束。少し考えれば、酔っ払った父の戯言だと分かるであろう、極めて下らない約束。
だが、ブーンにとってはそれこそが勉強をしていく上での支えとなっていた。だからこそ他の何がダメでも勉強だけは…と考えていた。
ただ――これは致命的な欠点なのだが――ブーンは他の「出来る子」とは違い、コツコツと真面目に努力することが苦手な子供だった。
その点においてはどちらかというと、クラスに必ず何人かは存在する「だらしない子」たちの方に近かったといえる。
事実、ブーンは小学校でも中学校でも宿題をよく忘れ、テスト直前になってもコーラを片手にゲームばかりしていた。



  
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/20(木) 02:01:24.81 ID:Xy0tmIE3O
  
それでも、テストの点と授業態度だけは良かったブーンのことを叱る教師は少なかった。通知表にも「5」ばかりが並んでおり、担任からのコメント欄に申し訳程度に「少しマイペースなようです」と書かれているだけで、目立った注意などはあまりされなかった。
それが彼のプライドを悪い方向に確立させる要因となった。
( ^ω^)
「僕は努力しなくても良い成績が取れる『天才』なんだおwwww
努力してようやく僕と同レベルにいる奴は凡人だお。いずれ奴らはお金持ちになった僕にひれ伏すんだおwwwwww
テラオモシロスwwwwww」



  
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/20(木) 02:09:07.96 ID:Xy0tmIE3O
  

…自称天才の挫折は早かった。
中学校の同級生らに羨まれ、親戚にも多大な期待を受けて、有頂天のままラウンジ高校に向かった天才は――中学の頃に一番の得意科目としていた、英語の授業が始まってわずか数分後に異変に気付いた。
(;^ω^)
「え? え? 先生が何を喋っているかわからないお? つか何だお予習必須って!
それはクソ真面目な凡人連中のやることだおwwww」



  
18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/20(木) 02:14:47.22 ID:Xy0tmIE3O
  
( *_*)
「うーん、じゃあ内藤。次の文を読んで和訳しなさい」
( ^ω^)
「うはwwwwwww」
( *_*)
「内藤、どうした」
(;´ω`)
「わかりません…」
( *_*)
「チッ、半年ROMってろ童貞。じゃあ次…」
( ;ω;)
「……」

ブーンにとって、初めての「わかりません」だった。



  
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/20(木) 02:24:43.18 ID:Xy0tmIE3O
  
当然、今までのツケが回ってきたのは英語だけではなかった。
数学も国語も、楽勝だと思っていた他の科目ですらも…ボロボロのまま終わった。
一ヵ月後に行われたテストの結果は、クラス40人中39位。
(;^ω^)
「保健体育以外、全部赤点だお」
( ゚⊃゚)
「ちょwwww内藤君テラバカスwwwwwww」
( ^ω^)
「フヒヒ! すいません!」
( ゚⊃゚)
「どどんまい。40位の奴の合計点、内藤君より50点近く低いよ」
(*^ω^)
「な、なんだってー! 下には下がいるもんだおwwwwww」
…嬉しくなかった。



  
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/20(木) 02:32:05.24 ID:Xy0tmIE3O
  

一年間、テストは赤点のままだった。
元々勉強が好きだったわけでもないブーンは、授業についていけないと分かった時点で全てを放り出した。
( ^ω^)
「学校なんてどうでもいいお。うはwwwタバコうめぇwww」

――2年生の夏休みが終わった頃、ブーンは学校に行かなくなった。
夏休み中にバイトで貯めた金でゲームを買い、エロ本を買い、タバコを買い…たまに友達の家に遊びに行く以外は、殆ど部屋から出なくなった。



  
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/20(木) 02:40:00.75 ID:Xy0tmIE3O
  
( ^ω^)
「ドクオおいすーw
彼女と別れたおwwwwなんか受験で忙しいらしいお。
これだから3年のババアは困るお」
('A`)
「ふーん…まあ童貞の俺には関係ない話だな」
( ^ω^)
「ちょwwww真性包茎きめぇwwww
ところで、真性だとコンドーム要らないって本当かお?」
(;'A`)
「俺は包茎じゃない。それと、コンドームは要るだろ」



  
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/20(木) 02:47:06.45 ID:Xy0tmIE3O
  
ブーンとドクオ。小学校の頃からの腐れ縁だった。
当時、ブーンの母親の躾はとても厳しく、彼は友達の名前に「君」を付けることを命じられていた。
皆が呼び捨てで名前を呼び合う中、ブーンだけが「○○君」と友人の名前を呼んでいたわけである。
そんなブーンが、初めて呼び捨てに出来た相手がドクオだった。
しかし例の、自身を天才と思い込む妄想のこともあって、高校生の頃のブーンはやはりドクオのことも見下していた。



  
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/20(木) 02:52:05.15 ID:Xy0tmIE3O
  
( ^ω^)
「ふーん、ドクオの高校ではこんなペラッペラの教科書を使ってるのかお」
('A`)
「まあな。工業だしさ。専門科目の方が大事なんだよ」
( ^ω^)
「こんな問題、中学の頃の僕でも簡単に解けるおwwww」
(#'A`)
「なんだとテメー」
(#^ω^)
「おっおっ? やんのかお?」
(;'A`)
「いや…」
( ^ω^)
「(馬鹿でケンカも弱いくせに、僕に逆らうんじゃないお)」



  
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/20(木) 03:00:47.86 ID:Xy0tmIE3O
  
ドクオは心の優しい男だった。小学校の頃から、争いごとよりもその解決の方に力を注ぐタイプの少年で、ケンカをした二人の友達のために、涙を流して仲直りを促したこともある。
また、ドクオは努力することに関しては常に友人内では一番だった。
運動音痴でいじめられっ子だった彼が、何日も努力することでようやく逆上がりや縄跳びをマスターした時には、さすがのブーンも一緒になって喜んだ。
そんなドクオを、ブーンは好きだった。
しかし同時に、ブーンにはそんなドクオが…凡人の代表に見えて仕方がなかった。
高校に入った頃、そのある種の差別感情が爆発した。



  
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/20(木) 03:08:15.29 ID:Xy0tmIE3O
  
高一・夏

(*'A`)
「俺、茶髪にしたんだ。服もホット○ッグプレスのお薦めに従って選んでみた。
どうかな?w」
( ^ω^)
「きめぇwwwww」
(;'A`)
「……。そうだ! お前にも一着貸してやるよ!」
( ^ω^)
「イラネ」
(;'A`)
「……」
( ^ω^)
「僕は、自分の顔面偏差値を把握してるお。人間には分相応ってものがあるんだお」
(;'A`)
「ぶん…何? んっ、とにかく! お前だって彼女ほしいだろ?」
( ^ω^)
「僕は、お前みたいに自分に全く似合わない格好をするぐらいなら死を選ぶお。
僕はこのままでいい。このままの自分を好きになってくれる娘だっている筈だお」



  
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/20(木) 03:22:33.98 ID:Xy0tmIE3O
  
高一・秋

(;'A`)
「ケホッケホッ…。俺、タバコ吸い始めたんだ。ラーク」
( ^ω^)
「僕はずっとマルボロメンソールだお」
('∀`)
「俺の方がニコチンの量が多い! 俺の勝ち!」
( ^ω^)
「厨氏ねお。大人はそんなもん比べないお。
ファミレスで喫煙席を見てみるといいお。タバコの銘柄だのニコチン量だのを話題にしてるのって、大抵DQNなガキだお」
('A`)
「え、でもブーン…夏ごろ洋モクのJOKER買って、ニコチン量を自慢してたじゃん」
(;^ω^)
「…!! つ…まり…それから成長したってことだお。
お前はまだ夏ごろの僕と同じところで止まったまま。情けないと思わないのかお」
('A`)
「おまwwwww動揺しすぎwwwww」
(;^ω^)
「…そんなことよりお前、タバコの吸い方が間違ってるお。それはただ吹かしてるだけだお。
やれやれ、所詮は厨かお」
(;'A`)
「えっ…」
( ^ω^)
「それじゃ彼女も出来ないはずだおwww吹かしきめぇwww」



  
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/20(木) 03:33:00.90 ID:Xy0tmIE3O
  
高二・夏

( ^ω^)
「彼女が出来たおwwwwやっぱり僕の理論が正しかったんだお。
ちなみに、もうセクロスしたお」
(;'A`)
「なんだってー!」
( ^ω^)
「ま、君はせいぜいホッ○ドッグ? うん? 何だっけ?
とにかく、ソイツを参考に頑張って下さいお」

ポンッ

(;'A`)
「くっ…」
( ^ω^)
「間違っても女の子に東鳩の話とかはするなおwwwそれと、女の子と話してる途中に選択肢は現れないおwwwww」
('A`)
「お前だって…お前だって…芹香先輩にハァハァしてたくせに!」
( ^ω^)
「今の彼女も一応は先輩だお。僕は年上が好きなんだおw
ドクオも委員長みたいな娘と付き合えばいいのに。
あ! 工業高校でしたねwwww」
(#'A`)
「……」



  
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/20(木) 03:39:03.36 ID:Xy0tmIE3O
  
そして高二・秋

( ^ω^)
「彼女とは別れたけど、童貞捨てられたからもういいお」
('A`)
「それよりブーン。お前、高校はどうするんだ?」
( ^ω^)
「ラウンジ? もうあんな所には行かないお。
来年の四月になったら、通信制の高校に行くんだお」
('A`)
「そっか。じゃあまたそこで大学受験を目指すんだな」
( ^ω^)
「…行かないお」
('A`)
「え?」
( ^ω^)
「大学には行かないお」



  
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/20(木) 03:46:50.47 ID:Xy0tmIE3O
  
('A`)
「ちょwwww」
( ^ω^)
「僕、作家になろうと思うんだお。
作家に学歴なんて関係ないお。才能の世界――僕の独壇場だお」
('A`)
「そうなのか? いや、確かにお前の書いた小説とか、結構面白かったけど。
でもなぁ…やっぱり普通、名だたる作家ってのは大学出てるんじゃね?」
( ^ω^)
「かもしれないお。でも僕は、大学って場所に疑問を持ったんだお」
('A`)
「(行ってもねーのに)」
( ^ω^)
「ラウンジ高校で出会った連中は、みんな大学を目指して勉強してるんだお。
教師も、その他の進路なんて眼中に無いって感じで話を進めてしまうんだお」
(;'A`)
「進学校なんだから、そりゃ当たり前だ」



  
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/20(木) 03:54:11.97 ID:Xy0tmIE3O
  
( ^ω^)
「僕は、学校に行かなくなる前に教師に聞いたお。
『皆は、何のために大学に行くんですか? 確固たる目的が無い人間が進学するのは、大学というものへの冒涜になるのでは?』って」
('A`)
「(はいはい、屁理屈ヘリクツ)」
( ^ω^)
「教師は平然と答えたお。
『皆、自分の努力に対しての結果が欲しいんじゃまいか。全ては自己満のためさ』って。
それなんて千葉すず?」
('A`)
「その答えは確かに変だな。それが全てなんて、そんな…」



  
38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/20(木) 04:04:22.31 ID:Xy0tmIE3O
  
( ^ω^)
「あいつら全員馬鹿だお。教師も、生徒も。僕はあんな連中と同じ道を歩むのは御免だお。
僕は僕のやり方で、エリートへの道を、金持ちへの道を勝ち取ってみせるお」
('A`)
「…うん。お前がそう決めたんなら、俺は応援するよ。
だけど、今の時点ならともかく、四月から他の高校に入り直すってことは…お前、俺よりも一年多く高校に通うってことだぞ」
( ^ω^)
「そんなの把握済みだお。四月からもう一度2年生やるお。
よろしく、ドクオ先輩」
('∀`)
「おk、今夜は飲み明かそうぜ! 俺が奢るよ!!11!!」
( ^ω^)
「その言い回し、既に妻子持ちのオサーンだおwwwwいつの間に童貞を捨てたんだお?」
(;'A`)
「バーローwwwwwwww」



  
39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/20(木) 04:08:09.08 ID:Xy0tmIE3O
  

ブーンはとことんドクオを振り回した。だが一方のドクオは、それがブーンなりの友情の表現方法なのだと信じ、あくまで親友としての立場を崩さなかった。

何度でもここに書こう。
ブーンはドクオを見下していた。
――しかし、この時点でどちらがより大人だったのか…端から見れば一目瞭然であっただろう。



  
41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/07/20(木) 04:14:00.63 ID:Xy0tmIE3O
  
次回予告

( ´ー`)
「お前の私物なんかシラネーヨ。さっさと転校しちまえ」
(#^ω^)
「それが教師の吐く台詞かお!
貴様には地獄すらなまぬるい、今すぐに止めを刺してくれるわ!」

( ・∀・)
「ようこそニュー速学園高校へ。私が面接官のモララーだ」
( ^ω^)
「wktk」

J('兪)し
「別に見なくてもいいよ、あたしには関係ないし。
まあ来たらカレーでも出すわ。…作りすぎちゃったから」



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