( ^ω^)ブーンが述懐するようです

  
63: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 06:39:36.57 ID:Xy0tmIE3O
  
第二話 入学へ

翌年、四月一日。
ブーンはニュー速学園への転入試験(ただし面接のみ)を受けるのに必要な在学証明書等の各種書類を受け取るため、再びラウンジ高校に足を運ぶこととなった。
( ^ω^)
「ここに来るのも久々だお。でも元カノも卒業しちゃったし…別に会いたい人なんていないお。さっさと書類を受け取って帰るお」
ブーンの担任であるシラネーヨは、数学の教師だった。真面目そうな風貌に似合わずズボラな男で、陰で生徒や他の教師連中から馬鹿にされていたのをブーンは憶えていた。
( ^ω^)
「あいつ如きに頭を下げるのは癪だけど、書類は絶対に必要なんだお。今日はずっと下手にまわるお」



  
65: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 06:48:55.43 ID:Xy0tmIE3O
  
会議室。
( ´ー`)
「よお、内藤。元気だったか?」
( ^ω^)
「先生もお元気そうで何よりだお」
( ´ー`)
「お母さんから聞いたぞ。三月はずっとお兄さんの会社でバイトしていたんだってな。感心したよ」
(;^ω^)
「…はいだお(カーチャンめ、余計なことを)」
( ´ー`)
「内藤。お前がこの学校から去るのは悲しいが、これはお前自身が選び取った道だからな。止めはしないよ。
ニュー速学園だっけ? そこでも勉強頑張れよ。みんな応援してるぞ」
( ^ω^)
「把握したお。で、先生。書類は…」
( ´ー`)
「ああ、書類な。
それより内藤。お前、学校に置きっぱなしの物が幾つかあるだろう。俺が取ってきてやったぞ」
( ^ω^)
「お手数かけますお」



  
66: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 06:57:35.92 ID:Xy0tmIE3O
  

シラネーヨは一旦職員室に戻ると、ブーンの荷物を持って再び会議室に現れた。そして手に持っていたものを全て机の上に置いた。
剣道の授業で使っていた面や小手、ロッカーの中に入っていたと思われる参考書の類。
ブーンはそれら一つ一つを、感慨深く見つめた。が、ある異変に気付き、慌ててシラネーヨの顔に視線を戻した。
(;^ω^)
「先生、竹刀が無いお!」
( ´ー`)
「ん? ダジャレか? 30点」
(#^ω^)
「そうじゃなくて…いいですかお? これが何か分かりますかお?
そう、竹刀を入れる布袋。ちゃんと僕の名前が書いてありますお。
で、問題は中身。何処に行ったんだお?」
ブーンは何度も布袋を振り回しながら、シラネーヨを睨み付けた。



  
67: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 07:09:03.71 ID:Xy0tmIE3O
  
しかし、彼は笑顔で答えた。
( ´ー`)
「シラネーヨ」
( ^ω^)
「ちょwwwwwww」
( ´ー`)
「おそらくだが…クラスの誰かが竹刀を持ってくるのを忘れて、お前のをちょっと拝借したんだろう。で、そのままなくしたんじゃまいか?」
(#^ω^)
「うはwww迷推理乙www
竹刀を持ってくるのを忘れた? じゃあその『クラスの誰か』って奴は剣道の選手でもないのに、いちいち家に竹刀を持って帰って練習していたのかお?
アリエナスwwww」
( ´ー`)
「粘着うぜぇ」
(;^ω^)
「…まあ、心からの謝罪と賠償金を請求するつもりはないから安心汁。
でも、もう一つだけ」
ブーンが次に手に持ったのは、同じく剣道に使う小手だった。
ただし、片方だけの。



  
68: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 07:19:50.38 ID:Xy0tmIE3O
  
( ^ω^)
「もう片方の小手は何処に行ったお?」
(;´ー`)
「…あれ? なんで片っぽしかないの?」
(#^ω^)
「それはこっちの台詞だお。とりあえず、迷探偵の推理を聞くお」
(;´ー`)
「し、シラネーヨ」
( ^ω^)
「ちょwwww明らかな動揺ktkrwwww」
(;´ー`)
「うはwwwwwもちつけ俺wwwwwww」
('∀`)
「あなたを、犯人です」
(;´ー`)
「おk、話せばいいんだろ。
…あのね、その小手はね、俺が見つけた時にはちゃんと二つ揃ってたのね」
(;^ω^)
「急に訛りがひどくなったお。マギー司郎かお」
( ´ー`)
「職員室に持って行ってね、それから…それから…」
( ^ω^)
「つまり、紛失したんだお」
( ´ー`)
「うん」
ブーンは溜め息をついた。



  
69: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 07:26:41.08 ID:Xy0tmIE3O
  
シラネーヨはれっきとした大人である。教師という、名誉ある職業に就いている。
――それなのに。
思えば、シラネーヨが物をなくしたのはこれが初めてではなかった。
学校の新聞部の「先生方全員にアンケート」という企画は、彼が回答用紙を紛失してしまったがために企画倒れになった。
クラスの学級日誌も、彼が自宅に持ち帰った日を最後に、なし崩し的に廃止になった。



  
70: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 07:33:22.73 ID:Xy0tmIE3O
  
( ´ω`)
「…もういいですお。どうせニュー速には剣道の授業は無いから」
( ´ー`)
「そうか。…じゃ、悪いけどそのまま持って帰ってくれな」
( ´ω`)
「把握したお(教師なんて、みんなこんなもんだお)」
( ´ー`)
「ほい、じゃあこれが書類だ。乙彼」
( ^ω^)
「ありがとうございますだお。さよなら、シラネーヨ先生」
( ´ー`)ノシ
「おう。まだまだ話したいことが沢山あるから、ひと段落ついたらまた来てくれよ!」
( ^ω^)
「(だが断る)」



  
71: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 07:38:31.18 ID:Xy0tmIE3O
  
ブーンは足早に校舎から出ると、
( ^ω^)
「もうこの学校には二度と足を踏み入れないお。…シラネーヨみたいなクズは、一生ヒラの教員でいるといいお」
と呟き、そのまま走って家路に着いた。

⊂二二二( ^ω^)二二⊃ブーン

( ^ω^)
「ハァハァ…。カーチャン、ただいまだお!」
J('‐`)し
「息遣いキモスwwwwそれと、今日の晩ご飯は無いから」
(#^ω^)
「……」

ポイ



  
72: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 07:47:37.50 ID:Xy0tmIE3O
  

J('‐`)し
「何を投げた。
…お、書類が揃ったんだね。じゃあ郵便局に行ってくるわ。
ついでに丸ごとバナナでも買ってこようかナー」
(#^ω^)
「(ピザ女)」
J('兪)し
「…何か言った?」
(;^ω^)
「別に。今日から人生やり直すお、って」
J('兪)し
「あ、そ」

ブーンは玄関で母を見送ると、すぐに自分の部屋に戻った。そしてそのまま万年床に倒れ込み、静かに眠りについた。



  
73: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 07:52:48.95 ID:Xy0tmIE3O
  
…彼が目を覚ましたのは、夜中の一時だった。眠い目を擦りながら部屋のテーブルの上を見ると、コンビニのビニール袋が置いてあった。
( ^ω^)
「…丸ごとバナナだお。なんでここにあるお?」

(*^ω^)
「フヒヒ、もうカーチャンったらカワイイとこあるんだから!」

( ^ω^)
「ハムッ、ハフハフハフッ」

( ^ω^)
「満腹だお。さて、食後の一服…は、今日は止めておくお」

( ^ω^)
「ありがとうだお、カーチャン…」



  
81: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 08:22:47.01 ID:Xy0tmIE3O
  

数日後。ニュー速学園から、面接の日時を知らせる書留が届いた。
面接は国立市にある本校で行われるとのこと。
実のところ、この時点のブーンには、ニュー速本校に通学する意志は無かった。千葉にもニュー速の協力校――すなわち一般の高校が、通信生のために校舎及びその他の施設を貸してくれるシステム――があったためだ。
( ^ω^)
「千葉から本校までは二時間近くかかるお。マンドクセ。
…まあ、面接さえ終われば二度と行くことも無いだろうし、観光も兼ねてちょっくら行ってくるかお」
ブーンはwktkしながら面接の日を待った。

( ^ω^)
「クンクン…よし、タバコの匂いはしないお。髪型も完璧だお。
じゃ行くかお。トーチャン、行ってきますお」

⊂二二二( ^ω^)二二⊃キーン



  
82: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 08:34:24.57 ID:Xy0tmIE3O
  
国立駅前――。
( ^ω^)
「うはwwww松屋があるおwwwwおkwwww
面接帰りのおやつはここのカレギュウで決まりだお」
駅から徒歩15分ほどの場所に、ニュー速学園本校はあった。
しかし、ようやく辿り着いた校舎は、ブーンが想像していたものとは全くかけ離れた外観をしていた。
(;^ω^)
「なんかキッタネエ学校だお。夜中にお化けが出そうだし、間違ってもこんな所には通いたくないおwww」

入学希望者の控え室として用意されていた教室には、既に数人の姿があった。ほぼ全員がブーンと同年代のようだった。
(;^ω^)
「ヤローばっかりだお。しかも見た目が明らかにDQNwwwww目を合わせたら金でも取られる悪寒」
ブーンは黙って空いていた席に座り、俯いたまま自分の順番が来るのを待った。



  
83: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 08:39:37.83 ID:Xy0tmIE3O
  
( ゚∪゚)
「内藤ホライゾンさん」
(;^ω^)
「ふひぃ」
( ゚∪゚)
「こちらへドゾー」
案内役の教師について行き、「面接会場」と書かれた紙の貼ってあるドアを開ける。
そこには、三人の面接官が座っていた。

( ゚ё゚)( ・з・)( ・∀・)
「……」
(;^ω^)
「失礼しますお」



  
84: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 08:47:33.45 ID:Xy0tmIE3O
  
( ゚ё゚)
「内藤ホライゾン君ですね。お掛け下さい」
( ^ω^)
「はいだお」
( ゚ё゚)
「本題に入る前に、伝えておくべきことがあります」
( ^ω^)
「何ですかお?」
( ゚ё゚)
「君は通学先の第一希望を『千葉協力校』と入学願書に書いていたようですが、千葉協力校の入学枠には現在空きが無くてね。
つまり入学後の君の通学先は、この東京本校になります」
(;^ω^)
「な、なんだってー!!11!!」
( ・з・)
「落ち着いて。どうですか、通えそうですか?」
(;^ω^)
「…通えない距離ではないですお。それに、そういう理由なら仕方ないですお。
よろしくお願いしますお」
( ゚ё゚)
「そうですか、良かった。ではこのまま面接に移行します」



  
85: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 08:54:07.27 ID:Xy0tmIE3O
  
( ・з・)
「まずは志望理由を。これは入学願書の方にも書いてもらいましたが、まあ、一応形式上…」
( ^ω^)
「はいだお。
僕は、千葉で全日制の高校に通っていましたお。でもその高校は、授業の進度がハイペース過ぎて、理解の前に不快がくるような学校でしたお」
( ・∀・)
「うむ。私も実は千葉の人間でね。ラウンジ高校のことはよく知っているよ」
(;^ω^)
「(うはwwwなんか想定外の展開ktkrwww
アドリブは苦手だおwww)」



  
86: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 09:08:16.52 ID:Xy0tmIE3O
  
( ・∀・)
「だからこそ不思議に思う。何故君はあんな優秀な学校から――言い方は悪いが――こんな、誰にでも入れるような学校に転入しようと思ったのかね?」
(;^ω^)
「(ちょwwwwこの先生、自分の職場に対する忠誠心の欠片もねぇwww)」
( ゚ё゚)
「…ゴホン! 内藤君、続けて」
(;^ω^)
「あうあう…。僕はハイペースな勉強、いや学習を望んではいなかったんですお。
元々僕はマイペースな人間ですから、一旦自分のペースを乱されると、何もかもが嫌になってしまうんですお」
( ・з・)
「つまり、自分のペースで学習がしたいと?」
( ^ω^)
「その通りですお」
(;・∀・)
「む? どうして分かったんですか、先生? あんた江原か細木の親戚か?」
( ・з・)
「願書にそう書いてあんだろがヴォケ。お前みたいな奴がテンプレすら読まずに、ガイシュツの質問を平気でするんだろうな…全く」
(;^ω^)
「なんでケンカになってるんだお」



  
87: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 09:17:51.32 ID:Xy0tmIE3O
  
( ・∀・)
「ふん。…ところで内藤君、通信制のシステムは把握しているかね?」
( ^ω^)
「はいだお。レポートとスクーリング(通学)で単位を習得するんだお」
( ・∀・)
「うむ。では一つ教えておこう。
レポートには提出期限がある。さらにそのレポートを仕上げるには、定期的にテレビ放送やラジオ放送を視聴し、しっかりと理解することが必要となる」
( ^ω^)
「把握してますお。ニュー速教育テレビで早朝に、数学や化学の番組をやってますお。ラジオの方も聴いたことがありますお」
( ・∀・)
「そうか。そこまで分かっているなら話は早い。
…さて。君は先程言ったね、自分のペースで学習を進めたいと」
( ^ω^)
「はいだお」
( ・∀・)
「うむ、ならば言おう。テレビ、ラジオ放送の定期的な視聴、さらにレポートに定められた提出期限…」



  
88: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 09:25:50.66 ID:Xy0tmIE3O
  
( ^ω^)
「…?」
( ・∀・)
「どう見ても貴方のペースではありません、私どもニュー速学園高校のペースです。本当にありがとうございました」
(;^ω^)
「アッー!」
( ・∀・)
「自 分 の ペ ー ス で 勉 強 で き る 場 所 な ん て 、 存 在 し な い ん じ ゃ ま い か ?」
(;^ω^)
「くっ…」
( ・∀・)
「通信を馬鹿にしちゃあいけないよ。
君がラウンジの勉強についていけずに、学ぶ気を失ったのはまあ多少は理解できる。同情の余地は充分にあるさ。
でも、だからって自分のペースで勉強できる学校なんてものを求めるのは、単なる甘えに過ぎない」
( ´ω`)
「……」



  
89: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 09:31:32.45 ID:Xy0tmIE3O
  
( ・∀・)
「この学校には学習意欲の旺盛な生徒が大勢いる――まあそうでない生徒も多いんだがね――君は彼らの前で、今と同じ台詞を吐けるのかね?
自分のペースでやりたいからこの学校を選んだと!」
( ´ω`)
「おっおっ…」
( ・∀・)
「内藤君。君がこの学校を選んだ理由が、単なる逃げと甘えだけでないことを切に願う。
私からは以上だ」
(*・з・)
「モララー先生テラカッコヨス」
( ゚ё゚)
「君も調子のいい男だね…」



  
90: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 09:43:27.91 ID:Xy0tmIE3O
  

その後も幾つか質問をされたが、ブーンはずっと上の空だった。
それほどに、モララー先生の言葉は彼の心に強い衝撃を与えたのだ。
「甘え」。そう、ラウンジの教師からも言われたことがあった。
その時はただ反発した。この教師は、自分の考えなんて何一つ理解してくれない大馬鹿者、単なる対受験用スパルタロボットだと。
しかし、ラウンジよりも遥かにレベルの落ちるニュー速の教師にまで否定されたことで、さすがのブーンも自分の考えが間違っているであろうことに気付き始めていた。
( ;ω;)
「カレギュウ食う気分じゃないお…このまま帰るお」
…余談だが、入学後のブーンとモララー先生との間に接点はあまり無い。たまにスクーリングでお世話になった程度である。
当然、モララー先生側はこの面接での出来事はおろか、ブーンのことも憶えてはいないだろう。



  
91: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 09:52:02.35 ID:Xy0tmIE3O
  

( ´ω`)
「ただいまだお」
J('‐`)し
「面接はどうだった? いや、聞かなくても分かる。
お前は考えていることがすぐ顔に出るからね。この単純脳」
( ´ω`)
「疲れたからもう寝るお」
J('兪)し
「あ、そ。とりあえずそのグッタリ顔やめてね。お前がそんなんだと、カーチャンまで疲れちゃう」
( ´ω`)
「ゴメス」
J('兪)し
「別に謝れなんて言ってないよ。口喧嘩の相手がいなくなるとボケるのが早まるって話だから、さっさと元に戻れってこと。
何を勘違いしてるんだか」
( ´ω`)
「うん…おやすー…」
ブーンは表情を全く変えぬまま部屋の扉を閉めた。
J(;'‐`)し
「うん、って。あの子、全然人の話聞いてないよ」



  
92: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 09:56:36.58 ID:Xy0tmIE3O
  

合格通知が届いても、ブーンはずっと塞ぎ込んでいた。
入学金を振り込み、教材が届く段になってようやく、ブーンの表情にも覇気が戻ってきた。

(*^ω^)
「ウホッ! いい教材…」

( ^ω^)
「自分のペースだろうとそうでなかろうと…やるだけやってやるお。
これぞ、くそみそ精神(スピリッツ)だお」



  
94: ◆TigerQqrbI:2006/07/20(木) 10:07:22.45 ID:Xy0tmIE3O
  
二話オワタ\(^O^)/
地味〜な話でごめんお

次回予告

川*゚∀゚)
「ふぅ…疲れた」
(*^ω^)
「ギガモエスwwwwww入学式の途中なのにおっきしてきたお」

( 凸 )
「……」
( ゚ω゚)
「まさか…彼が伝説教師イデオ○…!!
僕は、宇宙意思に勝てるのかお…?」

J('兪)し
「うちの息子には近寄らない方がいいよ、カブトガニの臭いがするからwwwww
ところで、カブトガニって神秘的だよね」



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