( ^ω^)ブーンが述懐するようです

  
5:◆TigerQqrbI:2007/01/18(木) 23:43:32.10 ID:25sw3SfGO
  
第十二話 再会の約束


( ^ω^)
「――そんなわけで、これからは週末よりも平日の方が都合がいいんだお。
そこんとこ把握よろ」
('、`*川
「外食産業だもんね。さすがに土日は休めないかぁ。
わかった」
( ^ω^)
「ゴメスwwww給料が入ったら、何か奢るお」
('、`*川
「あははっ。楽しみにしとくw」
( ^ω^)
「じゃ、明日も早いからそろそろ切るお」
('、`*川
「うん。…ねえ、ライ」



  
6:◆TigerQqrbI:2007/01/18(木) 23:50:16.93 ID:25sw3SfGO
  
( ^ω^)
「なんだお?」
('、`*川
「切る前に、好きって言ってw」
(;^ω^)
「バーローwwwwwやだお」
('、`*川
「ねーえーw」
( ^ω^)
「アッー! 電波が、電波がー」
('、`*川
「家の電話だし。
わかった、また今度ね。おやすみ」
(;^ω^)
「フ、フヒヒ! おやスミス」

乱暴に受話器を置くと、ブーンは電話の前で深い溜め息をついた。

(;´ω`)
「なんで、女はそんな形だけの言葉に拘るんだお?
理解できんね」



  
9:◆TigerQqrbI:2007/01/18(木) 23:57:05.11 ID:25sw3SfGO
  
二月。彼がファミレスでのアルバイトを始めて、二週間近くの時が過ぎようとしていた。
仕事内容は相も変わらず単調そのもので、彼はただ機械的に与えられた仕事だけをこなし続けていた。
何か新しいことに挑戦しようとすればプギャー店長に強い語調で止められ、パート主婦たちには殆ど話し掛けてもらえず、時間になれば即座に上がるよう指示される。
これでは技術の向上は見込めない。
ブーン自身も、自信を持っていたはずの「料理」というジャンルでの成長については、早々に見切りをつけていた。



  
10:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 00:04:15.30 ID:hW4+OX4CO
  
(;^ω^)
「まあいいお。
新しいことを覚えるよりも、今やっている仕事であのバカ店長を見返してやればおk」

…これを、世間では「逃避」と呼ぶ。
次々と新しい技術を吸収していくことと、下働きのみを黙々と続けること。
どちらが店長を見返すのに相応な方法なのかは、いちいち説明する必要はないだろう。
彼自身も、最初は前者の方法を実行するつもりだった。
が、彼は逃げた。なにしろ、プギャーからの注意が減らないのだ。
特に、得意としていた包丁の扱いについて注意を受けたことは、彼のプライドを著しく傷つけた。
11名前: 閉鎖まであと 4日と 20時間投稿日: 2007/01/19(金) 00:04:36.86 ID:dExEpcZi0 もうそろそろ完結だっけ?
くそみそ精神を忘れずにのんびり頑張ってくれ



  
13:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 00:10:05.24 ID:hW4+OX4CO
  
( ^Д^)
「いやいやいや!
その包丁の持ち方はどう見ても危ないだろ。
野菜に添えてる左手の位置もおかしいぞ」
(;^ω^)
「え。でも、僕はこう持った方がやりやすいんだお。
ほら」
(#^Д^)
「…素人の典型だな。
よく今まで怪我しなかったもんだ。感心するよ」
( ´ω`)
「……」
(#^Д^)
「直せよ」
( ´ω`)
「把握したお」

二週間、三週間…一ヵ月が経過しても、ブーンは同じことを繰り返した。



  
15:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 00:17:09.74 ID:hW4+OX4CO
  
――そんなに使えないと思うなら、クビにすればいいのに。
彼は何度もそう思ったが、一向にその手の話は出なかった。
…彼が、自分に起きた異変に気付いたのは、ちょうどその頃のことだった。

( ^ω^)
「カーチャンが僕の分まで朝ご飯を作るなんて、こりゃ今日は雨だおwwww」
J('‐`)し
「文句があるなら食べなくていい」
( ^ω^)
「そん、そんなことは言ってないお」
J('‐`)し
「なんでつっかえてんの」
( ^ω^)
「ワカンネ。…たたた食べるお」



  
16:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 00:20:38.56 ID:hW4+OX4CO
  
J(;'‐`)し
「おい。本当にどうしたの?」
( ^ω^)
「べべ別に、別にどうもしてないお」
J('‐`)し
「あ、そ。キモいからやめてね」
( ^ω^)
「把握し、把握したお」
J('兪)し
「…おい」
(;^ω^)
「うはwwwwwwww
なななんだこれwwww裸の大将wwww」



  
18:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 00:25:50.76 ID:hW4+OX4CO
  
(´・ω・`)
「今月は、年度末テストがあるね。
それさえ終われば、いよいよ僕らも三年生だ」
( ^ω^)
「せつめ、説明口調乙wwwwwww」
(´・ω・`)
「すまない。どうにも最近、出番が少ないのでね」
( ^ω^)
「そそそうかおwwww」
(;´・ω・`)
「内藤君? その喋り方は…」
(;^ω^)
「なななんでもないお、スルーよろ」
(´・ω・`)
「……」
(;^ω^)
「ほん、本当になんでもないんだお。



  
19:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 00:29:58.11 ID:hW4+OX4CO
  
('、`*川
「勉強してる?
あんまバイトばっかしてちゃダメだよw」
( ^ω^)
「だい大丈夫だお。
今のまま頑張れば、携帯も買えるお」
('、`*川
「そっか。無理しないでね」
( ^ω^)
「わか分かってるお。ぜぜぜ全然…」
('、`*川
「ん? なに?」
(;゚ω゚)
「おや、おやスミス!!11!!」
('、`;川
「ちょ、ライ!」



  
20:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 00:38:13.04 ID:hW4+OX4CO
  
誰かと話すたび、言葉がスムーズに出ないのがわかる。
ブーンは初めて、自分のことを真剣に気持ち悪いと思った。
――吃音。
彼も、その名前は知っていた。
当たり前だが、自分には一生縁のないものだと思っていた。
無論、今までにそのような症状が出たことはない。
小中学生時代は、教師に指名されただけで赤面したり声が小さくなってしまうような生徒を陰で笑っていたし…「吃り」についても、頭の回転が悪い証拠だと、たいした知識もなく軽蔑していた。
しかし、現実に自分にも同じ症状が出ている。
母親、クラスメイト、恋人…相手を選ばず、最初の語を繰り返している。
スムーズに喋ろうと思えば思うほど顔が真っ赤に染まり、つっかえて言葉を発してしまう。



  
21:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 00:42:05.26 ID:hW4+OX4CO
  
吃りの原因については諸説ある。原因不明であることもザラだ。
だが、彼の場合は原因がハッキリしている。

新しい環境での孤立。
上司の言葉によるストレス。
それに伴った焦りと不安。
加えて、自尊心の消失。



  
24:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 00:48:37.68 ID:hW4+OX4CO
  
…もともと内向的な小心者である。
何か行動を起こせば注意され、話し掛ける相手もおらず、自身の存在の必要性にすら疑問を抱く…。
そのような職場環境で、体より先に精神の方が悲鳴をあげたのだろう。

孤立感とストレスにより、不安と焦りが募る。
結果、元来人見知りな彼はさらに口を閉ざし、心を閉ざす。
自分に自信が無いから、積極的に他人と関わろうとしない。
気を遣った物言いしか出来ないために、発言の機会が減る。
それが吃音症状に繋がったと考えるのが自然かと思われる。



  
27:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 00:55:30.57 ID:hW4+OX4CO
  
なんにせよ、ブーンの内向的な性格はこれによってますます強固なものとなった。
時期的なこともあり、なおるよから再び勉強会の誘いがきたが、忙しいからと簡単に断った。
アルバイトを始めてからは何の確執もないというのに、母との接触も出来るだけ避け、帰宅したらすぐに自室へ。
ペニサスとの電話の回数、会う回数も次第に減っていった。
世間話すらまともに出来ない状態では、それも致し方ない話だ。
彼はなるべく電話では聞き役に撤し、彼女の家に行く際も、あまり喋らなくても済むように映画のDVDなどを多く持って行った。

…あとは、ただストレスと孤立の毎日である。



  
28:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 01:03:52.60 ID:hW4+OX4CO
  
ドクオがブーンを訪ねて来たのは、年度末テストも終わり、二年生最後のスクーリングも終わった三月下旬のことだった。
二月の時点で何度も電話は来ていたのだが、ブーンはその全てを取り次ごうとはしなかった。
母に「忙しいから」と伝言を頼み、一切の直接会話を避けた。
とはいうものの…既に、ドクオやギコに対する嫌悪感は無かった。
それどころか明らかに友達を裏切ったジョルジュに対しても、彼はもう怒りの感情を持ち合わせていなかった。
――自分の異常な状態を、知られたくない。
それは、未だ彼に残された唯一のプライドだった。
ただその一心で、ブーンは友人たちとの接触を避けていたわけである。



  
31:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 01:20:24.57 ID:hW4+OX4CO
  
…友人がそんな状態に陥っていることなど露知らず、ドクオはブーンの家のインターホンに指を伸ばした。

( ´ω`)
「…誰だお」
('A`)
「久しぶり。俺だよ」
(;´ω`)
「え。ドクオかお?」
('A`)
「うん。
突然でわりーけど、寒いから早く開けてくれwwww」
( ´ω`)
「…今、今、忙しいお」
(;'A`)
「マジで? おばさん、お前は今日休みだって電話で言ってたぞ」
( ´ω`)
「やす、休みでも色々あるんだお。
またにしてほしいお」
('A`)
「いや、そういうわけにもいかないんだ。
俺、明日からもう遊べなくなっちまうから」
( ´ω`)
「ふーん」



  
32:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 01:24:42.30 ID:hW4+OX4CO
  
(;'A`)
「ふーんじゃねーよwwwwwwww
しかも四月から俺、東京だ」
( ´ω`)
「そそそういえば、就職するんだったお」
('A`)
「そうそう。で、明日から研修でさ。
しばらく会えなくなっちゃうから、最後に会いにきたんだ」
( ´ω`)
「…把握。開けるお」



  
33:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 01:29:57.98 ID:hW4+OX4CO
  
(;'A`)
「久々に来たけど、なんか汚い部屋になったな。どうした?」
( ´ω`)
「フヒヒ、すいません。
いそ忙しくて、片付ける暇が無かったお」
('A`)
「そうか。頑張ってるんだな。
部屋っていえば…俺の部屋なんか、もう引っ越しの準備で段ボールだらけだぜwwww」
( ´ω`)
「そう、そうかお」
('A`)
「なんか元気ないな。痩せたし。
ちゃんと食ってるか?」
( ´ω`)
「おま、お前に言われたくないお」
(;'A`)
「だなwwwwサーセンwwww」



  
35:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 01:35:24.47 ID:hW4+OX4CO
  
( ´ω`)
「ひ、ひ引っ越しはいつだお?」
('A`)
「ん、今月末。研修中は、普通に今の家から通うよ」
( ´ω`)
「そう、そうかお。
め免許はもう取れたのかお」
(;'A`)
「…聞くな」
( ´ω`)
「…だと思ったお」
(;'A`)
「坂道発進で、後ろに向かって猛スピードで発進したからな」
( ´ω`)
「バカス」
('A`)
「初めて見たよ、『ねーよ!!11!!』って絶叫してブレーキ踏む教官」



  
37:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 01:41:04.81 ID:hW4+OX4CO
  
( ´ω`)
「ぎ、ギコたちは元気かお」
('A`)
「うん。
ただなぁ…ジョルジュが、大学落ちちまって」
( ´ω`)
「そう、そうかお」
('A`)
「まだ落ち込んでるから、出来たら励ましてほしいかな。
いい加減、お前ももう怒ってないだろ?」
( ´ω`)
「うん」
('A`)
「ならいいんだ。
またいつか、みんなで遊ぼうぜ。女連れで」
( ´ω`)
「その、その『いつか』はしばらく来ないお。
お前が足引っ張ってるから」
(;'A`)
「だなwwwwサーセンwwww
なんか俺、こればっかだな」



  
39:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 01:48:58.61 ID:hW4+OX4CO
  
ドクオはブーンの受け答えの不自然さに気付いてはいたが、特に指摘はしなかった。
いつもと同じように内容の無い雑談を続け、親友との別れを湿っぽくしないようにと精一杯おどけてみせた。
一方のブーンも、不毛な内容ではあるが、久々に他人との日常会話を経験したことで、その表情は少しだけ和らいでいた。

('A`)
「俺らの付き合いも、ホント長かったよな」
( ´ω`)
「うん。
しし就職先で、失敗しないよう祈ってるお。
一ヵ月で辞めたりしそうだから困る」
(*'∀`)
「お前の一言多い性格、全然変わらないなwwww」
( ´ω`)
「かも、かもしれんね」



  
40:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 01:54:24.06 ID:hW4+OX4CO
  
(*'∀`)
「ムカついたこともあったけど、今はなんか嬉しいやwwww
頑張るよ」
( ´ω`)
「ゴメス」
(*'∀`)
「いいってば。それもお前なりの励まし方だもんな」
( ´ω`)
「そそそんなことよりお前、チャック開いてるお」
(;'A`)
「アッー!!」
( ´ω`)
「おま、お前もベタなところは変わらないお。
その白ブリーフも」
('A`)
「うるせー」



  
41:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 01:58:39.64 ID:hW4+OX4CO
  
( ´ω`)
「もう、もう夜中だお」
('A`)
「だな。そろそろ帰ろうかな」
( ´ω`)
「そう、そうかお。ま、まあ頑張れお」
('A`)
「うん。…色々、ありがとうな」
( ´ω`)
「べ、別に」
('A`)
「お前に感謝しなきゃいけないこと、いっぱいあるんだ。
受験の時も、就職の時も、お前が色々教えてくれたし。
それに、俺が死にたいってわめいた時も」



  
42:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 02:04:56.73 ID:hW4+OX4CO
  
( ´ω`)
「もももうその話はやめるお」
('A`)
「ごめん。
…何かあったら、すぐ電話くれよ。何があっても絶対に千葉まで帰ってくる」
( ´ω`)
「おk」
('A`)
「その代わり、俺が困ってたらまた助けてくれwwww」
(;´ω`)
「…おk」
(;'A`)
「あと、痩せ型が好みの女の子がいたら…」
( ´ω`)
「たた、頼みごとの方が多いのはどういうことだお」
(*'∀`)
「サーセンwwwwじゃあ、元気でな!」
( ´ω`)
「ABAYO」



  
44:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 02:10:24.98 ID:hW4+OX4CO
  
玄関のドアが閉まる音。
ブーンはしばらく、誰もいない玄関に佇んでいた。
「また、いつか」
ドクオの言葉が頭の中に浮かぶ。
――きっと、その日はまだ来ない。
彼はそう心の中で呟いた。
当然、それは再会を避けての考えではない。

気付いたのは、ドクオと自分との温度差。
いつもならブーンの方が軽口を叩いて、ドクオがそれに合わせて大袈裟なリアクションを取る。
10年以上前から、ずっとそうだった。



  
45:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 02:15:23.84 ID:hW4+OX4CO
  
ブーンは、それが出来なくなっている自分が無性に情けなく思えた。
(#´ω`)
「何が吃りだお、何が異常な状態だお!
僕は…絶対にこんなのに負けないお」

明らかに今までとは違う状態にある自分に対しても、一切その態度を変えようとはしなかった、唯一の親友との別れ。
そして再会の約束。
今日の一連の流れを思い返し、ブーンは新たな目標を心に刻み付けた。
それは、笑顔での再会。



  
48:◆TigerQqrbI:2007/01/19(金) 02:28:06.22 ID:hW4+OX4CO
  
次回予告

('、`*川
「嘘つき」
(;´ω`)
「おっおっ…」
( 、 *川
「嘘つき!」


J('兪)し
「あいつは本当にクズだな。何回同じスパロボやってんだ。
うるせーからDS貸してやろ。ちょっとは脳を鍛えろ」

胸に刺さるは彼女の言葉…さらば愛しき者よ!



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