(^ω^)が三国志の世界へ迷い込んだようです

  
7:1 ◆0S5frHLuDM :2006/07/24(月) 22:08:32.12 ID:QmA4ywIz0
  
第2部【曹操の台頭】

劉備たち一行は公孫サンたちの下で居候することとなった。
張飛が趙雲を助けたこともあり、待遇は並みの武将よりも良い。
しかしこれといった戦もないので、劉備たちは束の間の平和を味わっていた。

関羽「そら!いったぞ山田!!」

関羽は堰月刀の柄で、持っていた毬を打った。
毬は高く空に飛び、趙雲の頭上へ上がった。

趙雲「オーライ、オーライ!!」

趙雲は手で毬を取ろうとするが、急降下する毬を受け止められず毬を地面に落としてしまった。

関羽「どうした山田ァ!!お前それでも名キャッチャーかァ!!
やる気がねえなら、野球なんざ辞めちまえ!!」

関羽が趙雲に向かって激をとばす。

趙雲「ハァ、ハァ・・・・・・徳川監督、
野球がしたいです・・・・・」

関羽「よく言った山田ァ!!それでこそ明訓高校の名キャッチャーだァ!!
さぁ、次行くぞ!!」

趙雲「お願いします、監督!!」



  
8:1 ◆0S5frHLuDM :2006/07/24(月) 22:09:31.65 ID:QmA4ywIz0
  
関羽がもう1つの毬を打とうとしたその時、劉備たちが現れた。

劉備「何やってんだい、あんたたちは・・・・・」

劉備がため息をつきながら言う。

関羽「子竜とドカベンごっこをしていた。中々ガッツがある」

劉備「ドカベンごっこも良いけどね、そろそろ見回りの時間だよ。
あたしらは居候の身なんだから、ちゃんと働かないとね」

趙雲「もうそんな時間なんですか。
また暇があったらお願いします、先生」

関羽「ああ。それと俺の事は徳川監督と呼べェェ!!」

趙雲「すみません、徳川監督!!」

それを見て劉備がまたもため息をついた。

劉備「はぁ・・・・・気が抜けてるねぇ。
ま、これといった事もないし、良いんだけど」

周倉「平和なのはここだけでしょうな。
ここ以外ではまだまだ争いが続いている」

(^ω^)「今は平和を味わうお。どうせまた戦いが続くことになるお」



  
9:1 ◆0S5frHLuDM :2006/07/24(月) 22:09:59.65 ID:QmA4ywIz0
  
張飛「だからって緊張を保ち続けてるわけにはいかねえしな。
そんなことしてたら、体が参っちまう」

徐庶「ええ。どんな戦でも、適度な休息は必要不可欠です。
今は、束の間の平和を楽しみましょう」

関羽「暇があったら姉者たちもどうだ?楽しいぞ」

(^ω^)「やりたいお!趙雲が山田ならブーンは里中やるお!!」

趙雲「それはいいですね。名バッテリーの誕生ですか」

関羽「頼むぞ、里中、山田。明訓高校野球部の未来は、お前達にかかっている」

趙雲&(^ω^)「分かりました、徳川監督!!」

それを見ていた劉備たちは呆れ顔だった。

劉備「遊び気分もいい加減にしときな!見回りに行くよ!!」



  
10:1 ◆0S5frHLuDM :2006/07/24(月) 22:10:44.22 ID:QmA4ywIz0
  
その頃、公孫サンが治める地域に袁紹たちは潜入していた。

袁紹「しかし平和なものだな。今が乱世とは思っていないようだ、公孫サンの奴」

文醜「けどよぉー!!それも近いうちに戦を仕掛けるんだろぉー!?
そうなりゃ、戦わないわけにはいかないよなぁー!!」

顔良「文醜、静かにしなさい。彼らは今、地域の見回りをしています。
あなたの大声で、見つかったらどうするんです?」

文醜「どうもこうも、みんな殺してやるだけさぁー!!」

顔良「見回りのものが帰ってこなかったら、怪しいと思うでしょう?
それで私たちがいることがバレたら、どうするんです?」

文醜「うぅ、分かったよぉー。おいら、顔良の言うとおりに静かにするよぉー」

顔良「それで良いのです、文醜。
・・・・・そろそろ言っても宜しいでしょうか?袁紹殿」

袁紹「もうすぐ見回りが終わる頃だ。それが終わったら、顔良。
お前の出番だ」

顔良「ええ、分かっていますよ。ここ一帯の森林を、火をつけて全て燃やせばいいのですね?
そうすれば彼らに戦を仕掛けた時、見通しが良くなって進軍の効率が良くなる。
祖授殿の考えは、真に素晴らしいものです」



  
11:1 ◆0S5frHLuDM :2006/07/24(月) 22:11:29.40 ID:QmA4ywIz0
  
袁紹「ああ。公孫サンの治める地域は樹木が多いからな。
進軍の妨げになるのは確実だ。
文醜、お前はもしもの時のためにお前は残り、俺を護衛しろ」

文醜「えぇ、でもー」

顔良「文醜。ここは殿の為にも残ってください」

文醜「でもおいら、顔良と一緒にいたいよぉー」

顔良「ありがとう、文醜。そう言ってもらえるのはありがたいのですが、
なにぶん2人だと動きづらいのです。
今度の戦は、一緒に戦いましょうね」

文醜「分かったよぉ。頑張ってなぁー」

顔良「では行ってまいります、袁紹殿」

袁紹「頼んだぞ。危なくなった時には無理をせず、帰ってこい」

顔良「袁紹殿のお気遣い、大変嬉しく思います。
それではこの顔良、任務を遂行致します」

そう言うと、顔良は音も立てずに消え去った。



  
12:1 ◆0S5frHLuDM :2006/07/24(月) 22:12:06.36 ID:QmA4ywIz0
  
顔良は燃やすのに都合の良い木を探していた。
燃やす木は背が高く、かつ隣の木の葉まで枝が伸びている物が適していると、
顔良は祖授に教わった。

顔良「(しかしどれも背は高いが、枝が短い。
これでは燃やしても火の回りが遅く、見回りの者が気がついてしまう。
どこか良い木は・・・・・・
っ、誰だ!?)」

顔良は幹の太い木の後ろに隠れた。

(^ω^)「いつものことだけど、何もないお。
早く帰ってドカベンごっこしたいお」

現れたのはブーンだった。だが、ブーンは顔良に気がついていない。

顔良「(見回りの者か・・・・・殺してはまずいな。
どうしたものか・・・・・
っ、!!!)」



  
13:1 ◆0S5frHLuDM :2006/07/24(月) 22:13:00.87 ID:QmA4ywIz0
  
ブーンが顔良のいる木に近づいてきた。
だが、ブーンは顔良がいる事に気づいていない。

顔良「(くっ、見つかるか・・・・・!?)」

顔良は私に気づくな、と祈りながら息を潜めた。

だが、その祈りもむなしく一歩、一歩と足音は近づいてくる。

顔良「(来るな、来るな・・・・・!!)」

顔良は木の幹から自分の位置を少しずつずらしていく。

(^ω^)「そろそろ帰るお。ここにはもう何もない・・・・・
お?」

ブーンは、傍の木から白い布切れが出ているのを発見した。

顔良「(なんだ?まさか、気づかれたのか・・・・・!?)」

顔良はさらに息を潜めるが、まだ顔良の服は木の陰から出ている。

(^ω^)「(もしかして、敵の斥候かお?)」

ブーンは少しずつ木に近づいていく。
だが、顔良の方はこれ以上動くと半身が出てしまう。

顔良「(・・・・・こうなったら!!)」

顔良は賭けに出た。



  
14:1 ◆0S5frHLuDM :2006/07/24(月) 22:14:10.12 ID:QmA4ywIz0
  
木の反対方向へと、猛スピードで走り出したのだ。

(^ω^)「!!待つおっ!!」

ブーンは顔良を追いかける。だがあまりにも速いので、
2人の間に距離が出来てしまった。

(^ω^)「(こいつ足速いお!こうなったらブーンも本気で走るお!)」

⊂二二二( ^ω^)二⊃ブィィィィーン

ブーンはあっという間に顔良に迫った。

顔良「(なっ、この者、私と同じくらい足が速い!!)」

(^ω^)「いい加減に・・・・・・するおっ!!」
顔良「なっ・・・・・!!!!」

ブーンは顔良の服をつかみ、地面に叩きつけた。



  
16:1 ◆0S5frHLuDM :2006/07/24(月) 22:17:07.39 ID:QmA4ywIz0
  
顔良は勢い良く地面に叩きつけられたせいで、肺から空気が一気に飛び出してしまった。

顔良「カッ・・・・・・・!!」

とたんに顔良は息ができない苦しさにもがいた。

(^ω^)「誰だお!返答次第じゃ、お前を斬るお!!」

顔良「カハッ、カハッ・・・・・・・」

顔良は必死に息をしようと試みる。
だんだん、顔良の肺に酸素が送られてくる。
ブーンは、目の前の男が息が出来るまで待った。

顔良「(私が誰か言ってしまっては、そのしわ寄せは袁紹殿に来る。
それだけは避けなくては・・・・・)」

(^ω^)「お前は誰だお!」

顔良「・・・・・私は、旅の者です」



  
17:1 ◆0S5frHLuDM :2006/07/24(月) 22:24:50.79 ID:QmA4ywIz0
  
(^ω^)「旅の者?」

顔良「ええ。私は今、この乱世を正すべき者を見つけるべく、旅をしています」

とっさの嘘だった。
だが、まだブーンの疑いは解けていない。

(^ω^)「そうなのかお。じゃあ何で逃げたのかお?」

顔良「・・・・・私は剣術が得意でして。
この前黄巾賊の残党退治をしていた時、残党の首領を斬ったのです。
それから、その残党の者が私を恨んで、今も追いかけているのです」

とっさの嘘にしてはうまくつけた方だ、と顔良は思った。
幸い、その嘘にブーンは気づいていない。

(^ω^)「じゃあ今は逃亡してるのかお?その残党たちから」

顔良「ええ。だから私が逃げた理由は、あなたをその残党だと思い込んでしまったからなのです。
まずは非礼を、詫びさせて下さい」

顔良は深々と頭を下げた。もちろん、心の中では謝る気など全くない。



  
18:1 ◆0S5frHLuDM :2006/07/24(月) 22:33:26.40 ID:QmA4ywIz0
  
(^ω^)「そうなのかお。こちらこそごめんだお。
もし良く当てがないのなら、ブーンと一緒に来るお?」

この答えは顔良にとって最も予想の出来ないものだった。
かつ、最も顔良にとって都合の悪い答えである。

顔良「(どうする?行けば袁紹殿と離れてしまう事になってしまう。
断れば、さらに疑われる。私は今、追われる身なのだから)」

顔良は悩んだ。
ここでブーンについて行けば、顔良を「追われる身」として保護されることになる。
そうすれば自分の身は安全だが、袁紹と離れてしまう事になる。
断れば、さらに疑われてこの場を切り抜けることが出来なくなる。
だが、顔良にとって一番心配だったのは、文醜である。

文醜と顔良は小さい頃からの親友同士だ。
文醜は精神年齢が幼く、顔良以外の人間を中々信用しない。
彼が最も信用しているのは、顔良なのだ。
袁紹は顔良よりも信用できないが、話を聞く分には構わない。
だから顔良が離れてしまっては文醜がどうなるか、顔良には分からないのだ。



  
19:1 ◆0S5frHLuDM :2006/07/24(月) 22:44:27.30 ID:QmA4ywIz0
  
顔良「(あの子、私がいないと何も出来ない子なのに。
ただでさえ私が離れたら、あの子は・・・・・。
けど、私が死んでしまうようなことになれば、あの子はきっと・・・・)」

(^ω^)「どうしたお?」

顔良「(なら私が彼を安心させるために出来る事は・・・・・)
分かりました。行く当てもないので、ご一緒しても宜しいでしょうか?」

(^ω^)「もちろんだお!じゃあいくお。
暗いから足元には気をつけるんだお」

ブーンは顔良を伴って歩き出した。

顔良「(ここは彼らに取り入って、信用してもらうほかない。
そしてその後、彼らの元を離れて袁紹殿の元に帰ればいい。
けど、成功するだろうか?この行き当たりばったりな私の策は・・・・・
こんな時、祖授殿がいてくれたら)」

顔良「あなたの名前を教えてくださいませんか?」

(^ω^)「ブーンだお。よろしくだお」

顔良「武運さんですね。申し遅れました、私は・・・・・
関良と言います」

顔良は偽名を口にした。
何故なら、「顔良・文醜」と言えば、猛将コンビとして有名だ。
本名を口にしたら、自分が袁紹の配下の者だということがバレてしまう。
ここは偽名を教えるべきだと、顔良は思った。



  
21:1 ◆0S5frHLuDM :2006/07/24(月) 23:00:45.07 ID:QmA4ywIz0
  
(^ω^)「関良っていうのかお。改めてよろしくだお」

顔良「よろしくお願いします、武運さん」

顔良はよく思われようと、無理やりに笑顔を作った。
だが、もちろん心の中では笑顔などではなく、深刻な顔をしていた。

それから30分ほどして、2人は公孫サンのいる城へ到着した。

その頃、袁紹たちは顔良の帰りを待っていた。

袁紹「くそっ、どうしたと言うのだ!!
一向に火が上がらんではないか!!」

文醜「どうしたんだよぉ、顔良はー!」

袁紹「バカ、大声を出すな!!
恐らく奴は見回りの者に捕まったのだ。
奴を捕らえて、誰の差し金か吐かせるつもりだろう。
困ったぞ・・・・・」

文醜「じゃ、じゃあ顔良は殺されるのかぁー!?」

袁紹「・・・・・恐らくはな」



  
22:1 ◆0S5frHLuDM :2006/07/24(月) 23:03:31.68 ID:QmA4ywIz0
  
その時、文醜は大声で叫んだ。

文醜「いやだぁー!!そんなの文醜、許さないぞぉー!!
今から顔良を、探しに行くぞぉー!!」

袁紹「黙れと言っている!!
・・・・・ここは、城に帰った方が得策だ」

文醜「いやだ、そんなのいやだぁ!!
顔良を、助けに行くんだぁー!!」

立ち上がろうとした文醜を、袁紹は引き止めた。

袁紹「やめろ!!
・・・・・お前の気持ちは分かる。
私だって辛い・・・・・!!」



  
23:1 ◆0S5frHLuDM :2006/07/24(月) 23:08:17.94 ID:QmA4ywIz0
  

文醜「・・・・・・う、うわぁぁぁっ」

文醜は泣き出した。
最高の親友である顔良が、殺されてしまうかも知れないのだ。
だが、袁紹の気持ちも分かる。

顔良と文醜は、死にかけていたところを袁紹たちに助けてもらって以来、袁紹に仕え続けている。

もちろん文醜は、袁紹に恩を感じている。
だから彼が死ぬことを、文醜は回避しなければならない。
だがそれと同じくらい、顔良も死なせたくない。
彼は心の中で葛藤した。

だが、彼はいつか会えるであろう親友の顔を心に浮かべながら、ここから去ることを決めた。

文醜「・・・・・分かったよぉ。おいら、袁紹と一緒に帰ることにするよぉ」

文醜の心の中で葛藤があったことは、袁紹も薄々感じていた。

袁紹「すまない・・・・・。だが文醜、諦めるな。
いつか顔良が帰ってくることを信じてここを去ろう」

文醜「・・・・・・」

文醜は、何も言わなかった。



  
26:1 ◆0S5frHLuDM :2006/07/24(月) 23:31:02.85 ID:QmA4ywIz0
  
顔良「関良といいます。私は追われる身なので、出来ればここにしばらく置いてもらいたいのですが」

公孫サン「ほう、追われる身とな。
それは難儀だのー。
うむ、ここに置くことは構わんが、1つ条件がある」

顔良「・・・・・その条件とは?」

公孫サン「お前は剣術が得意だそうだな。
私の考えでは、近いうちに袁紹が攻めてくると考えておる。
その時、お前も戦に出よ。
これが条件だ」

顔良「(なんだと?つまり同胞と斬り合えというのか・・・・・
だが、この条件をのまなければ置いてもらう事はできない。
仕方ない・・・・・)
分かりました。この私の剣、しばらくは公孫サン殿のために振るいましょう」

公孫サン「それでよい。待遇は後ろにいる劉備たちと同じようにするから安心しろ」

顔良は後ろを振り返った。後ろでは劉備たちがひそひそと話をしている。



  
29:1 ◆0S5frHLuDM :2006/07/24(月) 23:44:19.15 ID:QmA4ywIz0
  
劉備「よろしくねー、関良」
張飛「あとで酒飲もうぜ!」
周倉「あとで訓練に付き合ってくれ」
徐庶「暇なら、僕の本をお貸ししますよ!」
関羽&(^ω^)「ドカベンごっこやろうぜ!!」

顔良「・・・・・・はぁ・・・・・・・」

顔良は驚いた。
彼らの中でブーンを除いては初対面なのに、なぜこんなに馴れ馴れしいのだろうか?

公孫サン「ふふ、驚くとは思うが、仲良くしてやってくれ。
ああ見えて彼らは戦場に出れば、素晴らしい働きをしてくれている。
今は平和だから、まあまったり過ごしても良かろう」

顔良「・・・・・分かりました」

劉備「良かったらこいつらと遊んでやってね。
こいつら、あんまり遊び相手いないから」

そういうと劉備以外の4人は、顔良の元に駆け寄ってきた。

張飛「なぁなぁ、どんな酒が好きなんだ?」
周倉「どんな剣を使っているのだ?俺の剣は○×△◇・・・・・」
徐庶「どんな本をお読みになるのですか?僕は○×△◇・・・・・」
関羽&(^ω^)「ドカベンごっこやろーぜぃ!!」

いきなり質問攻めである。



  
30:1 ◆0S5frHLuDM :2006/07/24(月) 23:56:26.99 ID:QmA4ywIz0
  
とりあえず顔良は徐庶から手ごろな本を借り、ブーンたちのドカベンごっこを観戦することにした。
ドカベンごっこを観戦したあと、周倉と訓練で汗を流し、その後で張飛と酒を飲む・・・
ということになっていた。
本来ならどれか1つでも断りたいところだが、なにぶん信用を得なくてはいけない
そのために、とりあえず全員に取り入らなくてはと思い、これである。

関羽「そらいったぞ里中ァ!!」

関羽は毬を思い切り遠くへ飛ばした。
それも1つずつ、最終的に20個ほど。

(^ω^)「うりゃ!!とりゃ!!」
ブーン(今は里中)は見事に1つずつキャッチしていく。
それを見事な送球で趙雲(常に山田)に投げていく。

関羽「よぉしいいぞ!!
これでノックは終了だ、次は素振りだっ!!
俺がいいと言うまで、素振りをやめるなっ!!」

趙雲(いつも山田)とブーン(今だけ里中)は、木の棒を持ってブンブン振り始めた。

趙雲「いっちにー、さんしーっ、ごーろくっ、しーちはーっちっ、きゅーじゅーっ・・・・・」
(^ω^)「よっるのバットも、ぜっこーちょぉぉっうっ!!
ブンッ、ブンッ、ブンッ、ブンッ、ブンッ!!!!」



  
35:1 ◆0S5frHLuDM :2006/07/25(火) 00:26:53.13 ID:u9Jb45ul0
  
顔良「(良くやるなぁ・・・・・あんなこと。
楽しいのだろうか・・・・・?)」

顔良はブーンたちを見て思った。
顔良には『遊ぶ』ということがよく分からない。

昔から顔良と文醜は、剣の訓練に励んでいた。
彼らは共に両親がいなく、同じ境遇のもの同士で暮らしてきた。
顔良は畑を耕しながら、文醜は食べられそうな生き物をとってきながら、なんとかかんとか生きていけた。
将来はお互いとも国の為に戦う勇敢な武将になりたくて、一生懸命訓練に励んだ。
その昔があり、「猛将顔良・文醜」としての今がある。
彼らには、遊ぶという余裕が無かったのだ。
だから、ブーンたちのようにどうでもいいことで楽しめる心が、彼らには分からない。
昔も、今もだ。

顔良「(文醜は今どうしているのだろうか?
私なしでもやっていっているだろうか?
ごめん文醜、私に力がないばかりに・・・・・)」

その時、関羽が顔良に近づいてきた。

関羽「お前もどうだ?関良」

関羽は毬を差し出した。



  
36:1 ◆0S5frHLuDM :2006/07/25(火) 00:28:36.72 ID:u9Jb45ul0
  

顔良「私は・・・・・いいです」

なんだかんだいって物思いにふけっていたので、本もろくに読んでいない。

関羽「何をいう!読書など、どこでも出来るしどんな天気でもやれる。
しかし、野球は広い場所と明るい天気がなければ出来んのだ。
楽しいぞ?野球は」

そう言われると、顔良は本を閉じ、毬を受け取った。

顔良「初めてです、こういう遊びは。
やり方がわからないのですが」

顔良は毬を握りながら言う。

関羽「そうか、まずボールの握り方はこうだ。
そう、そんな感じ。
そしてそれをミットめがけて投げるんだ」

関羽は野球初心者の顔良に、手取り足取り教えてあげた。

顔良「・・・・・こうですか?」



  
37:1 ◆0S5frHLuDM :2006/07/25(火) 00:29:09.76 ID:u9Jb45ul0
  
顔良は振りかぶって、趙雲(一生山田)に向かって毬を投げた。
趙雲(今も山田)は毬に気づいたようで、毬に向かって思い切り木の棒を振る。
だが趙雲(昔も山田)の木の棒の下を毬はくぐり、抜けていった。

趙雲「おおっ、やるじゃないか、関良!!」

趙雲(気づいたら山田)はそのスピードとコントロールに驚いた。

関羽「おお、やるじゃないか!!第2の里中はお前に決まりだ!!」
(^ω^)「里中は1人でいいお!ブーン1人でじゅうぶんだお!!」
関羽「何を言っている!監督の意見は絶対です!!」
(^ω^)「すみません、徳川監督!!」

顔良は驚いた。
自分の投げた毬ではなく、自分の手の感触に、だ。
この初めての感覚は何なのだろうか?
初めて戦以外で他人から褒められた。
こういう事が今までは下らないと思ってたけど、意外に・・・・・

顔良「・・・・・楽しいですね」



  
38:1 ◆0S5frHLuDM :2006/07/25(火) 00:42:49.43 ID:u9Jb45ul0
  
関羽「だろう?」

関羽はにんまりとした。

顔良「他はどんなことをするんです?」

関羽「おお、あとはこのバットを持ってだな・・・・・」


その後、顔良は関羽たちに色々と野球を教えてもらい、
時には自分からキャッチボールを頼むなどと、積極的だった。

その後顔良は借りていた本を休憩中に読んだ。
徐庶が貸したのは「誰にでもできる、軍師の策」という本だった。
これが意外に面白く、気づいたら全部読んでしまっていた。

その後徐庶に本を返したあと、周倉と剣の訓練をした。
最初は訓練程度にしか考えていなかったが、途中からお互い本気になりかけていた。
結局どちらが勝ったわけでもなかったが、顔良は周倉と剣の話で盛り上がった。

訓練を終えた顔良と周倉は、張飛と一緒に酒を飲むことにした。
張飛は秘蔵の酒「超老酒」を二人にご馳走した。
この酒は顔良が昔から飲みたかった物で、あっという間に飲み干してしまった。
張飛がときどき絡んできたが、顔良はそれをものともせず飲み続けた。

結局部屋に戻ったのは夜2時頃で、顔良は部屋に入ると布団に倒れこんだ。
干したての布団のようで、その気持ちよさで数分もせずに寝てしまった。

その顔は今まで顔良が浮かべたことのない、心からの笑顔だった。





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